◆習近平先導警察車両が阪神高速道路上で横転の体たらく
どうせ「ろくなものにはならない」ことが、わかりすぎていたので、言及することすら避けてきたが、大阪で行われたG20が、「波乱だらけ」で幕を閉じた。
まず驚いたのは、一般向けには閉鎖されていた阪神高速で6月27日、習近平を先導していた警察の車が、操作を誤り阪神高速道路上で横転したことだ。
阪神高速、とくに環状線はカーブが多く、走行車両も浪花流運転で、地方から来た運転者は戸惑うことも多い。なかなか難易度の高い高速道路ではある。しかし、事故当時は一般車両は走行しておらず、この警備車両は「運転者の技術」により勝手に横転したのだ。
あるいは大阪府警に潜り込んだ、どこかの反政府組織によるゲリラ攻撃か? といっときだけ、時代錯誤の想像を試みたが、そんなドラマはなかった。要人警備車両が勝手に横転しただけのことだ。このような低レベルの自損事故を要人警備車両が引き起こすのは、権力側からすれば「遺憾」ということになるのだろうが、ひたすら「恥ずかしい」行為である。
◆伊丹空港隣接ビルのトイレに拳銃を置き忘れた20代巡査
さらに28日には、G20サミット警備のため島根県警から派遣された20代の男性巡査が伊丹空港に隣接するビルで、トイレに拳銃を置き忘れた。直後に管理会社の従業員が見つけ、届け出を受けた同僚が回収しており、使用された形跡はなかったらしい。
警察官は誰もかれも当たり前のように、拳銃を携帯しているが、あれは効用よりも弊害のほうが大きいのではないだろうか。滋賀県で発生した巡査の上司銃撃事件や、警察官から拳銃が奪われて大騒ぎするニュースに接するたびに、「警察官が拳銃を持っていなければこんなことにはならないのに」との思いを強くする。
建前は「凶悪犯」に対する威嚇や、犯罪防止なのだろうが、もう何十年も「拳銃があって犯罪が防止された」とのニュースを頻繁に聞くことがない。前述したとおり、逆に拳銃を保持しているが故に、当の警察官に危害が及んだり、犯罪に利用されるケースのほうが多いのではないかとの印象がある。
古いところでは朴正煕暗殺を試みた文世光が使用した拳銃は大阪府警のものだった。警察学校を出れば19、20歳でも拳銃を保持できる制度は、本当に治安に安定に寄与するだろうか。「警察官の拳銃保持の是非」について、日弁連などは議論を提起すべきではないだろうか。
◎[参考動画]“過去最大”警備3万人 G20大阪で通行止めに検問(ANNnewsCH 2019/6/27公開)
◆これほど迷惑な「ショーもない」!
G20の中で何が話しあわれたのか、には正直興味がない。あれはセレモニーに過ぎないのだ。20か国の首脳がいる場所で個別の議題について、具体的な議論が進むと思っている人は、あまり世間をご存じない方だ。議論の素案は事務方が長時間かけて調整し、会議ではもっともらしい発言を、とくに安倍などはもっぱら用意されたペーパーを見ながら読み上げているだけだ。つまり「ショー」なのだ。
しかしこれほど迷惑な「ショー」もない(「しょーもない」に偶然似てしまった)。大阪では幹線道路がほぼすべて閉鎖され、関西地域の物流が不安定になった。大阪城は閉鎖され、せっかく外国や地方から「大阪城のエレベーターに乗ろう」と楽しみにやってきた観光客は追い返されることになってしまった。そのうえ安倍晋三は「大阪城にエレベーターを作ったのはミスだった」と、誰かが冗談で書いたとしか思えない原稿を読み上げてしまい、世界中から大顰蹙と「差別じゃろ」と指弾されてしまった。
◆安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶり
警察の体たらくも相当であるが、安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶりもかなり進行している。安倍は原稿を読まずに真っ当な内容の話を10分以上できない。だから国会でも国際会議でもオリンピック招致演説でも、安倍の読み上げた原稿は「誰か」が書いたものだ。
ちなみに演説以上に安倍は作文が苦手だと言われている。読書経験も極めて少ないので古典からの引用などはできない。今回安倍の「エレベーター設置間違い演説」も、必ず本番前に複数の人間が原稿を確認しているはずだ。しかしその連中も演説案を「問題なし」と見逃してしまった。
安倍の信者の方は、あれこれ弁明をなさるが、これは言い訳のできない「大差別」であることに間違いはない。自民党から出馬予定で、派手すぎる女性問題が暴露され、出馬取り消しとなった乙武洋匡から痛烈に批判されているのは象徴的だろう。「冗談のつもりだった」と鹿砦社を「炎上商法」と例えた、前田朗氏は坊主懺悔して逃亡したが、安倍のこの発言、むしろその原稿が問題なく安倍に手渡される安倍周辺の知的レベルの低さは、醜悪の域に入っている。
◆韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらい
裏では早期から情報があったが、予定通りトランプは日本から韓国へ飛び、板門店で金正恩と会った。わたしごときにもさる情報筋から「板門店会談」の報はあったのに、日本のマスコミの多くはどうやら、まったくその情報をもっていなかったようだ。これには驚いた。そしてG20開催中から相も変らぬ韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらいの態度は、本当に情けなく恥ずかしい。
わたしが本通信で何度も主張している通り「ロシアは北方領土を1つも返さない」ことがあらためて明言された。それでも「平和条約協定に向けて努力する」政府は言う。やめとけ。「平和条約締結に向けての努力」とは「経済協力」と名乗る「持参金」のさらなる無駄な出費だ。
そういえば、かつては韓国同様・中国に対する敵視も過剰だったが、いつのころからか、政府は中国敵視を変更したようだ。来年には習近平を国賓として招くという。この変化は政府の「一貫しない姿勢」を示しているのではない。「強気に傅き、弱気に威張る」一貫した姿勢の表れと理解すべきである。米国同様ついに中国も「かなわない相手」と政府は見解を変えたのだろう。もちろんロシアもである。
「もっとも幸いな場合でも『国家』とは災いである」
と言い放った賢人の至言が身に染みる。それにしてもはた迷惑で、不格好すぎたG20であった。
◎[参考動画]G20首脳らが夕食会(KyodoNews 2019/6/29公開)
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。