2011年3.11いらい、われわれ国民が異様な年として記憶する2020年になりそうだ。コロナ禍発生の年として、日本のみならず人類史に刻まれることだろう。
今年はクルーズ船のコロナ感染に始まった。記事から引用しよう。
「2週間の拘束となっている豪華クルーズ船ダイヤモンドプリンセスの乗客、3,771人(乗員1,000人余をふくむ)から、新たに3人の感染(累計64人)が判明した。濃厚接触者273人のほかに、70歳以上の乗客(1,000人)には、再検査が行なわれているという」
「バカンスのためにクルーズしていたのに、まるで罪人のように船室に拘禁されるとは、乗船している方々に同情するしかない。報道によれば、船内感染を予防するために、船室から出ることも禁止されているという(窓なし船室の客だけデッキに出られる措置となった)。また、香港でも別のクルーズ船(3,000人乗船)に乗客の下船が禁止されている。日本政府は新たなクルーズ船の入港を拒否する方針だという」(横山茂彦 2020年2月9日)
当初、その論調はクルーズ船の乗客たちを「棄民」化する政府の無責任を指弾するものだった。ところがこのクルーズ船には、とんでない秘密があったのだ。
「すでにネットでは公然と語られるいっぽうで、マスコミが報じない脱法行為が存在する。いや、すでにその華やかな幕は下りてしまったが、ここ半月ものあいだ繰り返し報じられてきたクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセスに秘められた、とんでもない事実があるのだ」
「外国船籍であり、なおかつ公海上に出るという外洋クルーズによって、可能となっていたのがカジノである。比較的低価格で乗船できるプリンセスクルーズの場合、日本人客にカジノを体験させ、その上がりでペイするという側面もあったのではないか。とりあえず、ダイヤモンド・プリンセスがカジノ船であったことを、ほかならぬプリンセスクルーズのホームページから引用しよう」(横山茂彦 2020年3月9日)
けっきょく、クルーズ船から感染者を降ろすことで、市中に感染症がひろがった。台湾やベトナム、発生地とされる中国武漢、あるいは韓国でPCR検査がほぼ完全に実施されるなか、日本政府は後手を踏んだのである。
「感染の疑いを感じている国民が、PCR検査を受けられないという事態がつづいている。かかりつけの医院から検査機関に連絡をしても、中国武漢・湖北省の旅行歴がなければ受けられない。民間に検査をさせないから、旅行歴の基準を充たさない感染者が重篤に陥っているのだ」
「そしてこの事態に危機感をもった、元感染研の岡田晴恵教授が悲痛な告発をしたことが話題になっている。『これはテリトリー争い』『感染研のOBの一部が、自分たちのデータにしたいから、民間での検査をさせないんです』(テレビ朝日羽鳥慎一モーニングショー)というものだ。本稿の冒頭に、ICTVとWHOが新型コロナの学名を、それぞれ独自に発表しているように、医科学界は縄張り主義がつよい。かれらの功名(権威の獲得)や利権(予算の獲得)が国にとって、何の益をもたらさないのは言うまでもない」(横山茂彦 2020年3月3日)
このあと、春のゴールデンウェークにかけて自粛、さらには緊急事態宣言が発せられ、いったんコロナ禍は沈静化にむかう。
鹿砦社および支援者たちが取り組んできた、カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)がほぼ決着をむかえた。これも2月の記事から引用したい。
「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び、巷間では「しばき隊リンチ事件」と呼ばれる、大学院生M君に対するリンチ事件で、ようやく確定判決で認められた賠償金が、金良平氏の代理人に就任した神原元弁護士からM君の代理人大川弁護士に振り込まれました。当初の代理人は別の弁護士でしたが、今年になり、なぜか代理人が交替しましたけど、まずはこの事件の一つの区切りといえる」(鹿砦社特別取材班 2020年2月7日)
そして検証作業が行なわれたので、ふり返ってみることにしたい。
◎【「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書1】朝日新聞・阿久沢悦子記者の蠢きと、「浪花の歌う巨人」趙博の突然の裏切りについて(松岡利康 2020年4月27日)
◎【同2】みんなグルだった!? (松岡利康 2020年5月25日)
◎【同3】闘いはまだ終わってはいない!「唾棄すべき低劣さは反差別の倫理を損なう」!(松岡利康 2020年5月28日)
◎【同4】闘いはまだ終わってはいない!(2)私は血の通った一人の人間としてM君リンチ事件(被害者救済・支援と真相究明)に関わってきた(松岡利康 2020年5月30日)
