本日12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

2018年最後の『NO NUKES voice』が本日11日に発売される。発刊以来第18号。特集は「二〇一九年・日本〈脱原発〉の条件」だ。

うすらとぼけた、頓珍漢なひとびとは、利権の集積「2020東京五輪」に血眼をあげる、だけでは満足できず、「2025大阪万博」などと、半世紀前の焼きなおしまでに手を染めだした。大阪はその先に「IR」(つまり「カジノ」)誘致を狙っていることを明言し、理性も、将来への配慮も、財政計画といった何もかもが政策判断の「考慮事項」から排除されてしまった。

「将来? そんなことは知らん。儲けるのはいまでしょ! いま!」。どこかの予備校教師がタレントへの転身を果たすきっかけとなった、フレーズを真似るかのように、恥ずかしげもない本音が、誰はばかることなく横行する。「水道民営化」法案まで国会を通過し、いよいよこの島国の住民は、「最後の最後まで搾取される」段階に入ったといえよう。

◆中村敦夫さんから檄文をいただいた!

われわれは、あるいは、われわれの子孫は、「搾りかす」にされるしかないのか……。

そんなことはない! そしてそんなことを認めても、許してもならない!

そういう熱い思いを持った方々に、本号も登場していただいた。紹介の順番が不同だが、本誌への激励のメッセージを俳優であり、作家、かつては国会議員でもあった中村敦夫さんから頂いた。木枯し紋次郎では、「あっしにゃぁ関わりのねぇこってござんす」のきめセリフで、無頼漢を演じた中村さんからの檄文だ。

原爆と原発は、悪意に満ちた死神兄弟のようなもの。
世界の安全を喰い散らし、出張った腹をさらに突き出す。
『NO NUKES voice』よ。死神たちを放置してはならない。
平和を愛する人々の先頭に立ち、
言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ。

 

中村敦夫さんから頂いた『NO NUKES voice』への檄文

過分にして、この上なく有難い激励である。われわれは今号も含め全力で「反・脱原発」の声・言論を集め、編み上げた。しかし時代は、あたかも惰眠を貪っているいるように仮装され、真実のもとに泣くひとびとの声を伝えようとする意志は、ますます希薄になりつつあるようである。

つまり逆風が暴風雨と化し、一見将来に向かっての「展望」など、むなしい響きにしか過ぎない無力感を感じてしまいがちであるが、そうではないのだ。「死神たちを放置してはならない」この原点に返ればまた力が再生してくる。「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」この言葉を待っていた!

2018年は、総体として決して好ましい年ではなかった。語るに値する、勝利や前進があったのかと自問すれば、そうではなかった、と結論付けざるを得ないだろう。畢竟そんなものだ。半世紀以上も地道に「反核」、「反・脱原発」を訴えてきた、先人たちは、みなこのように敗北街道を歩んできた(でも、決して諦めずに)のだ。

大きな地図の上では劣勢でも、局地戦では勝利を続けているひとびとがいる。今号はそういった方々にもご登場いただいた。表紙を飾るミュージシャン、中川五郎さんの躍動する姿は、本誌の表紙としては異例といえるが、期せずして中村敦夫さんの檄文に答えるバランスとなった。

「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」中村さんの要請をこう言い換えよう。

「言論による反撃の矢を尽きることなく死神どもに、われわれは浴びせ続ける!」と。

『NO NUKES voice』第18号は本日発売だ。締まりのない時代に、全編超硬派記事のみで構成する「反・脱原発」雑誌は、携帯カイロよりもあなたの体を熱くするだろう。


『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM1WMYM/

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

12月12日(水)14:00から大阪地裁第13民事部で、鹿砦社が李信恵氏を訴えた訴訟(第1訴訟)の尋問が行われる。前回期日(10月31日)に裁判所と原告(鹿砦社)‐被告(李信恵氏)双方が納得し、いよいよ原告‐被告本人の尋問が行われるはずであったが、その後被告の李信恵氏は、「出廷をしない」と、本人ではなく、神原元弁護士がツイッターで発信。どうやら12日の法廷にも李信恵氏は姿を見せないようである。

それならそれで、前回期日に出廷した上瀧浩子弁護士は「被告の証人尋問は申請しない」と明言しておくべきだったろう。いったんは裁判官の判断のもと原告‐被告双方が本人尋問に応じると回答し期日も決めたのであるから、李信恵氏の不出廷は〈敵前逃亡〉のそしりを逃れることはできまい。そして、どうやら12日神原元弁護士に他の裁判の予定がある、といった噂もあり、被告側弁護士として神原弁護士が登場するか否かも見どころである。

したがって、12日の裁判では原告鹿砦社代表・松岡利康だけの証人調べとなるが、いよいよこの裁判も佳境に差し掛かかった。お時間の許す方は是非、傍聴にお越しいただけるよう取材班からも呼び掛ける。

「鹿砦社はクソ」「クソ鹿砦社」との誹謗中傷について、被告側準備書面では「論評」と主張したが、李信恵氏本人の口から説明してほしかったところだ。

ところで先日別掲(下記)の文書が大阪弁護士会所属の弁護士に送付されてきた。

12月22日大阪弁護士会主催で開催されるパネルディスカッションの案内文書。李信恵氏がパネリストとして参加する

12月22日大阪弁護士会主催で開催されるパネルディスカッションに、李信恵氏がパネラーとして参加するというのである。おいおい、ちょっと待ってくれ! 取材班は先日、本通信で香山リカ氏の講演が、わずか6通の通報(脅し)で中止にとなった件について、「開催すべきであった」とする意見を申し述べた。しかし、香山氏のケースと今回のケースは事情が大きく異なる。

まず、前述のとおり李信恵氏は、「名誉毀損による損害賠償請求」の被告として、地元大阪地裁で、被告として鹿砦社と係争関係にある人物であることである。争いの内容が「表現」と無関係な、交通事故や、過払い金の払い戻しなどであれば、関係なかろうが、李信恵氏のプロフィールには「元在特会会長及び保守速報に対する民事訴訟を提起して第一審・第二審で勝訴」との紹介文がある。その通りである。李信恵氏はここで紹介されている通りに勝訴していることは間違いない。

だが、「クソ鹿砦社」、「鹿砦社クソ」と散々ツイッターに書き込んだ件で、李信恵氏は「被告」として係争中の身なのである。争いの内容は「表現」についてであり、李信恵氏が過去、鹿砦社、取材班、M君らに対して発信した膨大な誹謗中傷や虚偽は、言論人として許されるものではないと取材班は確信している。そんな李信恵氏を、こともあろうに大阪弁護士会の会長名でパネルディスカッションに招く。これはどう考えてもアンフェアだ。係争中の民事事件に地元の弁護士会が、ある種「こちらの味方に付く」と正当性を与えたかの印象を付与していると感じられても仕方がないだろう。

そこで、6日鹿砦社は以下の内容の質問を大阪弁護士会竹岡登美男会長に送付した。

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2018年12月6日 
大阪弁護士会
会長 竹岡登美男 様

貴会主催《『反』差別 連続企画 第1回 今、問われる人種差別禁止法
―沖縄・部落・在日コリアンへの差別の実態を踏まえて―》
についてのお尋ね

兵庫県西宮市甲子園八番町2-1-301 
株式会社鹿砦社(ろくさいしゃ) 
代表取締役 松岡利康 
電話0798(49)5302 

               
謹啓 師走に入り何かと慌ただしくなってまいりましたが、貴会ますますご隆盛のことと心よりお慶び申し上げます。

 さて、貴会所属弁護士より標記のような勉強会(資料添付)が予定されていると聞きました。

 パネリストとして参加予定の方の中に、李信恵氏のお名前があります。小社は、李信恵氏にSNS上で執拗に誹謗中傷を受け発信が止まらなかったため、やむなく李信恵氏を被告として名誉毀損等による損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所(以下大阪地裁と略記します)に提訴し、争っている最中です(大阪地裁第13民事部 平成29年ワ第9470)。今月12日には原告代表者である私の尋問が行われ(李信恵氏は尋問を拒否しました)、この係争自体は、これで結審を迎え年度内の判決になるものと想像いたします。

