新団体の正月興行メインイベントは石川直樹がヒジ打ちで勝利を飾る。
MVPとなる武田幸三賞はモトヤスックが受賞。
新人戦から選出、ヤングライオン賞は西原茉生が受賞。
3階級でチャンピオン決定。これで6階級のチャンピオンが揃ったが、今後どこまで他団体と渡り合えるか。
◎KICK ORIGIN 2020 1st. 2020新春三階級王座決定戦!
1月5日(日)後楽園ホール
17:00~20:55 / 主催:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
◆第10試合 メインイベント 52.0kg契約 5回戦
JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/33歳/51.7kg)
VS
松崎公則(STRUGGLE/44歳/51.9kg)
勝者:石川直樹 / TKO 4R 3:00(発表は4R終了) / 主審:仲俊光
新団体正月興行メインイベントの看板を背負う石川直樹のプレッシャーは如何程か。初回は静かな立ち上がり、首相撲からのヒザ蹴りが得意な両者だが、組み合う場面が少なく、離れてのローキックからパンチ主体の攻防が続くが、次第に石川が距離を詰め、第3ラウンドから石川の首相撲からヒザ蹴りのしつこさが出始め、松崎は劣勢に陥っていく。
第4ラウンドの終了寸前には石川直樹のヒジ打ちが松崎の右眉上辺りにヒットすると、大きくカットし流血。流れでゴングは鳴るが、レフェリーがラウンド内のタイムストップとしてインターバルには入らずドクターチェックに移るも、そのまま試合続行不可能の勧告を受入れ、ここでレフェリーストップとなった。
◆第9試合 第2代JKAライト級王座決定戦 5回戦
1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/30歳/61.23kg)vs3位.興之介(治政館/31歳/61.0kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / TKO 3R 1:49 / 主審:椎名利一
新団体移行から王座決定戦が流れ、いきなり認定された初代チャンピオンの直闘が王座返上の為、改めて王座決定戦となった。
興之介が蹴り主体に出て来るが、永澤が冷静に対処。第2ラウンドに永澤が距離を掴むとパンチ連打による2度のノックダウンを奪い、ラウンド終了間際にはヒジ打ちで興之介の頭頂部をカットする。第3ラウンドも勢い付いた永澤のパンチで興之介から2度目のノックダウンを奪うと、ダメージ深い興之介をノーカウントでのレフェリーストップとなった。
一瞬の油断で興之介のパンチを貰う危ない場面も見せた永澤ではあったが、経験値から順当な勝利を掴んだ。「まずはジャパンキック協会王座」と目標を立てていた第一段階を突破した永澤。更なる真の日本上位では勝ち上がれるだろうか。
◆第8試合 初代JKAウェルター級王座決定戦 5回戦
1位.政斗(治政館/27歳/66.3kg)vs2位.モトヤスック(治政館/18歳/66.67kg)
勝者:モトヤスック / TKO 5R 0:37 /主審:少白竜
同門対決での王座を懸けた試合。初回はパンチとローキックで様子見の両者。徐々にモトヤスックがパンチの圧力を掛ける。
第2ラウンドにモトヤスックがパンチで2度ノックダウンを奪うも倒しきれず。第3ラウンドはモトヤスックの圧力が落ち、やや持ち直した政斗。そのまま第5ラウンドまで政斗が逆転の兆しを見せる踏ん張りを見せるも、モトヤスックのカウンターの左ヒジ打ちで政斗の右眉上をカット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。
◆第7試合 第2代JKAフェザー級王座決定戦 5回戦
2位.渡辺航己(JMN/23歳/56.7kg)vs3位.櫓木淳平(ビクトリー/28歳/56.9kg)
勝者:渡辺航己 / 判定3-0 / 主審:松田利彦
副審:仲50-46. 少白竜50-46. 椎名50-47
互いに前に出る積極性が攻防を盛り上げる。第4ラウンドには渡辺がヒジ打ちで櫓木の左目尻辺りをカット、渡辺の勢いが増し、やや遅れ気味の櫓木の攻め。各ラウンドの差は小さいが、トータルでは大差となって渡辺が判定勝利した。
◆第6試合 55.5kg契約3回戦
馬渡亮太(治政館/19歳/55.5kg)
VS
チャモアペット・ソー・ウィラデット(元・ルンピニー系スーパーフライ級4位/タイ/19歳/55.2kg)
勝者:馬渡亮太 / TKO 2R 1:32 / 主審:桜井一秀
昨年8月4日にジャパンキック協会バンタム級王座決定戦で、阿部泰彦(JMN)を2ラウンドKOで破り、王座獲得したばかりの馬渡亮太は、その後、ニュ^ジャパンキック連盟(NJKF)でのS-1.55kgトーナメント(4名参加)で11月30日に決勝戦で大田拓真(新興ムエタイ)に2-0の判定負けを喫した。その自覚が影響か、その後王座を返上。
