あきれる。あなたは新聞記者なのか? 人権を守る弁護士なのか? 教養をそなえた大学教員なのか? 10月19日大阪高裁で言い渡されたM君が李信恵ら5名を訴えた控訴審判決が大阪高裁で言い渡された。その後ネット上で上記の人々の発信には、その不埒さにおいて唖然とするしかない。「伊藤さん、李さん、神原さん、おめでとうございます!」、「正義は勝つ!!」、「(誰に対して?)よく耐えたね」……。あなたたちの神経はどうなっているのか?

それら侘しい人たちの発信を吟味する前に、この裁判がとてつもない〈闇の力〉に支配されているのではないか、を判決当日われわれは、またしても体感することとなった。その報告をせねばなるまい。

◆被告席には誰の姿もない。神原、上瀧弁護士らの姿もない

14時からの判決言い渡しは、予定時刻通り行われた。原告側はM君、大川弁護士、瀬川弁護士が出廷。被告席には誰の姿もない。神原、上瀧弁護士らの姿もない。カウンター側の支援者は誰一人来ていない。

傍聴席には15名ほどであろうか。開廷後稲葉重子裁判長は、判決の主文を読み上げる。「ああ、こう来たか」と取材班は判決を聞き、瞬時に評価を頭の中では整理できなかった。主文はどうあれ、高裁がどのような根拠で判断したのか、判決文の全文を読まない限り、軽率に判断はできない。

閉廷後、大川弁護士ら数名は書記官室に、判決文を受け取りに向かった。そして事件はそこで起こった。判決言い渡しのあとに、原告、被告が判決文を入手するのは、極めて常識的なプロセスである。ところが書記官室に判決文を受け取りに行ったところ、職員が「できればきょうではなく後日お渡ししたいんですけれども」、「すぐにはお渡しできないので……」と耳を疑うような言葉を平然と述べた。

「どうして判決言い渡しがあったのに判決文がもらえないのですか」、「ちょっと待て。M君が原告の裁判では、1人も記者が来てはいなかったが、司法記者クラブが記者会見を用意していたら、裁判所は記者たちに判決の要旨を配布するではないか」の問いに職員は「それはそうなんですけど……」とおかしな反応を示す。

「今すぐ判決文を受け取る権利がある。出してください」と要請すると「検討します」と逃げるので「検討ではない、原告の正当な権利として判決文を渡しなさい」とやり取り後、原告側はいったん、廊下で待たされ、約10分後にようやく判決文が原告側に渡された。

◆神原元弁護士はなぜ14時33分に「勝利宣言」をツイートできたのか?

主文は掌握していたが、裁判所の判断などを原告側が初めて目にしたのは、14時17分から14時20分の間だ。

ところが、のちに明らかになったのであるが、神原元弁護士は14時33分に「勝利宣言」をツイートしている。彼はおそらく電話で判決の主文を問い合わせたのであろう(原告、被告の代理人が遠隔地の場合電話で判決主文を問い合わせることは行われているそうだ)。

しかし大川弁護士をはじめとするわれわれは「少し廊下で待ってくれ」と言われ、仕方なく待機を余儀なくされた。判決全文を読まないことには評価が下せないが、神原元弁護士はどうやら、電話での確認だけで、「勝利宣言」を発信したようである。

仮に職員の申し出に「ああそうですか」と引き下がっていたらM君は判決当日判決文を入手できなかったのだ。どなたさんたちとは違い、慎重なM君や弁護団は主文を聞いただけで、判決の総合的な評価は下さないから、当然発信もしない。ネット上では勝手に被告支持者の「勝った! 勝った!」、「おめでとう」という言説が流布される。

東京新聞東京社会部佐藤圭記者の10月19日付けツイート

香山リカの10月19日付けツイート

◆「リンチは判決によって否定され、原告M君が敗訴した」かのような印象操作や鹿砦社攻撃に余念がない人たち

「こんな経験はありません」。廊下で待たされる間に大川弁護士は次から次へと起こる”摩訶不思議”な出来事に、あっけにとられていた。通常の裁判所の事務手続きでは考えられない「翌日に判決文を取りに来い」との物言いに、「裁判所は完全にあちら側に懐柔されているのではないか」と何度も複数の人々が主張した”何らかの力・意志”の存在を認識せずにはいられなかった。

度重なる記者会見申し入れの拒否、一審判決の著しい偏向、そして控訴審判決直後の不自然な対応……。挙げればきりがないが、後日、判決文と周辺事態の感想を複数の弁護士、法律の専門家に尋ねたところ、「最高裁の意を受けたり、政治的な力学で判決が左右されることは常識といってよいほどにある。原発再稼働容認の判断などを見ればわかりやすいだろう」との意見が多数であった。

市民が合法的に民事の争いを持ち込む場所は、裁判所をおいてほかにない。しかし裁判所が「中立」であったり「真摯に事実に向き合う」機関ではないことは、過去あまたの冤罪事件(民事も刑事も)や、「これはおかしいだろう」との判決が山積している事実を見ればわかる。「裁判所に過剰な期待や信頼を置くのは危険だ」と取材班は、もはや断言せざるをえない。そして「M君リンチ事件」の裏には“何らかの思惑”が確実に働いている。

そんな裁判所、大阪高裁判決に対して、東京新聞の佐藤圭記者、法政大学中沢けい教授、そして香山リカ氏……。彼らはそろいもそろって、あたかも「リンチは判決によって否定され、原告M君が敗訴した」かのような印象操作や鹿砦社攻撃に余念がないが、それは全く間違っている。

10月26日付け伊藤大介フェイスブックでの中沢けい(法政大学教授)とのやり取り

東京新聞東京社会部佐藤圭記者の10月26日付けツイート

◆「集団暴行」による賠償は一審に引き続き認定されているにもかかわらず……

そもそも彼らは「リンチ」の定義を勝手に「組織的な集団暴行」と決めつけているように窺えるが、その前提がまず間違いだ。「リンチ」は「私刑」を意味するのであり、法律や条例により定められた刑罰ではない、「私的な制裁」が元の意味である。「リンチ」=「集団暴行」ではなく、正確には「リンチ」の概念の中に「集団暴行」が包含されるというべきである。それでも彼らが主張するように「集団暴行」を「リンチ」と解釈する前提に立てば、高裁判決は「リンチ」を否定したのか? してはいない!

伊藤大介の「幇助」を認定しなかったものの、高裁判決はエル金と凡にそれぞれ損害賠償を命じている。2名の責任を認定しているのだから「個人間」の「暴行」ではなく「集団暴行」による賠償は一審に引き続き認定されており、その額も一審判決よりも増額されている(一審判決79万9,740円から113万7,640円へ)。

そして重要なことは、この裁判は事実を争うことのみが主眼ではなく、M君が受けた心身の被害に対する、当然受け取る権利のある、損害賠償請求が争点の中心であったことである。「集団暴行」が間違いない事実であったことは、本訴訟を待つまでもなく、既にエル金と、凡が罰金刑に処されたことにより確定しており、両者にはこの刑事罰についての異議はないようである。法廷でもエル金、凡は自己の責任を認め、M君に対する謝罪の意思を証言している。また当然のことながら、判決文のどこにも「集団暴行はなかった」旨断定する記載はない。

そしてあまり重視されていないが、伊藤大介が提起した反訴が一審に続き、棄却されている。

この総体をどう解釈すれば、どこかM君に非があったり、「リンチはなかった」、「正義は勝つ」などと判断できるのか。いい歳をして社会的にも地位があり、知識人として名前の売れている方々であまりにも不用意な発信を続けている人々には、上記の事実に真っ当な反論をしていただきたいものだ。「印象操作」は嘘と同等にネット社会では罪深い。それくらいは、だれでも理解できるだろう。(本文中敬称略)

(鹿砦社特別取材班)

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多彩なエロス、SFから児童文学まで縦横無尽な世界観織りなす作家、森奈津子さん。ツイッター上ではM君支援を宣言してくださり、そのためか、しばき隊から現在も集中攻撃を受け続けている方でもある。大好評だった前回までのインタビュー記事に続き、特別取材班は再び森さんに電話でインタビュー。「表現の自由」をはじめ様々な問題についてご意見を伺った。

◆反権力を気取っている人が、治安維持法みたいな法律を作ろうとしている

 

