◆小池氏の動向に焦点
2本の記事が、端無くも「小池劇場」ということになった。
7・4東京都議選を見据えて、五輪中止を最大限利用するのではないか。横田一の「小池百合子の専制政治」および、衆院選がらみで政局を照らし出した山田厚俊の「ワクチン・東京五輪と衆院選の行方」である。
さて、五輪中止という公約が本当に都議選挙の公約となるのか。横田によれば立憲民主の蓮舫代表代行が「十分あると思っている」、共産党も「五輪中止」を選挙公約のトップに掲げるという。ネット上の中止署名も白熱していることから、都議選がオリンピックの成否をめぐり、大きなハードルになる可能性は高い。
だが、7月4日投票であれば、もう五輪の準備はととのっているはずだ。この苛烈な政治過程・政局を小池百合子が「独裁者」として、どのように突っ走るのか。個人的には彼女の凱歌を聴いてみたいような気がする。
衆院選はどうだろう。山田の分析では「このコロナ禍に首相交代論など出せるわけもない」というものだ。そうしてくると、ますます小池総理という芽も出てくるのかもしれない。
都議選に関連して、「NEWS レスQ」の「東京都議選、創価学会・公明党が乱発する謎のサイン」が注目だ。学会系の出版物に、学会員しかわからないキーワードが発せられているというのだ。同党が全員当選を果たせるのか、今後の連立政権のゆくえを占うものになるだろう。
◆古代オリンピックの興廃
佐藤雅彦の「偽史倭人伝──アスリート・サクリファースト」がおもしろい! 記事の意図するところは「東京五臨終大会」で、競技選手が「いけにえ」になる戯画的な指摘だが、ラテン語の語源からそうであったとは、目からウロコである。
そしてこの記事でわかるのは、古代オリンピックが「自由市民の男性に限定された」「市民平等の証しだった」という点だ。未婚女性は父親と同伴のうえ、全裸になった男たちを「観戦」したというのだ。この記事は「前編」なので、次号にも期待したい。東京オリンピックの強行開催には反対だが、天皇制とともにオリンピックは悪魔的な魅力がある。
◆告発する記事たち
森友事件の刑事裁判の解説記事は、丸山輝久弁護士へのインタビュー(青木泰)だ。なんと、検察による録音データの証拠改ざん・恣意的な編集が行なわれているというのだ。籠池諄子の「ぼったくって」という発言を、前後の脈絡を省いて補助金の不正請求と結びつけているのだ(犯行動機の立証か?)。今後も、裁判の詳報を期待したい。
地味な記事だが、編集部による「行政は見て見ぬふり“介護崩壊”の実態」は貴重な告発である。今年の一月に、末期がんの78歳の夫の介護に疲れた72歳の妻が、夫を殺害した同じスカーフで首吊り自殺をした、悲惨な結末から、老々介護と福祉行政の酷薄をレポートしている。福祉制度の欠陥は、入管による「違法」滞在者への扱いとともに、われわれの社会が向き合わなければならない課題である。
沖縄の世界遺産登録地に、米軍の「危険地帯」が存在する。小林蓮実女史のレポートである。DDTやBHC、PCBなど、どうやら米軍が不要なものを廃棄したのではないかと推察される。そればかりではない。実弾が放置されているというのだ。米軍のYナンバーのクルマ(私有車)が頻繁に見られることから、組織的というよりも無秩序な放棄も考えられる。
コロナ禍関連では、はじめすぐるの「グローバルダイニング訴訟が問う 日本のコロナ政策の本質」が、時短命令の狡猾さを告発する。ここでも小池知事の強権が落とす影は大きい。
コロナ禍については、武漢感染研ウイルス兵器説(アメリカの研究者由来)がそろそろ誌面を賑わせてもいいのではないか。論陣を張る材料は出てきたと思われるので期待したい。
村田らむの「キラメキ☆東京放浪記」SOLMAN剃る男、がテーマを凝縮しておもしろい。クリアランスなこの時代、男の悩みは脱毛なのである。(文中敬称略)
部落差別テーマの検証記事は、稿を改めたい。わたしへの批判的な内容もあり、その誤読を指摘しているうちに、かなり長くなりました。乞うご期待。(つづく)
▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。