 他方李信恵氏側は、本年3月頃、上記訴訟がほぼ結審直前になり「反訴したい」旨の意向を突如表明しましたが、裁判所は同一訴訟内での反訴は認めず、別訴を小社を被告として起こしてきており、こちらも大阪地裁で係争中です(大阪地裁第24民事部 平成30年ワ第4499号)。

 つまり、李信恵氏は、被告、原告(提訴の順番からこのように記します)として、現在大阪地裁において、2件の訴訟を係争中の身であり、その争いの内容は「名誉毀損」です。特に後者訴訟にあっては、損害賠償と共に出版物の販売差し止めを求めており、憲法21条に謳われる「表現の自由」「言論・出版の自由」の見地から極めて重大です。

 参考までに李信恵氏が関わったとされる大学院生リンチ事件(常識的に見て、リンチの現場に居て関わっていないとは言えないでしょう)についての出版物2点を同封させていただきますので、ぜひご一覧(特にリンチ直後の大学院生の顔写真を)、またリンチの最中の音声データ(CD)をご視聴になり、ご検討ください。くだんの勉強会のご案内に「人権」という言葉がありましたが、リンチ被害者の「人権」はどうなるのでしょうか? 会長のご意見をぜひお聞かせください。いや、一人の人間として――。

「人権」を大事にされる貴会、特に呼びかけ人に名がある会長におかれましては、李信恵氏がこのような状態であることをご存知でパネリストと決定なさったのでしょうか(あるいはご存知なかったのでしょうか)。ぜひお聞かせください。貴会の最高責任者である「会長」として――。

 足元大阪地裁で大阪弁護士会所属の弁護士も代理人に就任し(李信恵氏側の代理人は京都弁護士会、神奈川弁護士会所属)、係争中の民事訴訟が進行している中、大阪弁護士会が、係争中の片一方の当事者を、係争の内容と関係のある「表現」や「差別」や「人権」についての勉強会のパネリストに選ばれることは、李信恵氏から「クソ鹿砦社」「鹿砦社はクソ」などと再三再四誹謗中傷を受けた小社としては、公平な人選であるとは考えられません。

 もちろん、係争中であろうと、発言や発信は認められるべき基本的な権利であると小社も認識いたしますが、今回はまさに「表現」についての訴訟が、他ならぬ大阪地裁で係争中に、大阪弁護士会が主催して、係争の片一方の当事者を招くという、例外的なケースであると考えます。小社の代理人弁護士はじめ複数の弁護士や元裁判官の方々にお聞きしても首を傾げられましたので、私が申し上げていることは、決して特異な意見ではないと思いますがいかがでしょうか?

 大阪弁護士会が、李信恵氏の過去の訴訟について、評価の認識をされていることは分からないではありませんが、リンチや暴力事件に関与したという疑いや問題を現在李信恵氏は問われています。その訴訟が進行中に(それも2件も)大阪弁護士が(それも会長名で)李信恵氏を「差別や「人権」や「表現」が話題となる勉強会のバネラーにお招きになる行為は、原告である(別訴では被告)小社のみならず第三者が常識的、客観的に見ても「大阪弁護士会は李信恵氏を支持している」と映ります。

 上記申し上げた件をご賢察頂き12月14日(金)までに書面にてご回答いただきますようお願い申し上げます。
 
 まずは要件にて失礼いたします。 

敬白 

               

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送付文書の中でも言及しているが、「係争中であるから発言を控えろ・発信をするな」とわれわれは主張しているのではない。「言論の自由」の観点から係争についての発言・発信は認められるべきである、と取材班は認識している。それでも「例外」はあるだろう。

ズバリ「例外」に該当するのが今回のケースである。大阪弁護士会は、果たして本係争の事実認識していたのか、あるいは知らなかった(その可能性は十分にあろう)のか。もし、係争があることを知っていたのであれば「どうして、あえて李信恵氏を登用したのか」、この点に疑問を感じるのは、まったく不自然ではないはずだ。12日の法廷並びに大阪弁護士会からの回答にご注目頂きたい。

いささか引用が長くなり長文になってしまったので、以下手短に報告するが、M君に対するリンチの際の音声がYou Tubeにアップされているが、これがなんと視聴者7万人を越えたのである。声なき多くの方々が関心を持っておられる証左である。これだけの動かぬ証拠がありながら「リンチはなかった」などとは小学生でも言わないだろう。裁判所がどのような判決を出そうが、〈真実は一つ〉だ。あらためて視聴いただきたい。

(鹿砦社特別取材班)

『真実と暴力の隠蔽』 定価800円(税込)

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

なるべく寺の作業を撮り収めようと、掃き掃除をサンくんに撮って貰う

◆寄進を深く受け止める

日々の出来事はやや前後するが、年明けた1月3日、軽四トラック荷台に6僧が乗せられ、昼のニーモンに呼ばれて行った。田舎道の広々したところに牛や鶏が放し飼いされている農家の敷地内に、信者さんが大勢と、他の寺の比丘も数名来ていた。
新年のお清めらしき儀式で、地べたに茣蓙が敷かれた所に座って読経が始まる。昼食もそこで寄進された。幾つも美味しそうな料理が出され、生菓子にフルーツ、アイスクリームまで出された贅沢なほどの量だった。私より年輩のオジサンがせっせと食材を運んで我々比丘に差し出してくれる。水が無いと気が付くと、それも駆け足で持って来てくれる気の利きよう。これら全て徳を積む行為なのだ。

しかし、その働く姿を見てフッと考えてしまった。ノンカイから帰る途中に藤川さんが、「ああいう人らが、ワシらに飯くれて何とも思わんか?、ワシは申し訳ない気持ちになる、飯食わせてくれて、ワシは詐欺みたいなもんやと思う」と言った言葉が改めて蘇えってくる。

黄衣纏っているだけで、こんな豪華なタダ飯食って、お布施貰って帰るんだ。料理運ぶオジサンに申し訳なくなった。俺って本当に詐欺だな。情けなくなって泣きそうになってしまった。本当に涙出そうになった。堪えた。こんなところで何でこんな感情になったのだろう。藤川さんの言葉が分かっていたつもりが心からは分かっていなかったのだろう。比丘でなかったら、これらの行為は受ける立場にはない。
安易に出家したことを恥じてしまう。こんな反省の念を抱えてカメラなど捨て、真面目に修行を積もうと思ったら3年ぐらい修行すべきだろう。そんな想いから短期出家のつもりが何十年と続いた比丘も居るのかもしれない。

バイク整備が得意なケーオさんの仕事

◆わがままな心の内

そんなカメラを捨てられない私は、コップくんに還俗の相談をすると、還俗すると決めたら、和尚さんにその気持ちを伝えればいいらしい。但し、自分から還俗する日を決められない。散々客寄せパンダとなっていた我々日本人。還俗なんて認めてくれないのではと不安が過ぎる。

それと同時に再出家も頭を過ぎっていた。こんな寺より品のいいノンカイの寺で再出家するとしたら、それは可能か。そんな我がままな望みは誰かに言い出せることではなかった。

還俗する相談は、やや年輩のイアットさんにも聞いてみた。コップくんと同様の意見ではあったが、その2~3日後、朝食の場で「もう和尚さんに還俗願いはしたのか?」と口に出してしまうイアットさん。これで周囲に知れ渡ってしまった。

メーオくんは「還俗しなくていいよ、ずっと居ろよ!」と言ってくれるし、サンくんも「まだ早いよ!」と言う引止めが多かった。メーオくんはやたらと和尚さんの部屋を出入りしているから、薄々和尚さんにも伝わったようだ。