森奈津子さんのツイッターより

── (反差別という点で)その点、われわれは原理主義的にあらゆる差別に反対です。ただしわれわれはあらゆる差別をしていないつもりでも、知らないが故に言葉遣いとか振る舞いで差別を犯しているということがあるかもしれませんので、あらゆる差別を否定するではなくて反対するという表現でいつも統一しているつもりです。今新たにご示唆いただいた議論をするということですよね。何かコードを作ってしまって、レイシストだからとか、差別主義者だからとか、右翼だから左翼だから、とあるカテゴリーにはめて、だからどうのこうのということは非常に短絡的だと感じます。短絡的な人は実際にたくさんいます。それを助長する一つの要因が、適切にツイッターとかSNSを使えない人たちではないかと思います。

森  そうですね。合田夏樹さんが「彼らは反差別というよりは、反差別を言い訳にしていじめをしたいだけのいい歳をした大人だ」と仰っていましたけれども、おそらくその通りでしょう。やはり、叩いてそれで終わりでいいの? というの思いは常にあります。今、LGBT差別解消法という、アウンティングを禁じるとかLGBTに対する差別をなくすための法律を作ろうという動きがありますよね。あれだって「ホモ・レズ・オカマは差別用語です」という主張をする人が出てくる中で、そんな法律作って大丈夫なのかと。それこそLGBTが自分たちの首を絞めることになりかねないし、そんな治安維持法みたいなものを作るために、LGBTを利用しないでくれとも思います。でも賛成している当事者もいて、ちょっと驚きますね。何が差別かどうかという線引きを体制側に任せて、それで大丈夫なのかと。普段は反安倍とか言ってる人が何を言っているのかと思いますよ。反権力を気取っている人が、治安維持法みたいな法律を作ろうとしていて、体制側を信用しているのかと驚きます。

◆左翼リベラルの凋落

── 既にヘイトスピーチ対策法という法律は、理念法ですけれども成立をしています。その成立に関してはしばき隊の人達は非常に熱心に活動されたようです。ところで本来知識人の中に入れてはいけない人が、新たに知識人の中に入ってしまっている。かつて知識人であった人たちがどんどん堕落している。ある意味ではあたっていると思いますが、左翼リベラルというものが凋落している。一面では事実だと思います。それを森さんはどのようにお感じになりますか。

森  本来だったらリベラルと名乗ってはいけない人がリベラルを名乗っているのは驚きですし、多様性多様性と言っている人が何であんなに一生懸命自分と意見の異なる人を中傷して叩いているのか、本当に疑問に思います。なんであのような人達がリベラルと名乗っているのでしょうね。私は自分のことをリベラルだと思っていましたけれども、リベラルと名乗れなくなりました。あのような不寛容がリベラルだなんて、いつの間に言葉の意味が変わったのだろうと疑問に思っています。

── 明らかに変わりましたね。リベラルというのは大雑把にですけど、良い語感でしたものね。

森  そうですね。それが攻撃的で印象の悪い不寛容な人達を指す言葉になりつつあるようです。あの人達が自称しているから言葉の意味が駄目になったのでしょうかね。

◆香山リカは何でリベラルを名乗るのか?

── それもありますが、たとえば80年代頃の香山リカはリベラルの範疇だったと思うんです。かつてリベラルだった人達がどんどん堕落してしまった。書籍はあまり読まれない。本来は書物から得られる多様なものの考え方というところの回路が、通じなくなっているのではないのかなという気もするのですが、どうでしょう。

森  はっきり言って、この人が何でリベラルを名乗ってるの? と思いますけれども、皆さんリベラルと認識しているようですし。また、ツイッター上ではフェミニストを名乗る人たちが平気で男性差別発言をしてるため、フェミニストが男性を差別する差別主義者だと見なされつつあります。それと同じような現象でしょうか。

── 穏健ではない偏狭な人達の意見が目立つから、フェミニズムというのはそういうものだとある意味では実態化しつつあるでしょ。

森  本来は、フェミニズムって人権を基礎とした理論じゃないですか。そして、人権というのは全ての人が持つものですよね。なのに、フェミニストを名乗っている人が男性の人権を侵害したら、フェミニズム自体が崩壊するはずなのに、わかっていない人たちがそれを信じてしまうのか。ああいう人達はフェミニストとは言えないのだ、というちゃんとした反論よりも、「フェミニストって男性差別をする人なんだね」「ミサンドリストのことをフェミニストと呼ぶんだね」という認識の方が主流になってしまって、「フェミニストを名乗る人は差別主義者」みたいなところまで行っていますよね。リベラルに関しても同じかなと思います。(つづく)

◎森奈津子さんのツイッター https://twitter.com/MORI_Natsuko/

◎今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー(全6回)

〈1〉2018年8月29日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27255
〈2〉2018年9月5日公開  http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27341
〈3〉2018年9月17日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27573
〈4〉2018年10月24日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28034
〈5〉2018年10月30日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28042
〈6〉2018年11月8日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28069

(鹿砦社特別取材班)

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◆事務所スタッフの憤懣がリークの発端か?

 

片山さつき氏HPより

「週刊新潮」(11月1日号)によると、「週刊文春」を相手に民事訴訟に踏みきった片山さつき地方創生大臣に、新たな口利き疑惑が生じているという。大阪のパチンコ業者が銀行融資の口利きを依頼し、片山大臣が財務省経由で融資のあっせんを行なったというものだ。そしてその結果はというと、融資工作は遭えなく失敗に終わったという。なんとも頼りにならないセンセイではないか。

それはともかく、同日発売の「週刊文春」には、片山事務所の関係者が匿名を条件で事実関係を語っている。すなわち「実は、X氏と片山氏は携帯電話で何度も連絡を取り合っている」そのやり取りのなかで、100万円の見返りにも言及しているというのだ。さらには、直撃取材を受けたあとに南村博二元秘書に「あなたと私は、会ったことなかったわよね」などと口封じを行なったうえで、週刊文春にリークした下手人を捜したという。

ヒステリックになったら、事務所で荒れるという片山センセイのことだ。事務所スタッフに修羅場が到来したのは想像にかたくない。その意味では、事務所関係者からボロボロと情報が漏れてしまうのは、センセイのガバナビリティの不足としか言いようがないのだ。短気は損気。

◆秘書ではなかったと強弁するも、事実は記録されている

100万円を受け取った事実そのものを否定する片山大臣だが、元秘書の南村氏は受け取りをみとめている。週刊文春が入手した「書類送付状」および福岡銀行大牟田支店の「振込・振替(状況照会)にも「議員名・片山さつき」と「秘書名・税理士南村博二」が明記されているのだ。にもかかわらず、片山センセイは週刊文春への訴状の中で「南村が原告(片山)の私設秘書であったことはない。原告は、秘書として契約したこともなく給与・報酬などを払ったこともなく、原告が指揮・命令する立場にあったことはない」などと、事実を180度ねじ曲げようとしている。まさに語るに落ちるとはこのことだろう。すでに何度となく、片山事務所は文章や音声に「私設秘書・南村博二」は刻印されてしまっているのだから──。

よしんば秘書としての報酬を受けていないなど抗弁ができたとしても、片山センセイが代表をつとめる政治団体や後援会事務所、あるいは「片山さつき政治経済研究所」は、いずれも南村氏の麻布十番のマンションに置かれている。その意味では秘書であるか否かも意味はない。片山センセイの政治活動に南村氏は大きく寄与し、重要な役割りを得ているのだ。

◆訴訟は答弁のがれである

ところで、訴訟をチラつかせるブラフが自民党政治家の特徴だと本欄で指摘してきたが、訴訟はまた事実関係を答えない言い訳でもある。片山センセイは訴訟を提起しましたという記者会見の場で、さっそく「法的措置に入りましたから」「わたしの一存では喋れないんです」と言い放ったものだった。この対応はおそらく、記者会見の場のみならず国会審議でも貫かれることだろう。「ご質問の件につきましては、訴訟中の案件でございますから、わたくしのほうで発言は控えさせていただきます」などと、答弁を拒否するにちがいない。そしてほとぼりが冷めれば、こっそりと訴訟を取り下げるか和解交渉で終わりにするという手順であろう。

