最新刊『NO NUKES voice』15号  〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

2011年3月11日から7年目を迎えた。

まず確認しておこう。あの日から7年経ったきょうも、政府は「原子力緊急事態宣言」を取り下げてはいないことを。2011年以降、急激に「これから国民の死亡原因の2分の1は『ガン』になる」との厚労省からの通告が席巻するようになったことを(「ガンによる死亡原因が2人に1人」のレポートは10年ほど前に発表されていた)。技術面はともかく、採算性や、新幹線、航空機とのバッティングにより国も、JRも「営業運転」など本気では考えていなかった「リニアモーターカー」の建設が、なぜだか浜岡原発停止後、急に決定したことを。

そして、阪神大震災のあと、復興にとっては邪魔者でしかなく、当初より経営破綻が必定であった「神戸空港」が神戸市により建設され、予想通り経営破綻したのと相似形、否もっと悪辣に2013年9月に2020年「東京オリンピック」開催が決定されたことを。

その五輪招致演説で安倍は「放射能は敷地内で完全にブロックされており、過去も現在も未来も健康被害は生じません」と世界に向けて言い放ったことを。その安倍が総理の座に居座り続けることを、いまだわれわれが許していることを。

あの日の直後に、あたかも「行程表」があったかのごとく、すぐさま山下俊一がわざわざ長崎から福島県に入り、「100ミリシーベルトでも安全。子どもはどんどん外で遊ばせてください。笑っている人のところに放射能は来ません」と福島県内で散々吹聴して回った、挙げ句福島県立医大の副学長に就任したことを。

3月23日には東京の金町浄水場で1リットルあたり200ベクレルを超える放射性ヨウ素が検出され「乳幼児への摂取制限」が通達されたことを。「原発がないと停電するぞ」と脅迫するために、必要もない「計画停電」が大々的に宣伝され大混乱に陥ったことを。

想起されるべき、報道されるべきはそういった事実ではないのか。復興にまつわる明るい話題もいいだろう。不幸を悲しむ被災者の心情を追うのもよかろう。それを「やめろ」とはいわない。でも現実もしっかり認識して、伝えてもらわねば困る。

そしてわたしたちは「弱虫」だから、ともすると惨憺たる情景からは目を背ける傾向がある。この国の新聞やテレビには「死体(遺体)」が映されない。「死体」(遺体)は「けがらわしい」ものだろうか。誰だって最後は「死体」(遺体)になるじゃないか。生命が終焉した亡骸にだって、それなりの尊厳はないのか。「死体」(遺体)は話さないし、動かないけれども、そのありさまは、魂が宿っていた最後の瞬間から、魂が消失した理由を伝えはしないか。

◆「あらかぶさんはなぜ白血病になったのか」
 福島事故後、被ばくによる「労災」認定を受けた人は4名しかいない

2013年2月、福島第一原発4号機でベストなしでカバーリング作業をするあらかぶさん(写真提供=あらかぶさん)

 

同上(写真提供=あらかぶさん)

 

フランスの反核会議であらかぶさん支援が決議された。同会議で支援決議があがるのは珍しいと同行したなすびさんらも驚いた。『福島原発作業員の記』を著した池田実さんも参加した(写真提供=なすびさん)

昨日発売された『NO NUKES voice』第15号で、尾崎美代子さんが「あらかぶさんはなぜ白血病になったのか」の詳細なレポートを寄せてくださっている。「あらかぶさん」とは原発や原発事故現場での労働に従事していた方のニックネームだ。驚くべき事実が次々に紹介される。

表題の通り「あらかぶさん」は白血病に罹ってしまい、労災認定も受けた。厳しい治療を乗り越えて現在は裁判を闘っている。詳細は『NO NUKES voice』の尾崎さんの報告をお読みいただきたいが、ひとつだけ際立った事実を上げておく。原発事故後被ばくによる「労災」認定を受けた人は4名(そのうち2名は東電社員)しかいない事実だ。

誰も言わないから言っておこう。ガンで亡くなった福島第一原発の吉田昌郎元所長の死因すら「放射能との因果関係は分からない(もしくは「ない」)」、「ストレスが原因だったのではないか」という馬鹿医者もいる。公表されている吉田氏の被ばく総量は70ミリシーベルトとなっているが、この数値は極めて疑わしい。どちらにせよ、事故前から事故後長時間現場にとどまっての被ばくがガンを誘発し、吉田氏は亡くなったとみるのが妥当ではないか。

そうでないと主張するひとには、病院のレントゲン室がどうして「放射線管理区域」に指定され、「妊娠の可能性のある方は申し出てください」と注意書きがあるのかを、説明していただきたい。一度きりの外部被ばくでも「胎児には悪影響がある」から前記の注意書きがあるんじゃないのか。違うのか?

◆これは実験ではない、現実だ

「あらかぶさん」が白血病になり、労災認定されたのは氷山の一角で、猛烈な数のひとびとがすでに健康被害にあっているとわたしは感じる。『NO NUKES voice』に連載を続けている納谷正基さんは、福島第一原発事故後、生活には注意をはらい、基本的に海産物(産地を問わず)は口にしない生活を送っておられた。最愛の配偶者を被ばくで失ったご経験を持つ納谷さんにとって「放射能」・「原発」は長年絶対に度外視できない問題だった。その納谷さんが体調を崩しながら、それを告白し今号も寄稿をいただいた。そのなかに「近頃やたらと頻繁に報じられる有名芸能人やタレントの死亡・入院報道の多さ」という表現がある。納谷さんは同じ原稿の中で、政府発表では年間人口減は40万人発表されているが、火葬場や葬儀場の調査を積み上げたひとびとの調査によると、死亡者は昨年、一昨年とも200万人は下らない(この数値が正しければ人口減は100万人/年となる)との民間の調査もあると指摘している。

「数」に過剰にこだわるのではない。「事実」をもっと大事にしよう、直視しようとわたしは思う。そして思弁しようと。「これほどの被害が出ている」と話すと「疫学的にはどうなんだ?」と質問してくる科学経験者が少なくない。私は言い返す「これは実験ではない。現実だ。大切なのは『疫学的証明』よりも、『予防原則』じゃないのか? 数十年後疫学的に優位性が証明されたときに、死んだ命は科学的証明の証拠として扱われるだけじゃないのか。そんな科学は意味ないだろう」と。

『NO NUKES voice』は被ばく問題を今後も絶えることなく追求したい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

最新刊『NO NUKES voice』15号 総力特集〈3・11〉から7年  私たちはどう生きるか

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『NO NUKES voice』15号目次
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総力特集〈3・11〉から7年
私たちはどう生きるか

[グラビア]伊方の怒りはやがて勝つ(写真・文=大宮浩平)

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
3・11から七年 放射能はいま……

[インタビュー]小出裕章さん一問一答
「原発を止めさせる」ならば、小泉さんとも共闘する

[講演]吉岡斉さん(前原子力市民委員会座長、九州大学教授)
《追悼掲載》原発ゼロ社会のための地域脱原発

[講演]米山隆一さん(新潟県知事)
原子力政策と地域の未来を問う

[講演]木幡ますみさん(福島県・大熊町議)
原発は人々の活力を奪う

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
あらかぶさんはなぜ白血病になったのか

[インタビュー]山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)
国民の声がどれだけ大事か

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
「人間の尊厳」としての脱原発

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
悪夢の時代を直視して

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈12〉
七年で完全復活した電力会社PR

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
福島事故・忘れてはいけない五つの問題

[報告]大宮浩平さん(写真家) 
《伊方撮影後記》ここには怒りがある

[報告]川村里子さん(大学生)
斉間淳子さんたちに聞く「伊方原発うごかすな」半世紀の歩み

[インタビュー]外京ゆりさん(グリーン市民ネットワーク高知)
「いかんもんは、いかん!」土佐・高知の闘い

[報告]浅野健一さん(ジャーナリスト)
「ふるさとは原発を許さない」伊方再・再稼働阻止高松集会

[報告]三上治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
持久戦とは言うけれど 石牟礼道子さん追悼

[報告]納谷正基さん(高校生進路情報番組『ラジオ・キャンパス』パーソナリティー)
反原発に向けた思いを次世代に継いでいきたい(14)
あなたにはこの国に浮かび上がる地獄絵が、見えますか?

