ジワジワと後半攻め優った北川ハチマキ和裕。勝者コールの瞬間は諸々の想いが脳裏を過ぎったか、その場で泣き崩れた。

応援団に見守られ、ラストファイトのリングに向かう北川ハチマキ和裕

15年戦えた感謝を語りだすと多くの想いが過ぎり、涙が止まらなくなった北川

北川ハチマキ和裕は、昨年6月の日本キックボクシング連盟興行で引退試合を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、この日まで延期されていた。

カーフキックを受けた蛇鬼将矢は左脚にダメージを負って控室から車椅子で車に移動し病院へ向かった。

◎NKB 2021 必勝シリーズ 4th /
6月19日(土)後楽園ホール17:30~20:18
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第9試合 メインイベント 67.0kg契約 5回戦

NKBウェルター級チャンピオン.蛇鬼将矢(テツ/1989.5.31奈良県出身/66.75kg)
     VS
北川”ハチマキ”和裕(PHOENIX/1986.6.19埼玉県出身/66.8kg)
勝者:北川ハチマキ和裕 / 判定0-3
主審:前田仁
副審:仲47-50. 川上47-49. 鈴木46-50

北川”ハチマキ”和裕はREBELS-MUAYTHAIスーパーライト級、ライト級でどちらも初代の二階級制覇した元チャンピオン。

第1ラウンド、蛇鬼はパンチ主体に前に出る。北川が距離を取り、蹴り合っても攻防に差は無いが、北川の右のカーフキックが幾らかヒット。

第3ラウンドから北川のペースがジワジワ上がり、第4ラウンド以降は蛇鬼がパンチで北川を追う流れも接近すると北川が組み合ってペースをつかみ、ヒザ蹴りを繰り出す。カーフキックも続けるが、自身の脚も痛かった様子も主導権を完全支配した形で最終ラウンドを終え判定勝利。

北川ハチマキ和裕のカーフキックが度々ヒット、蛇鬼将矢はダメージが深かった

[左]ラストラウンドは北川ハチマキ和裕のペース、得意のヒザ蹴りで攻める [右]試合を終え、蛇鬼将矢から北川ハチマキ和裕へ労いの花束が贈られた

この5年間は体調面の問題から休養期間もあったが、2016年6月から全く勝てず7連敗。今回の試合前には、正直やりたくない、逃げたいと思ったという。

「でももう一回勝つところを見せたい、今まで一回も勝つところを見せられなかった人にも見せたいと思って戦った。今日は勝つところを見せられて本当に良かったです。」と公式戦最後の試合を終え、感謝の諸々の想いを涙を流しながら語った北川ハチマキ和裕。最後は引退テンカウントゴングが打ち鳴らされて、ここまで支えてくれたジムメイトと共に写真に収まり、公式戦39戦17勝(3KO)18敗4分の戦績を残し、リングを下りた。

かつて巻いたREBELSのチャンピオンベルト(現在封印)が山口元気代表より贈呈

◆第8試合 53.25kg契約3回戦

老沼隆斗(STRUGGLE/1998.8.4東京都出身/53.0kg)
     VS
NKBバンタム級4位.海老原竜二(神武館/1991.3.6埼玉県出身/53.1kg)
勝者:老沼隆斗 / 判定2-0
主審:佐藤友章
副審:鈴木29-29. 川上30-29. 前田30-28

老沼隆斗は元・REBELS-MUAYTHAIスーパーフライ級チャンピオン。
ゆっくり余裕を持ったアクションから鋭く前蹴り、後ろ蹴りなど多彩に蹴るテクニックで海老原のタイミングを狂わせる。海老原は押されながらも正攻法な蹴りパンチで応戦も、老沼のテクニックにポイントが流れ、僅差で老沼が判定勝利。

海老原に蹴り脚を取られても、回転して器用に後ろ蹴りを見せた老沼隆斗

多彩な動きの老沼隆斗に海老原竜二は正攻法のローキックをヒット

ちさとkissMeに、野村怜央の右ヒジ打ちがヒット

◆第7試合 62.75kg契約3回戦

NKBライト級3位.野村怜央(TEAM KOK/1990.3.27東京都出身/62.1kg)
    VS
ちさとkiss Me!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/62.7kg)
勝者:野村怜央 / 判定3-0
主審:仲俊光
副審:前田30-28. 川上29-28. 佐藤30-28

