M君リンチ加害者李信恵ら5人への12・11本人尋問傍聴記 被告側に4つの大失点

12月11日、大阪地方裁判所810号法廷でM君がリンチ加害者=李信恵ら5人を訴えた損害賠償請求事件の本人尋問が行われた。傍聴券配布が事前に伝えられていた法廷の傍聴をもとめ傍聴可能者数(35人)を超える人びとが集まった。

◆M君支援者VS「しばき隊」── 傍聴席の比率は2対1

M君支援者側は、期日前からツイッターや本「通信」で傍聴への参加呼びかけを行っていたのはご存知の通りだ。M君に対立する側もさすが「組織」の「しばき隊」らしく、尊師こと野間易通をはじめ、「説明テンプレ」、「声かけリスト」を作成したITOKENこと伊藤健一郎、ツイッターで悪質なM君誹謗を続けた、leny。ほかにもTakaaki、Hiroshito、「声かけリスト」で声掛けの役割を割り振られた、もしもしピエロ、うっちー。さらには、みょんきち、みひょん、東京さば子、中村美和(いずれもツイッター名)など10名を超える顔ぶれが傍聴券を求めて集まっていた。

この顔ぶれを見てわかることは、「しばき隊」も全国動員に近い集結指令が下ったであろうことである。地元関西はもとより、東京や新潟からも傍聴者が集まっている。

傍聴券抽選後、傍聴席についた割合はM君支援者2対「しばき隊」1の比率だ。取材班は最前列に鹿砦社・松岡社長が座り、数名はバラバラに着席した。四国から駆け付けた合田夏樹氏の姿もある。

◆M君に暴行中の細かな記憶の再生質問ばかりを繰り返した韓雅之弁護士

定刻10時30分開廷となり裁判官が尋問に先立ち証拠の確認を原告被告の双方に行う。双方了承後、M君の本人尋問がはじまった。瀬川武生弁護士がM君に質問(主尋問)で事件に至る経緯や被告らとの関係、事件の様子、事件後の成り行き、その後の被害などをM君に質問した。

そのあと被告側弁護士5名からM君に対しての反対尋問が行われた。細かい内容は省くが、総体としてM君に対する反対尋問はM君及び弁護団が想定していたものよりも、かなり厳しさを欠く内容であった。

その中で際立っていたのは凡の代理人、韓雅之弁護士だ。凡がエル金の暴行を止めるためにいかに全力を尽くしたかを強調するために、M君に対して、暴行中の細かな記憶の再生を求める質問を繰り返した。弁護士という職務上、依頼人である凡の利益を最大にするためには、どのような非人情な質問でもぶつけなればならないことは理解する(ある意味それはプロフェッショナリズムでもある)が、それにしても散々殴られ意識朦朧が確実なM君に事件時の子細な記憶再生を求めることにはおのずから無理があり、印象に残ったのは韓弁護士がとにかく凡の責任を最小限にとどめようと腐心している姿だ。

◆弁護士としては絶対にしてはならない質問を2度も繰り返した姜永守弁護士

そして、被告代理人最大の失敗は姜永守弁護士の質問だ。既定の時間を超えて、裁判から制止されるも行った姜弁護士のM君に対しての最後の質問、「あなたはこの裁判のなかで被告たちがリンチをしたとか、隠蔽をしたとかさんざん主張して、各被告の責任を訴えていますよね。あなたにとってはこの裁判はなんなんですか?」には、裁判官、原告弁護団、傍聴席からも驚きの声が上がった。

ざわつく法廷内を気にもせず姜永守弁護士は「何のためにこの裁判をしているのですか?」と弁護士としては絶対にしてはならない(まったく被告の利益にならない)質問を2度も繰り返してしまったのだ。M君も驚いただろうが「訴状に書いてある通りです」と明確に答えた。

