ファンが見極める技量審査場所とも言えるジャパンキックボクシング協会プレ旗揚げ興行の見せ場。MA日本キックボクシング連盟、NKB、フリーのジムとの交流戦、日本vsタイ国際戦で盛り上げました。
もう交流戦なくして新鮮な好カードは成り立たない時代になってきました。それほど一つの団体だけでは鎖国的で、置かれたレベルが分かり難くなり、切磋琢磨するレベルの高い試合は臨めないということでしょう。また、分裂細分化によって特定の団体と交流し易くなったという声もあり、「分裂する傾向を上手く利用した方が話が纏まり易く好都合」と言えるのも時代は変わったものです。
そんなこの団体での次の時代を担う者、石川直樹、瀧澤博人に続く、馬渡亮太と皆川裕哉には期待が掛かるところです。
「ジャパンキック協会は僕が盛り上げていきます」
ほぼ同じコメントを残し、エース格を自覚する瀧澤博人と馬渡亮太。また石川直樹と皆川裕哉も同じ気持ちでしょう。石川直樹は8月4日の旗揚げ本興行でもメインイベントを務めたい意向を示し、更に前・日本フェザー級チャンピオンの石原将伍も居るこの新団体でのメインイベント争いも勃発しそうなところです。
ジャパンキックボクシング協会代表は長江国政氏(本名・長江國正)が就任しましたが、足の怪我による車椅子での移動でリング上での御挨拶はありません。8月4日の旗揚げ本興行にて行なわれることでしょう。
◎KICK-Origin / 2019年5月12日(日)後楽園ホール17:00~21:10
主催:治政館ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
◆第12試合 52.5kg契約 5回戦
JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/52.3kg)
VS
儀部快斗(エクシンディコンJAPAN/52.4kg)
勝者:石川直樹 / TKO 5R 2:23 / 主審:仲俊光
第1ラウンド、ローキックで先手を打った儀部快斗。石川は表情に表れないが、このまま攻め続ければ儀部が主導権を握りそうな勢いだが、石川も組みついてのヒザ蹴りを狙い、これが儀部へのプレッシャーとなっていく。
第2ラウンド以降も石川のヒザ蹴りが厄介そうで、儀部は蹴る見映えはいいものの、ローキックを更に効かせていく積極さは無く、突破口を開こうと時折バックハンドブローをみせるようになる。
石川はヒザ蹴りの圧力を掛け続け、徐々にタイミングを掴むもまだ圧倒まで至らず、第4ラウンドまでは三者三様の採点だった。39-38.39-39.39-40(後の公式記録より)。
第5ラウンドには組み合った状態からヒザ蹴りが入って儀部快斗が怯むと一気に攻勢に転じ、組み付いてのヒザ蹴りラッシュを掛けた石川がノックダウンを奪った上、更にヒザ蹴り猛攻を続け、動きが止まった防戦一方の儀部快斗をレフェリーが止めるTKO勝利に導いた。観る側のストレス発散となるような劇的ノックアウトで設立興行のメインイベンターの大役を果たしました。
◆第11試合 チェンマイスタジアム・バンタム級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン.馬渡亮太(治政館/53.35kg)
VS
挑戦者同級1位.ペットモンコン・ソー・ジンンジャルンカンチャン(タイ/52.75kg)
勝者:馬渡亮太 / KO 5R 0:45 / 主審:椎名利一
第1ラウンド、ムエタイ特有のリズムで探る静かな様子見。蹴り中心から馬渡が圧力掛け始め、ペットモンコンは強い蹴りを返すがロープ際に下がり気味。馬渡のリズムが優っていくと組み合う展開多くなり、パンチからヒジ、ヒザ蹴りへ繋ぐ。ペットモンコンは馬渡の前進を止められない。
第4ラウンドまでは馬渡が優っていたと見えたとおり、40-37、40-38、40-38の採点(後の公式記録より)。
第5ラウンドには一瞬の隙をついて出た馬渡の猛攻。ペットモンコンのハイキックをかわしてパンチで攻めると後退したペットモンコンのボディーにヒザ蹴りを突き刺し、ノックダウンを奪う。ペットモンコンは苦しそうな表情で立ち上がるも、そのダメージを深いと見たレフェリーはテンカウントを数えた。
◆第10試合 フェザー級3回戦
瀧澤博人(元・日本バンタム級C/ビクトリー/57.15kg)
VS
ニシャオ・ソー・ジンジャルンカンチャン(タイ/56.8kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 3R 2:21 / 主審:松田利彦
第1ラウンド、長身の瀧澤が距離感を上手く掴み、ローキック、接近するとパンチ、ヒジで距離をとって迎え撃つ。
第3ラウンドにはニシャオが右ストレートを打って出たところに瀧澤は右ヒジ打ちカウンターさせ、ニシャオの額にヒットすると、すぐそこが窪んだ跡が見えた。
