◆北海道の「核廃棄物」動乱

 

本日発売! 月刊『紙の爆弾』2021年1月号!

横田一は北海道寿都町の「核のごみ処分場反対住民の反転攻勢」をレポートする。反対派「町民の会」の講演会に、小泉純一郎元総理が講演者として来町。その講演会に「勉強のために」参加するはずだった片岡町長はドタキャンしたのだった。

11月13日には臨時町議会で、住民投票条例の審議と採決が行われ、賛成と反対が4対4。議長採決で否決された。反対派住民と町長・町議会の対話は閉ざされたのである。住民の意見を聞かない行政には、地方自治体法違反の可能性が高いと、横田は指摘する。

ところで、問題なのは鈴木直道北海道知事の動向である。コロナ防疫については早期に緊急事態宣言を発し、親分にあたる菅義偉のGoToキャンペーンにも異を唱えるなど、硬骨漢ぶりを発揮している若き鈴木知事も、この問題では弱腰である。法政大学の後輩で、菅義偉に太いパイプを持っているのだから、もっと存在感を発揮して欲しいものだ。町レベルでは町長リコールの動きも活発だという。今後も横田のリポートに注視したい。

◆ポンコツ答弁の「影」を暴け!

喉頭がんによって喋る力を失った浅野健一は、しかし健在である。菅義偉総理のポンコツ答弁をささえる、背後で動かす「影」を実名報道せよ! というものだ。

浅野は詳細に記者会見、およびぶら下がり取材(菅の官邸はこれを記者会見というらしい!)を検証しているが、国会答弁でのポンコツぶりは国民を唖然とさせるものだった。

およそそれは、必要な予習をしてこなかったばかりか、宿題を忘れた劣等生が困り果て、優等生(秘書官)のメモで答弁するという珍無類の光景だった。さんざん指摘してきたとおり、安倍晋三ほどの演説力(関係のないことを、延々と喋る能力=じつは、これが政治家の真骨頂である)がない菅総理において、秘書官の機敏な動きは不可欠なのである。サブタイトルの「自助で国会答弁できない菅首相」とは、言いえて妙である。

「学術会議などでの菅首相の国会での答弁は見ていて哀れだ。活舌も悪く、安倍前首相のほうがまともに感じられるほどだ」(記事中)。まったく同感である。

菅総理の秘書官は、新田章文という筆頭秘書官(菅事務所)のほかは、いまだ氏名不詳であるという。この「影」を暴くことこそ、われわれの当面の任務ではないだろうか。

◆注目のレポート記事

現地ルポは、西谷文和の「中村哲さん殺害から一年 なぜアフガニスタンの戦争は終わらないのか」である。中村哲の思い出のいっぽうで、変わらないアフガン。いや、ますます罪のない子供たちに犠牲を強いるアフガンの現実。憤りと涙なくしては読めない。

黒薮哲也の「日本禁煙学会が関与した巨額訴訟の行方」は興味ぶかく読めた。団地の住民が、タバコの副流煙で損害賠償を提訴した事件のレポートだ。筆者も十数年前にタバコをやめ、マンション暮らしゆえにベランダでの喫煙で隣人と軋轢があった(話し合いで解決)。集合住宅での喫煙・副流煙問題は当事者(喫煙者にも、非喫煙者にも)には深刻な問題だ。

今回のレポートでは、日本禁煙学会の理事長が関与した杜撰な提訴に、裁判所が被告(喫煙者)と原告の被害に関連性なしと判決。それを受けて、被告側が訴訟による被害を反訴したものだ。隣人訴訟に圧力団体が関与した例として、今後の展開が注目される。

近藤真彦への不倫処分と紅白私物化の、ジャニーズ事務所の実態を暴露するのは、本誌芸能取材班。NHK「あさイチ」とジャニーズの関係(ネックは視聴率)が興味ぶかい。

◆拙稿、朝田理論の検証について

手前みそだが、紙爆9月号の「士農工商ルポライター稼業」について、わたしの意見を掲載していただいたので紹介しよう。

本通信(11月12日および11月17日)では、井上清の『部落の歴史と解放理論』の検証、とりわけ部落差別の三位一体論(部落差別の存在・地域差別・職業差別)の妥当性を論じてみた。

歴史検証としては、井上清の論考が果たした役割が大きく、その検証が今日的にふさわしいからだ。

紙爆1月号の記事では、黒薮哲哉さんの12月号の論考に対する見解、および解放同盟の朝田善之助さんの「朝田理論」を検証してみた。

論点はいくつかあるが、まずは現在の日本社会が差別社会かどうか、差別の存否から議論しなければならないであろうこと。そのうえで、差別かどうかは部落民が決めるという朝田理論の時代性、糾弾権の問題などである。このあたりは、本通信の松岡利康の経験的な見解も併せてお読みいただきたい。時代とともに。解放同盟も変っているはずなのだから。

いずれの拙論においても、結婚差別が現代に残された最も深刻で、かつ「解消」という新たな問題をはらんだものと考えている。鹿砦社が解放同盟中央本部と議論する過程で、この論点をともに検証したいと考えている。それが70年代の苛烈な部落解放運動を、その末端で支持・共闘してきた者としての役割だと考えるからである。
ほかにも興味を惹かれる記事満載、買って損はしない「紙爆」年末号である。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他