◎【同5】闘いはまだ終わってはいない!(3) 真実を偽造させない!(松岡利康 2020年6月3日)
◎【同6】闘いはまだ終わってはいない!(4) 李信恵「陳述書」を批判する-01(松岡利康 2020年6月5日)
◎【同7】闘いはまだ終わってはいない!(5) 李信恵「陳述書」を批判する-02(松岡利康 2020年6月8日)
◎【同8】闘いはまだ終わってはいない!(6) 李信恵「陳述書」を批判する-03(松岡利康 2020年6月10日)
◎【同9】闘いはまだ終わってはいない!(7) 李信恵「陳述書」を批判する-04(松岡利康 2020年6月12日)
◎【同10】 闘いはまだ終わってはいない!(8) 平気で嘘をつく人たち(松岡利康 2020年6月16日)
◎【同11】 闘いはまだ終わってはいない!(9)平気で嘘をつく人たち(2)~ 野間易通の場合(松岡利康 2020年6月20日)
◎【同12】闘いはまだ終わってはいない!(10)平気で嘘をつく人たち(3)~ 再び李信恵の場合(松岡利康 2020年6月22日)
◎【同13】闘いはまだ終わってはいない!(11) 平気で嘘をつく人たち(4) ~ 師岡康子の場合(松岡利康 2020年6月25日)
安倍政権をゆるがす、総理の犯罪の実態があきらかになってくる。安倍長期政権は極右政権という印象とともに、第一次政権がそうであったように、お友だちを大切にする利権政権でもあった。その典型例が森友・加計学園であり、桜を見る会であろう。単に利権を友だちと分け合うならば実害は少ないが、わたしは間違ったことをしていない、と強弁することで不要な忖度を生み、犠牲者を出してきたのである。3月の記事から引用しよう。
「赤木氏の遺書が明らかになり、その遺書に対して『新たな事実はない』『再調査を行うつもりはない』と開き直る安倍総理。遺族(赤木氏の妻)の『自殺の原因は、安倍総理の発言を佐川理財局長(=当時)が忖度した』という主張に対しては、赤木氏が遺書に書いたわけではない、と切り捨てる安倍総理。そして野党議員の追求をかわす総理のかたわらで、ニヤニヤしながら笑みを見せている麻生財務相。憤死した死者に鞭打つかのような冷酷さに、国民の怒りは頂点に達しているといえよう」
「赤木さんの妻は23日に2度目となるコメントを発表した。そのなかで『怒りに震える』と感情をあらわにしている」
「今日、安倍首相や麻生大臣の答弁を報道などで聞きました。すごく残念で、悲しく、また、怒りに震えています。夫の遺志が完全にないがしろにされていることが許せません。もし夫が生きていたら、悔しくて泣いていると思います」
「新型コロナウイルスが猛威をふるう中、政府および自治体がイベントや花見の自粛を国民に求めている状況下、昭恵夫人はレストランで多人数の花見に興じていたというのだ(「週刊ポスト」)。総理夫人が花見に興じているいっぽうで、国民には外出の自粛を強要し、花見ができる公園を封鎖する政府に、なぜ従わなければならないのだろうか」(横山茂彦 2020年3月31日)
そして安倍総理は、みずからが訴追されることを怖れて、三権分立を掘り崩す暴挙に打って出る。検察人事への介入である。
「これほど法案反対が国民的な運動になったのは、いつ以来だろうか。いうまでもなく、検察定年延期法案(検察庁法改正)に対する批判である」
「ネット上では法案反対の声が1000万ツイートにもおよび、安倍政権への国民の怒りを象徴している。小泉今日子や東ちづるなど、国民的人気の芸能人が反対を訴えることで、コロナ不作為とはまた別の意味で、安倍政権の致命傷となりそうな気配だ。政府は強行採決も辞さない構えだが、そのことが「消えた年金」以来の自民党凋落の予兆となることを、ここに指摘しておこう」
「とくに安倍政権にというよりも、官房長・事務次官時代をつうじて、政権一般に協調的・親和的といわれる黒川弘務検事長の定年延長(閣議決定)を、安倍総理はさりげなくやったつもりだった。森友・加計・桜を見る会という具合に、総理自身の利益供与、公職選挙法違反という刑事訴追の可能性も浮上してくる中、おそらく軽い気持ちでやったのではないか。じっさい、市民運動家や弁護士による安倍総理刑事告発が、複数回にわたって官邸を悩ませてきた」
「しかしそれは、卑怯な戦術として国民の目に映った。国民の目には、官邸が訴追を怖れるあまり、三権分立を侵す検察官の人事権を掌握する挙に出たと映ったのは、あまりにも当然のことだった」
「黒川検事の定年延長をきめた閣議が法的担保のない、行政行為(法解釈の変更)であるのとは違って、停年延長法は検察に対する官邸の優位を決定づける。もはや形式的な任命権。すなわち検察官を内閣の指名により天皇が任命するという、法手続きの域を超えてしまうがゆえだ。まさに訴追権を時の政権が掌握するという、ナチス政権ばりの独裁法(全権委任法)である」
