4月22日、定刻の午後三時、経産省の正面玄関前に黒地に白で「鎮魂 死者が裁く」と染め抜かれた横断幕が掲げられ、トランペットの独奏によるファンファーレで開式となった。

拡声器から再生される「怪獣ゴジラ」の咆哮と「仁義なき戦い」のテーマがコラージュされた不気味なBGMとともに、サイケデリックなニット帽の上からペストマスクという不穏な出立で現れた山崎春美(ロックバンド『ガセネタ』『TACO』のリーダー/編集者)による朗読が始まった。

サイケデリックなニット帽の上からペストマスクという不穏な出立で現れた山崎春美による朗読

男が一人門の前にやってきて
俺を殺すな
人々がばたばたやって来て
皆よってたかってその男をひきずりおろして
地下室へ連れてった
いずれ死ぬんだからここで死んだっていいんだ
いいかよく聴け
お前の右手が
俺の左手を打つ
俺の右手がお前の左手を打つ
そしてお前の左手を掴む
するとこうやって二人が
抱き合うみたいにして今度はもつれて
それが敵っていうもんだ
それが敵の必要にして十分な条件というものだ
そこんところお前はよく弁えてな
そしてお前は
振り返りざま 撃て
嫌だ俺は殺されたくない

現在そのような状況です

(細部省略)

長期に及ぶシベリア抑留を体験した詩人・石原吉郎の晩年の作品である「背後」(詩集「斧の思想」所収)という詩に、時事問題や即興的なカットアップが盛り込まれた、狂人の悲鳴のような叫び声が霞ヶ関の官庁街に響き渡った。

シベリアで過酷な強制労働を強いられ、また引き揚げ後に帰国した日本も適者生存の熾烈な競争社会で、どちらにもうんざりした石原吉郎が詩人としての表現活動を通じて生きる希望を見つけたというエピソードを鑑みると、文明社会の致命的な構造的欠陥を指摘しまた自由な芸術表現のみが人類個々人の生命を鼓舞する最後の切り札であるということを提示したものであるのかと邪推する。

澁澤光紀(日蓮宗善龍寺住職)による勧請(神仏を呼び寄せる儀式)に続いてコロナウイルスと東北大震災の死者への追善菩提(追悼供養)のために「妙法蓮華経如来寿量品第十六」の読経が行われた。

自我偈とも呼ばれ法華経の真髄ともされるテーマソングのような経で、「仏の命は永遠である」と説く。死者にむけた「いつまでもあなたのことを忘れませんよ」という不滅のラブソングのようなものであると解釈できよう。ここでは死者に呼びかけて集合を促すような意味があるようだ。

表白文(法会または修法の始めにその趣旨を仏前で読みあげ仏法僧の三宝および大衆 に告げること)の中で福島泰樹は、
「新型コロナウイルス国内感染者が1万人を突破してしまった。国民の生命よりオリンピック開催と自身の栄誉を優先していた安倍が、オリンピック延期決定以降、小学校の一斉休校を手始めに、「国難」と称しウイルス禍を喧伝し始めたのだ。しかも、「接触機会八割減」の大号令で国民に外出自粛を強要しておきながら、休業補償を一切しようとはしない。家賃、子供の学費、日々の支払いに苦慮し、明日の不安に戦き、食事さえも減らさざるを得ないということなのである。防衛費に、5兆2,574億円の血税を投入し、アメリカから買い上げた兵器等そのローン残高は5兆3,000億円にものぼっている。なぜ、それを国民の生活と文化の向上に廻そうとはしないのだ。中小零細企業主、個人経営者、従業員、さらに非正規労働者、解雇が続出する外国人労働者たち、パート業務を失った主婦、生活苦に喘ぐ人々の悲歎を思え」と政府による棄民政策を断じ、「原発を推進、日本の国土を汚染し、農業を切り捨て、国土と人心を荒廃させ、さらにはアメリカに日本を身売りする国賊安倍晋三よ。コロナウイルス厄災の御蔭で、森友、加計、桜と国税の私物化への批判が消え、テレビメディアが、アベノマスク10万円給付に踊らされているのをいいことに、許せないのは、「非常事態条項」設置を画策し、火事場泥棒宜しく、日本国憲法の侵犯に他ならない「検察庁法改正案」を、今国会において審議入りさせたことである。政権の腐敗にメスを入れての検察であろう。検察をも私物化し、悪政のかぎりを尽くそうというのか。なぜ、「東京新聞」を除くマスメディアは、この国家私物の危機に警鐘を鳴らし、批判のキャンペーンを張ろうとしないのだ。マスメディアよ心せよ!」とマスコミへの報道姿勢を批判した。(本文中敬称略)(つづく)

ドスの効いた低いダミ声で唸るように表白文を奏上する福島泰樹氏。「絶叫朗読」という独自の表現スタイルを確立した世界的に活躍する歌人でもある

【JKS47 月例祈祷会】
日時:2020年6月19日(金)午後2時45分より
会場:経産省前テントひろば
JKS47事務局
合 掌

◎原田卓馬 《NO NUKES voice》「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
【前編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35521
【中編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35541
【後編】http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35549

▼原田卓馬(はらだ たくま)
1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。
ご意見ご感想、もしくはご質問などはtwitter@dabidebowie

〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

『NO NUKES voice』Vol.24
紙の爆弾2020年7月号増刊
2020年6月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/148ページ

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総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機
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[表紙とグラビア]「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
(写真=原田卓馬さん

[報告]菅 直人さん(元内閣総理大臣/衆議院議員)
原子力とコロナと人類の運命

[報告]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)
この国の未来は当面ない

[報告]田中良紹さん(ジャーナリスト/元TBS記者)
コロナ禍が生み出す新しい世界

[報告]鵜飼 哲さん(一橋大学名誉教授)
汚染と感染と東京五輪   

[報告]米山隆一さん(前新潟県知事/弁護士/医師)
新型コロナ対策における政府・国民の対応を考える

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
コロナ禍は「世界一斉民主主義テスト」

[報告]小野俊一さん(医師/小野出来田内科医院院長)
新型コロナ肺炎は現代版バベルの塔だ

[報告]布施幸彦さん(医師/ふくしま共同診療所院長)
コロナ禍が被災地福島に与えた影響

[報告]佐藤幸子さん(特定非営利活動法人「青いそら」代表)
食を通じた子どもたちの健康が第一

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈8〉
新型コロナウイルス流行と原発事故発生後の相似について

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
コロナ禍で忘れ去られる福島

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈19〉
翼賛プロパガンダの失墜と泥沼の東京五輪

[インタビュー]渡邊 孝さん(福井県高浜町議会議員)
(聞き手=尾崎美代子さん
関電原発マネー不正還流事件の真相究明のために
故・森山元助役が遺したメモを公にして欲しい

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
僕らは、そして君たちはどうたち向かうか

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が原発の解体と埋設に反対する理由

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
《対談後記》四方田犬彦への(公開)書簡

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
令和「新型コロナ」戦疫下を生きる

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈8〉
東京オリンピックを失って考えること

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナ禍で自粛しても萎縮しない反原発運動、原発やめよう
《全国》柳田 真さん(再稼働阻止全国ネットワーク・たんぽぽ舎)
《六ヶ所村》山田清彦さん(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
《東北電力・女川原発》日野正美さん(女川原発の避難計画を考える会)
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団)
《東電》武笠紀子さん(反原発自治体議員・市民連盟 共同代表)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関電包囲》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
《鹿児島》向原祥隆さん(反原発・かごしまネット代表)
《福島》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟/杉並区議会議員)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

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