話題多き興行となった伊原代表による藤本ジム興行。藤本ジム会長・藤本勲氏が闘病中ながら久々の御来場で勇退のテンカウントゴング。この日の興行は伊原信一協会代表にとっては目黒ジムに入門した日から指導を受けた、今や唯一の先輩となった藤本勲会長を救う覚悟で臨んだREBELSや他団体との交流戦が多数組まれていました。
緑川創、勝次、薄氷の勝利も藤本会長に捧げた激闘の技。
江幡ツインズによる激闘エキシビジョンマッチ1ラウンド。
伊原会長とのミット蹴り、江幡塁の那須川天心戦を前に意気込みアピール。
新たに交流が始まったシュートボクシング・シーザー武志代表は1983年10月、新日本キックボクシング協会旗揚げ興行で出場した時以来、36年ぶりの同協会のリングに御登壇。元・日本キックボクシング協会の盟友として藤本勲会長の勇退に花を添えました。
2020年の新たな船出の新日本キックボクシング協会は「伝統と革新」。
「WKBA JAPAN」のタイトルを制定。協会加盟ジムをはじめ、友好団体を代表する選手同士による王座決定戦、またはトーナメント方式を採用するという。最初のタイトルマッチは2020年2月2日に開催。WKBA JAPANスーパーフライ級王座決定戦、泰史vs老沼隆斗戦が決定。
◎SOUL IN THE RING CLIMAX / 12月8日(日)後楽園ホール17:10~21:10
主催:伊原プロモーション、藤本ジム
認定:新日本キックボクシング協会、WKBA、REBELS
◆第10試合 WKBA世界ウェルター級タイトルマッチ 5回戦
Champ.緑川創(32歳/藤本/69.8kg)
VS
挑戦者.ガムライペット・アユタヤファイトジム(27歳/タイ/69.6kg)
勝者:緑川創 / 判定2-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名49-48. 仲49-48. 少白竜48-48.
頑丈な体格のガムライペット、バランスいい重い蹴りを繰り出してくる。緑川はパンチとローキックで崩しに掛かるが、ローキックは簡単には効きそうに無い。パンチの距離に持ち込んでもガムライペットの重い蹴りに阻まれバッティングも起こりやすく、ヒジ打ちも繰り出すガムライペット。危険で下手に打ち込めない。
ローブロー(股間ファールブロー)を注意されたガムライペットは第5ラウンド早々にも注意を受け、減点1を課せられた。緑川はインターバルをとらねばならないような悶絶するダメージは無く、ちょっと強引な印象も受けたが、緑川も攻めなければ勝てない流れのラストラウンドもちょっと消極的になったガムライペットに攻めていったところで更なるポイントに繋がった僅差の判定勝利となった。
何はともあれ緑川創が辛くも初防衛に成功。
◆第9試合 63.0kg契約3回戦
WKBA世界スーパーライト級チャンピオン.勝次(=高橋勝治/32歳/藤本/63.0kg)
VS
丹羽圭介(REBELS.63kg級初代C/ 36歳/TEAM KSK/63.0kg)
勝者:勝次 / 判定2-0 / 主審:宮沢誠
副審:桜井29-29. 仲29-28. 少白竜30-29.
初回は先手を打った勝次。しかし丹羽も負けずに打って出て、相打ちもある中、調子付かせてしまう勝次。丹羽に主導権を持っていかれそうな展開に更に攻勢を強め巻き返しに出た勝次。右ストレート連打し、丹羽の左目も腫れ鼻血を流すが、相打ち覚悟に出る丹羽に勝次も打ち合いに応じ、意地でも負けられない勝負に辛うじて判定勝利となった。
◆エキジビションマッチ1ラウンド
赤コーナー WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(28歳/伊原)
EX
青コーナー WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(28歳/伊原)
実戦さながらのエキシビジョンマッチの後、伊原代表が持つミットを蹴る江幡塁、パフォーマンスを絡めたミット蹴り。予定に無かったという髙橋亨汰も準備してミット蹴り、最後に伊原代表の太腿を蹴り込んでしまい痛々しい終了。
大晦日に那須川天心と対戦する江幡塁は、「那須川天心君を倒すのは僕しかいないと思っています!」と宣言。笑いと激しさと那須川戦への期待が高まるアトラクションとなった。
◆藤本勲会長勇退式
藤本ジム藤本勲会長は昨年暮れから体調を崩し、入院生活を繰り返して来られました。病状は間質性肺炎、過去、腎臓摘出や糖尿病もあり、また肝臓癌の疑いもあって検査中という。今年の「SOUL IN THE RING」は興行に携わることが困難で、伊原代表に託された経緯がありました。藤本会長は戦前生まれで高齢でもあり、療養に専念することを第一に考え、ジム経営、協会役員から勇退という形で退くことになりました。今後も体調が良ければ藤本ジムには週2回ほど顔を出されるようです。
キックボクシング創生期、日本で最初のテレビ放映となった試合が1967年(昭和42年)2月26日の全日本ヘビー級王座決定戦の藤本勲vs木下尊義戦(セミファイナルが先の為、メインイベントの沢村忠より先にブラウン管に登場)から52年。現在最も古いキックのレジェンドの藤本勲会長でした。
◆第8試合 54.0kg契約3回戦
日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(=茂木宏幸/24歳/藤本/53.8kg)
VS
J-NETWORKスーパーバンタム級1位.MASAKING(19歳/岡山/53.6kg)
勝者:HIROYUKI / TKO 2R 2:28 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一
初回、MASAKINGのパンチやローキックにHIROYUKIは慌てずタイミングを見計らってパンチや蹴りを返し、右フックでノックダウンを奪う。
第2ラウンドも余裕を見せるHIROYUKIがニュートラルコーナー付近でパンチ連打から左ハイキックでMASAKINGからノックダウンを奪うと、ダメージ深いと見たレフェリーは試合をストップし、HIROYUKIのTKO勝利となった。
◆第7試合 REBELS MUAYTHAIスーパーフライ級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン.老沼隆斗(21歳/ストラッグル/51.95kg)
VS
挑戦者.濱田巧(25歳/teamAKATSUKI/52.0kg)
勝者:老沼隆斗 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:宮沢50-48. 仲50-48. 桜井50-49.