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『Hanacuso』2月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
大衆行動―国民運動が「原発やめる」の決め手だ
《東京》 柳田 真さん/《泊》 瀬尾英幸さん/《福島》 佐々木慶子さん
《東海》 大石光伸さん/《東電》 渡辺秀之さん/《規制委》 木村雅英さん
《再稼働に抗する》 青山晴江さん/《若狭》 木原壯林さん
《伊方》 秦 左子さん/《九州電力》 青柳行信さん/《自治体議員》 けしば誠一さん

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

本日10日発売『NO NUKES voice』15号 〈3・11〉から7年  私たちはどう生きるか

3・11から7年を明日に控えたきょう、『NO NUKES voice』15号が発売される。能書きは並べずに本号の内容を紹介しよう。特集は〈3・11から7年 私たちはどう生きるか〉だ。

冒頭にご登場いただくのは小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)の講演を収録した〈3・11から7年、放射能はいま…〉だ。この講演の様子はすでにyoutubeでも見ることができるが、この日の小出さんは上品な言葉遣いの中に、いつもにも増して強い意志が感じられる講演だった。誌面からもその“熱”が伝わるだろう。

講演後に本誌編集長のインタビューに応じてくださった〈「原発を止めさせる」ならば、小泉さんとも共闘する〉は小出さんらしいお考えと覚悟が再度ご確認頂けることだろう。「小泉さんとも共闘する」と宣言した小出さんに小泉氏はどう応じたか?

小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)3・11から7年、放射能はいま…

次いで、1月14日に急逝された吉岡斉さん(前原子力市民委員会座長・九州大学教授)を追悼して2017年7月15日、新潟で行われたシンポジウムでの吉岡さんの基調講演を掲載した。吉岡さんには本誌に度々ご登場いただき、ご意見を伺ってきたが、あまりにも急なご逝去にご冥福をお祈りするばかりだ。本誌での吉岡さん最後の生の声は〈原発ゼロ社会のための地域脱原発〉だ。

在りし日の吉岡斉さん(2016年3月、九州大学の研究室にて)

米山隆一さん(新潟県知事)原子力政策と地域の未来を問う

新潟といえば、泉田裕彦元知事の辞任を受け、「原発再稼働慎重派」の後継候補として、与党候補を破り新潟県知事に当選し、活躍中の米山隆一さんが1月24日に行った講演を紹介する〈原子力政策と地域の未来を問う〉も必読だ。鹿児島で当選した「エセ脱原発派」三反園訓知事のように、当選後「原発容認、あるいは推進」に変身することはないだだろうか? 多くの人が米山氏の態度に注目をしているが、その回答がこの講演の中にはある。米山氏の覚悟やいかに?

福島現地からは大熊町議会議員の木幡ますみさんが登場。1月26日伊方原発の立地する八幡浜市で行われた講演が再現される。題して〈原発は人々の活力を奪う〉。全国を駆け回り被災地の実情を訴え続ける木幡さんは、事故から7年目を迎える福島の実情をどう語ったのだろう。

木幡ますみさん(福島県・大熊町議)原発は人々の活力を奪う

あらかぶさんはなぜ白血病になったのか

原発に反対する理由は様々だが、根底には「被曝は動物の命にとって極めて危険」であることが原則的な理由である。運動にはもちろんバラィエティーがあっていいが、被曝問題を語れない反(脱)原発は、まだ原則への理解が足りないと言わざるを得ない。

福島の事故地元に住む皆さんの被曝による健康問題同様、今後長らく1日約7000名が従事する福島第一原発の収束作業に関わる方々の「被曝問題」は大きな問題となろう。その問題を指摘するのが尾崎美千代さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)による報告〈あらかぶさんはなぜ白血病になったのか?〉だ。この衝撃レポートについては明日のデジ鹿で別途詳しく紹介したい。

沖縄の米軍基地反対運動のリーダーにして、不当逮捕ののち、長期拘留を強いられた山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)の肉声もお届けする。本誌が前回、名護でインタビューさせて頂いた直後に不当逮捕された山城さんの訴え〈国民の声がどれだけ大事か〉。1月20日伊方原発反対集会に参加した山城さんのスピーチとインタビューを一挙公開する。

山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)国民の声がどれだけ大事か

伊方で50年間、反原発を訴え続けている斉間淳子さん

外京ゆりさん(グリーン市民ネットワーク高知)「いかんもんは、いかん!」土佐・高知の闘い

今号で取材班は原発問題をより広い視点で捉えようと思案しながらある方に執筆の依頼をしたところ、予想外の快諾を頂けた。1974年3月に発生した「甲山事件」の冤罪被害者山田悦子さんだ。山田さんは冤罪被害にあったのち、みずから法哲学を学び、極めて高いレベルで司法の問題や、社会現象を読み解き、語ることのできる稀有な方だ。鹿砦社が主催した西宮ゼミにもゲストとしてご登場頂いた縁もあり、今回「日本国憲法と原発」をテーマに寄稿をお願いしたところ、重厚な論考を執筆頂けた。〈「人間の尊厳」としての脱原発〉はこれまで本誌でご紹介したあまたの論考と、少し趣を異にする。法哲学や人権思想の角度から原発問題を俯瞰したとき、浮かび上がる問題はどのようなものなのか。山田さんのご寄稿は極めて深い含蓄に富む。

12回目を迎える本間龍さん〈原発プロパガンダとはなにか〉。今回のテーマは〈7年で完全に復活した電力会社PR〉だ。文字通り電事連を中心に「あの日などなかったかのように」繰り広げられる電力会社広告の濁流復活。その実態と問題を本間さんが鋭く突く。

たんぽぽ舎副代表の山崎久隆さん〈福島事故・忘れてはいけない5つの問題〉で原則的な確認すべき問題を再度明らかに提示されている。大宮浩平さん(写真家)は1月20日の伊方での集会に参加・取材した手記を綴っている。若い写真家の大宮さんは編集長などから「もっと対象に寄れ!人を定めて表情を撮れ!」と厳しい指導を受けていたが、本号では見事な取材を貫徹してくれた。

大学生の川村里子さんが伊方原発反対の中心人物、斎間淳子さん、近藤亨子さん、秦左子さんにインタビューをした〈斎間淳子さんたちに聞く「伊方原発うごかすな」半世紀の歩み〉と、外京ゆりさん(「グリーン市民ネットワーク高知」世話人)にお話を伺った〈「いかんもんは、いかん!」土佐・高知の闘い〉は長年現地で闘ってきた方々に大学生がフレッシュな質問を投げかけるリアリティが伝わり、川村さんご自身も今回の取材で多くを学ばれたようだ。若い筆者の登場は嬉しい。

鬼才・板坂剛さんが糺す月刊『Hanacuso』とは?

伊方原発について長年反対の立場から取材を続けてきた浅野健一さん(ジャーナリスト)の〈「ふるさとは原発を許さない」――伊方再・再稼働阻止高松集会〉、につづき三上治さん(「経産省前テント広場」スタッフ)の〈持久戦とはいうけれど 石牟礼道子さん追悼〉が続く。

常連執筆陣の中で、納谷正基さん〈反原発に向けた想いを 次世代に継いでいきたい〉14回目〈あなたにはこの国に浮かび上がている地獄図絵が、見えますか?〉に多くの読者諸氏は息をのむだろうことを確信する。これまでもダイレクトな表現で放射能の危険性、原発の理不尽を高校生の前で、またラジオで語ってきた納谷さん。今号の文章はご自身に起きた重大な健康上問題を隠さず、いま目の前にある「地獄図絵」をあなたは見ているか? 見えているか? 見えないのか? と問いただす。「命の叫び」と言っても過言ではない文章から読者諸氏は何を感じるだろうか。

板坂剛さん〈月刊雑誌『Hanacuso』2月号を糺す!〉は硬派(?)な論考の多い本誌の中で、遊び心と痛烈な毒を盛って笑わせてくれる「清涼剤」と言ったら失礼だろうか。今号の板坂流「遊び」はこれまでで最高の出来栄えではないだろうか。請うご期待!

