「まったく……ろくな世の中じゃない」、「野党は情けないし、マスコミは頼りないし」。日本全国で、心あるひとびとが肩を落とす姿と、吐き出す嘆きが聞こえる。無理もないだろう。「合法的外国人奴隷労働法」(改正入管法)が、拙速に強行採決され、準備不足を政府も認める中、来年4月から施行するという。

見ているがいい。非人道的な労働環境で働かされる外国人労働者の激増は、政府や経団連どもがもが、腹黒く得ようとした「安価な労働力」ではなく「非人道的な外国人労働者の扱い」として必ずや社会問題化するだろう。

思いだそうとしたところで、あまりに悪法や、悪政が山積しているので、正直なところ、今年の初め頃、何が起きていたのかを正確に記憶だけでは再生ができない。それほどに散々な日常にあって、「本当のこと」、「真実に依拠した言論」、「権力者や社会的に認められている権威への抗議」をまとまって目にすることができる雑誌が極めて少なくなった。

『NO NUKES voice』 18号は、上記のような憤懣やるかたない言論状況に、どうにもこうにも腹の虫がおさまらない、真っ当な感覚を持つ読者諸氏に向けて、鹿砦社から最大級の「お歳暮」と評しても過言ではないだろう(購入していただく「お歳暮」というのはおかしな話ではあるが)。

 

孫崎 享さん(撮影=編集部)

◆孫崎享さんが語る日本「脱原発」化の条件

『戦後史の正体』で日米関係を中心に戦後の日本史を読み解いた、元外務官僚の孫崎享(うける)さんが外務諜報に長年かかわった経験から〈どうすれば日本は原発を止められるのか〉を語る。ベストセラーとなった『戦後史の正体』が世に出てから、孫崎さんはテレビ、新聞などに頻繁に登場していたが、最近ではその頻度が極端に少なくなっているように思える。孫崎さんの主張が時代遅れになったり、風化したから孫崎さんの登場が減っているのではない。時代やメディアが孫崎さんを「危険視」しているからではないだろうか。そうであれば『NO NUKES voice』 にこそご登場いただこうではないか。

◆小出裕章さんと樋口健二さんは東京五輪とリニア建設に反対する

小出裕章さんと樋口健二さんが同じイベントで、講演、対談なさった記録も「すっきり」読ませてもらえる。怒らない小出さんと、いつも怒っている(失礼!)樋口さん。しかしご両人ともが抱く、危機意識と怒りは年々増すばかりであることが、回りくどくない言葉から伝わるだろう。

樋口健二さんと小出裕章さん(撮影=編集部)

 

中川五郎さん(撮影=編集部)

◆鶴見俊輔の精神を受け継ぐフォークシンガー、中川五郎さん

中川五郎さんは、音楽を武器に「反・脱原発」戦線の先頭でひとびとを鼓舞する、貴重な存在だ。中川さんの楽曲もさることながら、インタビューで直接的な問題意識は原発問題社会問題に立ち向かうときの、普遍的な視点を示唆するものだ(とはいえ、中川さんの演じるライブを聞かれるに勝る迫力はなかろうが)。

◆鎌田慧さん、吉原毅さん、村上達也さん、おしどりマコ・ケンさんらが訴える東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会の熱気

東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会に集った、鎌田慧さん(ルポライター)、吉原毅さん(反自連会長・城南信用金庫顧問)、村上達也さん(東海村前村長)、おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ・ジャーナリスト)の発言は、「本当に東京が住めなくなる可能性が極めて高い」東海第二原発の危険性をそれぞれの立場から、強く訴える。

 

おしどりマコ・ケンさん(撮影=大宮浩平)

◆タブーなき連載陣ますます充実──冤罪被害者・山田悦子さん、行動する思想家・三上治さん、闘う舞踊家・板坂剛さん等々

連載「山田悦子が語る世界」、本号のテーマは「死刑と原発」だ。この夏オウム真理教関連の死刑確定囚13名に死刑が執行された。いまだに「被害者感情」や実体のない「犯罪の抑制効果」にのみ依拠して、「死刑」を存置する日本。この問題についての山田さんの論文には熱が入り、本号と次号で2回に分けての掲載となった。「死刑」を根源から考える貴重なテキストであり、国家や原発との関連が浮かびされてくる。

板坂剛さんの〈悪書追放キャンペーン 第一弾 百田尚樹とケント・ギルバードの「いい加減に目を覚まさんかい、日本人」〉は、板坂流似非文化人斬りが、ますます冴えわたっている。どうしてこんなしょうもない本が売れるのか?不思議な二人。その答えは二人ともが「嘘つき」の腰砕けだからだ。そのことをこれでもか、これでもか、と看破する。面白いぞ! 板坂さん! もっとやれ!

その他、鈴木博喜さんの〈福島県知事選挙”91%信任”の衝撃〉、伊達信夫さんの〈「避難指示」による避難の始まり〉など福島の事故当時、現在の報告が続く。

全国からの運動報告も盛りだくさんだ。

右を向いても、左を向いても「読むに値する雑誌がない」とお嘆きの皆さん!ここに心底「スッキリ」できる清涼剤がありますよ!『紙の爆弾』同様に、この時代他社では、絶対(といっていいだろう)出せない本音満載の『NO NUKES voice』 18号。お買い求めいただいて損はないことを保証いたします。

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM1WMYM/

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。