田村聖は今年2月のPRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント決勝を制すも9月13日のREBELS興行で日菜太(クロスポイント吉祥寺)に1ラウンドKO負け。大畠正士は11月22日、茨城県でのDEAD HEAT興行でチャン(MONSTAR)に判定負けし、結果を残せていない者同士の対戦という、宣伝アピールにはならないメインイベントとなった。

ロープにつめたところでヒザ蹴りを見舞った田村聖

田村聖は2013年10月にNKBミドル級王座決定戦で村井崇裕(京都野口)に敗れたが、2017年2月には西村清吾(TEAM KOK)との王座決定戦を判定2-0で王座獲得も、初防衛戦での西村との再戦で判定2-0で陥落し、この日再びタイトルマッチに意欲を見せた。

選手層の薄い重量級において、狙うにはミドル級しかないが、ヘビー級で試し運転したこの日の影響によっては新たな展開があるかもしれない。

◎交戦シリーズvol.6 / 12月12日(土)後楽園ホール18:00~20:48
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第10試合 ヘビー級 5回戦

NKBミドル級1位.田村聖(拳心館 / 82.5kg)vs 大畠正士(G-KICK RISING / 98.0kg)
勝者:田村聖 / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:川上50-47. 仲50-45. 鈴木50-46

田村聖は大畠正士の重量感を様子見した後、距離を縮めてローキック。大畠は重いパンチで返すが、田村を下がらせるには至らない。田村はローキックとボディーブロー中心に攻め、次第にノックアウトに結び付けるかと見えたが、大畠は耐え切った。

チョップパンチを浴びせる大畠正士

第2ラウンドには田村のヒジ打ちで大畠の眉間が切れるが傷は浅い。大畠は手刀斬るようなチョップパンチで場内を沸かせたがこの効果は薄い。最終ラウンド終盤の田村のラッシュの中、再びヒジ打ちで大畠の額が切れ、流血となったがすぐ試合終了のゴングが鳴った。

「倒れるかなと思うほど蹴って大畠は効いてた感じあったが、自分の脚の方が根負けした感じ。ボディーも効いてるかなと思ったけど倒れなかった。」と言う田村聖。

「田村のローキックは効いたし、今迄でいちばんボディーも効いたかもしれない。」と言う大畠正士。体重差は15.5kgあったが、耐え忍ぶには効果的でもスピーディーに攻め寄るには重い鎧だった。

ボディーブローも何度もヒットさせるが大畠は耐えた

蹴る側の田村の脚もダメージがあったローキック

◆第9試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級5位.則武知宏(テツ / 53.5kg)vs 古瀬翔(ケーアクティブ/ 53.52kg)
勝者:則武知宏 / 判定2-0 / 主審:佐藤友章
副審:川上30-28. 鈴木30-29. 前田30-30

小気味いい打ち合いが続いた試合。積極性はやや古瀬が優るも、的確さと落ち着いた捌きは則武のやや上回る経験値が優った。

セミファイナルを務めた則武と古瀬の攻防、存在感を示した

◆第8試合 55.5kg契約3回戦

NKBバンタム級4位.海老原竜二(神武館 / 55.0kg)
    vs
NJKFバンタム級5位.鰤鰤左衛門(CORE / 55.3kg)
勝者:海老原竜二 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:佐藤30-28. 前田30-28. 川上30-28

変則スタイルの鰤鰤左衛門に海老原は自分のリズムを崩さず距離を掴み、パンチと蹴りを的確に打ち込む。圧倒するには至らないが、鰤鰤の戦略を殺してしまう海老原の上手さが勝利を掴む。

海老原竜二が鰤鰤に攻め勝つ

◆第7試合 フェザー級3回戦

NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/ 57.0kg)vs 勇志(真門 / 56.9kg)
勝者:勇志 / 判定0-3 / 主審:鈴木義和
副審:佐藤27-29. 前田27-30. 仲27-30

期待される若手の勇志の小気味いい攻め。第1ラウンドに右ストレートでノックダウンを奪い勢い付くが、最終ラウンドには攻めのキレが無くなり失速も、6連勝無敗となった勇志。