だが、いったん訴状を提出したのである。その訴訟要件が根底から崩壊し、このかんの発言がすべて虚偽であったことを明らかにするまで、報道が止まないことを知っておくべきであろう。あたら小手先のはぐらかし戦術として、民事訴訟をもてあそんだことによって火だるまになるのは「片山さんは2人分、3人分の活躍が期待できる女性政治家」と激賞した安倍総理大臣の任命責任もふくめてのことである。


◎[参考動画]片山大臣「記事は事実と違う」 提訴後初めて会見(ANNnewsCH 2018/10/23公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

『紙の爆弾』11月号! 公明党お抱え〝怪しい調査会社〟JTCはどこに消えたのか/検証・創価学会vs日蓮正宗裁判 ①創価学会の訴訟乱発は「スラップ」である他

日本キックボクシング連盟(NKB)は12月よりニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)との交流開始を決定した。

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【交流開始のお知らせ】NKBオフィシャルリリース

NKB(日本キックボクシング連盟、K-U)は2018年12月からニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)との交流を開始致します。これに伴い、2018年12月8日(土)、NKB後楽園ホール大会(闘魂シリーズvol.6)では、NKBフェザー級1位 ひろあき(SQUARE UP道場)vs NJKFスーパーバンタム級1位 久保田雄太(新興ムエタイ)の1戦が行われます。
 この交流がキックボクシング界の発展に必ずや寄与するものと信じ、今後も関係各所とより良い関係を築いていく所存でございます。今後ともNKB、そしてキックボクシングをよろしくお願い致します。

NKB代表理事、日本キックボクシング連盟代表 渡邉信久
(日本キックボクシング連盟広報部より発表)


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メインイベント前に、日野実志リングアナウンサーによって、リングサイドに来賓として来場されていた新日本キックボクシング協会、伊原信一代表が紹介されると、伊原氏はNKB・渡辺信久代表理事に歩み寄り、握手しハグする親密さを見せたという。

1996年に伊原氏率いる伊原ジムが離脱した経緯はあるが、元々は1984年の日本キックボクシング連盟発足当時から歩みを共にし、それ以前にも日本系・全日本系の壁はあれど、キックボクシング隆盛期から低迷期にかけて、力を合わせて来た古き仲であった。

7月から始まった新日本キックボクシング協会との交流戦、今回の代表的カードとなったメインイベントは、団体のプライドを懸けた意地のぶつかり合いとなったようです。

◎闘魂シリーズ vol.4 / 10月13日(土)後楽園ホール 開始17:15
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会
全12試合 公式記録(主催者発表、計量結果、主審名は不明)

 

今野顕彰vs西村清吾(2018.10.13)

◆第12試合 72.5kg契約 5回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM-KOK)
VS
日本ミドル級1位.今野顕彰(市原)
勝者:西村清吾 / 判定2-1 (馳49-48. 亀川49-50. 川上49-48)

◆第11試合 フェザー級 5回戦

NKBライト級5位.ひろあき(=安田浩昭/SQUARE-UP)
VS
コッチャサーン・ワイズディー(元・ルンピニー-系スーパーバンタム級7位/タイ)
勝者:ひろあき / 判定3-0 (佐藤友章49-45. 前田49-46. 亀川49-46)

◆第10試合 ライト級3回戦

NKBライト級4位.野村怜央(TEAM-KOK)vs山澤裕介(號志會)
勝者:野村怜央 / KO 1R 0:54

◆第9試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級2位.高嶺幸良(真門)vs同級5位.海老原竜二(神武館)
勝者:高嶺幸良 / 2-0 (佐藤友章30-28. 鈴木30-29. 馳29-29)

◆第8試合 64.0kg契約3回戦

NKBウェルター級5位. SEIITSU(八王子FSG)vs洋介(渡邉)
勝者:洋介 / KO 2R 2:10

◆第7試合 ヘビー級3回戦

山中政信(真正会)vs打田知彦(テツ)
勝者:打田知彦 / 0-2 (鈴木29-30. 前田29-30. 佐藤友章29-29)

◆第6試合 ウェルター級3回戦

雅喜(ReBORN経堂)vs火人(TEAM-KOK)
引分け 0-1 (副審 川上29-29. 佐藤友章29-29. 亀川29-30)

◆第5試合 バンタム級3回戦

古瀬 翔(ケーアクイティブ)vs剣汰(アウルスポーツ)
勝者:古瀬翔 / KO 3R 2:21

◆第4試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM-KOK)vs川畑RYU直輝(NK)
勝者:川畑RYU直輝 / KO 2R 1:10

◆第3試合 バンタム級3回戦

志門(テツ)vsダルシム・ヤイタレー(ReBORN経堂)
勝者:ダルシム・ヤイタレー / 0-2 (鈴木29-30. 佐藤友章30-30. 馳29-30)

◆第2試合 フェザー級3回戦

山本太一(ケーアクティブ)vs松下裕太(マッハ)
勝者:松下裕太 / 0-3 (馳28-29. 佐藤彰彦28-29. 亀川28-30)

◆第1試合 バンタム級3回戦

則武知宏(テツ)vs北田竜汰(光)
勝者:則武知宏 / KO 3R 2:24

◆12月8日闘魂シリーズvol.6(FINAL)の対戦予定カード発表!

12月8日(土)後楽園ホールで開催の闘魂シリーズvol.6(FINAL)の対戦予定カードが発表。

高橋一眞は毎度の危険な打ち合い2度目の防衛戦。

▼メインイベント NKBライト級タイトルマッチ5回戦
チャンピオン.高橋一眞(真門)vs挑戦者1位.棚橋賢二郎(拳心館)

▼セミファイナル NKB-NJKF交流戦 57.0kg契約 5回戦
NKBフェザー級1位.ひろあき(=安田浩昭/SQUARE UP)
VS
NJKFスーパーバンタム級1位.久保田雄太(新興ムエタイ)

▼59.0kg契約 3回戦
野村怜央(Team KOK)vsKEIGO(FLAT UP)

▼56.0kg契約3回戦
WBCムエタイ日本フェザー級5位.大脇武(GET OVER)
VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館)

▼63.0kg契約3回戦
NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並)vsちさとkiss Me(安曇野キックの会)

他、7試合を予定。

日本キックボクシング連盟・渡辺信久代表とNJKF・藤田真理事長(当時)は1999年当時に話し合いの場があり、後にアジア太平洋キック連盟(APKF)とK-Uが加わりNKB設立に繋がりました。1年以上かけて2002年4月から王座決定戦に進んだ順調な流れも2004年11月を最後にNJKFが脱退する運命を辿って行きました。NKBは本年12月に本格的にNJKFと再び交流を開始し、すでに7月から新日本キックボクシング協会とも交流戦が始まっており、NKBの2019年はまた新たな挑戦へ突き進むことになります。

古くから囁かれていた、興行数が少なく、交流戦を拒み、ムエタイ第一線級選手の招聘力も無い中では選手は育たず孤立するばかり。それぞれの団体がそこから脱却してきた中、ようやくNKBも動き出した現在。「KNOCK OUT」ばかりが注目されていてはいけない。そんな巻き返しに自然と結束力が働いてきたようなキック業界です。

※筆者の諸事情(母親の永眠)により、この10月13日のNKBには取材に行っておりません。主催者公式発表の試合結果を頂いての掲載で失礼します。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

格闘道イベント「敬天愛人」11月11日(日)鹿児島アリーナにて開催!鹿砦社取締役・松岡朋彦も出場します! 九州、鹿児島近郊の方のご観戦をお願いいたします!

