コロナ禍の中、NJKF再開興行はWBCムエタイ日本タイトルマッチ3試合開催。
大田拓真は初防衛、一航は王座獲得と兄弟揃ってチャンピオンとなった二人は、昨年から比べて更にNJKFの新しいエース格的存在となった。一航はホームリングでの有利さでチャンピオンに就いた感が残るが、岩浪悠弥とは今後、倒す技を持って何度も対戦して欲しいところでもあります。
ライト級はNJKFチャンピオンの鈴木翔也がJKAチャンピオンの永澤サムエル聖光に敗れる。両者いずれも国内下部的存在の団体タイトルで、永澤は上位的タイトルのWBCムエタイ日本王座に就いたことは、過去敗れている相手とサバイバルマッチへ向かう大きな前進でしょう。
S-1レディース・バンタム級ジャパントーナメント決勝戦はSAHOとYAYAウィラサクレックが勝ち上がり、11月に決勝戦となります。
◎NJKF 2020.3rd / 9月12日(土)後楽園ホール18:00~21:23
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟
認定:NJKF、WBCムエタイ日本協会
◆第8試合 WBCムエタイ日本バンタム級王座決定戦 5回戦
2位.岩浪悠弥(元・フライ級C/橋本/22歳/53.5kg)
VS
4位.一航(=大田一航/新興ムエタイ/19歳/53.52kg)
三者三様の引分け / 主審:宮本和俊
副審:中山47-50. 松田49-48. 小林48-48
チェアマン:斎藤京二、竹村光一
ラウンドを増すごとに距離は縮まって攻防は激しくなり、互いに幼い頃から修練してきた技は上手いが相手を後退させるようなインパクトは無い競り合い。どちらが主導権を奪ったと見えるかの差で三者三様となった。チェアマン2名による審議の上、WBCムエタイ日本協会代表・斎藤京二氏の支持による一航の勝者扱いで第7代チャンピオンに認定。公式記録は引分け。
◆第7試合 WBCムエタイ日本フェザー級タイトルマッチ 5回戦
第7代チャンピオン.大田拓真(新興ムエタイ/21歳/57.15kg)
VS
挑戦者同級4位.宮崎勇樹(相模原S/26歳/57.15kg)
勝者:大田拓真が初防衛 / 判定3-0 / 主審:小林利典
副審:中山50-47. 松田50-47. 宮本50-47
前半、差の無い展開から次第に大田拓真の蹴りのヒットが目立っていく。後半に入るにつれ、首相撲からの崩しは大田拓真が投げ勝つように優勢を維持するとヒザ蹴りも増え、リズムを掴んだ大田は宮崎の攻めをかわし完全に主導権を奪い、余裕を見せた後ろ蹴りもヒットは軽くても優勢をアピールして終了。
◆第6試合 第6代WBCムエタイ日本ライト級王座決定戦 5回戦
2位.鈴木翔也(NJKF同級C/33歳/OGUNI/61.15kg)
VS
永澤サムエル聖光(JKA同級C/30歳/ビクトリー/61.2kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:小林46-50. 松田47-50. 宮本46-50
前半、やや距離ある中での蹴り中心の探り合いから、第3ラウンド後半には距離が縮まり、パンチ、ヒジ打ちでのノックダウンに結び付きそうなスリルを増していった。鈴木のヒジ打ちで永澤の額をカットするが、更に蹴りを交えながら隙を狙った打ち合いが続き、第5ラウンドには永澤がパンチ一発タイミングよく鈴木からノックダウンを奪って判定勝利を導いた。
◆第5試合 S-1世界スーパーライト級挑戦者決定戦3回戦
WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(E.S.G/33歳/63.25kg)
VS
WBCムエタイ日本スーパーライト級チャンピオン.北野克樹(誠至会/24歳/63.5kg)
勝者:北野克樹 / 判定1-2 / 主審:松田利彦
副審:小林28-30. 中山30-29. 宮本29-30
北野の先手を打つローキック、バック蹴り等で派手に攻める。組み合った際は健太の素早いヒジ打ちなどでベテランの上手さを見せるが主導権を奪うに至らず、北野の勢いを止めることが出来なかった。時代の流れも感じる若手の台頭であった。