不肖拙著の〈悪夢の時代を直視して〉では歴史的時間軸と世界を俯瞰するとき、この国のシステムが持つのか、「将来」などあるのかを問いかけた。

その他に再稼働阻止全国ネットワークによる全国からの運動報告〈大衆行動―国民運動が「原発やめる」の決め手だ〉も北海道から九州まで盛りだくさんで、いま、現地はどう動いているか?の克明なレポートが届けられている。

15号目となった『NO NUKES voice』は皆様のご協力で、確実に成長できていることを実感する。この雑誌がさらに成長し、どの書店でも平積みとなり、そして発展的「廃刊」できる日がいつか必ずくることを信じて、編集長以下今号も全力で編纂した。お読みいただき、忌憚のないご意見・ご感想を頂ければ幸いである。(田所敏夫)

本日10日発売『NO NUKES voice』15号 〈3・11〉から7年  私たちはどう生きるか

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『NO NUKES voice』15号目次
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総力特集〈3・11〉から7年
私たちはどう生きるか

[グラビア]伊方の怒りはやがて勝つ(写真・文=大宮浩平)

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
3・11から七年 放射能はいま……

[インタビュー]小出裕章さん一問一答
「原発を止めさせる」ならば、小泉さんとも共闘する

[講演]吉岡斉さん(前原子力市民委員会座長、九州大学教授)
《追悼掲載》原発ゼロ社会のための地域脱原発

[講演]米山隆一さん(新潟県知事)
原子力政策と地域の未来を問う

[講演]木幡ますみさん(福島県・大熊町議)
原発は人々の活力を奪う

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
あらかぶさんはなぜ白血病になったのか

[インタビュー]山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)
国民の声がどれだけ大事か

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
「人間の尊厳」としての脱原発

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
悪夢の時代を直視して

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈12〉
七年で完全復活した電力会社PR

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
福島事故・忘れてはいけない五つの問題

[報告]大宮浩平さん(写真家) 
《伊方撮影後記》ここには怒りがある

[報告]川村里子さん(大学生)
斉間淳子さんたちに聞く「伊方原発うごかすな」半世紀の歩み

[インタビュー]外京ゆりさん(グリーン市民ネットワーク高知)
「いかんもんは、いかん!」土佐・高知の闘い

[報告]浅野健一さん(ジャーナリスト)
「ふるさとは原発を許さない」伊方再・再稼働阻止高松集会

[報告]三上治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
持久戦とは言うけれど 石牟礼道子さん追悼

[報告]納谷正基さん(高校生進路情報番組『ラジオ・キャンパス』パーソナリティー)
反原発に向けた思いを次世代に継いでいきたい(14)
あなたにはこの国に浮かび上がる地獄絵が、見えますか?

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『Hanacuso』2月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
大衆行動―国民運動が「原発やめる」の決め手だ
《東京》 柳田 真さん/《泊》 瀬尾英幸さん/《福島》 佐々木慶子さん
《東海》 大石光伸さん/《東電》 渡辺秀之さん/《規制委》 木村雅英さん
《再稼働に抗する》 青山晴江さん/《若狭》 木原壯林さん
《伊方》 秦 左子さん/《九州電力》 青柳行信さん/《自治体議員》 けしば誠一さん

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

 

日販のネットルート送品(web-Bookセンター)

わたしが雑誌を編集している出版社に、突如として大量の注文票が入ってきた。いずれも大手取次会社である日販(日本出版販売)のNET集品(北区王子事業所)だった。注文の数が半端ではないのだ。注文は過去の在庫品数十点におよぶばかりか、それぞれが複数の冊数なのである。注文は本体価格で総計、じつに30万円以上におよんだ。月に10万円もいけばいい既刊の注文が3倍にもおよんだのは、わずか3日ほどの出来事である。担当者は在庫を倉庫から取り寄せるのに苦労したという。

これが「薄利多売」(社長談)の鹿砦社なら不思議ではないかもしれないが、その版元の本は、本体価格が3000円以上の人文系の専門書ばかりなのだ。売れない本ばかり出しているように見えるが、大学の研究者たちの講義での教科書採用を見込んだ殿様商売的な出版事業を行なっている版元である。春の教科書採用品いがいに、こんなに注文が来るのは珍しいことだ。この現象は、いったい何なのだろうか?

ここで一般の読者のために、出版社と取次の関係をあらためて解説しておこう。周知のとおり、出版社が新刊を出すと、本は取次会社をつうじて書店(本屋さん)に配本される。これをパターン配本という。いっぽう本の注文は一般の読者が書店で依頼し、書店から出版社に注文書が出される。電話やFAXで注文をすることも少なくない。これはネット販売でも同じで、ネット販売書店(アマゾンや楽天ブックス、e-honなど)から出版社に、日販などの取次会社を通して注文票が送られ、そのルートでネットへの出荷が行なわれてきた。

ちなみに、出版社は取次に正味(本体価格の)67~73%ほどで本を納品し、書店の取り分は15%前後である。これが雑誌ならば出版社の正味が63~65%で、書店の利益がすこしは多くなる。いずれにしても、頑張って本や雑誌を10万円分売っても、書店は15000円ほどしか儲からない仕組みなのだ。本が売れなくなった昨今、個人経営の書店が廃業するのは仕方がないことなのかもしれない。出版不況は出版社も取次会社も同様である。

書店で本が売れなくなった理由は、巷間に言われている活字離れだけではない。かつて5万店といわれた書店が2万店を切るようになった現在、ネット販売と電子書籍が本の売り上げの2~3割を占めるようになったといわれている。パソコンで注文すれば本屋に行く時間も節約できるし、最大手のアマゾンは中古市場のオークションでもあるから、何よりも本を安く買える。かく言うわたしも、手っ取り早く目的の本を手に入れるために、書店に足を向けるよりもアマゾンを使ってきた。書店の品揃えの悪さも一因なのだが、ネットで注文するほうがラクなのである。
じつはそのアマゾンが、上記した日販と揉めていたのだ。冒頭に紹介した日販からの大量注文の謎も、そこにあった。

 

 

アマゾン「e託」販売サービスの概要

最初にアマゾンから出版社に「e託」なる委託販売の案内があったのは、昨年(2017年)5月のことだった。それまでアマゾンは日販から本を仕入れて、おそらく販売マージンは15%前後で販売してきたはずだ。そのほかにも、上記したとおりアマゾンは中古市場でもあるので、古本屋からの出品から利益を得ていただろう。

すこし話はそれるが、このネットの中古市場が出版社にとっては難儀な問題でもあった。かりに新刊がアマゾンの在庫に10冊入ったとして、評判の本なら一両日で売切れてしまう。そこで、この本は売れるんだなと見込んだ古本屋がすぐに買い入れた新刊を、高値でアマゾンに出品してしまうのだ。その結果、定価のある新刊にもかかわらず、アマゾン市場では古本に高額のプレミアム価格が付いた状態になってしまうのである。したがって、新刊はアマゾンでは売れなくなる。そんな事情を汲んでかどうか、アマゾンは出版社に直の委託制度(e託)を持ちかけてきたのだろうと思われる。新刊を売りたければ、直の取り引きをしましょうよと。

昨年の6月末をもって、アマゾンは日販からの仕入れを終了して、出版各社と直の「e託」に移行するはずだった。しかし、少なくともわたしが知るところ「e託」の契約をしないまま、アマゾンは日販から仕入れていたはずだ。なぜならば、わたしが関わっている出版社は「e託」の契約をしていないのに、新刊がアマゾンに納品されていたのだから――。

それが急転直下、冒頭にのべた日販から大量注文があった数日後に、アマゾンから「e託の契約を是非」という電話があったのだ。ようするに、日販からはもう仕入れないのでe託で契約(年会費9000円)をして欲しいと。

したがって、日販が既刊を大量に注文してきたのも、アマゾンの動きに対応したものに違いない。日販はネット販売では「Honya Club」という販売サイトを持っているので、大量注文は自社販売でアマゾンに対抗するものと思われる。
読者にとってはアマゾンであれ日販であれ、安く本が手に入るのであればそれでいいだろう。いったん加入してしまえば、支払いもカードで決裁できるし、ネット販売は中古市場でもあるので価格が安い。

だがそのいっぽうで、アマゾンが持っている経済合理主義、あるいは新自由主義的な価格設定が、出版文化そのものをいとも簡単に突き崩してしまう危険性にも留意しなければならないだろう。売れるか売れないかだけのビジネスの基準を持ち込まれてしまえば、出版文化は成り立たない。たとえ今は売れなくても、本が読者を待つことを許容しなければ、出版文化はなくなってしまうのだから。アマゾンが出版文化を擁護する会社であり、なおかつ出版社との信頼関係を構築できるかどうか。わたしの知る限り、アマゾンの「e託」に躊躇している版元が多いのは、そんな理由であろう。

 

アマゾン「e託」販売サービスの年会費、仕入掛率

もうひとつの問題は、出版社の足元をみるかのような取引条件である。今回、アマゾンが出版社に提示した取引内容は、上記の年間9000円はともかくとして、本の正味が60%なのである。人文系の出版社には、後発でも68%のところもある。現状が62%(67%の正味に歩戻し5%=配本しただけでマージンが発生する。で62%)でも、これは受け容れやすいかにみえる。だが、どこまで下げられるか不安をぬぐえない。

たとえば数年前の記事をたどってみると、アマゾンは出版社との取り引きに大手取次よりも高率の正味を提示していた。甘言のようにも思える。それが一転して60%という低い正味になっているのだ。たしかに大手取次(いまやトーハン・日販しかない)も、ことあるごとに出版社の取引条件を改悪してきた。差別正味(大出版社を優遇する)にも問題はあった。お役所的な体質には、小出版社の経営者は辟易してきたはずだ。