格闘道イベント「敬天愛人」HP https://ktaj.jp/

仕留めたのは江幡塁の左ヒザ蹴り、下腹部だが、股間ではないと見える

「華麗な技で倒すのが僕の得意なKOパターン」と言う江幡塁の今回のKOに結びつけるまでの攻防は、“強い”と思わせるテープブリーの蹴りとパンチの返す強さと素早さ、判定までもつれ込むとしたら苦しい攻防となりそうな気配の中、幾つものコンビネーションブローを試しながらKOパターンを掴んでいく江幡塁の戦略は3ラウンド中盤に突然やって来た。

それまでに狙いを定めたか、左ボディーブローから右ローキックでテープブリーを怯ませるとコーナーに追い詰め、パンチ連打から左ヒザ蹴りがテープブリーの下腹部へヒットさせ悶絶、テンカウントを聞かせるKO勝利。

ファールブロー(ローブロー)をアピールするテープブリーと陣営だが、レフェリーは認めず。ボクシングで言えばベルトラインより下となるローブローだが、キックでは直接的にノーファールカップに当たらなければ反則とはならない。

「ラジャダムナン王座へいつでも挑戦できます。そして獲ることができます」と伊原代表に、いつでもいける臨戦態勢をアピールする江幡塁。2013年の初挑戦の敗戦から、勝利を重ね再挑戦を待ち続けてもう5年。来年こそは実現させたいだろう。

江幡塁のローキック、序盤は素早く蹴り返すテープブリーが厄介だった

喜多村の右ヒジ打ちがT-98の顔面をカット、勝負をほぼ決めた一発

T-98 vs 喜多村誠戦は、初回から両者の重いローキック、ミドルキック、パンチへと相手の出方に応じた打撃が交錯する。主導権を握って圧倒したい、その意地の競り合う攻防が第4ラウンドに入るまで続き、一瞬の喜多村の右ヒジ打ちがT-98の顔面を捕らえると流血したT-98。ドクターは続行可能と判断するが、再開直後の喜多村のヒジ打ちが軽いながらもまたヒット、ややパンチの打ち合いと組み合ってもつれた中、T-98は流血激しくなり、レフェリーが試合を止めたTKO。

喜多村陣営、大勢の応援団が静止出来ないほどドッとリングになだれ込む。日本統一果たしたかのような興奮醒めぬ歓声と祝福の応援団。タイトルは何も懸かっていないが、それに値するプライドが掛かった密度の濃い試合だった。

喜多村の右ストレートがT-98の顔面にヒット

最後も左フックをヒットさせ完全に倒しきった勝次

 

勝次は再起戦3連勝。今回も初回から早くも左ボディーブローでダウンを奪い、連打の後、左フックが顔面を捕らえると沈み込むように倒れたオートー。

レフェリーが止めるTKOで豪快に仕留めた勝次は、次なる目標がWKBA世界タイトルと言う。

来年3月に挑戦が内定しているが、その前に12月の藤本ジム興行でインパクトある勝利を掴まねばならない。またKO勝利で見せるパフォーマンス“1、2、3、ハッピー”が見られるか。

勝次のボディーブローでオートーを怯ませる

9月2日のTITANS NEOSに於いて、NKBとの交流戦で田村聖(拳心館)に敗れ、「負けたままで終われません。明日にでも再戦したいぐらいです」と語っていた斗吾がヨードプーパーをローキックからパンチ連打、左ボディーブローから右フックで圧倒、うつむき気味に怯むヨードプーパーに追撃し、あっけなく35秒でレフェリーが止めたTKO勝利。悪夢から醒めた開放感か、マイクで興奮気味に嬉しさを表現するも、早口で声も響かず、何を言っているのか聴こえないマイクアピールだったが、応援団に向かって感謝の言葉を述べていたことにはその観衆から拍手喝采を浴び、喜びを分かち合っていた。

斗吾の連打でヨードプーパーを一気に倒した

リカルド・ブラボがデビューから9戦目で初黒星。トリッキーなUMAの繰り出す前蹴りで前進を止められるだけでなく、ボディーも効いたかのようなブラボは、次第にリズムを狂わされてしまう。

蹴り返しやパンチはリカルド・ブラボの方が重く強い技を持っているが、この欧米パワーで勝ち上がって来た新人クラスと違い、チャンピオンとして総合力が試される今、UMAに主導権を握られ、終了間際にもパンチ連打を受け劣勢のまま判定負け。

いろいろなタイプの選手がいるものだと試練の壁にぶつかっているようなデビュー1年半、18歳のリカルド・ブラボ。対戦可能なトップクラスと戦い、経験を積めばまた新たな強さが見えてくるだろう。

UMAの前蹴りがリカルド・ブラボのリズムを狂わせた

MAGNUM 48 / 10月21日(日)後楽園ホール17:00~
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/55.6kg)
VS
テープブリー・オー・デットポン(元・ルンピニー系フライ級2位/タイ/56.0kg)
勝者:江幡塁 / KO 3R 2:00 / 10カウントアウト / 主審:椎名利一

◆70.0kg契約 5回戦

T-98(=今村卓也/元・ラジャダムナン系スーパーウェルター級チャンピオン/クロスポイント吉祥寺/69.85kg)
VS
喜多村誠(前・日本ミドル級チャンピオン/伊原新潟/69.5kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 4R 0:45 / レフェリーストップ / 主審:少白竜

KO勝利のポーズを再現してくれた勝次、1、2、3、ハッピー!

◆62.5㎏契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/62.5kg)
VS
オートー・オー・デットポン(タイ/62.1kg)
勝者:勝次 / TKO 1R 2:12 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:仲俊光

◆73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原73.5kg)
VS
ヨードプーパー・オー・デットポン(タイ/70.7kg)
勝者:斗吾 / TKO 1R 0:35 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:宮沢誠

◆67.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/67.0kg)
VS
UMA(=ゆうま/元REBELS65kgC/K&K BOXING CLUB/66.6kg)
勝者:UMA / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:仲28-30. 宮沢29-30. 少白竜28-30

◆65.0kg契約3回戦

石井達也(元・日本ライト級C/藤本/64.9kg)
VS
MA日本ミドル級3位.竹市一樹(二刃会/65.0kg)
勝者:石井達也 / TKO 3R 2:59 / レフェリーストップ / 主審:椎名利一

◆67.0kg契約3回戦

日本ウェルター級1位.政斗(治政館/66.6kg)
VS
レック・エイワスポーツ(WMC世界SW級1位/タイ/66.7kg)
勝者:レック・エイワスポーツ / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:椎名28-30. 宮沢29-30. 桜井29-30

◆ライト級3回戦

髙橋亨汰(伊原61.23kg)vs TASUKU(CRAZY WOLF/60.9lkg)
勝者:TASUKU / 判定1-2 / 主審:仲俊光
副審:椎名29-28. 少白竜29-30. 桜井29-30

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/60.9kg)
VS
日本ライト級7位.渡邊涼介(伊原新潟/61.0kg)
勝者:渡邊涼介 / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名28-29. 少白竜29-30. 仲29-30

◆フェザー級3回戦

日本フェザー級6位.渡辺航己(JMN/56.9kg)vs FUJIMON(亀岡/57.15kg)
勝者:渡辺航己 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:仲30-27. 少白竜30-27. 宮沢30-

◆70.0㎏契約2回戦

大久和輝(伊原/69.8kg)vs 萩本将次(CRAZY WOLF/69.3kg)
勝者:大久和輝 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)

◆フェザー級2回戦

瀬川琉(伊原稲城/kg)vs 平塚一郎(トーエル/56.9kg)
勝者:瀬川琉 / TKO 2R 0:57 / レフェリーストップ

《取材戦記》

T-98=「ヒジ出すんだも~ん!」
喜多村誠=「狙ってました!」

控室で聞かれた後腐れないサバサバした表情で語り合った両者。業界の総力を結集すればミドル級でも面子は揃うはず。トーナメント戦は「KNOCK OUT」イベントばかりに集中しないで既存の団体興行でも行なって欲しいもの。

健闘を称えあったT-98と喜多村誠

勝次のKO勝利の場合のみ見せる“1、2、3、ハッピー!”は定着するか?拳を突き上げるだけでなく、もう少し決めポーズが欲しいところ。飛びヒザ蹴りポーズでも加えたらどうだろうか。

新日本キックボクシング協会の年内興行は、あと2回。11月11日(日)に新宿フェースに於いて、「KICK Insist.8」が2部制で開催。メインイベンターは第1部(14:00開始)が瀧澤博人(ビクトリー)。第2部(18:00開始)は石原將伍(ビクトリー)。8試合ずつ全16試合が予定されます。第1部終了後、入れ替えとなり、1部と2部のそれぞれのチケットが必要になります。

そして最終興行が12月9日(日)に勝次が所属の藤本ジム主催で、「SOUL IN THE RING.16」が後楽園ホールで開催予定です。

リングに流れ込んだ喜多村陣営と仲間達

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

格闘道イベント「敬天愛人」11月11日(日)鹿児島アリーナにて開催!鹿砦社取締役・松岡朋彦も出場します! 九州、鹿児島近郊の方のご観戦をお願いいたします!