以前も藤川さんが、日本での不動産業で億(円)単位のお金を日々動かしていたことや、タイでの事業で稼いだ財産を、ほとんどタイでの妻などに渡して離婚後、出家した話を信じない奴らばかりで、資産の一部を残しておいた200万バーツ(1千万円弱)ある預金通帳を、「メーオに見せてやったら、一、十、百、千、万と目を疑うように桁を数え直して、目が点になっとったわ!」と笑う。

その後、「和尚が遠回しに、“ウチの寺もでっかい仏像置いて、立派な寺に増築したいなあ”と普段と言うことが変わってきたから、予想どおりメーオが喋りおったとはすぐ分かった」と言うほどメーオくんは和尚さんにとって周囲を探るバロメーターであったことは確かなようだ。

そして1月8日、和尚さんに正式に還俗を願い出た。「相談があります。今月末に還俗したいのですが……」と言ったところで、「ウン、いいよ!」という素っ気ない返答。すぐ運気の本を開いて、「生年月日は? いつ還俗したいんだ?」と聞かれ、「27日がいいです」と応えると「27日は良くない、28日にしろ!」と言う和尚さん。

それはちょっと苦しい、29日は伊達秀騎のムエタイ試合があるのだ。

「29日にチェンマイに行く用があるので」と言うと、「じゃあ25日にしろ!」とあっさり決まってしまった。運気と言うより六曜(大安、仏滅など)に近い気がするが、意外な決め方だった。

更に、「ネイトは1月22日に来る」と藤川さんから新たに聞いたばかりで、比丘としての再会は果たせそうだった。

夕方頃、藤川さんが掃除が終わるのを見つけたところで、還俗願い出たことを伝えた。藤川さんに相談せず決めたことが、ちょっと後ろめたかったが、普段からあまり話さないのだから、もう気を遣わなかった。それと「還俗後、いずれノンカイの寺でもう一回出家できたらなと思います!」とだけ打ち明けた。すると、「もう一回やったら、足洗えんようなるぞ。ここの和尚に対しても失礼に当たることや」と言う。

ある意味、戒律違反で、藤川さんがこの寺で再出家する前、前年一時出家した籍のあるスパンブリーの寺に出向いて再出家することを報告すると、そこは理解を示す和尚さんで問題なかったが、通い慣れた、かつて渋井修さんが在籍したバンコクのパクナム寺の和尚さんに話したら、「それはスパンブリーの和尚に対し、失礼に当たることだ」と言われたらしい。

この時、私はまだ再出家に掛かる意味、責任を理解していなかった。場を変えて足りない修行を積み重ねて比丘生活の締め括りをやりたい愚かな気持ちしかなかったのだった。

◆依頼が絶えない

残り少なくなっていく比丘生活にも葬儀が頻繁にあり、また葬儀の撮影を頼まれる日もあった。寺に居てカメラを持って歩くことは頻繁にあった訳ではないが、皆からカメラマンとしての印象は強かったようだ。

ノンカイでも藤川さんに言われていたことだが、「お前、タイで葬式カメラマンやれ、人は毎日死んでいくからどっかで必ず葬式はあるぞ、お寺幾つも回って契約取ってやってみい。今だけでもこれだけ頼まれるんやから売り込めば仕事増えるぞ。出張撮影、車の手配も助手も要るなあ!」と、勝手に話を膨らませる。ビジネス戦略は常に鋭い勘が働く人だったが、鈍感な私はそんな気にはなれなかった。

こんな野良犬も寺に住み着く大人しい犬だった。コップくんが可愛がる

◆阪神淡路大震災発生!

1月17日の夕方、庭掃き掃除をしていると、藤川さんが「兵庫で地震あったらしいぞ!」と言いながらラジオを持って現れた。毎日聴いて居られたNHKニュースである。後に詳しく知る阪神淡路大震災だった。

「1132人が死亡」という声に、これは相当な震災だったことに驚く。最大震度6。死傷者はその後も増えた。

「ワシ、京都に帰ってみようかな、娘らが心配やし」と言う藤川さん。

そうそう実家に帰ることはないタイで出家した身だが、我が娘夫婦や孫のことは心配だろう。

「我が身の命はいつ終わるか分からん。皆、当たり前のように明日がやって来ると思うて、どこ遊びに行こうか、何食おうかと、呑気に過ごす奴が多いやろが、明日が必ずやって来ると言えるか?、震災で死んだ人も、今日死ぬとは思って居らんかったやろう。日々が諸行無常や!」

こんな話は何度となく藤川さんに言われて来たこと。こんな災害が他人事ではないと思うと、やっぱり悔いの無い日々を送らねばならないと改めて思う。しかしこれも心からは分かっていないんだろうな、我が身にも災難に見舞われるまで。

まあ考え過ぎず、ここでの残り少ない比丘生活を頑張ろうと思うところだった。

残り少ない日々、洗濯姿をケーオさんに撮って貰う

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

YETI達朗の自信を持った右ストレートがクリーンヒット

YETI達朗の右ストレートでダウンした匡志YAMATO

YETI達朗の豪快KOが印象的な今年の活躍。白神武央(拳之会)から王座奪取した2月は僅差だったが、6月のクンタップ戦から続いて、いずれも左フックが決め手の2連続1ラウンドKOとなった。そこにはプロボクシングH’s STYLE ジムに出向いて吉野弘幸会長から指導を受けたパンチの強化があり、日本重量級での存在感が増してきた今、他団体交流戦があれば更なる飛躍が期待できそうなYETI達朗である。マイクアピールでは「NJKFはヤバい選手がいっぱい居るヤバい団体」と褒め言葉で持ち上げた。

フライ級ではデビュー8ヶ月の16歳でチャンピオンとなった松谷桐がアグレッシブな打ち合いに出る存在も目立つ。こちらも今後、他団体チャンピオンやムエタイ第一線級選手と戦ってどう試練を乗り越えていくか、来年の興行主役の期待が掛かります。

“頑張ったよ、ママ!”と勝利者インタビューで、応援してくれる高校生の息子に応えた伊織。家庭の空気が読めるような微笑ましいムードが流れる場内。キック界の流行語になりそうな一言だった。昔の殺伐としたリング上から比べて、時代が大きく変化したものである。

◎NJKF 2018.4th / 12月2日(日)後楽園ホール 17:00~20:50
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ日本実行委員会、NJKF

◆第11試合 WBCムエタイ日本スーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

第4代チャンピオン.YETI達朗(キング/69.55kg)
    VS
挑戦者NJKF同級チャンピオン.匡志YAMATO(大和/69.8kg)
勝者:YETI達朗が初防衛 / TKO 1R 2:13 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:竹村光一

開始から両者の蹴りでのやや様子見の後、パンチの交錯に移り、YETI達朗の重そうなパンチが当たり出す。タイミングを計ったところで、強いロングフック気味の右ストレートをヒットさせると匡志YAMATOがダウン。更に勢い付けてロープに詰めての接近戦で左右フックを連打し、右フックで2度目のダウンを奪ったところでレフェリーがストップするYETI達朗の豪快なTKO勝利となった。

更なる右ストレートで倒し切ったYETI達朗

「NJKFはヤバい団体」とアピールするYETI達朗

◆第10試合 58.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.新人(ESG/57.9kg)
   VS
NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/57.95kg)
引分け 三者三様 / 主審:宮本和俊
副審:神谷29-30. 和田29-29. 竹村30-29

三者三様となる見極めの難しい展開となった。両者の手数足数多く、互いのパンチのヒットも多かったが強烈にヒットは少なく、一進一退の攻防に見解が分かれた結果。パンチで出る勢いはNOWAYにあったが、新人は下がり気味でもヒットが目立ち持ち堪えた。