しかしそれでも出版社ごとの事情に応じて、取次会社が支払い条件の便宜を払っていたことを、わたしたちは知っている。60%という正味を提示したアマゾンに、個別の条件を呑みこむ裁量の余地があるのかどうか。出版各社は見守っているのが現状ではないだろうか。差別正味や支払い保留で辛酸を舐めてきた出版社にとって、アマゾンに対する大手取次の対応も、ここは見極めたい気分なのではないだろうか。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
著述業・雑誌編集者。著書に『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。

最新『紙の爆弾』4月号!自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

10日(土)発売『NO NUKES voice』15号 総力特集〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

私は1月3日付けの当欄で2018年の注目冤罪裁判の1つとして、「千葉18歳少女生き埋め事件」を紹介した。この事件では、3人の男女が共謀のうえ、被害者の18歳少女を生き埋めにして殺害したとされ、いずれも無期懲役判決を受けている。しかし3人のうち、実行犯の男以外の2人は冤罪だというのが私の見解だ。

しかし、私が冤罪だとみている2人のうち、主犯格とされる井出裕輝被告(23)は3月1日、東京高裁で一審の無期懲役判決を支持する控訴棄却の判決を受けた。おそらく最高裁に上告し、もう一度無罪を主張するとみられるが、厳しい状況に追い込まれた格好だ。

◆実行犯も他2人の無罪主張に沿う証言をしていたが・・・

18歳の少女が成田空港近くの畑で生き埋めにされ、殺害されるという衝撃的な事件が起きたのは2015年4月のことだった。殺人罪に問われたのは、井出被告、被害少女の元同級生で事件当時17歳のA子被告(20)、すでに無期懲役が確定した中野翔太受刑者(22)の3人だ。

3人の裁判の認定によれば、事件のきっかけは被害少女とA子被告の些細なトラブルだったとされる。風俗店従業員だった被害少女は、性風俗店で働くための「身分証」として友人たちから卒業アルバムを借り、返さないことが続いていたのだが、そのことにA子被告が激怒したという。

そしてA子から相談をうけた井出被告が「生き埋め殺人」を計画。井出被告、A子被告、井出被告の「パシリ」だった中野受刑者の3人が共謀し、被害少女を車で現場の畑に連れて行き、生き埋めにした――以上が、これまで3人の裁判で認定されている事件の筋書きだ。

被害少女が生き埋めにされた畑

しかし、この事件については、当初から動機の疑問が指摘されていた。卒業アルバムの貸し借りをめぐるトラブル程度のことで生き埋めにして殺すというのは、いくらなんでも残酷すぎると思われためだ。

そして別々に行われた3人の裁判では、「首謀者」とされた井出被告とA子被告の2人が車で被害少女を監禁したことなどは認めつつ、「生き埋め」については無罪を主張した。井出被告の主張によると、事件の真相はおおよそ次のようなものだったという。

「被害少女のことは、畑に掘った穴の中に入れ、脅かすだけのつもりでした。しかし、被害少女を穴の中に入れた状態で中野に1人で見張らせ、別の場所に車を停めに行ったら、その間に中野が1人で被害少女を生き埋めにしてしまったんです」

この井出被告の主張をにわかに信じがたい人は多いだろう。しかし、実は他ならぬ実行犯の中野受刑者も裁判では、次のような証言をしているのだ。

「1人で見張りをしている時、掘った穴に入れていた被害者が泣き出したので、焦って砂をかけてしまったんです」

人を生き埋めにして殺害した「凶悪犯」にしては、少々間の抜けた証言だが、実は中野受刑者は軽度の知的障害者だった。私は中野受刑者本人にも面会を重ね、事実関係を質したが、中野受刑者も「井出から『殺せ』とか『埋めろ』という指示はなかったです。でも、『人を埋める場所ない?』と言っていたんで、アウトだと思うんですよ」と曖昧なことを言っていた。それもあり、中野受刑者が1人で暴走し、被害少女を生き埋めにした考えることは何ら不自然ではないと私は思うのだ。

◆「どういう経緯とはいえ、命を奪った責任はあります」

もっとも、井出被告は事件の際、中野受刑者が被害者を生き埋めにしたことを責めたりせず、埋められたばかりの被害者を助けようともしていないなど、疑われても仕方のない面はあった。そもそも、井出被告が中野被告に対し、畑に穴を掘るように指示したのは事実で、犯行のきっかけをつくったのは間違いない。それゆえに完全に潔白の冤罪被害者に比べると、同情しづらい面があることは否めないのだが――。

私が昨年、千葉刑務所で井出被告と面会した際には、井出被告本人もそのことは自覚しているようだった。

「どういう経緯だったとはいえ、私には、被害者の方の命を奪った責任があります。被害者の方の命はもちろん、被害者の家族や親族の方々の命も奪ってしまったとも思っています」

私とアクリル板越しに向かい合った井出被告は殊勝な面持ちでそう言っていた。さらに意外だったのは、井出被告が中野受刑者に対しても「嘘ばかり言っていた」と言いつつ、責任を感じていたことだ。

「私が誘わなければ、中野はああいうことをせずに済んだわけですからね。中野が私のことを悪く言うのは仕方がないと思っています。共犯少女(A子被告のこと)についても、悪いことをしたという思いはありますね」

いくら謝ろうとも、被害少女の遺族は決して井出被告らを許さないだろう。仮に生き埋めについては、井出被告らにとって予定外で、想定外のことだったとしてもだ。しかし、それでも、この事件が冤罪なのは確かだと私はここで言っておきたい。心情的なものはどうあれ、事実に忠実でありたいと思うからだ。

なお、A子被告については、まだ控訴審が係属中だ。今後もこの事件については、経過や結果を適時報告したい。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

『紙の爆弾』4月号!自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

このかんたびたびレポートしてきましたように、朝日新聞社の頑なな取材拒否と非礼な対応は、心あるメディア関係者に波紋を広げています。すでにこの通信でも元読売新聞記者の山口正紀さんや、新聞社の数々の問題について長年取材され発言されてきている黒藪哲哉さんらが喝破されている通りです。朝日新聞東京本社広報部の河野修一部長代理は、私たちの取材要請を「迷惑」として、私たちが当該の記者らに、あたかも異常につきまとっているかのように発言されています。しかし、事実は異なりますので、そういう物言いこそ「迷惑」なことです。

このかんの経緯を簡単に説明してみましょう───。

〈1〉 昨年末、出来たばかりの『カウンターと暴力の病理』を朝日関係者4名に献本送付しました(同封の挨拶状に「献本」と記していました)。

〈2〉 年末・年始を挟んで1月25日付けで質問書(資料1「ご質問」)を郵送(回答期限2月5日)。4人ともほとんど同じ文面なので、大貫記者宛のものを掲載します。

[資料1-1]1月25日発送分、大貫聡子記者への「ご質問」

[資料1-2]1月25日発送分、大貫聡子記者への「ご質問」

[資料1-3]1月25日発送分、大貫聡子記者への「ご質問」

 

〈3〉 期限までに回答がないので、2月6日付けで催告書(資料2「ご連絡と取材申し込み」)をファックス。これも大貫記者へ送ったものを掲載します。

[資料2]2月6日発送分、大貫聡子記者への再度の「ご連絡と取材申し込み」

 
 
〈4〉 これも回答がないので、同社大阪社会部の大貫聡子記者、采澤嘉高記者、静岡総局の阿久沢悦子記者の3氏の携帯に電話取材。取材班が3記者に電話するのは、これが初めてのことです。「迷惑」していると広報部河野部長代理に指摘されましたが、鹿砦社や取材班は、この件に関して当該記者に一度も直接取材したことすらないのです。これで何が「迷惑」なのか到底理解できませんし、つきまといでも何でもありません。むしろ同社の記者には、時に「迷惑」でつきまとわれたりプライバシーを侵害されたりした人もいます。

手前味噌で僭越ですが、私は13年近く前の2005年7月、神戸地検特別刑事部にリークされた同社社会部・平賀拓哉記者が、あたかも私らの主張を〝理解〟しているかのように接してきて、人を信じやすい私は言葉巧みに騙され、神戸地検と通じていることも知らず、求められた書籍や資料などを気前よくほいほいと渡し、これが大阪本社版一面トップのスクープとなり私は逮捕されました。とんだ「迷惑」を蒙ったのは私のほうだ!「迷惑」だ「迷惑」だというのなら、私の前に出てきてはっきり言え! 日本を代表する大新聞社の記者ならできないことはないでしょう。

