TBSが10月15日から「1番だけが知っている」という新番組をスタートさせた。番組のホームページでは、その番組内容が次のように紹介されている。

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世の中のあらゆる業界に存在する“その道のNo.1”から、「1番だけが知っている」というとっておきの物語や驚愕の人物を聞き出し、その類まれなエピソードを紹介するこの番組。過去5回の特番では、「ビートたけしが唯一勝てないと思った芸人」や「北村晴男弁護士が魂震えたリアル“99.9”裁判」などを紹介し、その内容が放送終了後にWEBニュースで取り上げられるなど大きな反響を呼んだ。

・・・・・・・・・・以上、引用・・・・・・・・・・

要するに過去5回の放送が好評だった特番について、この秋からレギュラー番組化したということだ。MCは、各テレビ局から引っ張りだこの坂上忍氏と森泉氏が務めており、TBSとしては大きな期待を込めた新番組であることが窺える。

だが、私はこの番組が商業的に失敗し、なるべく早く終了して欲しいと心から願っている。なぜなら、この番組は特番だった頃、私のツイッターへの投稿を盗用した上、TBS側は私からそのことを指摘されても、何ら誠意ある対応をしようとしないからである。

◆コピペ同然で盗用

盗用行為が行われたのは、今年5月9日に放送された5回目の特番でのことだ。その放送では、最高裁で無罪判決が出た某冤罪事件について、「北村晴男弁護士が魂震えたリアル“99.9”裁判」として紹介していたのだが(そして大きな反響を呼んだそうなのだが)、私はこの某冤罪事件を裁判の一審段階から取材しており、このデジタル鹿砦社通信など様々なメディアで冤罪だと伝える記事を書いてきた。それもあり、番組を録画して視聴したところ、その放送内容には私が過去に執筆した記事に酷似しているところが目についた。

たとえば、放送では、直近5年(2012年度~2016年度)の司法統計に基づき、最高裁で無罪判決が出る確率が0.029%(10152人中3人)だと強調していたが、それは私がこの某冤罪事件について書いた昨年6月発売の雑誌「冤罪File」第28号の記事中で直近5年(2011年度~2015年度)の司法統計に基づき、最高裁で無罪判決が出る確率が0.038%(4人÷10403人)だと強調しているのと酷似していた。

左は、TBS「1番だけが知っている」5月9日放送の一場面。私が書いた「冤罪File」第28号の記事の一部(右)と酷似している

この部分については、この番組のスタッフが私の記事を真似て制作していたのだとしても、私は問題視するつもりはない。司法統計は、最高裁が全国各地の裁判所のデータを取りまとめ、ホームページなどで公表しているものであり、それをもとに誰がどのような表現活動を行なうのも自由だからだ。

しかし放送中、私のツイッターへの投稿を盗用していた場面は看過しがたかった。

盗用されたのは、私が昨年3月14日、この番組で「リアル“99.9”裁判」として紹介された某冤罪事件の冤罪被害者の男性らが広島市で開催した集会を取材し、その会場で弁護人の男性が語った話を短くまとめ、ツイッターに投稿していた文章だ。この番組のスタッフはそれをコピペしたのと同然の形で盗用し、あたかも自分たちが独自取材によりこの弁護人の男性の話を知り得たかのように装って放送したのだ。以下のように。

私がツイッターに行なった投稿(左)と、それをTBS「1番だけが知っている」が盗用した場面(右)

左の画像は、私が行なったツイッターへの投稿で、右の画像は、この番組の放送を画像化したものだ。私が平仮名で書いていた部分について、この番組では漢字に変えられている部分もあったが、それ以外はほとんど丸ごとコピペである。念のため、文字に起こすと以下の通りである。

【私のツイッターへの投稿】
私が29年で扱った中に絶対無実と思い、無罪にならなかった事件は数十件ある。大半の人は一審で諦めたり二審で疲れ切り、精神的にも経済的にも最高裁までもたなかった。今回の無罪は嬉しいが、それらの事件には悔いがある

【「1番だけが知っている」】
私が29年で扱った中に
絶対無実と思い
無罪にならなかった事件は
数十件ある
大半の人は一審で諦めたり二審で疲れ切り
精神的にも経済的にも最高裁まで持たなかった
今回の無罪は嬉しいが
それらの事件には悔いがある

よく恥ずかしげもなくこんなことを・・・・・・と逆に感心するくらい大胆な盗用ぶりである。なお、音声の紹介は控えるが、放送では、画面に表示されているテロップはナレーターによって読み上げられている。

◆誠意の無い番組プロデューサーとTBS社長

もっとも、私はツイッターへの投稿を盗用されただけなら、正直、このようにTBSの盗用行為を公の場で批判したりしたくなかった。この番組では、冤罪被害者の男性やその家族、支援者、弁護人の男性ら私が取材でお世話になった人たちが好意的に取り上げられていたからだ。そのような番組を公の場で批判すれば、私がお世話になった人たちにまでイヤな思いをさせてしまうかもしれない。私はそうなるのを避けたかった。

また、盗用された私のツイッターへの投稿は、良いコメントを紹介しているとは思うが、良いことを言っているのは私ではなく、あくまでコメント者の弁護人の男性だ。したがって、このツイッターへの投稿について、声高に権利を主張することも正直、避けたかった。

そこで、できれば、この盗用問題は水面下で解決したいと思い、私は簡易書留の手紙でこの番組のプロデューサーであるTBSの谷沢美和氏に対し、「誠意ある対応」を求めたのだが、回答期限までに何の返事もなかった。そこで、今度はTBSテレビ社長の佐々木卓氏に対し、取材を申し入れたのが、やはり回答期限までに何の返事もなかった。そのため、私としてもこの盗用問題を公にし、全面的に批判せざるをえなくなったという次第だ。

このTBS「1番だけが知っている」の盗用問題については今後も追及を続け、適時、経過をお伝えしていく。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

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