互角の展開ながらパンチの攻勢が目立ったNOWAY

僅差ながら積極性で優った波賀宙也

◆第9試合 56,5kg契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA/56.5kg)
   VS
ペットワット・ヤバ・チョーベース(タイ/56.05kg)
勝者:波賀宙也 / 判定2-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:宮本29-28. 和田29-29. 竹村29-28

離れた距離での蹴り合いから、首相撲からヒザ蹴りが主体の攻防が長く続く。ヒジ打ちも加え、次第に先手を打って圧力掛けて出た波賀が判定勝利を掴む。

◆第8試合 NJKFフライ級タイトルマッチ 5回戦

第11代チャンピオン.松谷桐(VALLELY/51.0→50.8kg)
   VS
挑戦者同級4位.池上侑季(岩崎/50.7kg)
勝者:松谷桐が初防衛 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:宮本49-47. 多賀谷49-47. 竹村49-48

ローキックの様子見からパンチ、ハイキック、前蹴りを織り交ぜていく両者。両者パンチの被弾も恐れずスタミナ切れない攻防が続いていく。ハイキックや前蹴りのヒットが多く、更にパンチや蹴りで圧した後、手を止めずに打っていく勢いがあったのは松谷で、踏ん張る池上を突き放した。

松谷桐が優った突進ハイキック

◆第7試合 64.5kg契約3回戦

ISKA・M・IC・ライトウェルター級チャンピオン.宮島教晋(誠至会/64.2kg)
   VS
NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G/63.9kg)
勝者:畠山隼人 / 判定0-2 / 主審:和田良覚
副審:宮本29-29. 多賀谷28-30. 神谷28-30

宮島は左ミドルキックを多発し、畠山は左右パンチの連打で出る。宮島の蹴りを上回る畠山のパンチが徐々にクリーンヒットが増やし、判定勝利を掴む。

大田原友亮の格差を見せ付ける重いハイキック

◆第6試合 57.0kg契約3回戦

HIRO YAMATO(大和/56.6kg)vs大田原友亮(B-FAMILY NEO/56.5kg)
勝者:大田原友亮 / TKO 2R 2:31 / ヒジによるカットで悪化によるレフェリーストップ
主審:竹村光一

ムエタイスタイルの両者だが、本場タイでの経験値が大きい大田原が経験値でタイミングを見極め、左ハイキックや前蹴りで突き飛ばす。HIROのパンチと蹴りにやや下がる大田原だが、しっかりHIROの動きを見ており、カウンターのヒジ打ちが見事にヒットするとHIROの額のカットに成功。ドクターチェック後、パンチで出て来るHIROを組んで転ばせ、応戦している間に流血が酷くなり、2度目のドクターチェックを受け、続行可能かと見えたがレフェリーが止めて試合は終了。大田原のTKO勝利となった。

◆第5試合 NJKF女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級タイトルマッチ 3回戦(2分制)

チャンピオン.伊織(T-KIX/51.3kg)vs同級1位.三宅芳美(OGUNI/52.0kg)
勝者:伊織 / KO 1R 1:44 / 2ノックダウン制によるKO / 主審:宮本和俊

長い手足で芳美の顔面に前蹴りを入れた序盤からヒザ蹴りに持ち込むと、ボディーをカバーし、効いた様子の芳美に更にヒザで攻めると、コーナーに詰まった芳美はスタンディングダウンを取られる。続けてボディーに狙いを定めた伊織がヒザ蹴りで攻めるとレフェリーがストップした。伊織は息子さんが高校3年生で、「頑張ったよ、ママ!」とメッセージを送った。

伊織が開始早々からボディーに狙いを定めた

「頑張ったよ、ママ!」とアピールする伊織

◆第4試合 バンタム級3回戦

NJKFバンタム級5位.鰤鰤左衛門(CORE/53.2kg)
    VS
NJKFバンタム級7位.清志(新興ムエタイ/53.35kg)
勝者:清志> / TKO 3R 1:02 / ハイキックによるダウンでレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗

◆第3試合 61.0kg契約3回戦

NJKFライト級6位.野津良太(ESG/60.8kg)
    VS
NJKFスーパーフェザー級4位.梅沢武彦(東京町田金子/60.9kg)
勝者:梅沢武彦 / 判定0-3 / 主審:神谷友和
副審:多賀谷28-30. 竹村27-30. 宮本27-29

◆第2試合 スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級6位.木村弘志(OGUNI/63.3kg)
    VS
MA日本スーパーライト級4位.増井侑輝(真樹AICHI/63.5kg)
勝者:増井侑輝 / 判定0-3 / 主審:和田良覚
副審:多賀谷28-30. 神谷29-30. 宮本28-29

◆第1試合 バンタム級3回戦

雨宮洸太(キング/53.25kg)vs翔YAMATO(大和/53.0kg)
勝者:翔YAMATO / TKO 2R 2:21 /
有効打によるカットの悪化でレフェリーストップ

王座初防衛を振り返る松谷桐

《取材戦記》

宮島教晋の持つ王座は“ISKAのムエタイルールのインターコンチネンタル王座”。文字数が長くなるので、別枠記載としました。

伊織がヒザ蹴りで三宅芳美をグロッギーに追い込む中、レフェリーが「1回目のスタンディングダウンで止めようかと思った」と言うほど強烈にヒットし、腹を押さえる行為に出た芳美。どこまでやらせるかはレフェリーの判断ですが、追撃を受けたところで止めに入ったタイミングは順当なところでした。

先日の立嶋篤史の試合など、ダメージはあるが、なるべく長く戦わせてやろうというレフェリーの判断、配慮を感じる時があります。一方で「早いよ、何で止めるんだ!」と言うセコンドの抗議があるのも事実。

先日10月7日の舟木昭太郎さんトークショー内の「増沢潔、サミー中村両氏を称える会」での参加したレフェリーの意見では、こういう抗議には、「危ないから止めるんです」と率直に応えると言う主張もありました。最近はレフェリー判断を尊重される傾向にありますが、ルールでの明記の難しい境界線での判断は、延々と語られる終わりなきテーマなのかもしれません。

12月9日はNJKF若武者会主催のDUEL16が大森ゴールドジムで16時30分より開催。来年も連盟主催興行は4回と少ないが、若武者会などやジム主催興行が増え、年間でプロ興行は12回。現在に於いては少なくはない。2019年最初のNJKF連盟主催興行は2月24日(日)後楽園ホールで開催されます。

加藤愛香さん。2年務めたマスコットガールを卒業、最後の登壇

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

平均寿命が延び、高齢の親御さんやご親戚家族の健康について、悩みを抱える方が多いのではないでしょうか。私自身、予期もせず元気で健康、快活だった母の言動に異変を感じたのは数年前のことでした。そして以降だんだんと認知症の症状が見受けられるようになりました。今も独り暮らしを続ける89歳の母、民江さん。母にまつわる様々な出来事と娘の思いを一人語りでお伝えしてゆきます。同じような困難を抱えている方々に伝わりますように。

◆同級生(89歳)のいとことランチの約束をして

前回は、民江さんが慣れた場所で初めて道に迷った時のことをお伝えしました。あれは、本人にとってもショックだったと思いますし、家族にとっても認知症の進行と怖さを実感た出来事でした。今回は、それから3か月後に起きた騒動です。

これまで二度の迷子騒動を経験した私は、民江さんが電車で外出することに対して、それなりに注意を払っていました。それは、「約束したら私にも必ず教えてね」とお願いし、約束の日時と場所に無理がないかをチェックし、当日朝にもう一度確認するというものです。とは言っても、そもそも申告自体があてになるものではありません。案の定「今日は○○ちゃんと12時に会うのよ」とか「今日約束してたけど、体調が悪いらしくて延期したわ」など、約束していたことを当日の朝に初めて知ることがよくありました。