今回の件で、私たちは私たちなりに順序を踏まえ、本を送り、読んでいただいたであろう頃を見計らって質問書を送り、取材要請をしたつもりです、誰が見ても「迷惑」にはあたらないでしょうし、これが「迷惑」であれば、新聞社(特に社会部)の通常取材はほとんどが「迷惑」ではないでしょうか。

このような経緯で真っ当な対応をしていただけなかったので、やむなく、私は朝日新聞社の登記簿を取り渡辺雅隆社長の自宅に別掲の通知書(資料3「ご通知」)を、関係資料(『カウンターと暴力の病理』、大貫記者への質問書、催告書のコピー、音声データCD)を付けて2月23日に郵送しました。

[資料3-1]2月23日発送分、渡辺雅隆社長への「ご通知」

[資料3-2]2月23日発送分、渡辺雅隆社長への「ご通知」

[資料3-3]2月23日発送分、渡辺雅隆社長への「ご通知」

ところが、渡辺社長は転居(京田辺市→芦屋市)されていたようで(転居したらすぐに登記をし直さないといけないんじゃないんですか?)、転送されて2月27日に受け取られています。

回答期限を「お受け取り後1週間以内」(2月27日受領なので回答期限は3月6日になります)としましたが、未だ回答はありません。ことは激しい暴力による集団リンチ事件ですよ、民主社会にあってはならないことです。小出版社だからといって無視しないでください。

ふだん「人権」だ「人権」だと言うのなら、将来のある若い大学院生(博士課程)が集団でリンチされ瀕死の重傷を負った事件について、人間的な対応をしていただきたいものです。特に朝日は殊更「人権」ということを大事にしている新聞社だと信じています。

勘違いされないように明記しますが、私たちは、右翼のように朝日新聞の存在や言論活動の全てを否定しているわけでも、ヒステリックに反発しているのでもありません。前述しましたように、13年前に、朝日平賀記者にあれだけのことをやられても、それでもまだ私は、この国で数少ない「クオリティーペーパー」と評される朝日新聞には、相応の言論活動を期待しています。少なくとも、他紙よりは相対的にマシだと思っていましたが、だからこそ、今回の対応には失望したわけです。こうした点は、あらためて明確にしておきたいと思います。

渡辺社長が、お送りした『カウンターと暴力の病理』をめくったらすぐにリンチ直後の被害者M君の写真が目に止まるはずで、これを見て、どう感じたか、ぜひ一人の人間として感想なりご意見を聴かせていただきたく思います。新聞社としての事情や都合は関係ありません、渡辺社長、あるいは記者の、一人の人間としての対応こそを問うているのです。渡辺社長、今こそ、この由々しき問題について、社長として責任ある対応をされ、私たちの取材要請に応えていただきたいと切に願っています。

ところで、朝日東京本社広報部・河野部長代理は、「訴訟」を示唆する発言もされています。仮にどちらが訴えるにしろ訴訟になった際、私たちが悩まされることに本人取材があります。しかし今回、朝日の3記者はみずから本人取材を拒否しました。ということは、私たちの主張を認め、つまり記事の内容や記者の言動などについても説明責任を放棄したことになります。訴訟になった場合、それだけでも私たちの勝訴の可能性は低くないでしょう。

私や鹿砦社はこれまで数々の訴訟を経験してき、一時は「訴訟王」と揶揄されたこともあり、また判例になっているものもありますが、私も長い出版人生の、いわば〝花道〟で朝日を相手取り提訴するのも意義があり、大新聞社の社会的責任を問うひとつの方策かもしれません。相手にとって不足はありません。私は冗談で言っているのではありません(私の性格上、私がこんなことで冗談を言わない男だということは、私を知っている人ならおわかりになるでしょう)。一例を挙げれば、「鹿砦社はクソ」発言を連発し、くだんのリンチ事件の現場にもいて加害者とされる李信恵被告に対し名誉毀損等で提訴しましたが、これもおそらく李被告本人は私や鹿砦社を見くびっていたと思われます。私は許せないことは許さない男です。

何度も申し述べますが、ことは人ひとりの〈人権〉を、暴力による肉体的制裁で毀損した集団リンチ事件です。それも極右団体関係者に対して訴訟を起こし社会的に注目を浴び、「反差別」運動の旗手とされる人物(李信恵被告)とこの支持者ら5人による、極めて非人間的で、暴力が排除されるべき現代社会では到底許されない事件です。このことに曖昧な態度をとれば、今後こうした事件が「反差別」運動や社会運動の中で繰り返されるでしょう。この国の反差別運動や社会運動は、かつての反省(暴力を伴った内ゲバや行き過ぎた糾弾闘争など)から、暴力を排除してきたのではなかったのでしょうか? 私たちが言っていることは間違っているでしょうか?

最後に再度繰り返しますが、鹿砦社ならびに私は決して「反朝日新聞」ではないこと、そして朝日新聞には「社会の木鐸」として市民社会の要請に相応しい報道姿勢をとっていただきたいことを申し述べておきたいと思います。

『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD(2017年12月刊)

本日発売『紙の爆弾』4月号 自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

「最低の下衆野郎」佐川国税庁長官に怒り

◆麻生発言に対抗 納税者一揆第二弾!

3月3日、国税庁前で“納税者一揆”第二弾「悪代官 安倍・麻生・佐川を追放しよう!」と題した国税庁包囲行動とデモが行われ、約1300人が参加した。主催は「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」。同団体の呼びかけをチラシやフェイスブックなどで知った人々が集まった。

安倍晋三首相を熱烈に支持していた人物が運営する学校法人に対し、国有地を破格の価格で売りとばしたのが森友学園事件の本質である。ところが当時責任者だった財務省理財局長の佐川宣寿氏が、破棄したので記録はない、などと国会で虚偽答弁。その人物が徴税機関のトップである国税庁長官に出世したのだ。

これでは、納税者はたまらない。「税金払う気がしない」とあちこちから非難が巻き起こっている。そこで今回の主催と同じ「~市民の会」は2月16日に第1回の国税庁包囲行動を実施した。

これに対し麻生太郎財務大臣が難癖を付けたことも、今回の第二弾につながった。第1回国税庁包囲行動の3日後2月19日、衆議院予算委員会で立憲民主党の山崎誠衆議院議員は「多くの国民による抗議行動を財務大臣としてどう受け取ったか」と追及した。それに対する麻生大臣の答弁はこうだ。

「御党の指導で街宣車が財務省の前でやっておられたという事実は知っている」

また立憲民主党の川内博史衆議院議員は「納税者の抗議行動だ。立憲民主党は参加はしたが主導はしていない」と反論した。

そして麻生大臣は「街宣車まで持っている市民団体は珍しい。少々普通じゃないなとは思った」と発言したのである。

SNSやチラシなどを見て参加した納税者らに対し、「少々普通じゃない」とみなし、立憲民主党が指導したかのような事実でないことを平然と述べたのだ。ちなみに、デモで街宣車が戦闘を走り、道行く人々にアピールするのは普通のことである。

「ウソ、ごまかし、でたらめ ふざけた国会答弁許さない」

「公文書を改ざんする役人って、控えめに言っても〈外道〉だと思う」

◆財務省 森友文書改ざん

午後1時40分、国税庁前には続々と人が集まり、歩道に入りきれず、大通りの反対側にも人があふれた。司会者の女性がまずマイクをとった。

「私は、一般人でまさかこういうところで司会をするとは思わなかった。麻生太郎大臣は、(森友事件がらみで批判する)国民は普通の国民じゃないというのでしょうか。ふざけるな、と言いたい。普通じゃない安倍内閣は総辞職すべき」

前日の3月2日、交渉当時の財務省文書と国会議員らに開示した文書に違いがあり「文書書き換えの疑い」と朝日新聞が報道し、納税者らの怒りに火をつけた。

交渉時の文書とは、2015年から16年にかけて財務省近畿財務局の管財部門が局内の決済を受けるために作成した文書。2枚目以降に交渉経緯や取引内容などが記載されている。

「籠池夫妻の不当勾留 即ヤメロ!!!」と長期拘留批判も

ここには、当時のやりとりを時系列で書いたものや、森友学園の要請にどう対応したかなどが書かれていたのに、国会議員らへの開示文書では、かなりの部分が削除されている。

そして「特例的な内容となる」「本件の特殊性」「学園との提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」などの文言が抜けているという。以上が、記事の概要だ。

財務省は、交渉において鑑定評価、価格提示は行なっていなと主張していた。「学園との提案に応じて鑑定評価を行い」が交渉時の文書に残っているということは、国会答弁は明らかな虚偽になる。