格闘道イベント「敬天愛人」HP https://ktaj.jp/

◆冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない

 

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

きっかけは、いっけん偶然かのように見紛われる。ある日偶然は、主人公が知りもしない世界へ強引に連行し、激烈な鞭打ちを浴びせかける。「どうして?」、「なにがどうなったの?」疑問をゆっくりと巡らせる暇もなく、主人公を「殺人犯人」と決めつける報道が全国を席巻し、主人公の名前や顔写真はおろか、住処の町名までが、量販店のバーゲンセールの広告を掲載するかのような、気軽さで新聞に掲載される。容赦のない取り調べは、有形でこそないが純粋な意味において「暴力」以外の何物でもない。

冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない。もっとも不幸な人は、何の関係もない咎により、首切られる(死刑)。または処刑台までいかずとも、長期にわたり拘置所、刑務所に幽閉される。あるいはまれに、嫌疑が晴らされマスコミにより「冤罪被害者」として扱われる場合がある。逮捕当時、あるいは公判中「犯人」と決めつけた報道を垂れ流していた罪など、ついぞ反省することなく、「加害者」を「悲劇の主人公」と報じる矛盾に、うち苦しむ報道機関はない(個人としての反省のケースはみられる)。

冤罪被害から解放されても、失った時間、主人公に襲い掛かった罵詈雑言の数々、報道被害が主人公に残した「加害の総体」は、何らかの尺度で測りうるものではない。主人公の語る言葉を、大衆はわかったような気になっているかもしれないが、それは大方の場合誤解である。わたしがこのように断定的に主人公が被った非道を論じるのは「テレビを見て、普通に笑っているんだと気がついたんです」と、事件解決後20年も経過した、主人公からの言葉をつい最近聞いた衝撃に由来する。笑いながら会話していたが、わたしの心の中は冷え切った。主人公に対して無遠慮であった自分を恥じた。

◆主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る

主人公はしかし、ただの被害者でありつづけたわけではない。「唯言」に登場する、執筆者をはじめとする、広大な人脈は、主人公が能動的に事件のあとを生きた証だ。「唯言」に登場する関屋俊幸、弓削達、高橋宣光、玉光順正、高田千枝子の各氏は主人公がいなければおそらくは出会うことがなかったであろう、それぞれ異なる分野で活躍された方々だ。あたかも書籍を編纂するように、主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る。その過程及び到達点から、乱反射する日本の姿(歴史・思想傾向・民族性など)の本質を、掌握した主人公が重ねて語るキーワードは「無答責と答責」である。

古代ローマ時代から、日本書紀を経て江戸・徳川時代から、明治維新、諸々の戦争を経て現在へ。主人公の歴史観は教科書で綴られるそれとは、かなり趣を異にする。日本の成り立ちについても同様だ。浅学で史実をほとんど知らない、あるいは「こうあって欲しかった」と幼児のように駄々をこねる、歴史修正主義者に対して、主人公の主張はどう映るか。冷厳な史実を見つめ続け、見つめるだけではなく、みずからが責任を取ろうとの試みは、常人の発想しうるものではなく、後にも先にも同様の試みを耳にしたことはない。

◆人間に暖かい社会とは何か?

主人公は国家が放棄した戦争責任を、「市民がどう引き受けるか」というとてつもない試みに足を踏み入れる。韓国と日本の間で何度もシンポジウムや講演会を開催する「答責会議」の発足は、主人公の存在なしにはありえなかった。その成果は『無答責と答責』(寿岳章子。祖父江孝男編、お茶の水書房 1995年)として世に出ることになるが、じつは『無答責と答責』の実質的編者は、主人公であったと、複数の知人から聞いた。その行動力の源泉は、はたしてなんであるのだろうか。冤罪被害者としての経験だけですべてを説明するのは不可能だとわたしは断じる。

主人公を際立たせすぎて紹介したが、「唯言」執筆者の方々はいずれも、個性的なその分野でトップを走った方ばかりである。当初部数限定の自費出版として編纂された「唯言」を手にした多くのひとびとは敏感に反応した。時代が「唯言」を要求していたといってよいだろう。世界史から物語が消えうせ、歴史が「自己解散」を宣言し、世界的にも事象はもっぱら権力者の気まぐれか、2進法による貸借対象表の合法的改ざんによる幻想のなかにしか存在しないかのごとき今日、「唯言」は無理やりにでも「自己解散」を宣言した歴史に「再結集」を命じる。

主人公・山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)は、冷徹な態度で、人間に暖かい社会とは何かを仲間と語り合った。

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

◆懲らしめのための民事訴訟

管制塔被告団グループに1億300万円の賠償請求が来たのは、2005年のことだった。運輸省が提起した民事訴訟は95年に判決が確定し、損害賠償額は4,384万円だった。それに利息が付いて、時効直前の2005年には1億300万に膨らんでいたというわけだ。その年から給与の差し押さえ、財産の差し押さえなどが通告されていた。

管制塔破壊という実害があったとはいえ、スラップ訴訟(公共の利益がないのに、運動を破壊するために行なわれる訴訟)に近い、民事訴訟による判決の履行だった。すでに反対同盟は分裂し、政府の意を受けた「話し合い路線」が軌道に乗っていたから、その意味では空港問題の帰趨とは関係なく、この請求は懲らしめのための「憂さ晴らし」とでも言うべきか――。

 

柘植洋三=元三里塚闘争に連帯する会事務局長による2005年7月18日付アピール文「管制塔賠償強制執行の攻撃を、我等ともに受けて立たん」の文頭(2005年7月22日付『旗旗』に全文あり http://bund.jp/?p=226 )

◆戦友会としての被告団

そこで元被告団が再集合し、1億円カンパ闘争が開始されたのである。元の所属党派を通じたカンパが大口だったが、ネットカンパが広く一般の人々から寄せられたという。われわれの三月要塞戦元被告団も久しぶりに全国結集(弁護士を入れて、たしか20人ほど)で、このカンパ運動を支援することになった。

集れば必ず飲み会というか、集りそのものが飲み会の場で、そこに管制塔元被告が説明に来るという感じだった。何かというと資金源としてあてにされる弁護士さんは「1億円も、ですか……」などと、ぼう然とした雰囲気だったが、すでに数千万円単位でまたたく間にカンパが集っているという報告を聴くと、ホッとした表情になったものだ。

元過激派学生というのは非常識な連中ばかりで、まじめな弁護士さんたちからはあまり信用されていない。それでも、突入ゲートごとの被告団、前年5月の攻防で逮捕されたグループなど、まさに戦友会のごとき集いが復活したのは、このカンパ運動の副産物だったといえよう。この年の11月には、1億300万円が国庫に叩きつけられ(収納され)た。

◆ネット上の議論

それにしても、1億円をカンパで集めるのはいいとして、それを敵である政府に差し出すという運動に、疑問の声もないではなかった。徹底抗戦して、たとい労役を課せられようが何をされようが、政府に「謝罪金」のようなものを出すべきではないと。もっぱら匿名のネットで議論が起きたものだ。匿名の議論だから「政府に恭順の意を表するような、反革命行為は信じがたい」とか「敗北主義だ」などという主張に「おまえ、責任をもって現実の大衆運動をやったことなんてないだろう。口先だけの評論野郎」などと反論があったりしたものだ。

たしかに民事判決の当初は「ないものは払えない」という論理で打っちゃってきたのは本当だ。やがて生活を抱え、家族をつくった元被告たちに、生活破壊の重たい攻撃が掛けられているのだから、カンパ運動はしごく当然だった。それを批判する人たちは、そもそも運動に立場性(責任)がない。安全圏の中に身を置いたとしか思えなかった。お前こそ、いま直ちに空港に突入して管制塔を破壊して来い! である。

◆民事訴訟の怖さ

それにしても、民事訴訟というのは生やさしくない。交通事件で民事訴訟になるのは、示談金をめぐって、すでに任意保険という補償の前提(原資)があるからであって、一般の事件だとなかなか考えにくい。たとえば殺された家族の損害賠償・慰謝料として民事訴訟をしても、相手が塀の中の死刑囚ではどうにもならない。そこで死刑を廃止して、仮釈放のある無期刑ではなく、終身刑を導入してしまう。死ぬまで懲役労働をさせて、その報奨金を被害者遺族への賠償金とする。という議論を、わたしは死刑廃止論の大御所としているところです。