新日本キックボクシング協会興行のリングでREBELSのタイトルマッチとは時代の流れやここ数ヶ月のプロモーター間の協力体制によって実現に至った。
これが攻防激しい名勝負となった。勝ちに行く姿勢だけでなく、下がらずに出る姿勢、何の為にここに選ばれたか、その役割を理解した者同士の戦い。山口元気氏の意図がしっかり表れている他流試合となった。苦しい5ラウンドを耐え切った二人に観衆の拍手と大歓声。他団体のリングで主役を奪ったような存在感があった。パンチ多彩な蹴りの攻防が延々と続き、手数と的確さが優った老沼隆斗の判定勝利による防衛。
◆第6試合 58.0kg契約3回戦
日本フェザー級2位.瀬戸口勝也(36歳/横須賀太賀/57.45kg)
VS
MuayThaiOpenフェザー級チャンピオン.NOWAY(38歳/ネクストレベル渋谷/57.8kg)
勝者:瀬戸口勝也/ 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:宮沢30-28. 少白竜30-27. 桜井30-28.
強打を持つ瀬戸口勝也のパンチ炸裂とはいかぬも、他団体チャンピオンを圧倒する強さを見せた瀬戸口の大差判定勝利。
◆第5試合 46.0kg契約3回戦
ぱんちゃん璃奈(25歳/ストラッグル/45.95kg)
VS
ペットチョンプー・モー・クルンテープトンブリー(23歳/タイ/43.0kg)
勝者:ぱんちゃん璃奈 / TKO 1R 2:20 / ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:仲俊光
開始から、ぱんちゃん璃奈が先手を打つローキックとハイキックがヒットし、アゴの下辺りをカットしたペットチョンプーはドクターチェックに入り再開後、ぱんちゃん璃奈がラッシュを掛け、右ストレートでノックダウンを奪うと、ペットチョンプーは出血激しくなった様子で試合続行不可能となり、ぱんちゃん璃奈は今年2月デビュー以来、判定が続いていた中、初のTKO勝利となる6戦全勝となった。
◆第4試合 ライト級3回戦
日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(42歳/トーエル/61.15kg)
VS
津橋雅祥(26歳/エス/60.95kg)
勝者:津橋雅祥 / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-30. 宮沢28-30. 仲28-30.
◆第3試合 64.0kg契約3回戦
バズーカ攻樹(23歳/菅原/63.8kg)
VS
イ・ボムギュ(24歳/韓国/63.6kg)
勝者:バズーカ攻樹 / 判定2-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-28. 宮沢29-29. 桜井30-29.
◆第2試合 スーパーバンタム級3回戦
炎出丸(J-NETWORK・SB級C/37歳/クロスポイント吉祥寺/55.3kg)
VS
MITSURU(31歳/WSR・F三ノ輪/55.2kg)
勝者:MITSURU / 判定0-2 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-30. 宮沢28-30. 桜井29-29.
◆第1試合 64.0kg契約3回戦
与座優貴(21歳/橋本/64.0kg)
VS
稲石竜弥(31歳/team OJ/63.95kg)
勝者:与座優貴 / 判定2-0 / 主審:少白竜
副審:仲29-29. 宮沢30-29. 桜井29-28
《取材戦記》
勝次が勝利者アピールで、「藤本会長のアドバイスは“ジャブ、ロー”が多かったですけど、そのタイミングで出すと100パーセント当てることが出来ました!」と語る。
沢村忠の時代から変わらぬアドバイスは「ジャブ、ロー」が多かった藤本会長。北島という選手が出場した時も「ジャブ、ロー、北島!ジャブロー!」それを聞いたセコンドが「今、“北島三郎”って言った?」という、そんな些細な話もあったらしい。
大晦日にRIZINで行なわれる那須川天心vs江幡塁はキックボクシング界の最大級と言える黄金カードだが、“ヒジ打ち無し3回戦”と言う時代の流れに押されたルール。5回戦純粋キックボクシングルールで戦って欲しいものと思う。
今年、分裂騒動に陥った新日本キックボクシング協会。来年は年8回の興行予定があり、一方のジャパンキックボクシング協会も今年の興行を終え、来年のスケジュールも年6回興行が予定されている様子。
「一緒に力を合わせれば14回になるのになあ!」と言う声もあるが、そこはこうなるしかない事情あっての枝分かれ。新日本キックも団体の枠を越えた「WKBA JAPAN」を発足させる等、それぞれがまた新しい展開を見せている中、成り行きを応援しながら見ていきたいものである。
◎2020年新日本キックボクシング協会興行予定
2/2(日):後楽園ホール
3/8(日):後楽園ホール
4/12(日):後楽園ホール
5/17(日):後楽園ホール
7/12(日):後楽園ホール
9/27(日):後楽園ホール
10/25(日):後楽園ホール
12/13(日):後楽園ホール
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」