新型コロナウイルスの感染拡大が収束しないなか、国は老朽原発再稼働に向け、着々と準備を進めてきた。福井県高浜1、2号機、美浜3号機再稼働について、地元美浜町、高浜町は昨年内に同意、今年に入り杉本知事は、それまで議論の前提としていた、関電が使用済み核燃料中間貯蔵候補地を県外に探すとした約束を棚上げし、県議会に再稼働に向けた議論を要請し始めた。

4月6日、政府が、一原発あたり25億円の交付金を提示したことを受け、県議会は23日の臨時議会で、再稼働を求める意見書を可決、再稼働反対や慎重な議論を求める請願59件を不採決とした。再稼働容認の判断を一任された杉本知事は、27日、梶山経産相や森本関電社長らとオンラインで面談、28日再稼働同意を表明するに至った。

関電は、高浜2号機について5月再稼働を目指していたが、コロナ禍の人員不足などで特定重大事故等対処施設の工事が遅れ、動かしても、工事設置期限の6月9日以降停止しなくてはならないため、当面の間再稼働を断念するとした。

一方、設置期限が10月25日の美浜3号機については、6月下旬の再稼働を目指すとして、5月20日燃料棒の装荷が行われることとなった。当日、現地美浜町には関西を中心に50名が集まり、緊急の抗議行動が行われた。

美浜原発へデモ(撮影=Kouji Nakazawa)

美浜町役場前で発言する木原壯林さん

12時より美浜町役場前で始まった抗議集会で、木原壯林さんの発言。

「福島原発事故から10年たちましたが、未だに大勢の人たちが避難したままです。事故炉内部の詳細は未だ不明で、増え続ける汚染水は海に垂れ流されようとしています。原発は人類の手に負えないものでないことは明らかです。その原発が老朽化すれば、どれだけ危険か、よく御存じのことです。その美浜3号機に今日から燃料棒が装荷されます。
 美浜町や福井県はこの間、関電の事業本部長と会談していますが、美浜町の戸嶋町長は、競争入札をしない『特命受注』などの仕事をやるからと頼まれ再稼働に同意しました。
 杉本知事は、国から美浜原発に5年間で25億円の新たな交付金を貰ったと自慢気に再稼働に同意しました。全て金の亡者です。関電はそれよりもっと酷い亡者で、人々の安全・安心を蔑ろにして原発を動かそうとしている。
 3月18日の水戸地裁の判決でも明らかになったように、避難はとうてい無理です。美浜原発から28キロのところに琵琶湖があり、滋賀県、京都府、大阪府、岐阜県などの人たちは避難できないどころか、関西一円の人たちが放射能に汚染される可能性があります。
 今日はそういう意味でなんとしても燃料装荷に抗議し、6月下旬と言われる美浜原発再稼働に向け、反対の声をあげたいと思います。私たちがもし、ここで大きな行動をしなかったら、日本中の原発の60年運転を唯々諾々と許したことになります。
 日本の原発が60年超えて運転されることになれば、韓国もこれに見習うことになります。今日の闘いは、世界の原発を止める非常に重大な闘いであります。今日の闘いを出発にして、6・6大阪大集会を成功させ、なんとしても美浜原発を止めなければならないと考えます。

町内デモ(撮影=Kouji Nakazawa)

