18日午前8時前。机上に置いた携帯電話が、警戒音を鳴らしだしたのは、揺れが起きて数秒後だった。ということは、震源が近いはずだ。小刻みな横揺れは安普請をきしませ、大きな音を立てたが、揺れ自体の長さは10数秒であっただろう。


◎[参考動画]【速報】大阪府北部で震度6弱(ANNnewsCH 18/06/18)

関西は「阪神淡路大震災」を例に出すまでもなく、活断層がいくつも確認されている。18日の地震は高槻市、茨木市に大きな被害をもたらした。この地域では震度1から2の地震が比較的頻繁に起こる地帯で、「有馬-高槻断層帯」のほぼ真上にあたるが、ここ数百年「有馬-高槻断層帯」での大きな地震の記録はない。

有馬-高槻断層帯

しかし一昨年の熊本地震の例が示す通り、内陸の断層による地震は、近隣の断層を刺激する。不幸にも震度7を2回経験した熊本地震発生の際に、私は最初の地震が「これが前震にならなければよいが」と書いた。気になる予感は的中してしまった。2016年4月14日の震度7に続き、2日後の16日にも再び震度7の揺れに熊本は襲われた。

気象庁は「今後1週間おなじ程度の揺れに注意するように」と、紋切り型の注意勧告を行っているようだ。そんなことは素人にでもわかる。行政による「地震予知」は現実に、何の役にも立たないことを、私たちはここ20年ほどのあいだに何度も学んだ。また、時々こっそりと(具合が悪いからだろうか)発表される情報の総体は「日本列島に地震を心配しなくてもよい場所はない」ことを結果的に示している。近いところでは千葉県周辺での「スロースリップ」現象(通常よりもプレートが早く動く現象)が発表され、実際に千葉県や群馬県では小さな規模の地震が頻繁に起きている。幸いこの地域での内陸直下型大地震はいまのとこと起きてはいない。

しかし、当該地域に住まい、お勤めの方々には充分に警戒されることをお勧めする。18日朝、大阪で発生した地震のマグニチュードは5.9だ。「阪神淡路大震災」は7.3、「東日本大震災」は、9.0、「熊本地震」は7.3だ。

地震の総体を理解するためには、マグニチュードが大きな意味を持つが、被害や災害を理解するためには、マグニチュード(地震のエネルギー)よりも、実際にどれほど「揺れたか」(震度)が重要である。津波が来なければ、海底を震源とする、マグニチュード8や9の地震でも、生活に何の影響も支障もない。逆に直下の浅い震源では、マグニチュード6以下の地震でも、今回のように被害が出る。なによりも避けがたく不具合なことは、人口密集地での地震は、そうでない地域に比べて甚大な被害を出すという事実だ。

18日の地震でブロック塀の倒壊や電柱の傾き、数件の火災、エレベータ内の閉じ込めや電車の停止は報じられているが、大規模な家屋倒壊は、いまのところ報告されていない。しかし既に複数の犠牲者が出ている。そしてインターネットではテレビ映像が視聴可能となり、繰り返し被害状況や交通機関の運行状態を伝える。その報道順位に、日ごろテレビを見ない私は、発見があった。テレビ映像はまず、地震による被害と交通機関の運行状況をつたえあと、「原子力発電所の状況」を繰り返し報じている。今回の地震による福井県の震度は3程度だ。にもかかわらず、優先順位の第一に「原子力発電所の状況」を繰り返し伝えるのは、テレビ局も「原発が地震に弱い」ことを自覚していることの証拠だろう。

活断層が縦横に走り、海底には巨大な地震と津波を引き起こすプレート境界が横たわる日本で原発を動かす条件は存在しない(2013年1月4日付赤旗より)

ただし、大都市で電車が止まり、停電が起き、水道管が破裂すればテレビは競って、その情報を映像付きで放送するが、「原子力発電所の状況」に、異常が起きたときにはどうだろうか。解説は不要だ。7年前を思い起こせばいい。「手遅れ」になっても「大丈夫」、「ただちに健康に影響のでるものではない」と、たった7年前に「騙した」台詞を、何の痛痒も感じずに垂れ流すに違いない。

地震は予防できない。そして、18日の地震がまたしても不幸にして「前震」であったとしても、「本震」を止めることはできない。万が一そうであれば、大阪を中心とする、関西在住の住民の皆さんはどうすればよいのか? それこそを政府は指し示すべき出だろう?「1週間程度はおなじ程度の揺れに気をつけろ」と言われても、古い家屋に住んでいる人はどのように「注意」すればよいというのだ?

首相官邸に「対策室」ができようと、自衛隊が災害派遣されようと、地震の被害を減ずる程度の予想を立てる力と智慧を人間は持たない。その前提ですべての取りうる対策は前提を立てるべきではないのか。素人でも発案可能なことはある。最悪の終末を相当高い確率で生じせしめる、全国の「原子力発電所」を即時停止、廃炉にすること。震度5以上の揺れが大都市で発生したら、その後数日間は個人の判断で「防災休暇」をとることができる制度を創設すること。暫時人口密集地域を解消すること…。

実現可能性よりも、「生き残るための必要条件」を優先するべきだ。と私は考える。

▼田所敏夫(たどころ・としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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