瀧澤のアピールと共にレフェリーが気付きドクターチェックされ、試合続行不可能が勧告されるとレフェリーが受入れ試合終了となった。
◆第9試合 58.0kg契約3回戦
JKAフェザー級1位.皆川裕哉(KICK BOX/57.85kg)
VS
ペットワンチャイ・ラジャサクレックムエタイ(タイ/57.75kg)
勝者:ペットワンチャイ / 判定1-2 / 主審:少白竜
副審: 椎名30-29. 仲29-30. 松田29-30
皆川の蹴りからタイミングを見計らった右ストレートが軽いがヒット。スピーディーな蹴り合いにテクニシャンのペットワンチャイも勢い衰えない余裕の応戦。
皆川は打ち負けてはいないがペットワンチャイは蹴りの的確さと崩し技で優ったか。判定は1-2だが、第1ラウンドは三者とも10-10の後、三者共通のポイント差は無く、内容的には互角か皆川がやや優った印象は受けた。
◆第8試合 63.0kg契約3回戦
JKAライト級5位.興之介(治政館/62.95kg)vs MA日本ライト級2位.翼(菅原/62.9kg)
勝者:興之介 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名30-28. 少白竜30-29. 松田30-28
◆第7試合 54.0kg契約3回戦
JKAバンタム級3位.幸太(ビクトリー/53.85kg)
VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館/53.8kg)
勝者:海老原竜二 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:桜井28-29. 少白竜28-29. 松田29-30
◆第6試合 フェザー級3回戦
JKAフェザー級2位.櫓木淳平(ビクトリー/56.9kg)
VS
JKAフェザー級3位.渡辺航己(JMN/56.85kg)
勝者:渡辺航己 / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:桜井28-30. 少白竜28-30. 仲28-30
◆第5試合 バンタム級3回戦
JKAバンタム級5位.田中亮平(市原/53.3kg)
VS
JKAバンタム級6位.翼(ビクトリー/53.4kg)
勝者:翼 / TKO 3R 1:07 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:松田利彦
◆第4試合 63.0kg契約3回戦
JKAライト級4位.林瑞紀(治政館/62.8kg)vs HARUKA(JMN/63.1→63.0kg)
勝者:林瑞紀 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-27. 松田30-26. 仲30-27
◆第3試合 ウェルター級3回戦
モトヤスック(治政館/66.4kg)vs山本大地(誠真/66.5kg)
勝者:モトヤスック / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-28. 松田30-28. 少白竜30-29
◆第2試合 フェザー級2回戦
又吉淳哉(市原/57.0kg)vs花塚ノリオ(E.D.O/56.6kg)
勝者:又吉淳哉 / 判定3-0 (20-17. 20-17. 20-18)
◆第1試合 59.0kg契約2回戦
都築憲一郎(エムトーン/59.05→59.0kg)vs井上昇吾(白山/58.6kg)
勝者:都築憲一郎 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)
《取材戦記》
ラウンドインターバル中に流れる曲はパートタイムラバー。この曲はマーシャルアーツ日本キックボクシング連盟の初期(日豊企画・石川勝将代表)時代のラウンドインターバル中に流された曲で、その頃、運営スタッフだった足立聖一(現タイムキーパー)さんがこの日、復活させました。インターバルでは気持ちが落ち着くリズムの、かなり有名ないい曲ですが、この曲であのMA日本キック初期を思い出す人が何人居たでしょうか。
元々、治政館ジムは20年以上の興行実績があり、興行運営は慣れたもの。タイトルの在り方、ルールの曖昧さなど、どこの団体でも見られる綻び部分を、この団体だけは確立して欲しい。そんな願いは1996年の日本系復興時に持ったものですが、ジャパンキックボクシング協会への期待も高まる船出したばかりの団体です。
ジャパンキックボクシング協会次回興行は8月4日に後楽園ホールで旗揚げ本興行が行なわれます。ダブルやトリプルメインイベントといった意味でなく、トリを務めるメインイベンターは誰か気になるところです。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」