現在沖縄県では、日本当局による辺野古新基地の建設強行やそれまでの歴史的経緯も踏まえ、「琉球独立」に関する議論が本格的な行われている。琉球独立党の系譜を受け継ぐ「かりゆしクラブ」は2015年に、他の独立派と共に日本政府に対して琉球の独立を主張。また、2013年は松島泰勝・龍谷大学教授や友知正樹・沖縄国際大学教授、桃原一彦・沖縄国際大学准教授らによって「琉球民族独立総合研究会」が設立されている。他にも、沖縄県民の中には日本社会への反発からか本土を「日本」と呼んで他国のように認識している人もいる。

今の日本では「独立」に関する議論は琉球列島のみで認知されているが琉球に限定せずに、今の安倍政権に不満を持つ者であれば誰であれ、独立・建国という手法について議論してもよいのではないかと思う。そもそも現状を見れば、共謀罪成立や裁判所の腐敗(極端に言うともはや存在意義なし)、主要メディアの大政翼賛会化、選挙での自公の連戦圧勝などでもはや政治参加による改革は絶望的と言わざるを得ない状況になっている。

伊豆諸島の地図。「大島」が伊豆大島

◆かつて存在した伊豆大島独立論

敗戦直後、ある島が日本からの独立について考えたことがあった。それは伊豆大島である。伊豆大島と言えば、川端康成の「伊豆の踊り子」や三原山の大噴火、椿の生産などで有名な島である。東京の竹芝桟橋から南に120㎞、夜行船で揺られること8時間、伊豆諸島のもっとも北に位置し、他の新島や式根島などに比べても人口も多く土地も広い島である。

伊豆大島の独立構想についての新聞記事(『幻の憲法「大島大誓言」が行方不明に』)や当時の関係者へのインタビューや資料の整理を実施した『伊豆大島独立構想と1946年暫定憲法』(榎澤幸広、名古屋学院大学論集 社会科学篇 第49巻 第4号 pp125-150)という論文がある。

この論文によると、1946年1月下旬~3月22日の間に島民たちが自力で伊豆大島暫定憲法(正式名称・大島大誓言。以下、大島憲法)を策定したという。当時は島内に法律専門家がおらず、一人一人が持てる知識を生かして考案したようである。

大島憲法が制定されるに至ったきっかけは、1946年1月29日のGHQ覚書(正式名・「日本からの一定の外辺地域の政治的行政的分離」)にあった。この中で、琉球諸島や小笠原諸島などとともに伊豆大島も日本政府の統治領域から除外されることになった。

この情報を得た伊豆諸島の各島では、異なる反応があった。利島では日本への復帰を求める運動が起き、式根島では日本からの分離については噂程度にとどまったので大きな運動はなかった。伊豆大島・八丈島・三宅島では独立を模索する方向に向かった。この中で、もっとも具体的に独立が議論されたのが伊豆大島であった。

1986年に大噴火を起こした伊豆大島の三原山。黒いのが溶岩の流れた痕跡

日本からの分離となると、米軍の支配を受ける可能性が高くなる。そうなるなら、自分たちで独立しようという考えであった。この流れの中で、島の関係者が集まって大島憲法が作成されていくことになる。

この大島憲法が考案されるより前に開かれた大島島民会では大島憲法につながる理念の整理が実施された。そこでは、「軍国主義が破滅への道を開いたこと」「戦争を疑わずに国家に協力したことで島を悲惨な状況に導いたこと」「理想郷を作り、世界平和に貢献すること」などといったことがまとめられていた。

その後、作成された大島憲法は島民を主権者とする統治体制、直接民主主義的な要素、議会解散や執政不信任に対する有権者による賛否投票、平和主義の強調などの趣旨を盛り込んでおり、日本国憲法との共通点を持つ。

驚くべきは憲法を作ったのは、島民たちでその中に法律の専門家は全くいなかったということである。作成に関わった者の職業は大工、茶屋の主人、教師などであり、彼らは文献や新聞で法律に関する知識を得て社会活動に関わっていたものの、決して専門家ではなかった。法律については「素人」といっても過言ではない彼らが、ましてや憲法を作ろうとすることは並大抵のことではなかった。

今日、高度な法知識を持ちながら、原発の再稼働を容認したり取り調べで被疑者の自白を「証拠」と認めるような「裁判官」や冤罪を度々引き起こしながら平気な顔をしている「検察官」がいるが、彼らは法の「専門家もどき」である。いかに法の知識を持っていようと、正しく法を運用できず正義を守れない者が「法の番人」を名乗る資格などない。大島憲法を作った者たちのように、素人であっても正義を重んじ、まさに「人の道」に沿った法の運用をしようと者たちこそ「法の番人」にふさわしい(つづく)。

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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