「華麗な技で倒すのが僕の得意なKOパターン」と言う江幡塁の今回のKOに結びつけるまでの攻防は、“強い”と思わせるテープブリーの蹴りとパンチの返す強さと素早さ、判定までもつれ込むとしたら苦しい攻防となりそうな気配の中、幾つものコンビネーションブローを試しながらKOパターンを掴んでいく江幡塁の戦略は3ラウンド中盤に突然やって来た。
それまでに狙いを定めたか、左ボディーブローから右ローキックでテープブリーを怯ませるとコーナーに追い詰め、パンチ連打から左ヒザ蹴りがテープブリーの下腹部へヒットさせ悶絶、テンカウントを聞かせるKO勝利。
ファールブロー(ローブロー)をアピールするテープブリーと陣営だが、レフェリーは認めず。ボクシングで言えばベルトラインより下となるローブローだが、キックでは直接的にノーファールカップに当たらなければ反則とはならない。
「ラジャダムナン王座へいつでも挑戦できます。そして獲ることができます」と伊原代表に、いつでもいける臨戦態勢をアピールする江幡塁。2013年の初挑戦の敗戦から、勝利を重ね再挑戦を待ち続けてもう5年。来年こそは実現させたいだろう。
T-98 vs 喜多村誠戦は、初回から両者の重いローキック、ミドルキック、パンチへと相手の出方に応じた打撃が交錯する。主導権を握って圧倒したい、その意地の競り合う攻防が第4ラウンドに入るまで続き、一瞬の喜多村の右ヒジ打ちがT-98の顔面を捕らえると流血したT-98。ドクターは続行可能と判断するが、再開直後の喜多村のヒジ打ちが軽いながらもまたヒット、ややパンチの打ち合いと組み合ってもつれた中、T-98は流血激しくなり、レフェリーが試合を止めたTKO。
喜多村陣営、大勢の応援団が静止出来ないほどドッとリングになだれ込む。日本統一果たしたかのような興奮醒めぬ歓声と祝福の応援団。タイトルは何も懸かっていないが、それに値するプライドが掛かった密度の濃い試合だった。
勝次は再起戦3連勝。今回も初回から早くも左ボディーブローでダウンを奪い、連打の後、左フックが顔面を捕らえると沈み込むように倒れたオートー。
レフェリーが止めるTKOで豪快に仕留めた勝次は、次なる目標がWKBA世界タイトルと言う。
来年3月に挑戦が内定しているが、その前に12月の藤本ジム興行でインパクトある勝利を掴まねばならない。またKO勝利で見せるパフォーマンス“1、2、3、ハッピー”が見られるか。
9月2日のTITANS NEOSに於いて、NKBとの交流戦で田村聖(拳心館)に敗れ、「負けたままで終われません。明日にでも再戦したいぐらいです」と語っていた斗吾がヨードプーパーをローキックからパンチ連打、左ボディーブローから右フックで圧倒、うつむき気味に怯むヨードプーパーに追撃し、あっけなく35秒でレフェリーが止めたTKO勝利。悪夢から醒めた開放感か、マイクで興奮気味に嬉しさを表現するも、早口で声も響かず、何を言っているのか聴こえないマイクアピールだったが、応援団に向かって感謝の言葉を述べていたことにはその観衆から拍手喝采を浴び、喜びを分かち合っていた。
リカルド・ブラボがデビューから9戦目で初黒星。トリッキーなUMAの繰り出す前蹴りで前進を止められるだけでなく、ボディーも効いたかのようなブラボは、次第にリズムを狂わされてしまう。
蹴り返しやパンチはリカルド・ブラボの方が重く強い技を持っているが、この欧米パワーで勝ち上がって来た新人クラスと違い、チャンピオンとして総合力が試される今、UMAに主導権を握られ、終了間際にもパンチ連打を受け劣勢のまま判定負け。
いろいろなタイプの選手がいるものだと試練の壁にぶつかっているようなデビュー1年半、18歳のリカルド・ブラボ。対戦可能なトップクラスと戦い、経験を積めばまた新たな強さが見えてくるだろう。
◎MAGNUM 48 / 10月21日(日)後楽園ホール17:00~
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会
◆56.0kg契約 5回戦
WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/55.6kg)
VS
テープブリー・オー・デットポン(元・ルンピニー系フライ級2位/タイ/56.0kg)
勝者:江幡塁 / KO 3R 2:00 / 10カウントアウト / 主審:椎名利一
◆70.0kg契約 5回戦
T-98(=今村卓也/元・ラジャダムナン系スーパーウェルター級チャンピオン/クロスポイント吉祥寺/69.85kg)
VS
喜多村誠(前・日本ミドル級チャンピオン/伊原新潟/69.5kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 4R 0:45 / レフェリーストップ / 主審:少白竜