それは昨年4月のことです。同級生(つまり89歳)のいとことランチの約束をしていると言うので、数少ない友人と楽しい時間が過ごせるといいなという思いで、快く送り出すことにしました。約束の場所と時間から、何時に家を出て、どういう経路で行くのかを確認し、「気を付けてね。何かあったら電話してね」と言いました。

数時間後、行き慣れた場所でしたし、約束の時間もとっくに過ぎたので、ホッとしてお茶でも飲もうと思ったところに電話がかかってきました。民江さんの携帯電話からの着信です。でも、声は男性です。「お母さんが倒れていらっしゃったので救急車を呼ぼうかと声を掛けたんですが、娘に電話をしてくださいとおっしゃるので」と。

聞いていた場所とは全く違いますが、とにかく迎えに行かなくてはなりません。どんなに急いでも40分はかかりますが、その方は付き添って待っていてくださるそうです。お言葉に甘えて、私はまず待ち合わせ相手の娘さんに電話で状況を説明し、そちらの対応をお任せした後、急いで車を走らせました。到着すると、歩道の木陰に喫茶店で借りた椅子に座った民江さんと、寄り添ってお話をしてくださっているご夫婦の姿がありました。

よかった。そして、本当にありがとうございました。お二人は散歩の途中だったそうで、「もう少しお散歩の続きをしますから、どうぞ気にしないで」と笑顔で手を振って去っていかれました。過去二回もそうでしたが、またしても親切な方に助けていただいたわけです。

さて民江さんの様子はというと「私はいとこのせいで行き倒れた!」と怒っています。いとこの希望で約束の場所を変更したことが原因だと言います。その場所が久し振りだったこともあると思いますが、見当違いの方向へ1キロぐらい、民江さんの足なら電車を降りて1時間ぐらい歩いたようです。助けてくださった方への感謝の気持ちよりも、いとこへの恨みと空腹感で荒れています。

私は、なぜ変更したことを教えてくれなかったのかと苛立ちながら、とにかく民江さんの気持ちを鎮めようと、適当なお店を探してお腹を満たし、プラス思考の話題へ誘導しますが、なかなか機嫌は直りません。今回は特にダメージが大きかったようです。早く休ませて、明日になることを願うしかありませんでした。

◆穏やかに接してあげたいが

このようなことが起こると、民江さん自身とても混乱し、恐怖を感じたでしょう。それを思えば、私もなるべく穏やかに接してあげなくてはいけません。なるべく穏やかに接してあげなくてはいけないことはわかっています。が、現実は辛い。この時の民江さんの言動をもう少し詳しくお話しします。

急いで駆けつけた私に何も言わないどころか、助けていただき一時間も付き合ってくださった方に対しても、私が促してやっと軽くお礼を言いうことができました。
車に乗せると後部座席から「信号青よ!」と大きな声。しかもそれは横の信号を見て言っているのですから、本当はまだ赤なのに、私に指図をしてきます。途中、路上に車を止めて駅のトイレを借りて走って戻った私に「ソフトクリーム買って来てくれたんじゃなかったの?」と言い、「食べたいの?」と聞くと、「買って来て」と横柄な態度です。

その後も、駐車場のある店に入ろうと探しながら走っているのに「お腹がすいた」「どこでもいいから早くお店に入ってよ」と繰り返します。「場所を変えてくれと言ったいとこが悪い」「いとこのせいで私は行き倒れた」「もういとことは会わない」と、いつまでも怖い顔をして怒っています。

こんなに悪態をつかれても、娘の私は黙って聞いていなくてはいけません。認知症の人に怒っても本人を混乱させて状態を悪化させるだけ。母は認知症。だから怒ってはいけない。怒ったら、あとでもっと自分を責めることになる。わかっていても辛いものです。

▼赤木 夏(あかぎ・なつ)[文とイラスト]
89歳の母を持つ地方在住の50代主婦。数年前から母親の異変に気付く

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか

昨年6月に東名高速で起きた、あおり運転事故をおぼえておられるだろうか。サービスエリアの進入路のはみ出し駐車を注意されたトラブルから、高速道路の追い越し車線で停車させて、うしろから来たトラックが衝突。停車させられたクルマの夫婦が死亡した事件である。車内にいた娘たちはケガで済んだものの、幼くして両親をうしなったのだ。そして、あおり運転をしたI被告(26歳)は、自分のせいではないとうそぶいているようだ。

その裁判が、12月3日に初回公判をむかえた。


◎[参考動画]現実に追いつかぬ法律……あおり運転事件で苦悩の捜査(ANNnewsCH 2018/12/03公開)

◆「罪刑法定主義」で無罪を主張

裁判の冒頭、被告側は「罪刑法定主義」が履行されることを訴え、無罪を主張した。注意されたことにハラを立て、被害者一家のクルマを追いまわした挙げ句、高速道路上で停車させて事故を招いた人物が、自分の行為は直接の原因ではないから無罪だというのだ。このニュース報道に接して、憤りに耐えられない方も多いのではないだろうか。今回は道路交通法に新設された「危険運転致死傷罪」の不備もさることながら、殺人罪適用に踏みきらなかった検察の及び腰を問題にしなければならない。

「危険運転致死傷罪」(懲役20年以下の実刑)は博多で起きた、福岡市職員による酔っ払い運転による死傷事故をうけて施行されたものだ。それまでの酔払い運転事故では、刑事罰がほとんど問えない現状から、あわただしく法制化されたものだ。ところがこの「危険運転致死傷罪」は、運転中の行為を取り締まるものであって、本件のように停車したあとの行為では要件が適用されないのである。今回、I被告側が「無罪」を主張しているのも、停車中の行為にまで法の規定がおよばないからにほかならない。

◆逮捕監禁罪で補強するも、拡大解釈が甚だしすぎる

すでに横浜地方裁判所の担当裁判官は、裁判の事前整理(論点を明確にする)において、「危険運転致死傷罪」の適用は無理との判断をしめしている。これは条文上、じゅうぶんに予測されていた判断である。そこで検察は「逮捕監禁罪」を適用することで、逮捕監禁によって生じた致死傷の罰則(懲役20年以下の実刑)を補強的に訴因に入れたのだった。

ところが、これにも無理がある。高速道路上に「逮捕・監禁」と、事件の態様はちがうのだ。被害者はI被告に胸ぐらをつかまれて、クルマから引きずり出された(訴状)のだ。クルマに監禁されたのならともかく、東名高速道路に「監禁した」とはどんな犯行の態様をもって犯罪の構成要件にできるのか。

◆検察の無能が問題だ

この2つの訴因について「答案に2つの解答を書いて、0点になる可能性もある」と云うのは八代英輝(TBSのひるおびコメンテーター)である。むしろ「未必の故意」の殺人罪を適用したほうが、法の適用性にとってはマシだと云う。

わたしも賛成である。誰がどう見ても、あおり運転の挙げ句に進路を妨害し、高速道路の追い越し車線上にクルマを止めさせたI被告に事件の全責任があるのは明白である。直接、事故を起こしたのが後続のトラックであったとしても、むしろトラック運転手は被害者であろう。2つの罪名が認められず、暴行罪だけの判決になった場合、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金である。死刑をはじめとする重刑をよしとする立場ではないが、これではあまりにも均衡を欠いた裁判になってしまう。検察は殺人罪を適用をするべきだった。

事実、I被告は「なめてんのか、殺すぞ」と殺意を口にしている。「高速道路に放り出すぞ」とも脅している。高速道路に放り出すことで、相手が死ぬかもしれないと認識していたのである。無能な検察官はこの意味がよくわからないのであろう。死んでもかまわないと、I被告は被害者をクルマから引きずり出したのである。したがって、殺人罪の要件は成立する。おびただしい冤罪事件、冤罪で獄死まで強要している日本の司法が、事実関係を争わない被告の言い逃れを許そうとしているのだ。