◆第4試合 S-1レディース・バンタム級ジャパントーナメント初戦(準決勝)3回戦(2分制)
NJKF女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級チャンピオン.SAHO(闘神塾20歳/53.15kg)
VS
J-GIRLSフライ級チャンピオン.梅尾メイ(TEAM BARBOSA JAPAN/33歳/52.9kg)
勝者:SAHO / 判定2-0 / 主審:竹村光一
副審:小林29-29. 松田30-28. 中山30-28
僅差ながらSAHOがパンチの攻勢で順当に決勝進出を決めた。
◆第3試合 S-1レディース・バンタム級ジャパントーナメント初戦(準決勝)3回戦(2分制)
NJKF女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級4位.KAEDE(LEGEND/17歳/53.45kg)
VS
J-GIRLSスーパーフライ級チャンピオン.YAYAウィラサクレック(WSR・F幕張/33歳/53.4kg)
延長戦による勝者:YAYA / 判定0-1(延長1-2) / 主審:宮本和俊
副審:小林29-29(9-10). 竹村29-29(10-9). 中山28-29(9-10)
公式本戦も延長戦も際どい展開を見せるが、タイでデビューした日本国内無敗のYAYAがアマチュア60戦を越えるプロ3戦目のKAEDEを下した。
◆第2試合 スーパーバンタム級3回戦
日下滉大(OGUNI/25歳/55.2kg)vs雄一(TRASH/32歳/55.3kg)
勝者:日下滉大 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)
◆第1試合 75.0kg契約3回戦
雄也(新興ムエタイ/25歳/74.9kg)vs鈴木健太郎(E.S.G/30歳/74.85kg)
勝者:鈴木健太郎 / 判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)
《取材戦記》
WBCムエタイ日本王座は、2008年設立時の2団体間(NJKFと当時MA日本)に留まらず、好カード不足を補う事情もあるのか、現在は広域にタイトル挑戦の枠が広まった流れで権威がやや増した感があります。
しかしこの日のメインイベントの岩浪悠弥vs一航戦で、チェアマンによる採点集計に不備が生じ、発表から一旦訂正される慌ただしさが見られました。結果的に引分けが覆ることは無かったものの、これが勝敗が覆るとしたら大騒動になった可能性高いでしょう。
このWBCムエタイルールでのタイトルマッチでは引分けの場合、タイトルマッチの最高責任者とはいえ、チェアマンの支持によるチャンピオン認定というシステムには異論の声も多いところです。プロボクシング新人王トーナメント戦システムに倣うとしたら、優勢支持する権利は引分けを下した副審判に委ねるのが妥当でしょう。
また、トーナメント戦のような期限が限られる試合ではないので、本来なら時期を置いて再戦が望ましいところです。
今回も後楽園ホール1階入口付近でコロナ抗体簡易検査がありました。後楽園ホールの規定でリングサイドカメラマンのマスク、フェイスシールドかゴーグルの着用義務は、8月16日のジャパンキックボクシング協会興行と同じでした。フェイスシールドもゴーグルもカメラと擦れあってやっぱり傷だらけ。
リングアナウンサーのコンタキンテさんはこの時代の象徴のように、フェイスシールドを律義に最後まで付けてアナウンスしていたようで、将来皆がそんな画像や映像を見て「こんなこともあったね!」と懐かしく振り返るのかもしれません。
現在、マスクは絶対必要と思いますが、タイ・ラジャダムナンスタジアムでのカメラマンはマスクのみのようで、緩やかにでもコロナ終息に向かうならば、フェイスシールドは不要に向かって欲しいと願うところです。
次回、NJKF興行は11月15日(日)に後楽園ホールに於いて行なわれます。興行数から言えばまだ春先の雰囲気の中、早くも年内最終興行となります。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」