野村玲央が蹴りとパンチの的確差で優る展開。ちさとは押されながらも変則気味の攻めで、野村に勢い付かせない戦法で踏ん張り、振り分け難い採点はジャッジ三者一致しないラウンドはあるが、順当に野村怜央が判定勝利。

◆第6試合 フェザー級3回戦

鎌田政興(ケーアクティブ/56.85kg)vs 半澤信也(トイカツ/56.9kg)
勝者:半澤信也 / TKO 2R 0:15
主審:鈴木義和

初回の静かな展開から、第2ラウンド早々に半澤信也の軽く飛んでの左ヒザ蹴り一発で鎌田政興の顎にヒットさせ、あっさりノックダウン。ダメージは深そうですぐにレフェリーがストップした。すぐには立ち上がれなかった鎌田だったが、大きなダメージは無く、暫くして立ち上がって挨拶してリングを下りた。

半澤信也が軽く飛んで左ヒザが鎌田政興の顎にあっさりヒットし、あっけない幕切れ

◆第5試合 NKBバンタム級王座決定トーナメント予選3回戦

志門(テツ/53.3kg)vs 龍太郎(真門/53.25kg)
勝者:龍太郎 / 判定0-2
主審:川上伸
副審:佐藤29-30. 仲29-30. 前田30-30

龍太郎に比べ長身の志門がパンチと蹴りの距離感で押し気味の展開ながら、龍太郎はアグレッシブに手数を出し、わずかに的確差が優った僅差判定勝利となった。

◆第4試合 59.0kg契約3回戦

山本太一(ケーアクティブ/58.95kg)vs ガイヤーン・MFC(MFC/56.9kg)
勝者:山本太一 / 判定3-0
主審:鈴木義和
副審:佐藤30-29. 前田30-29. 川上30-28

◆第3試合 54.5kg契約3回戦

森井翼(テツ/54.15kg)vs 湯本和真(トイカツ/54.1kg)
勝者:森井翼 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-28)

◆第2試合 60.0kg契約3回戦

辻健太郎(TOKYO KICK WORKS/59.75kg)vs 源樹(リバティー/59.75kg)
引分け0-0 (29-29. 29-29. 29-29)

◆第1試合 64.5kg契約 3回戦

平田純一(ダムファイトジャパン/64.3kg)vs 折戸アトム(PHOENIX/64.35kg)
勝者:折戸アトム / 判定0-3 (28-30. 29-30. 28-30)

《取材戦記》

引退試合を行なった北川ハチマキ和裕は、主戦場をREBELS興行中心に活躍して来た中、7連敗しても戦う場があるのは、北川の実績と人柄の良さで、まだまだ必要な存在と導いてくれたプロモーターであり、そんな戦う場があるキックボクシング業界であることが幸いする。

所属するPHOENIXジムは、今時は多数存在するフリーのジムで、どこの団体・興行に出ようが受け入れられるなら活動は自由だが、頑固な仕来りの日本キックボクシング連盟で、加盟しない選手の引退式とは過去に無い引退セレモニーだった。それだけ若い世代が現場を仕切る時代になったものである。

試合後、控室を訪れると、蛇鬼将矢は左脚脹脛周辺を氷で冷やしていた。カーフキックは第1ラウンドから効いていたという。それを感じさせない蛇鬼の戦いぶりはさすがのチャンピオン。しかし観戦するプロ選手の目には、蛇鬼の脚が効いた様子が伺えた声もあった。

控室には車椅子が運ばれ、蛇鬼は病院に移動し、検査の結果は骨には異状なく軽傷で済んだ模様。

「インターバル中、相手陣営の様子を見ないで、自軍の選手の加療やアドバイスに集中し過ぎるセコンドをたまに見かける。」というリングサイド関係者の話を聞いたことがあります。相手陣営の打たれた箇所の加療、肩で大きく深呼吸をしている様子などからダメージやスタミナ切れを察することも出来るから、自軍陣営は相手陣営の様子も見ておくべきらしい。

私(堀田)も家に帰ってからパソコンに画像を取り込んで見て、改めてセコンドの動きに気付くことがある。速報を扱う媒体だったらこれでは遅いだろう。現場で気付くプロの目はやっぱり凄いのである。

次回、日本キックボクシング連盟興行は10月16日(日)後楽園ホールに於いて「必勝シリーズvol.5」が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』7月号