おそらく担当検事はクルマに乗ったことがないか、高速道路で追い越し車線を利用したことがないのであろう。筆者は自動車を手放し、自転車を愛用するようになって10年ほどになるが、高速道路ほど無用なものはないと思っている。それはクルマの利便性を否定したいのではない。利便性や快適性の裏側に、人間が無軌道(道路)上を毎秒27メートル(時速100キロ)で走行するという、とてつもなく無理なシステムがあるからだ。近年は若者がクルマに乗らない(必要としない)ことから、年間の交通事故死傷者も減っている(死者1万人から数千人に)が、膨大な死傷者を生み出す構造は変っていない。だからこそ、自動運転システムの実用が急がれているのだ。

裁判は来週にも判決を迎える。今回は裁判員裁判であり、裁判長の法的な指導に裁判員が異議を唱えられないとしたら、制度そのものの問題点も浮上してくることになるだろう。裁判のゆくえに注目したい。


◎[参考動画]東名の夫婦死亡事故 遺族の思い 6月5日で1年(SBSnews6 2018/06/04公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

板坂剛と日大芸術学部OBの会=編『思い出そう! 一九六八年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

アメリカンフットボール西日本代表に勝ち残った関西学院大学アメフト部「ファイターズ」。他方一見評価に値しそうな回答を出しながら、「調査委員会」は100日経過しても発足せず! 関西学院大学の本質はいかに!?

関西学院大学アメフト部「ファイターズ」は12月2日、立命館大学に勝利をおさめ、甲子園ボールへの出場が決まった。

金明秀(キム・ミョンス)関西学院大学社会学部教授が2016年5月19日、ツイッター上でM君に向けて行った書き込み

一方、金明秀社会学部教授の暴行事件に関しての団交で交わされた約束にそって、回答締切期限の9月22日付けで関西学院大学から、暴行の被害者A先生が所属する「新世紀ユニオン」に回答があった。

ユニオン側から提出を要請した就業規則などの6種の規定の文面と、「調査委員会には大阪弁護士会所属の弁護士が就任する旨」が伝えられた。新世紀ユニオンの角野委員長は、団交の際に調査委員会に第三者を入れることを要請したのに対して、第三者のみで構成される調査委員会の発足が回答されたことに対して、われわれも前向きに評価していた。

しかし「調査委員会には大阪弁護士会所属の弁護士が就任する旨」の回答から100日経っても何の音沙汰もない。新世紀ユニオンは大阪弁護士会に以下の質問を送っている。

─────────────────────────────────────────────

 当ユニオンは組合員であり、学校法人関西学院大学の教授でもある(A)氏への一方的な暴力と、その和解後に加害者の金明秀教授のデマで、まるで被害者が加害者であるかの扱いを受けてきた事案で、当ユニオンは関西学院大学の管理責任を問い、団体交渉を本年8月2日に行い、大学側から調査委員会を作るとの回答を受けました(中略)。

 すでに関西学院大学が当ユニオンに調査委員会の設置を約束してから約3カ月が過ぎており、当ユニオンは関西学院大学側の不誠実な対応に深い疑念を持つに至りました。このような経緯から、貴弁護士会に以下の諸点について質問する次第であります。

(1) 関学側からの依頼はいつ行われたか?
(2) 調査委員会発足はいつなのか?
(3) なぜ1ヶ月も時間がかかるのか?
(4) 委員会の調査が終わるのはいつか?
(5) 委員会に当ユニオンの要望は届いているか?
(6) 調査委員会のメンバーは誰と誰か?

 以上の点について書面にて回答を求めるものです。本状送達後1週間以内に回答をお願いいたします。

 関東の大学はパワハラ事案で、1週間で第三者委員会を作っているのに、なぜ関西学院大学は調査委員会を3カ月経っても発足させることが出来ないのか?
これが当方の疑問であるので、ご多忙も顧みず質問する次第であります。
よろしくお願いいたします。以上 
                             2018年(平成30年)11月12日

─────────────────────────────────────────────

これにさきだつ新世紀ユニオンからの質問に対する大阪弁護士会からの回答が次の通りだ。

─────────────────────────────────────────────

大阪弁護士会
                              会長 竹岡 富美男

質問書について(回答)

 貴ユニオンからの平成30年11月1日付け「質問書」記載事項につき回答します。

 学校法人関西学院からの第三者委員会推薦依頼については、当会内の所定手続きに付し、鋭意対応しております。

 なお、推薦依頼に対する回答については、依頼のあった学校法人関西学院宛てに致しますのでご了承ください。

─────────────────────────────────────────────

設置が、大学側から約束され、組合は「そこに第三者を入れるよう」要望し受け入れられた。回答期限の9月22日、大学側からは「調査委員会には大阪弁護士会所属の弁護士が就任する旨」の連絡が組合にあった。第三者を入れるばかりでなく、弁護士により構成される「第三者委員会」の設置を組合は前向きに評価し、推移を見守った。

ところがいつまで経っても「第三者委員会」の選任連絡がない。大阪弁護士会に問い合わせたところ、「鋭意対応しております。なお、推薦依頼に対する回答については、依頼のあった学校法人関西学院宛てに致しますのでご了承ください」との回答である。要するに「調査委員会の設置を関西学院大学は大阪弁護士会に依頼した。大阪弁護士会は『鋭意対応している』がまだ、調査委員会選任は行われていない(本稿執筆時点)」と理解するしかないだろう。

このやり取りは、複雑なだけに本質を言極めにくい。日大のように尊大な態度をとったり、職員が記者会見で暴言に近い言葉を吐いたりはしない。そこがかえって悪質だといえよう。関西学院大学は大阪弁護士会に調査委員会の選任を依頼したが、そこに「期限」は明示されていなかったのであろう。ここがポイントだ。大阪弁護士会は関西学院大学に対しての回答の義務はあろうが、依頼者ではない組合へ回答する法的な義務は曖昧にされている(道義的にはもちろん回答の義務はあるだろう)。それを計算に入れてのことか否かは判然としないが、関西学院大学は組合ならびに被害者A先生に「いや、大阪弁護士会に依頼したのですが、調査委員会を設置してくれませんから」と逃げ道ができる。
 

金明秀(キム・ミョンス)関西学院大学社会学部教授が被害者と交わした「和解書」

同上

鹿砦社より関学への「適切な対応」を求めるツイッター

同様の暴力事件で関西学院大学ファイターズは社会からその対応を称賛された。一方学内では同僚教員による暴力行為の解決に、まともに取り組んでいない。この対比を無視するわけにはいかない。関西学院大学は学内外に対して「誠実」な大学であるのか、そうではないのか。瀬戸際でその真の姿が問われている。

われわれ取材班の一部には、「関学がそうやすやすとわれわれが望むような形で本件に真摯に取り組むだろうか?」と懸念する者もいたが、われわれも甘かったのかもしれない。

まもなく入試の季節がやって来る。関西学院大学は受験生に対しても、本件暴力事件への取り組みを明らかにすべきだろう。もし真摯に取り組まないのならば、自浄能力がないと判断し、われわれの力で真相を世に明らかにするしかない。

◎[参考資料]新世紀ユニオン委員長のブログ
http://shinseikiunion.blog104.fc2.com/blog-entry-2726.html#comment6825

◎[関連記事]
○金明秀教授暴行問題について関西学院大学から新世紀ユニオンへ調査委員会設置などの回答 鹿砦社はさらなる激烈な戦術選択を宣言!(2018年10月5日)
○【緊急報告!】8・2金明秀暴行&不正問題で関西学院大学と被害者A先生が加盟する「新世紀ユニオン」との団交行われる!(2018年8月4日)
○暴力教授にはしかるべき対処を! 関西学院大学からの回答を批判する!(2018年7月18日)
○【金明秀教授暴力事件続報!】関西学院大学に質問状送付!(2018年7月4日)
○2018年上半期、鹿砦社が投下する最大の爆弾!「関西カウンター」の理論的支柱・金明秀関西学院大学教授の隠された暴力事件を弾劾する! (2018年6月29日)
○検証「みれぱ」としばき隊、カウンター〈1〉金明秀関学大教授と林範夫弁護士(2018年4月28日)
 