ぎゃくに、犯人を知ってから時効が始まるので、とっくに刑事事件としては時効になっていても、民事訴訟は有効となるのだ。公安事件にかぎらず、被害者のいる事件は墓場まで持っていくというのは、けっして例え話ではないのです。そんな事件、あなたも体験していませんか?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。3月横堀要塞戦元被告。主著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)、『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

衝撃満載『紙の爆弾』11月号! 公明党お抱え〝怪しい調査会社〟JTCはどこに消えたのか/検証・創価学会vs日蓮正宗裁判 ①創価学会の訴訟乱発は「スラップ」である他

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

多彩なエロス、SFから児童文学まで縦横無尽な世界観織りなす作家の森奈津子さん。ツイッター上ではM君支援を宣言してくださり、そのためか、しばき隊から現在も集中攻撃を受け続けている方でもある。大好評だった前回までのインタビュー記事に続き、特別取材班は再び森さんに電話インタビュー。「表現の自由」をはじめ様々な問題についてご意見を伺った。

 

森奈津子さんのツイッターより

◆差別用語と自主規制

── 今日は大きなテーマですけれども「表現の自由」をどう考えたらいいのかをお伺いしたいと思います。森さんのご見解を教えていただければと思います。まず、森さんは作家のお仕事をなさっています。しかもその中で性的な表現をお使いになる作風の作品もたくさんお書きになっています。これまでお仕事をなさっている中で、ご自身の作品を世に出すにあたって、何らかの不具合や作品の中で表現について困ったり、トラブルになったことはあったでしょうか。

森  表現で一番問題になるのは、差別用語ですよね。私は小説家としてデビューしたのが1991年ですけれども、当時から同性愛テーマは扱ってました。ゲイやレズビアン、バイセクシャルの少年少女が出てくるような話を書いてきました。その頃に編集者から突然「このような文書が来たので気を付けてほしい」と言われました。あるゲイリブ団体から「ホモ、オカマ、レズは差別用語なので出版物に使用するな」というような手紙が送られて来たそうで、おそらく、あっちこっちの出版社に手当たり次第に送ったものだろうと思われました。ホモ、レズ、オカマ、どれも当事者がニュートラルに使ったり、おふざけ的に使ったりすることもある言葉ですね。当事者同士がふざけて「このオカマ」とお互いに言ったりする。洋画では黒人同士が「ヘイ、ニガー」と言い合うシーンがあるじゃないですか。そういう感じですよね。「このオカマ」「このレズ」と。お互いに当事者がふざけ合って言ったり、自称する人もいます。自分はホモを名乗りたい、レズを名乗りたい、オカマを名乗りたいという当事者もいます。そういったニュートラルな使い方すらできなくなるのか。それはおかしいのではないのかということと、そういう差別用語を禁止するということは、表現の中でそのような差別用語を投げ付けられて悔しい思いをしたというシーンが書けなくなるではないかと。

そのことを担当編集者に言ったところ、たぶん編集長とか部長クラスの方と話し合ったと思うんですね。その後、そういうことでしたら使ってもいいですよと言われました。ただ、それで自主規制した出版社は他にあったかもしれないですね。そんなことが90年代前半にありました。それから、本当にこれどういうことかと思ったのが、90年代半ばに、「『人種』という言葉は人種差別に繋がるので使わないでほしい」と編集者に言われたことです。人種という考え自体が差別になるので使わないでくれと言われて(笑)、しかたなく直したんです。酷い自主規制だと思います。

── speciesの人種ですね。英語でいうところの。

森  はい、そうです。人種という言葉が人種差別を生み出すので、人種という言葉を使わないでください。「おかしいじゃないですか」と言ったんです。編集者の言い分は「森さんはまともだからそうおっしゃるでしょうけど、中にはまともじゃない人がいて抗議をしてくるんです」でした。「そんなまともじゃない人はあなたの脳内にしかいないんじゃない?」と私は思ったんですけれども、自主規制というのはそうやって進んで行くのですね。

◆「美人」は差別表現で「天才」は差別表現ではない?

森  他にも90年代後半に、「美人」という言葉を使ったところ、編集者に「美人という言葉は、美人じゃない人に対する差別に繋がるので、美人という言葉を使わないでくれ」と言われました。私は「人の美点をたたえるような表現は、みんな差別ですか。そうじゃない人に対する差別ですか」と聞いたのです。「誰々さん天才」と言ったら、天才ではない人に対する差別なのですか。誰かを褒めたたえる言葉が使えなくなるじゃないですか、とも言ったのですが、やはりその編集者は「森さんはまともだからそうおっしゃるでしょうけれど、中にはまともじゃない人がいて抗議をしてくるのです」と。そのときも「そんな人はあんたの脳内にしかいないんじゃない?」と私は思いました。

こちらは、過激なフェミニストを想定しての自主規制だと思いますね。ミスコンに反対するフェミニストがいたじゃないですか。そういうのを見て、美人を褒めたたえたらああいう怖い人達が乗り込んでくるという発想です。担当編集者自身は作家に「あの表現やめろ、この表現やめろ」と言ったところで、痛くも痒くもないわけです。自分が怖い人達から抗議を受けて社内での立場が危うくなるということ。それが一番怖いのであって、それが避けられればどうでもいいという編集者が、世の中にはいるわけですよ。

── 編集者というよりは会社員であるという自分の立場が優先するということでしょうか。

森  そうですね。

◆「コンプライアンス(法令遵守)」をめぐる議論の不在

── 今教えていただいたご経験のように、広く世間で合意がなくても、過剰に言葉について反応してしまったり、場合によってはあるそういう団体から抗議が実体的にあったりして、それが議論になったりということで、その言葉がどうなのかという議論が交わされるということはあり得ると思うのですが。

森  議論はいいことだと思います。

── 最近コンプライアンスという言葉を世の中でよく聞くようになりました。ところがコンプライアンスという言葉は、なにもわざわざカタカナで使わなくても「法令遵守」という四文字の漢字で全く同義に置き換えられます。置き換えられる以上に、コンプライアンスという言葉は、単なる法令遵守ではなくて、忖度してしまって、あるいは自己防衛的になっている。表現にかかわる人たちは、本来は表現のみずみずしさとか新鮮さを活かすことに傾注しなくてはいけないのに、そうではなくて自分の給与所得者としての地位の方を優先している。

森  そうですね。

── そういう現象は今ご紹介したことだけでなくて、私達もこの取材をする中で、痛切に感じました。

森  弱腰になっている感じがありますね、皆さん。

◆自称「反差別」の人たちによるレッテル張り

――「人種」という言葉が槍玉にあげられて問題になったご経験をなさった。この20年ぐらいで、青少年健全育成条例とか、児童ポルノ禁止法ができました。そういうものの影響もあるのでしょうが、それ以上に現場に関わる人たちが勝手に先走って規制をしてしまうことが、表現の幅を狭めているのではないかと懸念を感じますがいかがでしょうか。

森  それは大いにあると思います。何か抗議を受けたら、その後に議論すればいいのに、「おまえはレイシストだ、もう黙れ」「おまえはネトウヨだから黙れ」みたいな論調で叩いてくる自称反差別の人も多いですね。

── レッテル張りして終わりということですね。

森  そうですね。ぎゃあぎゃあ喚いて叩いて終わり。議論が発展しない。最初から罵詈雑言で何も話す気はないし、平気で嘘をつくし、平気でデマを流す。叩ければそれでいいのかと。批判が生まれた後にそこから議論し、どちらが本当に良い考えなのか、結論を導くべきものなのに、相手を叩いておしまい。潰そうとするのです。私もやられていますけども、そういうことやられたら、こちらはそれを拡散するだけですよ。「こんなことされてますが、皆さんどう思いますか」と。

自称反差別の皆さんは、そういうことを繰り返しているから、支持を失っているわけで。反差別と言えば私も反差別ですし、鹿砦社の皆さんももちろん反差別で、差別は許さないという点ではみんな共通だと思います。(つづく)

◎森奈津子さんのツイッター https://twitter.com/MORI_Natsuko/

◎今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー(全6回)

