本日11日、全国の書店やアマゾンなどで『NO NUKES voice』が発売される。本号の特集は「〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉」だ。創刊以来28号を数える本号は、奇しくも〈当たり前の理論〉がますます踏み倒される2021年6月の発売となった。

元福井地裁裁判長の樋口英明さん(『NO NUKES voice』Vol.28グラビアより)

◆理性も理論も科学もない「究極の理不尽」との闘い

 

『NO NUKES voice』Vol.28 《総力特集》〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉

原発を凝視すると、その開発から立地自治体探し、虚飾だらけの「安全神話」構築、そして大事故から、被害隠蔽、棄民政策と、徹頭徹尾〈当たり前の理論〉を政治力や、歪曲された科学が平然と踏み倒してきた歴史が伴走していることに気が付かれるだろう。

南北に細長い島国で、原発4基爆発事故を起こし〈当たり前の理論〉が通用していれば、とうに原発は廃炉に導かれているはずである。が、あろうことか、「原発は運転開始から40年を超えても、さらに運転を続けてよろしい」と真顔で自称科学者、専門家と原子力規制委員会や経産省は「さらなる事故」の召致ともいうべき、あまりにも危険すぎる〈当たり前の理論〉と正反対の基準を認め、電力会社もそちらに向かって突っ走る。

ここには理性も理論も科学もない。わたしたちは原発に凝縮されるこの「究極の理不尽」との闘いを、避けて通ることはできないのである。「究極の理不尽」は希釈の程度こそ違え、もう一つわかりやすい具象を日々われわれに突きつけているではないか。

◆「反原発」と「反五輪」

誰もが呆れるほどに馬鹿げている「東京五輪」である。わたしは「反原発」と「反五輪」はコロナ禍があろうとなかろうと、通底する問題であると考える。それについての総論、各論はこれまで本誌であまたの寄稿者の皆さんが論じてこられた。とりわけ本間龍さんは、大手広告代理店に勤務された経験からの視点で「五輪」と「原発」の相似因子について、詳細に解説を重ねて下さってきた。

絶対的非論理に対しては、遠回りのようであっても〈当たり前の理論〉が最終的には有効であるはずだと、わたしたちは確信する。そのことは、政治や詭弁が人間には通用しても、自然科学の本質にはなんの力ももたないという、例を引き合いに出せば充分お分かりいただけるだろう。

どこまで行っても、新しい屁理屈の創出に熱心な原発推進派には、〈当たり前の理論〉で対峙することが大切なのだ。そのことをわたしたちは多角的な視点と、多様な個性から照らし出したいのであり、当然その中心には福島第一原発事故による、被害者(被災者)の皆さんが、中心に鎮座し、しかしながら過去の被爆者や原発に関わる反対運動にかかわるみなさんとで、同列に位置していただく。

絶対に避けたいことであり、本誌はそのためにも存在する、ともいえようが、たとえば大地震が原発を襲えば(その原発が仮に「停止中」であっても)、次なる福島がやってこない保証はどこにもない。膨大な危険性と危機のなかに、日常があるのだということを『NO NUKES voice』28号は引き続き訴え続ける。本誌創刊からまもなく7年を迎える。収支としてはいまだに赤字続きで、発行元鹿砦社もコロナの影響で売り上げが悪化していると聞く。

原発を巡る状況に部分的には好ましい変化があっても、楽観できる雲行きではない。そんな状況だからこそ〈当たり前の理論〉で〈脱原発社会〉を論じる意味は、過去に比して小さくはないはずだとわたしたちは考える。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』Vol.28
紙の爆弾2021年7月号増刊 2021年6月11日発行

[グラビア]「樋口理論」で闘う最強布陣の「宗教者核燃裁判」に注目を!
コロナ禍の反原発闘争

総力特集 〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉

[対談]神田香織さん(講談師)×高橋哲哉さん(哲学者)
福島と原発 「犠牲のシステム」を終わらせる

[報告]宗教者核燃裁判原告団
「樋口理論」で闘う宗教者核燃裁判
中嶌哲演さん(原告団共同代表/福井県小浜市・明通寺住職)
井戸謙一さん(弁護士/弁護団団長)
片岡輝美さん(原告/日本基督教団若松栄町教会会員)
河合弘之さん(弁護士/弁護団団長)
樋口英明さん(元裁判官/元福井地裁裁判長)
大河内秀人さん(原告団 東京事務所/浄土宗見樹院住職)

[インタビュー]もず唱平さん(作詞家)
地球と世界はまったくちがう

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
タンクの敷地って本当にないの? 矛盾山積の「処理水」問題

[報告]牧野淳一郎さん(神戸大学大学院教授)
早野龍五東大名誉教授の「科学的」が孕む欺瞞と隠蔽

[報告]植松青児さん(「東電前アクション」「原発どうする!たまウォーク」メンバー)
反原連の運動を乗り越えるために〈前編〉

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
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[報告]森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表)
「処理水」「風評」「自主避難」〈言い換え話法〉──言論を手放さない

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈12〉
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[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈21〉
翼賛プロパガンダの完成型としての東京五輪

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
文明の転換点として捉える、五輪、原発、コロナ

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
暴走する原子力行政

[報告]平宮康広さん(元技術者)
放射性廃棄物問題の考察〈前編〉

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
新・悪書追放シリーズ 第二弾
ケント・ギルバート著『日米開戦「最後」の真実』

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
五輪とコロナと汚染水の嘘

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈12〉
免田栄さんの死に際して思う日本司法の罪(上)

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク(全12編)
コロナ下でも自粛・萎縮せず-原発NO! 北海道から九州まで全国各地の闘い・方向
《北海道》瀬尾英幸さん(泊原発現地在住)
《東北電力》須田 剛さん(みやぎ脱原発・風の会)
《福島》宗形修一さん(シネマブロス)
《茨城》披田信一郎さん(東海第二原発の再稼働を止める会・差止め訴訟原告世話人)
《東京電力》小山芳樹さん(たんぽぽ舎ボランティア)、柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表)
《関西電力》木原壯林さん(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《四国電力》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《九州電力》杉原 洋さん(ストップ川内原発 ! 3・11鹿児島実行委員会事務局長)
《トリチウム》柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表/再稼働阻止全国ネットワーク)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク、経産省前テントひろば)
《反原発自治体》けしば誠一さん(杉並区議/反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)

[反原発川柳]乱鬼龍さん選
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