(鹿砦社特別取材班)

『真実と暴力の隠蔽』 定価800円(税込)

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

7日発売!月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか

かつて鈴木宗男が辻元清美に「疑惑の総合商社」と呼ばれたことがある。ご両人ともに逮捕・拘留されたのだから、この手の泥仕合は国民にとっても国会にとっても「生産性」がないのは明らかだ。国会審議の邪魔になるのだからこそ、いますぐにも辞めて欲しい。ほかならぬ片山センセイのことである。


◎[参考動画]片山さつき疑惑:逢坂誠二・立憲11/21衆院・内閣委(article9 18/11/21公開)

◆裁判は始まったが、疑惑は増すばかりだ

片山さつき内閣府特命担当大臣(地方創生担当)が原告の名誉毀損裁判は、12月3日に初公判がひらかれた。原告が真面目に裁判をやるつもりなら、次々と明らかになってくる疑惑が活字化された件についても、訴状に補充してさらなる訴訟を提起しなければならない。

10月18日に「週刊文春」で国税100万円口利き疑惑に加えて、政治資金の収支報告書の訂正は40ヶ所以上、総額は500万円にのぼっているからだ。自身が支部長を務める自民党支部の使途不明金疑惑、および支部の南村元「私設秘書」名義物件への賃料支出。さらには著書の名前入り看板掲示、有料カレンダーの配布による公職選挙法違反の疑義と、疑惑は枚挙にいとまがない。

そしてここにきて、政治資金の私的流用疑惑まで持ち上がっているのだ。

 

片山さつき『日本経済を衰退から救う真実の議論』(2010年3月かんき出版)

◆政治資金の私的流用疑惑

すなわち「週刊文春」12月6日発売号によると、片山大臣の政治資金管理団体「山桜会」の収支報告書に「消耗品代」および「お土産用袋代」名目で3万円強の支出があるのだが、その領収書が「きぐるみアザラシバスボール」(入浴剤)10個、「開運だるま貯金箱」5個、「ヒアルロン酸ウェットティッシュ」など28パックだというのだ。およそ政治活動とは関係のない、私的な支出であるのは明白だ。政治資金を生活日用品の購入に充てているのだ。

あるいは、「お土産用袋代」名目ということは、後援会支援者や選挙民への「寄附行為」である可能性も否定できない。いずれにしても、税金と政治カンパからなる政治資金を、私的に流用していたのは疑いのないところだ。

そればかりではない。「週刊文春」が報じるところ、2014年から2015年にかけて不正経理の疑惑が浮上しているのだ。具体的にみていこう。片山大臣の政治団体「片山さつき後援会」から「自民党浜松支部」に支払われた6万円が、なぜか同支部の収入には記載がなく、「山桜会」に6万円の記載があるのだ。単なるミスではない証拠に、「後援会」と記載のある領収書が「山桜会」に130件550万円も計上されているのだ。

政治資金に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授の見解によれば、以下のとおりだ。

「収支報告書記載の根拠となっている領収書の宛先が別の政治団体というのは、政治資金規正法を遵守する気がないと言っていいでしょう。今回のケースは収支報告書の虚偽記載となります。仮に領収書がウソのものだった場合でも、提出すべき領収書を徴収できなかった不徴収ということになり、これも政治資金規正法違反の疑いがあります」

まもなくサラリーマン諸兄姉は、税金の年末調整の時期である。自営業者は確定申告の準備に入ることだろう。税金(歳費)と政治カンパで生活と政治活動をしている国務大臣がこの体たらくでは、納税を納める気になれないのではないか。

◆自民党、自分の事務所からも批判の嵐が

詳しくは発売中の週刊誌を読んでいただきたいが、本欄でも再三指摘してきたとおり、片山センセイの「上から目線」および「パワハラ」まがいの言動は酷いようだ。自民党の選挙では自分の「為書」が選挙事務所に貼ってないことに激昂したり、呼ばれてもいないイベントで自分をアピールする。

とりわけ現況の週刊誌報道では、選挙応援そのものが迷惑千番というものであろう。そして呆れた行状(秘書に「あんたは私の使用人だ!」=そうかも知れないが、その原資は税金なのに、ふつう言うか?)がここまで暴露されるのも、自業自得というものだ。ある意味では本気で自分のようなエリートは、何を言っても許されると思っているからだろう。次回公判は年明けの1月16日に行われる。


◎[参考動画]“未来の日本”スーパーシティ構想で方針まとまる(ANNnewsCH 18/11/26公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

7日発売!月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

以下の文章、主要部分は、『NO NUKES voice』16号に掲載した内容と重複するが、日々「東京五輪」めく日常の異常さに耐え切れないので、お読みになっていない方にも知っていただきたく、ここに再度内容を改め掲載する。

もとより近代オリンピックはスポーツの祭典ではあるが、同時に国威発揚の道具として利用されてきた。さらに「アマチュア規定」(オリンピックにはプロスポーツ選手は参加できない)の撤廃により、1988年のソウル五輪からプロのアスリートが参加するようになり、雪崩打つように商業的な側面が肥大化した。いまや五輪はイベント会社やゼネコン、広告代理店にとっての一大収入源と化している。2020年東京五輪は、安倍や新聞広告がどうほざこうが、明らかに「巨大な商業イベント」である。

現在IOCはスポンサーを「ワールドワイドオリンピックパートナー」、「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」の三つのカテゴリーに分けている。「ワールドワイドオリンピックパートナー」は「TOPパートナー(もしくはTOP)」とも呼ばれ、直接IOCと契約をしている企業で、基本一業種一企業とされている。年額数十億円のスポンサー代のほかに、当初契約料(かなりの高額であることが想像されるが、確定的な額は不明)を支払い、世界中でオリンピックのロゴやエンブレムを使用することが許される。ちなみにトヨタは10年で1000億円の契約を結んだと報じられているので、単年度あたり100億円という巨額を投じていることになる。現在下記の13社がTOPである。

コカ・コーラなどはおなじみのロゴだが、念のために社名を紹介しておくと、Atos、Alibaba、Bridgestone、Dow、GE、OMEGA、Panasonic、P&G、SAMSUNG、TOYOTA、Visaだ。かつてはこのなかに「マクドナルド」の名前があったが、世界体な経営不振で撤退したようだ。一業種一企業というが、サムソンとパソニックはともに家電を作っている。

「TOP」と異なり、「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」は開催されるオリンピック組織委員会との契約し、国内に限りロゴやエンブレム、その他イベントの共催や参加が認められる。スポンサー代、使用諸権限とも「ゴールドパートナー」が「オフィシャルパートナー」より上位だ。「ゴールドパートナー」には、

の15社の名前があるが、問題なのは「オフィシャルパートナー」である。

最終列にある「読売新聞」、「朝日新聞」、「NIKKEI」、「毎日新聞」の名前を見落とすわけにはゆかない。全国紙のうち実に四紙が「東京オリンピックオフィシャルパートナー」という呼称の「スポンサー」になっているのだ。産経新聞は広告費を捻出する余裕がなかったのであろうか。いや、

スポンサーの位置づけの中では最下位だが、「オフィシャルサポーター」の中に「北海道新聞」とともに、「産経新聞」の名前が確認できる。つまりすべての全国紙と北海道新聞は公式に東京五輪のスポンサー契約を結んでいるのだ。