勇志の多彩な攻めが優った

◆第6試合 63.0kg契約3回戦

NJKFライト級4位.吉田凜汰朗(VERTEX / 62.8kg)vs 洋介(渡邉 / 62.7kg)
勝者:吉田凜汰朗 / 判定3-0 / 主審:川上伸
副審:佐藤30-25. 前田30-25. 鈴木30-25

若い吉田凜汰朗のスピードが徐々に優っていく展開。第1ラウンド終盤に吉田は右ストレートでノックダウンを奪い、最終ラウンドには右ストレートをボディーにヒットさせノックダウンを奪った吉田。

ノックアウトは時間の問題かと思われる中、耐え切った洋介。終盤にはベテラン洋介のサウスポーからの左ストレートヒットが場内を沸かせるが逆転には至る強さは無く、吉田凛太朗の圧勝で終わる。

若さとスピードで攻勢を保った吉田凛汰朗と耐え忍んだ洋介

◆第5試合 フェザー級3回戦

獠太郎(DTS / 57.0kg)vs 矢吹翔太(team pain wind / 56.9kg)
引分け 1-0 / 主審:仲俊光
副審:鈴木30-29. 川上30-30. 前田30-30

◆第4試合 フェザー級3回戦

ベンツ飯田(TEAM Aimhigh / 56.75kg)vs 渉生(アント / 57.1kg)
勝者:渉生 / 判定0-3 / 主審:佐藤友章
副審:仲27-30. 川上28-29. 前田27-30

◆第3試合 ウェルター級3回戦 中止(公式発表は龍之介の不戦勝)

龍之介(TOKYO KICK WORKS / 66.4kg)vs ディスター・トシキ(KickBox / 体調不良で欠場)

龍之介はNKBウェルター級3位の笹谷淳とエキシビジョンマッチ2回戦(2分制)を行なう。

◆第2試合 53.0kg契約3回戦

ナカムランチャイ・ケンタ(team AKATSUKI / 53.0kg)vs 杉山空(HEAT / 50.5kg)
勝者:杉山空 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 29-30)

◆第1試合 バンタム級3回戦

會町Tetsu(テツ / 53.2kg)vs 幸太(八王子FSG / 53.4kg)
勝者:會町 / 判定2-0 (29-28. 29-28. 29-29)

《取材戦記》

この日もツイキャス(twitcasting)による有料配信が行われました。運営スタッフで務める苦労もある中、実況と解説には北川“ハチマキ”和裕氏と笹谷淳氏が務めた模様。

メインイベントはヘビー級の戦い。決して名のある外国人選手ではないが、昭和のチャンピオン、斎藤天心や池野興信を思い出すような日本のヘビー級の試合だった。
現在のプロボクシングに当てはめれば田村聖はクルーザー級(-90.72kg)、大畠正士はヘビー級ながら、WBCでいえば新設されたブリッジャー級(-101.6kg)に当たります。

体格があまり大きくないアジア圏に於いてはミドル級超えの階級は設定されないことが多く、今後、選手層増加が見込まれなければ新たな階級新設は難しいでしょう。

この日の一番低年齢選手は15歳の杉山空(来月16歳)。一番歳の差対決は吉田凜汰朗(20歳)vs 洋介(40歳)。最年長は大畠正士が47歳。幅広い年齢層になったのものだが、昭和の時代は親子ほど年齢差ある対戦なんて考えられなかったものです。それだけ身体のメンテナンスが向上したことや3回戦制が定着したことも影響があるでしょう。

大畠正士選手は現在G-KICK RISINGジム代表であり、元々は19歳の時、平戸ジムからデビューし、この日は21戦目ながら、この業界でのキャリアは結構古い選手でした。

この日使われたグローブは第5試合までDONKAIDEE(マーシャルワールド社)製が使われました。日本キックボクシング連盟では通常、日本のウィニング社製が使われています。プロボクシングが軽量級でも8オンスである為、現在はウィニング社製に6オンスが無いことから他社製に切り替えるしかなかったようです。

日本キックボクシング連盟2021年最初の興行は2月20日(土)後楽園ホールに於いて「必勝シリーズvol.1」として開催予定です。

大差判定勝利の田村聖、タイトルマッチへ意欲を見せた

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他