国税庁前には約1300人が集結。場所がなく道路の両側にも集まった

◆生活にあえぐ納税者
 
短時間の包囲行動だったが、何人かがマイクをとって発言した。都内在住の50代の女性が、こう訴えた。

「離婚して障碍者の息子を育て、認知症を患い始めた母をひきとって生活しています。私のアルバイトでの生活です。私が仕事で外出している間、お金がないので母を預けることもできません。

息子が作業所に行き続けることができますように、母が無事でいますように、50代半ばになった私が健康で病気をせずに何とか働きつづけられますように、と祈るしかないのです。薄氷を踏む思いで生活している私たちのような人間がいることを知ってほしい。

頭のいいお役人にはらわたが煮えくり返ります」

貧困や家庭の事情などで十分に食事できない子供たちのための「子ども食堂」運営に携わる女性も登壇した。

ひとり親家庭の子が多く、親の病気で生活保護を受給することになり、児童養護施設に入所させられ親子離れ離れになった例について話をした。また、貧困で休みに家族で外出することもできず、本来なら体験すべきことをできない「体験の不足」も子供の成長に影を投げかけている、と言う。

生活苦にあえぐ人が増えている中で、5年前に切り下げた生活保護基準をさらに下げようという動きがある。これで貧困がさらに拡大することになるだろう。その一方で、安倍首相は時にメディア幹部とともにグルメ三昧。そしてお友達には国民の財産を超低価格で売渡し、税金も投入する。

まさに異常事態が日常になってしまった。
国税庁前での集会が終わると、参加者はデモ行進を始めた。

「安倍のお友達に税金を横流しにするな!」
「ふざけた国会答弁は許さない!」
「佐川を証人喚問せよ!」
「うそつき佐川を罷免しろ!」
「昭恵夫人を喚問だ!」

納税者の怒りの声が銀座の街にとどろいた。文書改ざんとなれば、担当大臣の辞任レベルではなく、内閣総辞職に値する事態だ。

ゲバラと共に「国民なめんな! 納税者一揆」

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

7日(水)発売『紙の爆弾』4月号!自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

10日(土)発売『NO NUKES voice』15号 総力特集〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

「抵抗することに疲労を覚える時は、休み、涙し、力を与え合い、笑う。」

「引き裂かれた裂け目に、私たちは橋を架ける。
 意見の違いを認め、対話することをあきらめない。」

そんな文章を含む、働く女性の全国センター(ACW2)の100年ビジョン・パンフレット『はたらく、女、そしていのちへ』公開をともない、2月17・18日に第12回定期大会「つぎはぎを生きる~健康で文化的な生活をあたりまえに」が開催された。

課題が現れるたびに解決する状態などがパッチワークと表現され、そこから派生して複数の労働のしかたを抱えたりさまざまな「自分」が寄せ集まったような生き方を1人の人がしているような複雑で安定・安心感のない状況などもパッチワークと呼ばれるようになった。ただし、私たちにとって、「パッチワーク」という言葉はまだ美しかった。そこで、自分たちの働き方や人生を「つぎはぎ」と名づけたようだ。

◆「つぎはぎを生きる~健康で文化的な生活をあたりまえに」

定期大会初日には、まず、栗田隆子さんによる「つぎはぎを生きる~健康で文化的な生活をあたりまえに」のテーマ説明と問題提起、さらには自作の詩の朗読から始まる。それを受けて、会員などのみなさんから、自らが置かれている仕事や生活の状況、そこにいたるまでの経緯や背景、そして求めるものや進めている活動内容などについてのリレートークが展開された。

冒頭に話し合いや撮影のルールを確認し、日頃より対話についてともに学び、真に安心・安全な場づくりに励むACW2だからこそ、赤裸々な告白もあり、それを聞いてほしいという想いも含めてシェアされる。その後、『働く、働かない、働けば』巳年(みどし)キリンさん(三一書房)『生きている! 殺すな~やまゆり園事件の起きる時代に生きる障害者たち?』小田島榮一さん・見形信子ほか共著(山吹書店)、『融合』『「呻き」「対話」「社会運動」』栗田隆子さん、『不安さんと私』ナガノハルさんなどの著作が紹介された。休憩を挟み、冒頭で触れた『はたらく、女、そしていのちへ』を用い、「100年ビジョンワークショップ」を実施。グループに分かれ、『はたらく、女、そしていのちへ』を読んで感じたことについて語り合い、発表し合う。

夜には、つぎはぎバナー作り、セミクローズドでの「セクマイの会」、介護、からだほぐし、官製ワーキングプアグループ、ちまちま手仕事の会などの分科会が催された。

◆理想といわれても、それを現実化しようと抗う日常

2日目には、伊勢真一さん演出(監督)のドキュメンタリー映画『えんとこ』を上映。本作は、脳性麻痺によって寝たきりとなった元養護学校教員の遠藤滋さんと、彼を支える若い介助者の日常が、3年間に渡って記録されている。遠藤さんが自らを「晒す」ことで若者たちも遠藤さんとまっすぐに向き合うようになる。そのような生活を遠藤さんは心から楽しみ、若者たちは学び、救われ、そしてともに社会を変え、それを次世代へとつなげていこうとする姿が描かれているのだ。

これは、ACW2がテーマとして掲げる対話や、現在の活動の苦しさを越えていくためにも100年後を想定して継いでいこうとする姿勢と一致するのではないだろうか。上映後に感想を交換し合い、このような想いを確認し合った。

最後の定期総会においても、代表・副代表・事務局長などの役員不在でのぞむ運営委員に対して疑義が打ち出される。これに関して率直で活発な意見が交換され、「規約に総会の場で議決する余地があること」「役員不在でも運営できるという根拠と自信とをもっていること」などが確認されたようだ。公式のWebサイト上にも「規約について、実態に即し、1年かけて役員構成と役員の役割と運営体制について話し合います。」と記載されている。

私自身としては権力関係が生じたり、個人がないがしろにされがちであるために基本的には組織を好まない、過去にもさまざまな組織に属してきた。ただし、対話をあきらめないことをはじめとするACW2の理想へと向かわんとするスタンスには魅力を感じるのだ。

以前、このコーナーにも「100年ビジョン」の言葉を掲載させていただいた。今回も最後に、さらに練り上げたうえでパンフレットに記された言葉を、ここに記しておく。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
はたらく、女、そしていのちへ
働く女性の全国センター(ACW2)
「100年ビジョン」

(2012年作成、2017年一部改訂)

(1)「はたらく」定義 

労働者という肩書きは女性たちにはよそよそしい。
なぜなら、女性たちは肩書き抜きに、はたらいてきたからだ。
私たちにとって「はたらく」とはなにか。
はたらくとは、キャリアを積み上げることではない。
はたらくとは、命を支えることだ。
賃金が支払われる労働だけではなく、家事・育児・介護・社会活動・趣味など、
自分を支え、人を支え、命を支えるあらゆる営みである。

(2)ACW2のありかた

誰かを蹴落とすこと、優位に立つことを求めるのではなく
従属や支配ではない、尊重をもとにした関係を作り出すことを、
私たちは目指す。
私たちは、命の側に立ち、
人びとの前に、
女性たちの前に立ちはだかる搾取・差別・偏見・欺瞞に抵抗する。
抵抗することに疲労を覚える時は、
休み、涙し、力を与え合い、笑う。

(3)女性の分断をこえる

女性はいまだに、分断されている。
独身か既婚か、パートか正社員か、病気か健康か、はたまた。
権力が私たちを引き裂く。私たちもまた、
立場の違いによって相手の声に耳をふさぎたくなることもある。
だが、引き裂かれた裂け目に、私たちは橋を架ける。
意見の違いを認め、対話することをあきらめない。
それは互いを遠ざけ合うためにではなく、すべて橋を架けるため。

(4)私たちの姿勢

いつの日か
おんなであること、はたらくことが、
搾取や差別や暴力の対象や温床となるのではなく、
与え合うこと、豊かにし合うこと、平和を生み出すものとなるために。
その日まで、私たちは休みながらも歩むことを、ここに記す。

※注)「女性」=性自認が女性である人
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)[文/写真]
1972年生まれ。フリーライター、エディター。労働・女性運動等アクティビスト。『紙の爆弾』『NO NUKES voice』『現代用語の基礎知識』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『教育と文化』ほかに寄稿・執筆。
雑誌『情況』(情況出版)1月号
「【読後感】矢吹晋『沖縄のナワを解く』を読み、戦後の矛盾の「ナワ」を解け!」

3月7日発売『紙の爆弾』4月号!自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

タネ・ヨシホvs能登龍也。能登の右ミドルキックに右ストレートを合わせるタネ・ヨシホ(左)

