大声で「韓国人なんて嫌いだ!」と叫びまくったばかりか、空港職員を蹴ったり殴ったりして日本の恥を世界にさらした官僚がいる。厚生労働省の武田康祐賃金課長(前職・47歳)である。
武田前課長は3月16日から4日間、私的な旅行で韓国を訪問していた。国家公務員が海外渡航する場合は届け出が必要だが、しかるべき手続きもしていなかったという。国会開会中の課長クラスの管理職の外遊(有給休暇)も、通例では珍しいいことだという。かようなルール違反のうえに、外国で暴言・暴行をはたらいたのである。泥酔状態だった。
取り押さえられてからも、自身のフェイスブックで「なぜか警察に拘束されています」「変な国です」などと投稿し、恥の上塗りをしている。そもそも「嫌いな国」「変な国」をなぜ訪問したのか、この官僚こそ「変」ではないか。
◎[参考動画]만취 일본인, 공항서 물건 집어던지고 발차기 폭행 난동(JTBC News2019/3/19公開)
◆韓国労組が謝罪と賠償を要求するも、日本政府は沈静化にやっき
武田前課長はなぜか無事に帰国し、厚生労働省は官房付に更迭したが、民間人なら韓国警察に逮捕・起訴されているところだろう。当然、民間のサラリーマンなら逮捕・起訴された時点でアウト。懲戒解雇である。
韓国側の措置は他国の高級官僚を逮捕することで、外交問題に発展するのを怖れての起訴猶予だったに違いない。この措置のどこが「変な国」なのだろうか。
当然にも、被害者である大韓航空の労働組合は、日本政府(大使館と厚生労働省)にたいして「武田氏の謝罪と賠償」を求めてきた。それが容れられない場合は、公務員資格の剥奪につながる実力行動に出るとしている。暴行罪という犯罪をおかしたのだから、これまた当然の要求であろう。日本国民の血税で食べている国家公務員なのである。事件を起こした段階で、すぐさま懲戒解雇処分が出てしかるべきだった。ところが、日本政府には処分以上の動きはみられない。これでは韓国を「変な国」という役人を庇護することで、「徴用工問題」での韓国の対応を「変な国」としている態度が、そのままブーメランとして返ってくる。日本こそ「変な国」になってしまったのである。
◎[参考動画]韓国の空港で暴行騒ぎの元課長 「厳正に対処」(ANNnewsCH 2019/03/22公開)
◆学歴でストレスも
ところで、武田前課長は、国家公務員1種試験に合格した、いわゆるキャリア組である。47歳で課長職に登りつめ、局長レース、次官レースを競うエリートである。その赫々たる経歴を紹介しておこう。労働省(当時)入省から8年目に児童家庭局の課長補佐に就任し、鹿児島労働局の総務部長として地方でのキャリアも積んでいる。そして本省にもどって政策統括官付参事官室長補佐、海外に転出しては在タイ日本大使館一等書記官、2015年に内閣官房一億総活躍推進企画官、2016年に内閣参事官(働き方改革実現推進室)、そして2017年に課長就任である。出世レースではトップクラスを走っているというべきであろう。
ただし、ひとつだけ経歴に難があるとすれば、出身大学が明治大学だということだ(筆者も明大卒だ)。まず1種試験に合格しただけでも優秀の証しだが、東大法学部で占められる官僚のキャリア社会では、ストレスが溜まることが多かったのではないか。たとえば「(東大法学部の)何年卒?」と訊かれ、その年度序列において人間関係が決まるのが、厚生労働省のみならず霞が関高級官僚の常識だからだ。京大卒や早慶卒でも「珍重」されるのだという。そこで、蓄積したストレスの発散のために、武田前課長はルール違反の外遊を行なったのではないか。一部の報道によると、韓国に入国する前はタイにいたという。かつての赴任地で、かれは何をしていたのだろうか。
それにしても、恥ずかしい「ヘイト官僚」である。上記の出世の背景に、やはり学歴コンプレックス(三菱資本の成蹊大卒)のある安倍晋三総理の力が働いている(官邸主導の官僚人事)のは明らかで、その意味ではエリート官僚が安倍政権の推進を担い、あるいは「ヘイト活動」で「政治的」に突出することで地位を得たものの、そのストレスで非常識な外遊、そして非常識な言動に出たと言えるのではないだろうか。ここでも安倍政治の弊害がひとつ、明らかになったというべきであろう。
▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)