初回から慎重に進める馬渡。不用意に出ず、リズムを掴んでいく。一度パンチでノックダウンを奪うと、チャモアペットが効いたダメージか、バランスを崩し易くなる。第2ラウンドにもパンチでノックダウンを奪うとカウント中のレフェリーストップとなる勝利を収めた。
◆第5試合 59.0kg契約3回戦
瀧澤博人(元・日本フェザー級C/28歳/59.0 kg)
VS
ペットワンチャイ・ラジャサクレックムエタイジム(タイ/29歳/58.75kg)
勝者:ペットワンチャイ / TKO 3R 1:43 / 主審:仲俊光
第1ラウンドから蹴りに勢いがあった瀧澤だが、ペットワンチャイのパンチが強く、当て勘鋭く厄介そう。第3ラウンドにはパンチ連打を食らった瀧澤が完全にリズムを崩し、ノックダウンを喫した瀧澤。口を開きっぱなしの瀧澤は顎を骨折した疑いもあり、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。
◆第4試合 54.0kg契約3回戦
JKAバンタム級1位.幸太(ビクトリー/29歳/53.9kg)
VS
同級3位.阿部泰彦(JMN/41歳/53.9kg)
勝者:幸太 / TKO 1R 2:58 / 主審:仲俊光
ベテランの阿部、幸太のパンチとヒジ打ちを貰うと脆くも崩れ落ちる。立ち上がろうとするが足下ふらつきストップは止むを得ない。「まだやれるよ!」と叫ぶもカウント中のレフェリーストップとなった。
◆第3試合 ライト級3回戦
JKAライト級4位.野崎元気(誠真/61.1kg)vs同級7位.睦雅(ビクトリー/61.1kg)
勝者:野崎元気 / 判定2-1 / 主審:少白竜
副審:椎名28-29. 仲29-28. 桜井29-28
◆第2試合 フェザー級3回戦
西原茉生(チームチトク/56.8kg)vs財辺恭輔(REON Fighting Sports/56.45kg)
勝者:西原茉生 / KO 1R 2:41 / 主審:桜井一秀
◆第1試合 バンタム級3回戦
義由亜(治政館/53.2kg)vsナカムランチャイ・ケンタ(team AKATSUKI/53.1kg)
勝者:義由亜 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:松田30-24. 桜井30-24. 少白竜30-24.(第2Rにナカムランチャイに1点減点含む)
※前座、フェザー級3回戦、又吉淳哉(市原/58.0kg)vs龍聖(TRY HARD/56.9kg)は試合中止。又吉淳哉が計量850グラムオーバーで失格し、体調不良で緊急入院した模様。
《取材戦記》
大晦日のRIZINに於いて、那須川天心vs江幡塁戦が地上波で生放送される一方で、あまり世間に知られること少ない通常のキックボクシング興行。小さな団体でチャンピオンになっても、各団体各階級で数多いチャンピオンの中では、プロボクシングに例えれば、まだ日本ランキングに入ったに過ぎない真の日本上位からの序列。
そのジャパンキック協会のフライ級からミドル級まで6階級のチャンピオンが揃ったが、戦わずに昇格する認定チャンピオンが居たり、すぐに王座を返上したり、王座の価値が感じられない動きもあった。チャンピオンベルトそのものは他団体に負けないほどカッコいいデザインだが、王座の在り方も権威を保つ努力が必要だろう。
同門対決で後輩の高校3年生、モトヤスックに敗れ去った政斗。リング上で泣き崩れ、控室でも泣いていた。リング上では泣かぬも、控室へ帰ってから泣き崩れる選手も多い。一方で歓喜に沸く騒ぎも起こる。そんなリング上では見せない控室の喜怒哀楽も多く存在するのでしょう。
同門対決は通常は行なわない競技だが、トーナメント戦では当たらざるを得ない場合があり、タイトルマッチでもやらざるを得ないランキング上位定着の場合があります。
昭和のキックでは、亀谷長保(目黒)vs松本聖(目黒)戦は1位に長く留まる松本にチャンスを与えたタイトルマッチで2度、後の500万円争奪オープントーナメント戦を含む、亀谷長保の3勝(2KO)。伊原信一(目黒)vs千葉昌要(目黒)戦はタイトルマッチと500万円争奪オープントーナメント戦で1戦ずつ対戦があり、伊原信一の2勝。須田康徳(市原)vs長浜勇(市原)戦は1000円争奪オープントーナメント戦と引退試合で1戦ずつは1勝1敗、いずれもノックアウト。藤原敏男(黒崎)vs斉藤京二(黒崎)戦は、特に戦い導かれる因縁は無いマッチメイクでの実現で斉藤京二のKO勝利。
それぞれが伝説となった試合ばかり。政斗vsモトヤスック戦は、どれほどのインパクトを与えられただろうか。
ジャパンキックボクシング協会、2020年興行は、
3月15日(日)後楽園ホール
5月10日(日)後楽園ホール
6月21日(日)市原臨海体育館
8月16日(日)後楽園ホール
11月22日(日)後楽園ホール
以上が予定されています。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」