わざわざ金を払い、スポンサー契約を結んだイベント(東京五輪)の問題を指摘する記事を書く新聞があるだろうか。批判することができるだろうか。さらには「読売新聞」は「日本テレビ系列」、「朝日新聞」は「テレビ朝日系列」、「毎日新聞」は「TBS系列」、産経新聞は「FNN系列」のテレビ局群が連なる。大手新聞、テレビ局がすべてスポンサーになってしまい、東京五輪に関しての「正確な」情報が得られる保証がどこにもない。そんな状態の中で「東京五輪翼賛報道」が毎日流布されているのである。

東京五輪組織委員会はスポンサー収入の詳細を公表していない。しかし、上記の金額とスポンサー企業数からすれば、東京五輪のスポンサー収入が1000億円を下回ることは、まずないだろう。短絡的ではなるが、日本に関係のない大企業がいくら金を出そうが、それはよしとしよう。しかし日本企業で10億、100億という金を「広告費」の名目で「五輪スポンサー代」に払っている企業は薄汚い。経費で計上すれば法人税課税の対象にならないじゃないか。ちゃんと法人税を納めろ。

その中に全国紙5社と北海道新聞も含まれる「異常事態」は、何度でも強調する必要があろう。東京五輪は、財政潤沢な東京都、日本国で開催されるわけではないのだ。安倍は大好きな海外旅行(外遊というらしい)に出かけるたびに、気前よく数億、数十億、あるいはそれ以上の経済支援や借款を約束して帰ってくるが、日本の財政は破綻寸前だ。それに、東日本大震災、わけても福島第一原発事故はいまだに収束のめどもつかず、「原子力非常事態宣言」は発令されたまま。忘れかかっているが、わたしたちは「非常事態宣言」の中毎日生活している。

人類史上例のない大惨事から、まだ立ち直れていない原発事故現場から250キロの東京で、オリンピックに興じるのは正気の沙汰だろうか。私はどう考えても、根本的に順番が間違っているとしか思えない。緩慢な病魔に侵されているひとびとが確実に増加している現実を隠蔽し、「食べて応援」を連呼し、少しでも危険性に言及すれば「風評被害」と叩きまくる。チェルノブイリ事故の後、日本では放射性物質に汚染した食物の輸入規制を強めた。基準を超えた食物は産地に送り返した。と言ったって、ロシアのキエフ産の農作物などではなく、主としてドイツやイタリアからの輸入品だった。

この差はなんなのだ。どうして庶民は、平然と汚染食品を食っていられるのだ?避難者は、公然と20ミリシーベルト被爆する地域に送り返されるのか?それは全国紙を中心とする報道機関が、こぞって東京五輪のスポンサーになるほど、ジャーナリズムなどという言葉は忘却し、もっぱら営利企業化してしまっているからだ。彼らはもう「事実」や「真実」を伝えてくれる存在ではない。そのことを全国紙すべてが東京五輪のスポンサーになっている現実が物語る。恥ずかしくはないのか? 全国紙の諸君? 戦前・戦中同様、そんなにも権力のお先棒を担ぎたくて、仕方ないのか? 日本人はどこまでいっても救いがたく愚かなのか。

全国紙や大マスコミの社員ではなくとも、個々人が同様の「歪な加担」に乗じていないか、点検が必要なようだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

平均寿命が延び、高齢の親御さんやご親戚家族の健康について、悩みを抱える方が多いのではないでしょうか。私自身、予期もせず元気で健康、快活だった母の言動に異変を感じたのは数年前のことでした。そして以降だんだんと認知症の症状が見受けられるようになりました。今も独り暮らしを続ける89歳の母、民江さん。母にまつわる様々な出来事と娘の思いを一人語りでお伝えしてゆきます。同じような困難を抱えている方々に伝わりますように。

◆グルグル歩いているうちに熱中症に

今回は、認知症の母が道に迷ってしまった時のお話です。

私自身、大型ショッピングセンターで買い物を済ませ駐車場へ戻った時、車を止めた場所がわからなくなることがあります。広い駐車場、たくさんの知らない車、この中から自分の車を見つけることができるのかと恐怖に近いものを感じました。昔はそんなことはなかったので、おそらくこれも老化現象の一つでしょうけれど、こんなことを経験したお陰で、『高齢者が、突然自分の立っている場所がわからなくなる』とは、どんな感覚なのか、少しだけわかるような気がしました。

昨年の夏のこと、「もしもし」民江さんの携帯電話から男性の声で電話が掛かってきました。認知症の症状が目立ってきた頃でしたので、私はとっさに「いよいよ警察か」と構えたところ、救急隊の方でした。街で熱中症になり倒れてしまったそうで、病院に搬送するから迎えに来るようにという連絡でした。そして最後に付け加えられたのは、「ご本人嫌がっていますけど、無理やりお連れしますから。ご了承ください」でした。

たまたま病院が姉の家の近くでしたので、この日は姉に迎えに行ってもらうことにしました。が、病院からは「点滴を抜いたりして大変なので早く来てください。何時ごろになりますか?」「まだですか。では、お姉さんの電話番号を教えて下さい」と二度も電話がかかってきました。幸い熱中症の症状は落ち着いたようで、病院スタッフは暴れていることに手を焼いているご様子です。しばらくして姉が到着し、途端に静かになったそうです。安心したのでしょう。

いつもの店に行くつもりの道がわからなくなり、グルグル歩いているうちに熱中症になったようですが、こんなことは初めてでした。本人は自分が倒れたことに加えて救急車で病院に連れて行かれたことで、余計に混乱し興奮したのでしょう。私が駐車場で体験した恐怖より、何倍も怖かったはずです。それにしても、フラフラになった民江さんに声を掛けたり、救急車を呼んだり、なだめたり、飲み物を買ってくださったりと、通りすがりの方々が足を止めて介抱してくださったことと思います。おかげで大事に至らず済みました。

 

◆危なかったけれど、有難かった出来事

二度目は今年の1月のこと、仕事の移動中になぜかふと思い立って民江さんに電話を入れました。すると、「なっちゃん……わたし○○で道がわからなくなっちゃって、今送っていただいいてるの」「な、なんで? 誰に? どこまで?」 どうやら電車に乗って街へ行き、いつものお店でお昼ご飯を食べて駅に向かったが、○○で道がわからなくなり、通りすがりの方に家まで車で送っていただいている、ちょうどその最中のようなのです。

驚いて言葉に詰まっていると、「もしもしお電話かわりました。娘さんですか? 怪しい者ではありませんから。お母さんに名刺をお渡ししました。お母さんが△△で道に迷っていらっしゃるご様子だったのでね、今おうちまでお送りしていますのでご心配なく。おうちは××で間違いないですね。いえいえ、たまたまついでがありましたから、大丈夫ですよ」と年配の男性の声。

お言葉に甘えてそのままお願いし、丁寧にお礼を言って電話を切りました。なんと親切な方でしょう。家は車で30分以上かかる住宅街です。「ついで」って、そんなことありますか。そしてこんな親切な方にめぐり逢うことができた民江さんはなんと幸運なのでしょう。後日、お礼状を書こうと名刺を探しましたが見つかりませんでした。恩人の名刺をどこかに失くしてしまったとは、つくづくがっかりですが……仕方ないですね。危なかったけれど、大変に有難い出来事でした。

道に迷うということは、場所を認識する能力が低下し、見慣れたはずの場所が突然全く知らない場所になってしまうのでしょうか。恐怖と不安で混乱し、暴れたり怒ったり、感情が制御できなくなるのかもしれません。民江さんは足腰が丈夫なので、積極的に出かけてほしいと思っています。けれど親切な方々のご厚意によって大事を免れていることと、これからまたこのようなことが起きるかもしれないということを、私は強く心に留めておかなくてはなりません。医者が言うようにGPSを持たせなくてはならない日が来るのでしょうか。

 

▼赤木 夏(あかぎ・なつ)[文とイラスト]
89歳の母を持つ地方在住の50代主婦。数年前から母親の異変に気付く

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

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