◆多数派になった「東京五輪反対」世論と権力の背離

2013年9月7日のブエノスアイレスで、長州の大法螺吹き安倍晋三が嘘八百の召致演説を行い、不幸にも決定してしまった「東京五輪」──。「福島復興五輪」だの、「レガシー作り」だの、空疎で犯罪的ですらある虚飾で固めた「東京五輪」開催に、わたしは招致決定直後から、その欺瞞と犯罪性について、極めて強い言葉で批判と開催反対の意を明らかにしてきた。


◎[参考動画]安倍晋三総理大臣プレゼンテーション IOC総会(2013年9月8日)


◎[参考動画]原発処理水の海洋放出を決定(2021年4月14日)

本通信だけではなく、鹿砦社の発刊する日本唯一の反原発季刊誌『NO NUKES voice』などでも、機会があれば「東京五輪反対」を書き続けてきた。統計を取ったわけでもなく、調査を行ってもいないけれども、原発に反対するひとびとの多くは、わたし同様に「東京五輪反対」に同意してくだっさる傾向にあったが、それ以外の皆さんは積極的であったかどうかはともかく、さして強い反対の意向を「東京五輪」」には持っておられなったように感じる。

本コラムでわたしの偏った原稿を読んでくださる読者の皆さんのなかにも、強硬な「東京五輪反対派」はそれほど多くの割合を占めはしなかったのではないかと思う。しかしこの1年で世論は激変した。大手新聞、テレビが煮え切らない態度でコロナの蔓延や、幾度もやってくる感染の波を伝えならが、「東京五輪まであと100日」と報道する姿勢たいして、新聞はただでも減っている部数をさらに減らし、テレビを視聴する人の平均年齢は、ますます上がる。

そして価値基準において絶対に両立しえない「コロナ対策」と「五輪開催」を同じ番組の中で扱うことに慣れた番組構成は、高齢者にすら飽きられてしまう。


◎[参考動画]IOC委員長は開催断言も世論調査7割以上が否定的(2021年4月14日)

◆ワクチン未接種者が多数の国で強行される「東京五輪」

どういう理由かワクチン接種率はイスラエルとモーリシャスが他国を引き離して高い。ワクチン接種が開始されてからこの傾向は一度も変化を見せておらず、日本の接種率は100位前後を行ったり来たりしている。

ワクチン接種については様々な観点から有効性に疑問があるので、わたしは読者の皆さんに積極医的な接種をすすめるものではない。でも、日本政府は数か月前に何と言っていただろう。「7月までには全国民の接種を終える」、「五輪までにワクチンは間に合う」こう語っていたのはよその国の閣僚ではない。それがどうだ。現在でも毎日新しくワクチン接種を受けている人の数は多くても1日あたり2万人を上回わらない。

このままのペースであれば、7月までに接種を希望する全国民にワクチンを行き渡らせることは、完全に無理だ。つまり「東京五輪」を強行するならばワクチン未接種者が多数の国で五輪を開くことになる。

こういうバカげた状態をさすがに、多数の国民は望みはしない。「宴会自粛」や「リモート講義」で家や下宿に閉じ込められた若者たちは、いまひそかに怒りはじめている。

「僕は通信教育を受けるために、大学受験の勉強をしたわけじゃないです」

都内の有名私立大学に昨春入学した若い知人は、昨年1コマしか対面講義はなかったそうだ。その1コマだけの対面講義も、感染者が出てリモートに切り替わった。なんのために下宿をしているのか。疫病が原因とはいえ、若い友人が怒りを感じるのは、無理なかろう。そんな東京で「五輪」を開こうとしている愚か者たちに、若い知人の怒りは向けられているのだ。

日々の感染者が1000人を超えて「医療崩壊」を医師会が宣言した大阪では4月13、14の両日、万博公園で観客を入れずに「聖火リレー」がおこなわれた。この際大阪府のスポーツ振興課員(常時13~14名在籍)は全員万博公園に出向いていたそうだ。維新・吉村府政は、しきりにコロナ対策に力を入れているようにふるまうが、「聖火リレー」における対応を見れば、その本質は推して知るべしである。

美しいほどに馬鹿げて、それでいて人の命を奪う背理が目の前で繰り広げられている。(つづく)


◎[参考動画]ワクチン接種後に60代女性が死亡 因果関係は?(2021年4月14日)

◎[カテゴリー・リンク]五輪・原発・コロナ社会の背理

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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