能登龍也vsタネ・ヨシホ。一度対戦した経験から一歩上回った攻勢のタネ・ヨシホの右ストレート

能登龍也vsタネ・ヨシホ戦の初対決は昨年10月の「KNOCK OUT」に於いての3回戦で対戦し引分けた試合は攻防で盛り上がり、決着戦が期待されたカードとなりました。
初回から能登が圧力掛け続け、タネ・ヨシホは下がり気味も的確に返していく。次第に距離を詰め、蹴りに加えたムエタイ特有の崩し技を活かしたタネ・ヨシホが判定勝利。

白神武央vsYETI達朗戦は3度目の対戦で、2015年5月にノンタイトル戦で引分け、2016年2月に白神がKO勝利でYETI達朗からNJKF王座奪取して1勝1分。YETI達朗はその白神の後を追うように上位王座のWBCムエタイ日本タイトルを懸けての対戦。

目立ったヒットは少ない両者でしたが、白神を破る執念が垣間見れたYETI達朗のパンチと蹴り。勢いつかない両者にもっと蹴り合いがあればもっと盛り上がったと思えるところ、僅差でYETI達朗が雪辱を果たしました。

積極性で優ったYETI達朗のヒザ蹴り

小川翔vsNAOKI戦は過去の国内王座を勝ち上がってきた者同士の対戦で、先行く小川翔に挑むNAOKI。

相打ち覚悟のヒジ打ちの攻防が目立った両者。第2ラウンドにはNAOKIに2度のドクターチェックが入るが、その後、小川も少々切られる。両者に幸い出血は少なく打ち合いは続き、小川は勢い強め、NAOKIの攻撃力弱まった終盤を経て小川の判定勝利。

小川翔の右ハイキックがNAOKIを襲う

ムエタイ技であり、キックボクシングの攻防であるヒジ打ち、小川翔の右ヒジがNAOKIにヒット

激しい攻防の小川翔vsNAOKI

波賀宙也は1月10日に新日本キック興行に出場してパカイペットに判定負けしたばかり。と言っても1ヶ月半の試合間隔になるので、体調は問題ないでしょう。この日は前田浩喜に判定勝利で5連敗から脱出し、WBCムエタイ日本スーパーバンタム級挑戦権を獲得しました。

新人(=あらと)は宮城からやって来た「聖域統一」60kg級チャンピオンの岩城悠介に右ストレートが決定打となる2度のダウンを奪われてレフェリーストップによるTKO負け。東北地方で普及している聖域(サンクチュアリ)のアピールが活きたことでしょう。

タネ・ヨシホの左ミドルキックが能登龍也にヒット、ブロックの上からでもリズムを作った

タネ・ヨシホはまだ18歳、今後も上位に向かって勝ち進めるか

◎NJKF 2018.1st / 2018年2月25日(日)後楽園ホール17:00~21:20
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ日本実行委員会

◆第5代WBCムエタイ日本フライ級王座決定戦 5回戦

1位.能登龍也(VALLELY/50.55kg)
   VS
2位.タネ・ヨシホ(=多根喜帆/直心会/50.8kg)
勝者:タネ・ヨシホ / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:桜井47-50. 中山47-50. 神谷47-50

◆WBCムエタイ日本ライト級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.小川翔(OISHI/61.2kg)
   VS
挑戦者.同級1位.NAOKI(NJKF同級C/立川KBA/61.2kg)
勝者:小川翔が初防衛 / 判定3-0 / 主審:中山宏美
副審:桜井49-46. 竹村50-47. 神谷49-47

◆WBCムエタイ日本スーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.白神武央(拳之会/69.6kg)
   VS
挑戦者.同級1位.YETI達朗(NJKF同級C/キング/69.8kg)
勝者:YETI達朗が第4代チャンピオン / 判定0-2 / 主審:竹村光一
副審:桜井49-49. 中山48-49. 神谷48-49

◆59.0㎏契約3回戦

WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.新人(E.S.G/59.0kg)
   VS
岩城悠介(PCK連闘会/58.6kg)
勝者:岩城悠介 / TKO 1R 2:34 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮本和俊

小川翔が初防衛成功

◆WBCムエタイ日本スーパーバンタム級挑戦者決定戦3回戦

1位.波賀宙也(立川KBA/55.3kg)
   VS
2位前田浩喜(CORE/55.2kg)
勝者:波賀宙也 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:竹村30-28. 中山30-27. 宮本30-27

◆55.0kg契約3回戦

同級1位.大田拓真(新興ムエタイ/55.0kg)
   VS
ダウサヤーム・ウォーワンチャイ(タイ/54.95kg)
勝者:ダウサヤーム / 判定0-3 / 主審:神谷友和
副審:竹村29-30. 桜井29-30. 宮本28-29

◆NJKFスーパーライト級挑戦者決定トーナメント3回戦

2位.真吾YAMATO(大和/63.5kg)
   VS
3位.嶋田裕介(Bombo Freely/63.5kg)
勝者:真吾YAMATO / KO 1R 2:32 / 3ノックダウン
主審:中山宏美

◆60.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーフェザー級5位.TAaaaCHAN(PCK連闘会/59.6kg)
   VS
NJKFスーパーフェザー級7位.梅沢武彦(東京町田金子/59.8kg)
勝者:梅沢武彦 / 判定0-2 / 主審:宮本和俊
副審:竹村29-30. 中山29-29. 神谷29-30

白神武央に雪辱成功、WBCムエタイ日本王座を奪取したYETI達朗

◆バンタム級3回戦

NJKFバンタム級2位.日下滉大(OGUNI/53.4kg)
   VS
同級3位.俊YAMATO(大和/53.45kg)
勝者:俊YAMATO / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:竹村28-29. 中山28-30. 宮本28-30

◆スーパーバンタム級3回戦

NJKFスーパーバンタム級3位.久保田雄太(新興ムエタイ/55.3kg)
   VS
永井健太朗(Kick Box/55.2kg)
勝者:久保田雄太 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:桜井30-28. 中山30-27. 宮本30-28

◆NJKFスーパーライト級3回戦

NJKFライト級1位.村中克至(ブリザード/63.0kg)
   VS
NJKFスーパーライト級9位.野津良太(E.S.G/63.5kg)
勝者:野津良太 / 判定1-2 / 主審:竹村光一
副審:桜井29-30. 中山29-30. 神谷30-29

《取材戦記》

WBCムエタイの日本組織が根付いて丸10年になる今年です。2009年から日本タイトル化されて来ました。此処の組織は此処なりに、低空飛行のようでもしっかり選手が育ち、世界チャンピオンも二人誕生してきました。今後更なる世界チャンピオンが誕生するか、この日勝ち上がって来た日本チャンピオン達に期待が掛かります。今後のNJKFのメインイベンターと成り得る存在でもあります。

その中でも小川翔vsNAOKI戦はヒジ打ちの攻防が盛り上がり、タイトルマッチ3試合の中ではいちばん迫力がありました。キックボクシングの醍醐味はムエタイ技を酷使してのノックアウト勝利。ヒジやヒザだけを重視という訳ではなく、打撃すべてがムエタイ技でもあります。その点は「KNOCK OUTイベント」にも思想が繋がるところでしょう。

次回NJKF興行は4月15日に山陽ハイツ体育館に於いて、拳之会主催興行の「NJKF 2018 WEST 2nd」が行なわれます。国崇、白神武央、白築杏奈がベルギーからの刺客を迎え撃つ戦いとなります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

3月7日発売『紙の爆弾』4月号!自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』


◎[参考動画]Allstars & Davichi 다비치 – Fly Day (Pyeongchang 2018 Song)

 

PyeongChang 2018

平昌オリンピックが終わりました。日本は冬季オリンピックでは過去最高、長野オリンピックを超える13個のメダルを獲得しました。いやー選手の皆さんご苦労様でした。そして感動的なシーンがたくさんありましたね。

フィギュアスケートの羽生結弦選手は、66年ぶりに男子シングルで2大会続けての金メダル! だけじゃなくて銀メダルも宇野昌磨選手! 女子のシングルでも宮原知子選手が自己最高スコアを出して、見事4位入賞! 金、銀はロシアの選手でしたが、フィギュアスケートの上位にこれだけ日本勢が食い込むのはやっぱり快挙ですよね。

スケートといえば、スピードスケートも大活躍でした。高木美帆選手は金、銀、銅メダルを揃えちゃったし、お姉さんの高木菜那選手は金メダルを二つも取りました。美帆選手に注目が集まる中、菜那選手が参加した、マススタートレースの読みがぴたりと当たり、最終コーナーから直線に入って一気の逃げ。あれが競馬場だったらはずれ馬券が宙をまったでしょうが、パシュートで過酷な練習を続けていた菜那選手にとっては、予定通りのレース展開でしたね。

