トホホである。国民には5人以上の会食を禁じていながら、みずからは連日5人以上で豪華な会食をくり返しているのだ。過去の話ではない、今日も明日も、このポンコツ総理は国民の血税で豪遊するつもりなのだ。
これで政権が宣言していた「勝負の3週間」は敗北した。ほかならぬ政権の責任者が国民に命じた禁止事項を犯すことで、感染者は最大値を記録し、敗北が明確になったのだ。
◎[参考動画]“GoTo停止”発表直後に・・・総理ら8人でステーキ会食(ANN 2020年12月16日)
とりあえず、12月14日夜のことを再確認しておこう。その愚行の、直接の原因も明確なのである。
Go Toトラベルの一時中止を宣言したあと、菅総理は二階派の幹部らの猛反発をうけたという。
「Go Toトラベルがどれだけ旅行業界に寄与していたのが、菅首相はわかっているのか。救われた旅行業界、ホテル、お土産店、交通関連の会社などがどれだけあるのか知っているのか。それも一番の稼ぎ時、年末年始には全国で停止。どれだけ多くの人が頭を抱えているのかわかっているのか。中止なら、業界への金銭的支援策とセットでやるべきだ。なんのバックアップも発表せずに、中止だなんて、二階幹事長の顔に泥を塗るようなものだ。『誰のおかげで総理になれたんだ』『もう次はないぞ』と派閥から強硬意見も飛び出した」(二階派幹部の言葉、週刊朝日取材班)。
これはもう、猛反発といえるだろう。
したがって、二階俊博がセッティングしたステーキパーティー(政権幹部のほか、杉良太郎、王貞治、みのもんたらが参加)に、参加しない選択肢はなかったのである。
この夜、ホテルニューオータニで財界人(青木拡憲AOKIホールディングス会長ら15人)との会合のあと、報道陣を従えながら銀座のステーキ店に向かったのだった。そこで40分、ステーキコースを堪能したらしい。一人あたり7万円といわれる会食をすることで、国民への訴えをみずから反故にしたのである。
「5人以上はダメ」と国民に訴えていた西村コロナ対策大臣は、国会で「一律に5人以上はダメということではない」などと、苦しい答弁を余儀なくされた。
いや、そもそも菅総理の密会合は、毎朝の番記者たちとの朝食に始まり、夜は深夜にもおよぶ5人以上の会食で埋め尽くされているという。コロナ感染者数が最高に達し、重症率・死亡率が高水準に達している認識が、この男にはつゆほどもないのだ。
◎[参考動画]“勝負の3週間経過”“ステーキ会食”受け菅総理(ANN 2020年12月16日)
◆Go To中止を躊躇した理由
Go To トラベルについての、分科会での専門家提言と菅総理の認識は真逆である。「移動することで感染が拡大するエビデンスはない」というのは、いうまでもなく「感染しない」というエビデンスも存在しない。すなわち、感染経路の不明が過半数をこえる実態を踏まえたものではない。
そもそもGo To事業の公募期間は、5月25日から6月8日までのわずか2週間弱しかなかった。このことは、全国を対象とする大規模な事業であるため、事前に周到な準備がなされていたはずである。そしてこの事業を引き受けたのは、持続化給付金事業にも関わっている大手広告代理店などが出資する会社だったのだ。その意味では、Go Toは観光業界、飲食業界への経済刺激である以前に、政財界を巻き込んだ利権構造だったのだ。なぜGo Toを止めないのか、国民が抱いていた疑問の先には、利権政治があったのだ。
◎[参考動画]菅総理 ネット番組の発言から一転“GoTo”見直しへ(ANN 2020年12月14日)
◆ジリ貧の支持率とポンコツ答弁
12日には毎日新聞と社会調査研究センターが、全国世論調査を実施している。菅内閣の支持率は40%で、11月7日に行った前回調査の57%から17ポイント下落したという。不支持率は49%(前回36%)で、菅内閣発足後、不支持率が支持率を上回ったのは初めてだ。
政党支持率は、自民党が33%で前回の37%より低下した。
立憲民主党12%(前回11%)
日本維新の会8%(同6%)
共産党6%(同5%)
公明党3%(同4%)
れいわ新選組2%(同3%)
国民民主党1%(同1%)
社民党1%(同0%)
NHKから国民を守る党1%(同1%)
「支持政党はない」と答えた無党派層は31%(同31%)だった。
就任当初からの学術会議への政治介入、国会では秘書官のメモ抜きには答弁できないポンコツさ、そしてGo To継続による感染率の増大。いや、無策というべきであろう。とりわけ、ほとんど自分だけでは記者会見できない、政治家としても無理なのではないかと思われるポンコツぶりは、ひろく国民も知るようになってしまった。
たとえば12月4日に、総理就任後2カ月半ぶりの記者会見を行なった。2カ月半も、国会答弁は別として国民から逃げ回っていた人物に、総理という資格があるものだろうか。
そしてその会見は、当日の朝9時半に各報道機関への告知と受付がはじまり、締め切りが2時間後の11時半。つまり、官邸記者クラブいがいは事前に準備していなければ参加できない、ほぼ身内の会見だったのだ。総理がパンケーキで手なづけている記者クラブ以外、フリーの記者は抽選による参加である。
しかもその会見の態様が、記者クラブのよる出来レースだったのだ。事前に官邸広報から「訊きたいことはありますか。ご興味があるテーマは?」などと各社に打診があり、それに応じた社から質問が許されるという、およそ官製会見ともいうべきもので、菅総理はひたすら事前に用意したメモを朗読するのだ。これほど答弁応力がないのは、鈴木善幸総理(寝業師で、表に出る人物ではなかったと評されている)以来ではないか。
じっさいに、フリーの立場で質問ができたのは安積明子だけだった。その安積なる人物は『野党共闘(泣)。―学習しない民進党に待ち受ける真っ暗な未来―』『“小池”にはまって、さあ大変! ―「希望の党」の凋落と突然の代表辞任―』などの著書で、ほぼ一貫して野党叩きの立場で自民党を応援している「政治ジャーナリスト」なのである。
いま、医療関係者は春以来の激務に疲れ、医療施設そのものがコロナ患者の受け入れによって経営的にも疲弊している。医師、看護師は家族以外との接触を禁じられ、複数人での会食などもってのほかとされている。その精神的、肉体的な疲労困憊は想像以上のものがあるだろう。そんな国家国民が危急存亡のときに、みずから国民に禁じた5人以上の会食を、夜な夜な行なっている政権責任者に、その資格があるのだろうか。
◎[参考動画]菅首相×有働「8人で会食」ナゼ? “新型コロナ”全部聞く(日テレNEWS 2020年12月16日放送「news zero」より)
▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。