〈1〉2018年8月29日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27255
〈2〉2018年9月5日公開  http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27341
〈3〉2018年9月17日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27573
〈4〉2018年10月24日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28034
〈5〉2018年10月30日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28042
〈6〉2018年11月8日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28069

(鹿砦社特別取材班)

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

◆やっぱり噴き出した政治スキャンダル

本欄でも第4次安倍改造内閣が、女性の起用をわずか1人であること。そして起用された片山さつき地方創生担当相に「2人、3人分の活躍を」などという言い訳を安倍総理がしていることを批判してきた。その「2人、3人分の活躍を」安倍総理に期待された片山さつき大臣が、古巣である財務省・国税局に口利きをすることで、利得(賄賂)を得ていたというのだ。なるほど、大いに活躍されているようだ。

事件の発端は、製造業を営むXという人物が会社に税務調査が入ったことで、青色申告の承認が取り消されそうになっている状況をなんとかしようと、片山事務所に相談したのだという。片山さつきの私設秘書である南村博二を紹介され、この南村氏から指定された口座に100万円を振り込んだと、X氏は証言しているのだ。

 

2018年10月17日付け文春オンラインより

◆委任契約は成立している

「週刊文春」(10月18日発売号)から、X氏の証言を引用しよう。

「2015年当時、私の会社に税務調査が入り、青色申告の承認が取り消されそうになっていました。何とかならないかと片山先生に相談したのは紛れもない事実です。そして片山事務所の秘書を通じ、私設秘書だった南村博二という男を紹介されました」

「南村氏に『とにかく青色申告取り消しだけは困るんです』と話すと、『大丈夫ですから、安心してください』などと言われ、税務調査の対応をお任せすることにしたのです。そして15年7月、指定された口座に100万円を振り込みました。これで片山先生が働きかけてくれると信じていました」

この時の物証を「週刊文春」は入手している。「書類送付状」と書かれた文書である。そこには差し出し人として、参議院議員片山さつき、秘書・税理士南村博二と記されているのだ。文面にはこうある。

「着手金100万円を、至急下記にお願い申し上げます。ご確認後、国税に手配させて頂きます」

政治家への賄賂を通じた依頼が法的に問題があるとしても、これで委任契約は成立しているのだ。

100万円を振り込んだものの南村氏から報告もなく不安になったX氏は、参議院会館にある片山氏の事務所を訪問したという。執務室で100万円を振り込んだことを片山氏に伝えると「南村にすぐ連絡して!(こっちに)振り込みさせなさい!」などと別の秘書に激昂したのだ。

そして、片山氏は最終的に、X氏にこう話したというのだ。「じゃあやっておきますよ。任せてもらえれば、大した問題じゃないから」「うまくいったら、百万円なんて決して高いものじゃないわよね」このやり取り、まるでひと昔前の政治家(口利き屋)ではないか。

◆契約不履行ではないのか

けっきょく、依頼された青色申告の承認は得られなかった。委任契約は成立しているのだから、片山事務所側の契約不履行(口頭であれ何であれ、頼み頼まれる両者に「委任契約」は成立する)である。にもかかわらず、片山事務所はなかったことのように言うのだ。以下は「週刊文春」の取材に対する片山側の返答である。

「事務所にご質問の会社が税務調査を受けているようだとの連絡があり、当時の秘書が片山に相談し、知り合いの税理士である南村を紹介しました。南村税理士に聞いたところ、税理士報酬をもらった旨を知りました。事務所の認識では、南村氏は15年5月に私設秘書を退職しています」

これに対してX氏は「私は税理士の南村氏に仕事を依頼したのではなく、片山事務所から彼を紹介されただけで、片山先生にお願いしたと認識しております。わざわざ100万円を払って南村氏に頼む理由がありません」と語っている。この報道をうけて、他の報道機関の質問に、X氏があらためて答えている。

「私設秘書から要求された100万円を指定された口座に振り込んだのは事実です」「口利き依頼について、不徳の致すところで反省している」などとするコメントを発表したのだ。X氏の言葉を信じるかぎり、事実関係はもう明らかだろう。

◆本当に裁判をするつもりはあるのか?

X氏の証言が事実であれば、片山事務所の契約不履行(民事)および詐欺罪(刑事)が成立する可能性が高い。なぜならば、国税当局に承認取り消しされた処分を撤回することは、片山大臣側が利得を得ている以上、まったく不可能だからだ。辞任した甘利明元経済再生担当相による、口利き賄賂事件と同様である。いや、この事件は立件されようがされまいが、政治資金規制法や公職選挙法などとは比べものにならない、政治家の収賄疑惑なのである。

それと同時に、急遽おこなわれた記者会見において、片山大臣は何ら具体的な反証もなく「法的措置を講じる」と明言した。つまり公判廷において、事実関係を明らかにすると言っているのだ。われわれはこれには注目せざるをえない。

今回の件で、片山大臣は「口利きもしたことはないし、100万円も受け取ったこともない」などと報道内容を否定している。ここまで事実関係の認識が対立しているのであれば、法廷で決着をつけるしかないだろう。上述したとおり、片山大臣は「法的措置を講じる」と明言していることだし――。

こうした政治スキャンダルに見舞われた政治家や官僚のほとんどが「法的手段に訴える」などと言いながら、そのじつ何も具体的な訴訟行為をしてこなかったのは、多くの国民が知るところだ。

 

片山さつき氏HPより

◆口先だけの「法的手段」

たとえば、本欄でも政治団体の不明朗な献金を指摘した下村博文元文科大臣・現憲法改正推進本部長は、加計学園から200万円の献金を受けている事実を暴露されたとき「都議選が終わったら釈明する」「法的な対応を検討している」などとしながら、何らの弁明も法的措置も講じていない。その時だけ「告訴する」と言うことで、報道の沈静化をはかるのが自民党政治家の常套手段なのだ。

菅官房長官も2015年に日本歯医師連盟からの迂回献金を「週刊ポスト」に報道されたさいに、同じく「法的措置を検討している」と言いなすことで沈静化をはかり、その後は何もしていない。火のない所に煙は立たないの例えではないが、法的手段に訴えることが出来なかったのである。

◆敗訴して傷口をひろげた稲田朋美

いや、みずからと配偶者が弁護士であるがゆえに、実際に訴訟に踏みきった自民党政治家もいる。安倍総理のお気に入りとして、今回の人事で筆頭副幹事長におさまった稲田朋美議員である。「サンデー毎日」在特会との親密な関係を報じられたとき、稲田側は名誉毀損の訴訟を起こすも、一審・二審で敗訴。さらに「週刊新潮」に寄附行為を報じられたときも、訴訟を起して敗訴している。このときは双方のやり取りの中で新潮側が、訴訟を予告されたことを「恫喝」として「弁護士バカ」と表現したことから「名誉毀損」を要件としたものだった。だが今回の片山大臣の場合は、単なる名誉毀損で済まされる問題ではない。収賄をめぐる、政治家としての政治生命を左右する事実関係が争点となるのだ。

この原稿を編集部に送った翌日の10月22日、片山さつき地方創生大臣は、週刊文春を相手取って1100万円の損害賠償訴訟に踏み切った。その覚悟はあっぱれである。ぜひとも注視していきたい。


◎[参考動画]片山さつき大臣が文芸春秋を提訴 口利き疑惑報道で(ANNnewsCH 2018/10/22公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

衝撃満載『紙の爆弾』11月号! 公明党お抱え〝怪しい調査会社〟JTCはどこに消えたのか/検証・創価学会vs日蓮正宗裁判 ①創価学会の訴訟乱発は「スラップ」である他

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

「やや日刊カルト新聞」の「総裁」にして、業界ではカルト問題取材では、超有名人である藤倉善郎さんにお話を伺った。直接的にはオウム真理教関連集会での香山リカ氏による、取材妨害が話題になったことがきっかけであったが、「カルト」や「表現の自由」についての最新の情報をお伝えいただけた。カルト取材専門家が見る「しばき隊」の問題とは? 今回が4回連載の最終回。

◆ツイッター凍結と幸福の科学によるDMCA申し立て

 

藤倉善郎さんのツイッター

── ところでちょうど藤倉さんのツイッターは凍結されているんでしたっけ?