「それゆえに、松尾邦弘元検事総長は『内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更』することが『フランスの絶対王政を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる『朕は国家である』という中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない』とまで安倍政権を批判しているのだ」(横山茂彦 2020年5月17日)
しかし、民意は安倍政権を追い詰めた。国民は訴追逃れの卑劣な法案を葬り去ったのである。(横山茂彦 2020年5月19日)
いっぽう、コロナ禍による影響はスポーツ界にも波及していた。安倍首相の緊急事態宣言後のキックボクシング界の経営難をレポートする。
「キックボクシングに限らず、多くの競技が先行き未定の興行中止や延期となり、ジムが自粛休業された所属選手は試合出場を目指して、今は出来る範囲でひたすら身体が鈍らないように自己練習に明け暮れる日々」
「自粛休業も、賃貸で経営するジムは家賃・光熱費が大きな負担となってくるので、経営難に陥るジムも出てくることが懸念されています」
「昭和50年代後半のキックボクシング低迷期、国内で興行予定が立たない団体と各ジムは、香港でのキックボクシングブームに乗って選手の遠征試合を重ねました。また時代を問わず、選手個人はタイへ修行に出掛け、たとえタイの田舎の無名なリングでも勧められれば臨んで出場していました。でも現在は、タイに入国も労働許可証を持った者のみと制限されている上、どこの国にも遠征することも難しい現状です」(堀田春樹 2020年4月26日)
滋賀医科大学附属病院問題において、不当判決がくだされた。
「4名の患者及びその遺族が、滋賀医大附属病院泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を相手取り、440万円の支払いを求める損害賠償請求を大津地裁に起こした(事件番号平成30わ第381号)事件の判決言い渡しが、14日大津地裁で15時からおこなわれた」
「西岡前裁判長の転勤にともない、裁判長となった堀部亮一裁判長は『主文、原告らの請求をいずれも却下する』と飄々と短時間で判決言い渡しを終えた。退廷しようとする裁判官に向かい傍聴席から『ナンセンス!』の声が飛んだ」
「この事件の期日には、これまで『患者会』のメンバーが裁判前に集合し、大津駅前で集会を行ったのち傍聴を埋めるのが常であったが、判決日は折からの『新型コロナウイルス』への配慮から、『患者会』は集会や傍聴の呼びかけをおこなわなかった。したがって本来であれば判決を裁判所の外で待ち受けていたであろう、約100名(毎回裁判期日には100人ほどの人が集まっていた)の姿はなく、静かな法廷のなかで冷酷無比な判決言い渡しの声が響いた」(田所敏夫 2020年4月16日)
「紙の爆弾」が創刊15年をむかえた。東西で祝賀パーティーが開かれ、同誌の役割の大きさが確認された。
「15年前の4月7日、『紙の爆弾』は創刊いたしました。2005年のことです。新卒で入社した中川志大(創刊以来の編集長)は、『噂の眞相』休刊(事実上の廃刊)後、約1年間、取次会社に足繁く通い、取得が困難とされる「雑誌コード」を取得し、『紙の爆弾』は創刊いたしました。創刊号巻頭には、悪名高い「〈ペンのテロリスト〉宣言」が掲載され、独立独歩、まさに死滅したジャーナリズムとは違った道を歩み始めました。創刊部数は2万部でした。4月7日、『紙の爆弾』創刊15周年! 創刊直後の出版弾圧を怒りを込めて振り返ると共に、ご支援に感謝いたします!」(松岡利康 2020年4月6日)
コロナ禍のなかで、路上生活者には過酷な日々が続いている。新宿における生活防衛の闘いをのレポートを引用する。
「新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、東京都はネットカフェにも休業を要請した。安定した住居を持たずネットカフェなどで生活する『ネットカフェ難民』は、2018年から2019年にかけての東京都の調べによると約4000人。文字通り路上生活を余儀なくされている人に加え、24時間営業のファストフード店やネットカフェが休業してしまえば、そこで寝泊まりする人々が路上にたたき出されてしまう恐れがあった。そこで、ホームレス支援30団体以上が協力して『新型コロナ災害緊急アクション』を結成。東京都に緊急支援を要請してきた。その結果、施設休業で済む場所を失った人をビジネスホテルに一時滞在できるようになっていった。……中略…… コロナ災害の状況では、就職先が確保されたなどというのは少数で、多くの人は野宿を強いられている可能性がたかい」(2020年林克明 2020年6月26日)
(下半期につづく)
▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。