今日は急激な技術発展があり、情報分野から生物学、工学に至るまで高度なテクノロジーが日々開発されている。発展のスピードは指数関数的であり、かつてSF映画で見たような技術が実用段階にあるというケースも少なくない。

◆テクノロジーを理解しようとする努力

だが、人間はそれらをうまく使いこなせているだろうか? ゲーム中毒やスマホ首などの症状、また手書きの時に文字を思い出せなかったり、GoogleMapに頼らなければ目的の場所にたどり着けなかったり……。人間が技術に操られていると思うような場面も少なくない。

しかし、人間は技術を適切に使いこなすべきであり、技術に操られるようなことがあってはならない。そのためにも人間が自らの能力を高めておく必要があるのである。

私たちの身の回りにあるスマートフォン、自動車、PC、エアコンといった高度な技術製品はその道の専門家でなければ分からない、ブラックボックスである。普通の人にはその内部構造や生産工程は全く理解できない。

しかし、可能な限り技術や製品について理解しておいた方がいい。文献やヒアリングで情報を得る、実物の中身に見てみるといった行為は理解する上で非常に重要である。また、移動する際も自動車や電車で移動するのではなく、自転車や徒歩で移動する機会を増やしたりすることで「体で考える」経験を増やす。アナログ的要素は古臭いと思われるかもしれないが、実はテクノロジーをコントロールする上で非常に重要なのである。

高度なテクノロジーを利用すること自体は悪いことではないが、それに過度に頼りすぎることはやがて自分の能力を低下させ、今度はテクノロジーに自分が操られるようになるのである。便利だからと楽だからとテクノロジーに依存しすぎるのは間違いである。

◆高度なテクノロジーも結局は道具である

技術自体に善悪はなく、善悪は常に人間の側にある。となれば、いかに高度で優れた技術があったとしても使い方を誤れば、悪い結果を引き起こす。いくら立派な包丁であっても、それで人を刺殺すればただの凶器になりさがる。一方、簡易な包丁であってもうまく料理を作れば人を喜ばせられるのである。

いい事例が中国だろう。近年、中国のICT技術は急速に発展しており自動運転技術、ドローン、キャッシュレス決済などで世界をリードするようになり、プログラミング雑誌を読んでいても時折中国を「IT先進国」と呼ぶ記述も目にすることが増えてきた。経済特区の深?は「中国のシリコンバレー」と呼ばれるほど高度なIT都市である。

 

監視カメラから見た街の様子。AIが個人や車を認識している緑の枠が出ている。参照『China: the world's biggest camera surveillance network - BBC News』

しかしその一方で小説「ビッグブラザー」をしのぐような、IT技術を駆使した徹底的なファシズム体制が完成しており、もはや国民が中国共産党を批判することはほぼ不可能になっている。反政府活動家がメールやSNSで連絡を取り合ってもすぐに削除されてしまうか、公安によって逮捕されてしまう。「金盾」というインターネット検閲システムで政府に都合が悪い単語は検索ができず、facebookやtwitterといった海外のSNSも利用できない。

極めつけは「天網(スカイネットと呼ばれることもある)」と呼ばれる監視ネットワークシステムであろう。これは全国に張り巡らした監視カメラとAIを連動させることで全国民を1人1人監視するという恐ろしいシステムである。

※参照『China: “the world’s biggest camera surveillance network” – BBC News』

「天網」について貿易の仕事で中国を行き来する知人の話によると、上海や北京のような大都市はもちろん、カシュガル(新疆ウイグル自治区)のような田舎町にも数十メートルおきに街角に監視カメラが設置されているという。さらにはモスクや教会の内部にも監視カメラが設置されているようである。「高性能」なAIによって対象人物の80か所以上の特徴を瞬時に判断し、特定できるという。近年はこのような監視システムがケニアなどの途上国にも輸出され始めており、それは中国流のサイバーファシズムが世界に拡散しているということに等しい。

◆いかにテクノロジーが発展しようと、それを使う人間はしっかりしなければならない

技術の使い方を間違えるとどのようなことになるのかと言うことについて、中国の監視システムはいい反面教師になるだろう。

つまるところ技術によって善い行いができるかどうかは、人間次第だということである。テクノロジーが高度になればなるほど、それを使う人間もみずからを向上させなければならないだろう。そのためにも人間がしっかりしなければならない。技術に対する倫理や理念の学習、運動能力や思考能力といった人間本来の能力の向上といったことは極めて重要である。高度な技術によって人間が怠けたり、またその使い方を誤るといったようなことがあってはならない。

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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