ジャパンキックボクシング協会の若き看板スター、モトヤスックと馬渡亮太が、いずれもちょっと効いてしまうノックダウン奪われ判定負けも、観衆に感動を与える激闘を残した。
緑川創は6月から毎月続く試合の中で、頑丈な身体での存在感示す勝利。
悠斗は学生キックからプロ転向後、NJKFランカーまで上がり、そこからプロボクシングに転向し、第42代日本ライトフライ級チャンピオンとなった選手。コロナ禍での興行が流れる事態やジム閉鎖などの諸事情を持ってキックボクシングに復帰し、6月12日に白幡裕星(橋本)に判定負け。今回の2戦目は見事、強打炸裂の勝利となった。
6月1日よりKIXジムがジャパンキックボクシング協会に加盟されたことが小泉猛協会代表より紹介があり、金川剛一氏が挨拶されました。
◎Challenger3 ~Beyond the limit~ / 8月22日(日)後楽園ホール17:30~20:10
主催:治政館ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
◆第7試合 70.0kg契約 5回戦
JKAウェルター級チャンピオン.モトヤスック(=岡本基康/治政館/69.8kg)
VS
緑川創(元・WKBA世界SW級C/RIKIX/70.0kg)
勝者:緑川創 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名46-50. 桜井46-50. 松田46-50
モトヤスックは2018年5月13日デビューで、2020年1月5日、同門の先輩、政斗をTKOで下し、この協会のウェルター級王座戴冠。
緑川創は2004年6月12日デビュー。2009年5月31日に日本ウェルター級王座獲得。4度防衛後返上。2019年4月14日にWKBA世界スーパーウェルター級王座獲得。初防衛後、所属ジム消滅により団体離脱の為返上。
うっかり星を落とせない立場の両者。序盤からけん制での様子見から被弾するリスクを負いながら距離は縮まり、主にパンチでアゴやボディーへ強打を打ち込む両者。第3ラウンド、緑川がやや攻勢強め主導権奪ったかにみえるが、打ち続けないとモトヤスックはすぐにでも巻き返す技量あり、やや被弾していた緑川はうっすらと鼻血を流す。
第4ラウンド、モトヤスックが流れを変えようと一瞬のスキを突いて右ストレートで出ると一気に緑川をロープに追い詰めて連打を続け、緑川は一瞬腰が落ちかけるも切り抜ける。ここが経験値の差か、打ち合いの距離の中、緑川が右ストレートでモトヤスックはノックダウン。立ち上がるところ、一瞬ふらついて後退するが続行。もっとも苦しいラウンドとなった両者。
最終ラウンドもやや緑川ペースが続く中、蹴りが少ないパンチ中心の攻防。緑川が鼻血を激しく流すほど被弾もしている中、倒しに行くにはキツいのは確かで、勝ちを拾いに行く流れでも手数を出して終了。モトヤスックも逆転狙うヒジ打ちもパンチもすでに遅かった。
◆第6試合 56.0kg契約 5回戦
馬渡亮太(治政館/56.0kg)
VS
WBCムエタイ日本スーパーバンタム級1位.一航(=大田一航/新興ムエタイ/55.9kg)
勝者:一航 / 判定0-2
主審:椎名利一
副審:松田48-48. 桜井48-49. 少白竜47-49
馬渡亮太は今年1月10日にクン・ナムイサン・ショウブカイ(タイ)とのWMOインターナショナル・スーパーバンタム級王座決定戦に勝利し王座獲得。
序盤の様子見は馬渡がバランスいい蹴りでけん制、やや受け身でも相手をよく見て蹴り返す一航。第3ラウンドには接近した隙に右ヒジ打ちを側頭部にヒットさせ、ノックダウンを奪った一航。馬渡はちょっと足にくるダメージを負う。
ここから被弾することを避け、ダメージ回復を図る。ガードを高く上げる馬渡にボディーブローを叩き込み、一航は攻撃力増して前に出る、立場逆転したラウンドとなった。