◆エル金に告ぐ。鹿砦社出版物の「事実と異なる内容」を明確に指摘せよ

昼食の休憩をはさんで午後からは被告らへの質問が行われた。当日尋問を受けた4被告の中で、最初に証言台に立ったのはエル金だった。エル金は饒舌だった。主尋問、反対尋問にも即答を繰り返した。だが以下の発言は座視することはできない。主尋問に対してエル金は、
「原告側、いろんな媒体を使って、ネットや媒体を使いこの3年間で実際にこの事件で私が働いた、私個人で働いた暴行の実態以上のものが、誇張されて、歪曲して、非常に違ったものとして社会に広く知られることとなっているところです。それによって、意図的に関係のない、無関係な膨大な人たちに対して、その中のほとんど私と面識がない人たち。この人たちの名前や個人情報や職場や、そういうものを勝手に写真とか貼り付けて雑誌に載る(中略)。もう鹿砦社による4冊目と。すでにもうこの3年間で3冊目という。これが4冊目です。事実とは異なる内容で、さきほどいま申し上げた内容のことを、反映させた内容となっております。それが新刊なんですけど、ちょうど昨日(10日)名古屋で、名古屋の駅前で在特会、ヘイト団体がおぞましいヘイトスピーチ街宣をやりました。その場で八木(在特会会長)がマイクで、この本を掲げながら『この朝鮮人が働いた集団リンチ事件で、隠蔽事件がある』と。そのような文脈でヘイトに結び付け、ええ喧伝し、通行人の人たちに非常に恐ろしい思いをさせたと。そういうことが実際つい先日もあり」(太字取材班)
と、明確に鹿砦社の発行物が「事実とは異なる内容」と言い放った。そして在特会が鹿砦社の出版物を利用したことが、あたかも鹿砦社に非があるかの如く語った。

エル金に告ぐ。「事実と異なる内容」を明確に指摘せよ。事実認定の誤りや取材不足があればその内容を訂正・修正するに取材班はまったくやぶさかではない。これは出版の根本にかかわる問題だ。取材班は2年にわたり事実確認と取材を行い、証拠にもとづいて出版活動を行っている。その内容はエル金をはじめとして被告たちには、「不都合な真実」の連続だろうが、真実は真実なのだ。

◆伊藤大介よ、鹿砦社出版物のどの部分が「誹謗中傷」に該当するのか明言せよ

また伊藤大介も、
「二人(取材班注:エル金・凡)に対して原告や原告の支援者からネット上や雑誌等で酷い誹謗中傷を、デマに基づく誹謗中傷を受けて。これはもう自分たちが犯した罪の贖罪を超えているような状態。(中略)私と松本(英一)さん(ヨン様)に関しては任意の事情聴取どころか、警察から電話の1本さえありません。それなのに、私も『暴行事件・傷害事件』の加害者のような書き込みがなされ、原告や、原告の支援者の鹿砦社やネトウヨたちに、ネット上や雑誌上で酷い誹謗中傷を受けています。(太字取材班)」
と明言した。

鹿砦社は伊藤にこれまでさんざん誹謗中傷されてきた。その一部は『カウンターと暴力の病理』に資料として掲載した。伊藤にはわれわれから逆質問をぶつける。鹿砦社出版物のどの部分が伊藤に対する「誹謗中傷」に該当するのかと。

エル金に続く凡への質問は前述した通り、韓弁護士がなりふり構わず凡がいかに暴行を制止しようとしたか、に終始したが、大川伸郎弁護士の冷静な反対尋問はどんどん事実を露わにしてゆく。休憩時間中に裁判傍聴経験豊富な方々の間では「大川砲とんでもないですね」と驚愕の声が上がるほど、大川弁護士の反対尋問は冷静かつ真実を浮かび上がらせる質問の連続だった。

◆被告側法廷発言・4つの大失点

それは、李信恵、伊藤大介に対しても同様だ。この日被告側の大きな失点は、素人目に4つある。1つ目は前述姜永守弁護士の失当質問。2つ目は李信恵が「自分は乱暴な言葉を日ごろから使う『殺されるんやったら中におれば』もいつも通りの言葉遣い」と発言したこと。3つ目は同様に李信恵が事件時に着ていた「チョゴリ」を「着ていませんでした」と明言したこと、そして被告側最大にして取り返しのつかない発言は、伊藤大介が、殴られたM君の姿を見ても「エル金とは友達なんだから話し合った方がいい」と繰り返し述べてしまったことである。

伊藤の発言は取材班も予想外であった。伊藤は自身が「共謀」などなかったと何度も繰り返し主張しているが、この発言は伊藤が「暴行事実を確認しながら、それを放置(場合によってはさらなる暴力の誘因をはかった)と言っているに他ならないからだ。伊藤は事実がそうでなくとも「共謀」を否定するのであれば、絶対にこのような発言をしてはならなかった。素人にもそう感じられたが、合議体である裁判官が3人とも「暴行を受けている事実を確認して、また店外に出したらさらに暴力を振るわれると考えなかったか」といった趣旨の質問を繰り返した。その質問のたびに伊藤は前述通り「もともと友達だからちゃんと話し合って解決すべきだ」と思ったと語った。暴力続行の危険性を全く配慮していなかった=結果として黙認したことを何度も裁判官の質問に向かい確認したのだ。

◆判決は来年3月19日、同法廷で言い渡される

様々なやり取りがあった長い1日であったが、要点は上記に要約できるだろう。追加書類の提出期限が来年の1月末と定められ、判決は3月19日13時15分から同法廷で言い渡されることとなった。

取材班は裁判所の公正な判断を期待するのみだ。

(鹿砦社特別取材班)

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