中嶌哲演さん

続いて、小浜市明通寺の中嶌哲演さんの発言。

「今朝、6、7時から美浜原発ゲート前で福井の仲間が抗議行動を行ってきました。今日は50名もの皆さんが関西から参加して下さり、本当に心から感謝申し上げたいと思います。
 昨年9月に美浜3号機、高浜1号機の安全対策工事が完了したとたん、国と関西電力は猛烈な攻勢を県議会、県知事にかけてきました。皆さんもつぶさに見ていただいた訳ですが、もう私は若狭、福井県民として憤ろしく悲しく情けなく、本当に恥ずかしい。関西の皆さんも、同じ感情を共有して頂いていると思いますが、しかし私たち若狭の人間にとっては、彼らの姿というのは半世紀前からあまり変わっていない。私には同じ光景をまた見てしまったという既視感があります。それも麻薬患者化している感があります。
 私はこれまで皆さんに『原発マネー・ファシズム』『国内植民地化された若狭』と訴えてきました。そういう抽象的な表現ではなかなかご理解できなかったかもしれませんが、今回の一連の美浜、高浜町議会、県議会、知事の情けない姿を見て頂いて、少しご理解頂いたのではないでしょうか。これは原発マネー・ファシズムに支配された側の姿です。
 きたる6月6日は、その原発マネー・ファシズム、国内植民地化を福井県に押し付けてきた支配者側の人たちに、どう鉄槌を加えていくのかが問われる集会になると思います。
 私たちは町議や県議、知事を恥ずかしく思っていますが、関西一円の皆さんも、関西電力がやっていることを恥ずかしがり、情けないと考え、なんとかこれを糺して頂きたいと思います。何故ならば、関電は株式会社で、筆頭株主は大阪市、第二か第三に神戸市が入っています。京都市はちょっとランク外ですが、そういう単なる純粋な民間企業ではなく、半官半民の株式会社である、その関電と国が二人三脚でこういうことを展開しています。
 そのことを6月6日に、関西の皆さんと認識を共有し、どういう闘いを展開し、最終的に原発ゼロに追い込んでいくかを一緒に考えていきたいと思います。まずその前哨戦として今日の闘いがあります。実行委員会の中でも『若狭の原発を考える会』の皆さんが、本当に地道に活動を重ねて、若狭と関西の架け橋を益々強く大きく作って頂いていることに心から感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

美浜町役場(撮影=Kouji Nakazawa)

河本猛・美浜町町議

最後に美浜町町議の河本猛さんの連帯アピール。

「5月17日の全員協議会で関電から再稼働の工程が示されました。原発の安全性を高めるなら、老朽炉にこだわる必要はなく、新型炉の検討をしてもいいと思うんです。しかし、新型炉の検討をすると、美浜原発は活断層にぐるりと囲まれた敦賀半島に立地しているので、新型炉を作ろうとして地質調査などをすると、3次元モデルで地下構造を分析しなければなりません。
 現在は40年以上前の老朽原発が存在しているので3次元モデルで地下構造の分析はしておらず、最新の技術で地下構造を分析すれば、当時わからなかった破砕帯や活断層、地下構造が明らかになる。だから新型炉でやろうとしたら、活断層に囲まれたこの場所では絶対に原発はできません。
 老朽原発より新型の方が安全性は高いに決まっています。そういう議論をしないで老朽原発を動かそうとしている。安全なんて考えていないのです。古くなればなるほど、巨大なエネルギーを制御して運用するコンクリートと鉄の塊は危険になる。重要施設は設備を替えるといいながら、原子炉容器など取り替えができない場所もあるのでつぎはぎだらけの巨大な施設になる。
 安全は何も担保されていない。それなのに言葉だけは『安全・安全』と言って老朽原発を動かそうとしている。それは科学的に間違っていると、私や松下議員は主張し、議会でも再稼働をやめるように訴えています。しかし、町長も議会も原発推進派が多いので地元同意を覆すところまではいきませんが、原発に反対する皆さんの声は、私と松下議員で伝えております。 原発を止める方法はいろいろあると思います。あらゆる手段を講じて原発を止めたい。皆さんとともに一緒にがんばります。」

美浜3号機は6月23日にも再稼働されると報じられている。その前段として、6月6日、若狭の原発の最大の電力消費地・大阪で「老朽原発うごかすな!大集会in大阪」が開催される。多くの皆さんとともに「老朽原発うごかすな!」の声を上げていこう!

6月6日「老朽原発うごかすな!大集会in大阪」開催!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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