第4ラウンド、互角の攻防ながら、馬渡はロープを背にする展開だが、蹴りのヒットはやや優る。第5ラウンドも両者力を振り絞る攻防で終了。全体を通せば、やや押された場面があった一航に、ラウンド制ではこんな失点もある微妙な採点で、一人のジャッジは引分けと付けているが、ノックダウンを奪った一航の勝利は僅差ながら妥当なところ。
◆第5試合 51.0kg契約3回戦
JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/50.8kg)
VS
NJKFフライ級4位.悠斗(=高橋悠斗/東京町田金子/51.0kg)
勝者:悠斗 / TKO 2R 2:39 / カウント中のレフェリーストップ
主審:松田利彦
パンチを狙うスタイルの悠斗。キックボクサーとしての試合勘は鈍っていない様子で蹴りを織り交ぜ、素早い踏み込みでパンチに繋いでいく。重そうな悠斗のパンチを避ける細田は距離を取りつつ蹴りでリズムを掴んでいく。
悠斗が追い、細田がロープ際に詰まったところで逃がさなかった悠斗。右フックを被せると細田はロープにもたれ掛かりながら崩れるようにノックダウン。プロボクサー経験者のパンチはやはり重く、細田はフラつきながらカウント中にレフェリーに止められた。
◆第4試合 58.5kg契約3回戦
眞斗(KIX/58.0kg)vs大翔(WSR・F荒川/58.35kg)
勝者:大翔 / TKO 2R 0:27
大翔の左ヒジ打ちによる眞斗の眉間をカット後、続けて左ハイキックヒットによるノックダウンのカウント中、ドクターチェックに入り、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
◆第3試合 55.0kg契約3回戦
樹(治政館/54.6kg)vs中島大翔(GETOVER/54.8kg)
引分け 0-0 (29-29. 29-29. 29-29)
◆第2試合 バンタム級3回戦
西原茉生(治政館/53.35kg)vs中島隆徳(GET OVER/52.75kg)
勝者:西原茉生 / 判定2-0 (29-29. 30-28. 29-28)
◆第1試合 女子ピン級3回戦(2分制)
女子ミネルヴァ・ピン級6位.藤原乃愛(ROCK ON/44.95kg)
VS
世莉JSK(治政館/45.2kg)
勝者:藤原乃愛 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)
《取材戦記》
メインイベント、19歳と34歳の対戦は、昭和の時代なら十代でチャンピオンになったら将来有望でもまだ新鋭の域と見られ、30歳を超えれば現役選手は少ない時代だった。
そんな年の差対決は、上がって来る者を叩き潰す、ロートルには引導を渡すといった厳しさの中、蹴りは少なく重いパンチが交錯する両者は、それぞれの立場で負けられない意地が表れていた。モトヤスックのラッシュを受けたときは「ヤバッ!」と思ったという緑川。勝因は「大人の意地です!」という当初の「大人の魅力と厳しさで勝つ!」を経験値で貫いた勝利となった。
馬渡亮太は2019年11月30日にNJKFに於いて、S-1ジャパン55kg級トーナメント決勝戦で大田拓真に敗れており、大田兄弟にはいずれも敗れてしまう結果となってしまったが、馬渡と大田一航は、2001年生まれで一学年違いの同い年。大田拓真は1999年生まれで、これから何度も戦う可能性があるライバル関係は続くだろう。
馬渡亮太は9月20日、ジャパンキック・イノベーションで出場が決まり、またもベテランの兵となる、数々の王座戴冠している宮元啓介(橋本)との対戦が予定されています。
今回のメインイベントとセミファイナルは5回戦だから見ることが出来た攻防と技量の名勝負。3回戦制で力を余らせての終了では本来のキックボクシングではないだろう。
ジャパンキックボクシング協会次回興行は11月21日(日)後楽園ホールに於いて、ビクトリージム主催でKickInsist.11が開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」