2011年3月11日に福島原発「事件」が起こってから、「新エネルギー」として風力、太陽光、地熱、バイオマスなどを利用した電力発電が注目されるようになった。

しかしながら、近年は「環境保全」よりも「投資」の方に目的が大きくなってしまっている。その結果、本末転倒的なトラブルが生じている。とりわけメジャーな太陽光発電と風力発電に着目したい。太陽光発電を例に挙げると、メガソーラー発電所開発による景観破壊、森林破壊、土砂崩れ、廃棄パネルの処理問題が噴出してきている。もう一つ、風力発電を例に挙げると、風車の回転に伴う騒音問題、低周波音による健康被害、風車と鳥との接触などが起きており、やはり問題は多い。

これらに共通するのは、集約的に巨大な発電所を建設し電線を通じて消費地にトップダウン式に送電するという点である。スマートグリッドという、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網も開発されてきているものの、やはり電力を生み出し送るのは発電所側からという図式は同じだ。これでは、発電所や電線を所有する電力会社がいつまでも圧倒的に有利な力を持ち続ける。新電力の参入がよく聞かれるようになったが、送電網は東電や関電など大手電力会社が握っている。彼らが新電力に不満を持てば、いつでも送電線の利用料金を上げることもできる。また、新電力の送電線利用を拒否することも可能である。

太陽光発電や風力発電は火力発電や水力発電などに比べると小型化しやすく、家庭レベルで自家発電が可能である。高地の山小屋などでは、平地から電線を引くのが困難なので、発電用のソーラーや風車を備えている小屋もある。他にもモンゴルのゲルのそばにソーラーが設置されている映像を見かけることもある。太陽光発電や風力発電の強みは家庭レベルで、それを実施できるという点にある。現在はもっぱら投資のために大規模かつ集約的に発電所が開発され、太陽光発電や風力発電が持つ本来の強みが全く無視されているといっても過言ではない。

[図1]

このような背景から今後、発電システムが向かうべきは各家庭が自然エネルギーで自家発電を行い、電力会社(特に東電などの大手)の影響を排除して直接互いに電力を融通しあうというモデルであると私は信じている。

今の時点でも私が考案しているシステムがある。家庭間(企業や公共施設も含む)の無線送電システムである。[図1] このシステムの狙いは、①電力の市民レベルでの自給化、②平時における地域全体の電力最適化と災害時における遠距離の被災地への電力供給である。

システムは以下の通りである。家庭においてソーラーや風力で自家発電する。その電力で家電を動かすのであるが、各家電の消費電力状況のデータをサーバーで保存し、スマートフォンやPCで閲覧できるようにする。同時に集まった電力状況のビッグデータをAIで分析し、不足世帯へ無線LANのように無線送電(手動か自動)を行うなどして、地域の電力を最適化する。また被災地にも電力融通が可能である。[図2]

[図2]

今は化石燃料にせよ自然エネルギーにせよ大規模な発電施設を建設した上で、送電線を用いてトップダウン式に各家庭に送電している。地震や台風で電柱が破損した場合、その地域での送電システムは全く機能しなくなる。さらに電力会社にも普段から電気料金を支払わなければならない。私が想像するのは、各世帯の自家発電からの相互ネットワーク的な無線送電システムである。これならば普段から電力会社に料金を支払う必要はなくなる(あるいは少なく支払うだけで済む)ので、生活費は節約される。また被災時も、無事な遠隔地から電力が無線送電されるので、ニュースで報じられるような電柱の破損や発電所の被災について心配する必要性は少なくて済む。

最後になるが「持続可能な開発目標(SDGs)」という言葉が近年は注目されている。
日本においても、製薬大手が熱帯病の治療薬を無償で新興国に提供したり、鉱山会社がフィリピンで精錬に使わない鉱物の堆積場を緑化したりするなど企業間で動きがある。このようにSDGsを率先して行う企業こそが評価される時代になりつつある。ICTのエンジニアも含め諸分野の技術者はもちろん、財界人も会社勤めのサラリーマンもSDGsを意識しながら、日ごろからいかに活動すべきかを肝に銘じるべきだろう。そのようなことを真剣に考えていれば、もはや将来性のない原発の再稼働や単なる金儲け目的での自然エネルギーへの投資といった事態は起こらないはずである。

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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