◆62.5㎏契約3回戦
日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/62.5kg)
VS
オートー・オー・デットポン(タイ/62.1kg)
勝者:勝次 / TKO 1R 2:12 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:仲俊光
◆73.5kg契約3回戦
日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原73.5kg)
VS
ヨードプーパー・オー・デットポン(タイ/70.7kg)
勝者:斗吾 / TKO 1R 0:35 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:宮沢誠
◆67.0kg契約3回戦
日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/67.0kg)
VS
UMA(=ゆうま/元REBELS65kgC/K&K BOXING CLUB/66.6kg)
勝者:UMA / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:仲28-30. 宮沢29-30. 少白竜28-30
◆65.0kg契約3回戦
石井達也(元・日本ライト級C/藤本/64.9kg)
VS
MA日本ミドル級3位.竹市一樹(二刃会/65.0kg)
勝者:石井達也 / TKO 3R 2:59 / レフェリーストップ / 主審:椎名利一
◆67.0kg契約3回戦
日本ウェルター級1位.政斗(治政館/66.6kg)
VS
レック・エイワスポーツ(WMC世界SW級1位/タイ/66.7kg)
勝者:レック・エイワスポーツ / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:椎名28-30. 宮沢29-30. 桜井29-30
◆ライト級3回戦
髙橋亨汰(伊原61.23kg)vs TASUKU(CRAZY WOLF/60.9lkg)
勝者:TASUKU / 判定1-2 / 主審:仲俊光
副審:椎名29-28. 少白竜29-30. 桜井29-30
◆ライト級3回戦
日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/60.9kg)
VS
日本ライト級7位.渡邊涼介(伊原新潟/61.0kg)
勝者:渡邊涼介 / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名28-29. 少白竜29-30. 仲29-30
◆フェザー級3回戦
日本フェザー級6位.渡辺航己(JMN/56.9kg)vs FUJIMON(亀岡/57.15kg)
勝者:渡辺航己 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:仲30-27. 少白竜30-27. 宮沢30-
◆70.0㎏契約2回戦
大久和輝(伊原/69.8kg)vs 萩本将次(CRAZY WOLF/69.3kg)
勝者:大久和輝 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)
◆フェザー級2回戦
瀬川琉(伊原稲城/kg)vs 平塚一郎(トーエル/56.9kg)
勝者:瀬川琉 / TKO 2R 0:57 / レフェリーストップ
《取材戦記》
T-98=「ヒジ出すんだも~ん!」
喜多村誠=「狙ってました!」
控室で聞かれた後腐れないサバサバした表情で語り合った両者。業界の総力を結集すればミドル級でも面子は揃うはず。トーナメント戦は「KNOCK OUT」イベントばかりに集中しないで既存の団体興行でも行なって欲しいもの。
勝次のKO勝利の場合のみ見せる“1、2、3、ハッピー!”は定着するか?拳を突き上げるだけでなく、もう少し決めポーズが欲しいところ。飛びヒザ蹴りポーズでも加えたらどうだろうか。
新日本キックボクシング協会の年内興行は、あと2回。11月11日(日)に新宿フェースに於いて、「KICK Insist.8」が2部制で開催。メインイベンターは第1部(14:00開始)が瀧澤博人(ビクトリー)。第2部(18:00開始)は石原將伍(ビクトリー)。8試合ずつ全16試合が予定されます。第1部終了後、入れ替えとなり、1部と2部のそれぞれのチケットが必要になります。
そして最終興行が12月9日(日)に勝次が所属の藤本ジム主催で、「SOUL IN THE RING.16」が後楽園ホールで開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」