人民新聞11月22日付【抗議声明】全世界の民衆の闘いを伝えてきた人民新聞社への不当弾圧

11月21日大阪を本拠地とする「人民新聞」(1968年創刊、1976年「人民新聞」に名称変更)の編集長が逮捕された。「人民新聞」は本拠地を茨木市に移し、順調に新体制のスタートを切った矢先だった。編集長逮捕の経緯について、同社社員の園良太氏に電話でうかがった。

──── 今回の弾圧について状況を教えてください。

園  21日事務所に来たときは私とは別の人が先に来ていて警察に鍵を開けさせられて、その後に私が来ました。「職員なんだから中に入れろ」と警察とやりあっていましたが、「立ち合いは一人しか認めない」と警察は取り合わなかった。「何の根拠もないだろう」と抗議しましたが、ブロックされ続けました。一方中にいる人は電話も使えないし、外に連絡もできない。撮影や録音もできない状況に追い込まれました。ようやく中から外へ出てきたときに、その人もいろいろ連絡を取る必要があり、警察と交渉して立会い人を僕に交代させました(それから社の中に入りました)。

警察からは、撮影録音を禁じられ「それをやるなら追い出すぞ」と脅され「軟禁状態」におかれました(これまでの経験では家宅捜索の際写真撮影などはしていました)。警察はパソコンなど押収してゆきましたが、それに抗議をすると「オラオラオラ」と言いながら体を寄せていて「当たり公妨」みたいなことをやりたい放題でした(著者注:それに反抗すれば逮捕を狙っていた可能性が高い)。

もう一点大きかったのはマンションの入り口に検問を張っていて、関係者を入れさせないことと、住民にも一人一人職務質問をして住民をビビらせていたことです(人民新聞は住宅もあるマンションの1室だ)。同じ階段から入る人にまで嫌がらせをしていたことです。

──── 令状の内容は?

園  クレジットカードを他人に使わせることで銀行からクレジットカードをだまし取った詐欺容疑としか書かれてません。報道で「日本赤軍」とかなんとか流れていますが、こちらはまったく知らされていませんでした。

◆「共謀罪」の先取り

──── これを読んでいる方に主張したいことがあればよろしくお願いいたします。

園  第一にここで詐欺とされているものは、海外でバックパッカーなど旅行している人が、送金の受け取りなどに困難があるとき、友達間のクレジットカードを利用して「この口座に振り込んで欲しい、そうじゃないと自分はお金を引き出せないから」というような融通は、みな普通にやっているわけです。それを相手が岡本公三さんだから逮捕するのは、相手が「誰か」ということだけで普通なら全く問題にできないものを炙り出して逮捕するという、まさに「共謀罪」の先取りであり許せません。

次に岡本さんはイスラエルで酷い拷問を受けて精神もボロボロの状態で、言い渡された裁きも受けていまレバノンで暮らしているわけです。そこに生活費を送る人がいても何が問題なのかということです。イスラエルがどれほどの人殺しをこの間にやり続けているかという問題も片方にはあるわけです。ですから日本政府が本来手出しをできる問題ではない。それをこの程度のことで騒ぎ立てて捜査網を広げていくということが許されないことは、警察発表を垂れ流ししているメディアがまず自覚しなきゃいけない。「人民新聞弾圧」はまさにメディア弾圧ですから。垂れ流しとか実名報道をやめろと言いたいです。

そして今回「人民新聞」は茨木市に移転して関係者の多い地域に密着もし、世代交代も進め、いい意味で関係性が広まっていってたところなんですね。そこに対してマンションごと「職務質問」をかける形で20人以上の警察が押しかけてくるというのは、地域から「人民新聞」の新体制を孤立させる意図に基づいた弾圧です。そんなものには負けませんが、絶対にこんな弾圧は許されません。

4つ目は押収する必要のないものまで持っていって、今仕事ができない状態です。とんでもないメディア弾圧です。それからからこれはすごく申し訳ないのですが、読者名簿も持っていかれているわけです。それは容疑と何も関係なく個人情報の固まりです。それについては「とにかくすぐ返せ」、「押収したもので容疑と関係ないものはすぐ返せ」と要求しています。

◆明らかに過剰で不必要な「検問」体制が敷かれた

園氏の話を要約すると逮捕された編集長氏のクレジットカードを利用してレバノン在住の岡本公三さんに生活費を送っていたことが「詐欺」にあたるとの理由で、今回の大掛かりな家宅捜査と逮捕がなされた模様だ。そして同社の入居するマンションの居住者にことさら「人民新聞」の悪印象を植え付けるために、過剰で不必要な「検問」体制が敷かれた。

「人民新聞」は独自の視点から発信を続けて来たメディアであり、その存在は今日ますます貴重である。同社への不当かつ過剰な「家宅捜索」及び「編集長逮捕」弾圧は報道界、出版界に身を置くすべての人間にとって他人事ではない。鹿砦社は2005年に検察権力により不当弾圧を受け壊滅的な打撃を受けたが、その後奇跡的に復活した。しかし2017年の今日、時代は違う。園氏が指摘する通り「共謀罪」が成立し、安倍長期政権による治安維持に名を借りた「言論弾圧」や「思想弾圧」はますます、なりふり構わず勢いを増している。それらは大手マスコミでは報道されない。が故に多くの読者真実を知りようがない。

「人民新聞」への弾圧を私は強く糾弾する。「人民新聞」への弾圧は過去鹿砦社が踏み潰されそうになった権力による弾圧の異形であり、その危険性と悪質性はますます水位があがっている。大手マスコミにとっても無関係な問題ではない(しかし彼らがそう気づいてくれるのかどうかには悲観的にならざるをえない)

「人民新聞」編集長の即時保釈を求め、「人民新聞」に対する弾圧を断固糾弾する!

人民新聞11月22日付【抗議声明】全世界の民衆の闘いを伝えてきた人民新聞社への不当弾圧

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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