パシュートといえば、高木姉妹に佐藤綾乃、菊池彩花両選手を加えて、最高のパフォーマンスを見せてくれました。予選のスタートでやや失敗気味だった佐藤選手を準決勝では温存して、菊池選手が準決勝を戦いました。決勝では予定通り佐藤選手が再び加わり、五輪新記録の見事な優勝でした。小平奈緒選手は1000mでは数回バランスを崩しましたが、それで銀メダル。500mでは試合用のサングラスと練習用のサングラスをかけ間違えるも、レースは完璧で圧倒的な強さを見せつけました。

スピードスケートは実力を発揮できるかどうか、が勝負の分かれ目で、ミスをせずに力を出し切れた選手には結果がついてきた、といえますね。

ところで、同じスケートでもちょっと偶然や、運不運が勝負を分けるのがショートトラックです。今大会日本勢では坂爪亮介選手だけが、ツイていました。坂爪選手、五輪はソチに次いで2度目ですが、前回は五輪前に大怪我をしたので、まったく力を出せませんでした。ショートトラックは圧倒的に韓国が強いので、坂爪選手ら日本の選手はしょっちゅう韓国にトレーニングに出かけます。今回参加した高校生の吉永一貴選手も、頻繁に韓国でトレーニングを積んでいます。

実は坂爪選手は1000mで5位、500mで8位に入賞しましたが、これほとんど「運」が味方した結果でした。ショートトラックは、接触や転倒が多い競技なので、転倒したり、邪魔されたと審判がジャッジした選手は競技で負けても、次のラウンドに進むことができます。次に進むことができた選手は「アドバンス」を得たと呼ばれ、逆に妨害した選手は「ペナルティー」(失格)となります。

個人競技で坂爪選手はこの大会で、アドバンスや、先行する選手の転倒や「ペナルティー」といった「たなぼた」で入賞を果たしました。逆に活躍が期待された5000mリレーでは予選、順位決定戦ともに転倒! 健闘していた横山大希選手は、レース後のインタビューで顔を隠して話すこともできないほどでした(みなさんショートトラックなんかあまり見ていないから知らないでしょう?)。

複合の渡部暁斗選手は、五輪前に肋骨を骨折して、現地入りしてからも3日ほどは体も動かせないほどの重症だったと競技後に語りました。そんな体調で複合のNH(ノーマルヒル)で銀メダルを獲得したのには本当に頭が下がりますね。一流選手は結果が求められますが、それを不利な体調でも果たした渡部暁斗選手の精神力には、脱帽です。

逆にマスコミもノーマークだったのが、フリースタイルスキー男子モーグルで銅メダルに輝いた原大智選手でしょう。応援に来ていたお母さんが「調子が悪いから予選が通過できるかどうか心配で……」と話していたほどですから。原選手もアジア大会での銀メダルの経験はあってもワールドカップでの表彰台経験はなし。余計な力が入らずに滑ることができたのでしょう。この種目で長年活躍した(けども五輪のメダルには縁のなかった)上村愛子さんがNHKの放送で、表情でははっきりびっくりしていましたもんね。

「うん。あのさーこっちでもいい、とおもうんだよねー」「そだね」「いっかー?」「うん」
すっかり軽やかな打ち合わせ(?)の言葉遣いが有名になった女子カーリング。見事な銅メダルでした。三位決定戦最後の1投をイギリスのスキップ、ミュアヘッドさんが投げた瞬間「え! なんでそのラインと重量なの?」と体を乗り出してしまいました。あのシーンではあんな早いストーンではなく、左側ガードの間を抜けてNO.1を取りに来るのが定石だと思ったからです。なのにあんなに早い石を投げたらリスキーすぎる。

逆に言えば、あの瞬間日本の勝利を確信しました。どうしてあのショットを選択したのか?「五輪に住んでいる魔物」のためでしょうか。カーリングチームは全員が「LS北見」所属ですが藤澤五月選手は以前「中部電力」に所属していた時期もありました。もし「中部電力」のチームで出場していたら、ここまで応援が盛り上がったかどうか…。JAは銅メダル獲得を祝って「コメ100俵」をプレゼントすることにしたそうです。

賑やかなうちに平昌五輪は幕をとじました。日本と時差がなく、移動にも時間がかからない。日本食にも不自由しないし、ホーム開催ではないので、過剰な緊張も強いられない。しかも応援団が駆けつけるのも旅費が安くて済みます。かえって日本で開催された五輪より、選手たちはプレッシャーを感じることなく、伸び伸び競技に集中できたかもしれませんね。そう考えると韓国での五輪は日本勢にとっては有利な開催場所であったともいえるでしょう。

華やかな五輪が終わりました。感動をたくさんくれた選手たちに感謝です!


◎[参考動画]Alina Zagitova 23.02.2018

▼伊藤太郎(いとう・たろう)

おかげさまで150号!衝撃の『紙の爆弾』3月号!

取材班に対する朝日新聞記者、及び朝日新聞本社の対応について、これまで山口正紀氏(元読売新聞記者)、現在も活躍中の「元全国紙記者」から頂いたコメントを既に本通信でご紹介した。このたび新聞に関わる問題(特に「押し紙」)を長年追求してきたフリーランスライターの黒藪哲哉氏からも論評を頂けたのでご紹介する。取材班は今後も無謬性に陥ることなく、つねに「私たちは間違っていないか」、「他者の意見に理はないか」と検証を続けながら、取材・報告を続けるつもりだ。(鹿砦社特別取材班)

◆暴力事件の「当事者」が同時に「反差別運動の騎手」という構図そのものが問われている

朝日新聞社の対応に問題があるのは、いうまでもありませんが、最大の問題は朝日新聞社がこの事件をどう考えているのかという点だと思います。前近代的な内ゲバ事件だという認識が欠落しているのではないでしょうか。感性が鈍いというか。事件は、単なるケンカではありません。加害者の一人が、原告となってヘイトスピーチを糾弾するための裁判を起こしている反差別運動の旗手です。しかも、朝日新聞は報道というかたちで、この人物に対してある種の支援をしているわけです。ヘイトスピーチや差別は絶対に許されるべきことではありませんが、暴力事件の当事者(本人は否定しているが、現場にいたことは事実)が同時に反差別運動の騎手という構図、そのものが問われることになります。

◆「反原連」関係者による国会前の集会も検証が必要になる

また、間接的であるにしろ反原連の関係者も事件を起こした人々とかかわりがあるわけですから、残念ながら、国会前の集会も検証が必要になります。あれは何だったのでしょうか。それはタッチしたくはないテーマに違いありません。出来れば避けたい問題です。しかし、それについて問題提起するのがジャーナリズムの重要な役割のはずです。さもなければ差別の廃止も、原発ゼロも実現は難しくなるでしょう。第一、自己矛盾をかかえた人々を圧倒的多数の市民は信用しないでしょう。

◆「M君リンチ事件」をもみ消そうとする異常な動きそのものも検証が必要だ

しかも、『カウンターと暴力の病理』に書かれているように、この事件をもみ消そうとする動きが活発になっております。そうした異常な動きそのものも検証することが必要になっているわけです。本当に朝日新聞が独立した自由闊達なメディアであれば、だれに気兼ねすることもなく、その作業に着手できるはずですが、それが出来ないところに朝日新聞社の限界を感じます。「村社会」を感じます。

もちろん、どのような事件を報道して、どのような事件を報道しないかは朝日新聞社の自由ですが、報道機関としての資質は問われます。

▼黒藪哲哉(くろやぶ・てつや)
1958年兵庫県生まれ。1993年「海外進出」で第7回ノンフィクション朝日ジャーナル大賞・「旅・異文化テーマ賞」を受賞。1997年に会社勤務を経てフリーランス・ライターへ。2001年より新聞社の「押し紙」問題を告発するウェブサイトとして「メディア黒書(MEDIA KOKUSYO)」を創設・展開。同サイトではメディア、携帯電話・LEDの電磁波問題、最高裁問題、政治評論、新自由主義からの脱皮を始めたラテンアメリカの社会変革など、幅広い分野のニュースを独自の視点から提供公開している。

◎黒藪哲哉氏【書評】『カウンターと暴力の病理』 ヘイトスピーチに反対するグループ内での内ゲバ事件とそれを隠蔽する知識人たち(2018年02月27日「MEDIA KOKUSYO」)

最新刊『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD

『人権と暴力の深層 カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い』(紙の爆弾2017年6月号増刊)

『反差別と暴力の正体 暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

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