藤倉 今日(取材当時)解除されました。(※その後、再び凍結され、現在は別アカウントで活動中)

── 凍結の理由はおわかりになりましたか。

藤倉 理由は分かりました。幸福の科学がアメリカのデジタルミレニアム著作権法(以下、DMCA)というのを使って、削除を申し立ててきたのです。略称でDMCAの申し立てが来るとツイッターは複数の申し立てが来たら機械的に凍結する、と決めています。DMCAの情報を自分で調べないと、幸福の科学が何について申して立てたか知る術がありません。ツイッターは教えてくれません。そこで自分で調べたら、幸福の科学が34件もの大量のDMCA申立を行っていました。
 たとえば、幸福実現党が選挙違反で家宅捜索をうけたことがあって、その直後に大川隆法は誰かの霊言を降ろして、3日くらいでスピード出版したんです。それをいち早く僕は入手して、表紙とスカスカの中身という1頁だけ撮影した画像をアップしたんですが、それが著作権侵害だという主張なんです。時事の事件そのものを伝える写真が著作権侵害でダメだ、という無茶苦茶な理由でした。それを受けてツイッターが機械的に凍結というものでした。差別を想定した表現規制はこれからですが、著作権を使った表現規制は既に完成されているんです。

◆著作権法違反容疑で家宅捜索されてしまう社会

藤倉 報道とか評論の範囲のものであっても、著作権侵害だと申し立てることによって潰せるシステムがもう出来上がっています。DMCAやツイッター社の問題は日本だけではなくむしろアメリカの制度の問題ですが、日本でも著作権法は名誉毀損と違い「公共性・公益目的により」許すという条文が一切ないんです。これを出すことがが社会的にどれほど有益であろうとも、著作権法の手順を踏まえていないものは全部ダメという法律です。僕が2011年で著作権法で家宅捜索を受けた頃から、僕は著作権法はやばいと言い続けています。

── 著作権法違反容疑で家宅捜索までされたのですか。

藤倉 はい。ある宗教団体から刑事告訴をされ、不起訴で終わりました。それと同じことが差別、ヘイトスピーチでも出来上がっていこうとしているところだと思います。それから著作権法はとても難しいです。著作権法の実務をちゃんとやっている人であれば、評論のために必要な最低限の引用と言えるから問題ないだろうとか、微妙だとか、アウトだとかとすぐに言ってくれますが、ツイッター社とかはそういうことは分からないでしょう。申し立てが行われた、という事実で全てクロ判定して凍結してしまいます。僕もそのへんの絡みで弁護士と話をしているうちに見極めができるようになってきましたが、たぶん弁護士でも著作権法の実務をやっていない人間が目にしたら、わからない人は多いのではないかと思います。

── 私も引用記事で原稿を書く際に編集者から、「著作権でやばいです」と言われたことがありました。

藤倉 そこが難しいところなのですが、引用は引用部分の長短が問題ではないんです。僕が家宅捜索されたのはあるカルト宗教が、学生を騙して勧誘する時に使っているパンフレット数十頁すべて掲載した事が理由でした。それを「著作権侵害」だと言われたのです。どうして全部掲載したのかと聞かれて、「全部引用だ」と主張しました。「偽装勧誘するにあたって、その冊子の中で一言たりとも、教団名を記していないですよ」ということを主張するために、全文になっただけで、必要最低限の部分しか引用していないですよと言い張って、不起訴になりました。「必要最低限しか引用してはいけない」という基準があるので、長文の引用はダメだと思いがちですが、条件さえ満たしていれば全文引用でもいいんです(※個別の事情次第なので、常に問題ないとは限りません)。

── なるほど。著作権法についてはもっと関心を払う必要がありそうですね。ところで、差別についても同様の規制がおこなわれたら、妥当な判断ができるのか、と疑問があります。SNS上での差別表現が申告数でだけで判断されるのであれば、機械的に対応は可能でしょうが、文脈・文意を読み解くことまでは無理でしょう。そうすると「民─民規制」がますます進行しますね。

藤倉 表現の自由については、既に行った表現についての責任を取らせることに特化すべきで、前もって表現を行わせないようにするのは、どう考えてもダメなんじゃないかと思います。

── 行った表現について責任を取らせるのは、現行法の損害賠償で可能ですね。でも表現規制法は、「考えている」ことを規制するわけではないけれども、かなりそれに近くありませんか。

藤倉 近いのと、これは人間を規制するんです。フェイスブックで差別反対の趣旨で差別表現を引用したら、アカウント丸ごと使えなくさせられた人がいました。差別表現を引用して批判することもできないというだけでもおかしいのに、アカウントごと使えなくするというのは「こいつはヘイトスピーチをやる人間だから、ヘイトスピーチじゃない発言もさせない」ということです。それはまずい。個々の発言であれば、申し立てがあれば消して「ちゃんとして」と。内容を訂正すれば復活させてあげるよ、というのであればそれでも良いのかもしれないです。でもアカウントを丸ごと凍結するのは、SNSがライフラインになっている今の時代ですから(災害時には命にもかかわる)これは相当異常なことだと思いますね。

藤倉善郎(ふじくら・よしろう)さん/1974年、東京生まれ。北海道大学在学中に北海道大学新聞会で自己啓発セミナー問題についてのルポを連載。中退後、2004年からフリーライター。日刊ゲンダイ等で記者活動を行なう傍ら自己啓発セミナー、宗教、スピリチュアルの問題、チベット問題、原発事故等も取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(所属記者9名)を創刊し、現在、同紙の「被告人兼総裁」。2012年に週刊新潮で幸福の科学学園の実態に関するルポを執筆し、1億円の損害賠償を求めて提訴されるも完全勝訴。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社)

◆世の中を良くしたい人たちが、自分たちの首を絞めることを権力にやらせようとしている社会

── SNS上のことだけではなく、実際の発言も対象になりますよね。

藤倉 発言をした場所に仮に、規制を担当する人がいれば現行犯逮捕されることだってあるかもしれません。

── そのような表現規制は「差別反対」を纏っていても、必ず政治家や権力者への批判封じに拡大してゆくでしょう。政治家の人格とか出自とか。いまある「ヘイトスピーチ対策法」は対象を明示していますが、解釈改憲をやる政権ですから。書かれている文言が拡大解釈される可能性はありますね。

藤倉 ヘイトスピーチ対策法は外国人の話だけですが、あれだと被差別部落差別に対応できないので、差別を規制したい側は、規制を拡大しろという訳です。でも被差別部落差別は出身地や職業が直接の判断基準にされていて、人種でいえば一切違いのない人たちなわけです。このあいだ大相撲で負けた力士に「青森に帰れ」と言ったら「ヘイトスピーチ」だと問題にされていましたけれども、ああいうことになってくるわけです。

── 規制したい人たち(法務省・警察など)が望んでいることはわかりますが、他方、人権のことを当事者としては一生懸命考えていらっしゃいながら、人権を守らんがために規制立法をつくることが差別解消のためによいことだとお考えの方にはどのように提示したらわかりやすく理解していただけるでしょうか。

藤倉 無理だと思います。そこが今の世の中の病理の根本だと思います。世の中を良くしようとしている人たちが、自分たちの首を絞めることを権力にやらせようとしている。そのことに気づいていればそうはならないし、方向転換するはずですが、表現規制を危惧する意見の人が「表現の自由の方が差別問題より大事な連中」であるかのように言われ、表現の自由を守る人たちは「オタク、ネトウヨだ」のように陣営化して捉えられてしまう。それはおかしいことだから、ちょっとやり方を変えた方がいいよね、とは一向にになっていく気配がない。これそこカルト問題の真髄だと思います。いいことをしているつもりで人の人権を踏みにじる。救済のためにサリンを撒いたのと同じ構図です。しばき隊が自分たちが暴力的だと自覚してレイシストに暴力を振るうのよりも、さらにやっかいな現象だと思います。「俺たちは良いことをやっているから、その信念は絶対に揺るがない」と。

── この時代の一番大きな問題はそれかも知れませんね。(了)

(鹿砦社特別取材班)

◎カルト取材専門家が見る「しばき隊」の問題とは?「やや日刊カルト新聞」藤倉善郎総裁に聞く!(全4回)
〈1〉2018年10月11日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27899
〈2〉2018年10月16日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27942
〈3〉2018年10月18日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27952
〈4〉2018年10月22日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27991

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

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