ノンフィクションライターで、大阪日日新聞記者でもある大山勝男さんが、釜ヶ崎で医師として働き、野宿者支援活動などをしていた女性医師の半生を追った本を上梓した。大山さんは、私の店のお客様でもあるが、様々な分野で執筆活動を続ける尊敬するライターのお一人だ。

著書「さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子」の帯に「釜のおっちゃんから、さっちゃん先生と添われた矢島祥子医師の半生記」とある。祥子医師は、2007年4月から勤務していた西成区内のクリニックから、2009年11月14日姿を消し行方が分からなくなり、16日深夜、西成を流れる木津川の渡船場で、釣り人に遺体となって発見された。享年34歳。西成警察署は早々と「自殺」と断定したが、医師である両親や兄弟、関係者らが、遺体の様子、関係者の話や対応などに不審を抱き、「事件に巻き込まれたのではないか」と訴え続け、現在警察は自殺と事件の両面から捜査を行っているという。

大山勝男著『さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子』(アメージング出版)

ノンフィクションライターの大山勝男さん。今回出版の本は、大山記者が大阪日日新聞に連載した文章に大幅に加筆された内容

本は、遺族はじめ多くの関係者の証言、事故後に起こった不可解な事実などをあますことなく網羅し、しかも新聞記者らしく客観的な考察を交え、何が起きたかを丁寧に説明している。大山さんは「現実に目を向け取材を重ねると(中略)殺人事件との思いが強い」と序章に記している。祥子医師の死亡から12年経過したが、この間、あの日、祥子医師に何があったのかを知りたいと願う人たちが増え続けている。そんな人たちにぜひ読んで頂きたい一冊だ。

◆あの時期、釜ヶ崎で何がおきていたか?

祥子医師が釜ヶ崎にやっていた2007年から死亡した2009年11月14日まで、釜ヶ崎やその周辺で何が起きていたかは、彼女の死の真相を知る一つのカギになるだろう。

釜ヶ崎では、日雇い労働者が高齢化し、建設現場で働く店の常連客も次々と生活保護を受けるようになっていた。2008年9月のリーマンショック以降、急増した失業者が比較的生活保護を受けやすい釜ヶ崎に来て生活保護を受給することも増えた。地元での生活保護申請を断り「西成に行けば」と片道切符代を渡した自治体もあった。店の近くにある生活保護相談業務を行う「大阪市立更生相談所」には、業務開始の9時前には長い行列ができた。

相談を済ませた人を、自社のアパートに誘う不動産屋が、「うちのアパートに入居すれば、テレビ、エアコンも付いてるよ」などと誘っていた。鳩山政権が好んで使った「絆」と称する団体が、店の近くで炊き出しを始めた。もちろん「客」をつるためだ。生活保護制度もまともに知らないのだろう、「今なら部屋と食事が付いて、おまけにお小遣いまで貰えるよ」などと書いたチラシをまいていた。生活保護者の通帳、カードを預かる悪質な「囲い屋」の餌食になった、九州から来た知的障害のある息子を持つ母親に相談され、親子を別のアパートに引っ越させたところ、NPOを名乗る強面の男が店に怒鳴り込んできた。1年前まで違法賭博の「ノミ屋」をやっていた男だった。

生活保護者を食い物にするのは不動産屋だけではない。身寄りのない生活保護者を入院させ、病状を偽り、心臓カテーテル手術など不要な手術を受けさせ(中には死亡する患者もいた)、奈良県郡山市の山本病院が、詐欺の疑いで摘発されたのが2009年6月。同病院はそうした手術を数年前から行っており、入院患者の多くは大阪市内から運ばれていたという。

どういうルートがあったのかはわからないが、私自身、当時、店の近くで泥酔して寝ている男性が、医師のような白衣を着た男に、他府県ナンバーの車に乗せられたのを目撃したことがあった。常連客が、酔ってアパート前で寝ていたら、翌日、京橋の福祉病院に寝かされていて、慌てて逃げてきたとも聞いた。

医療費を行政から確実に取れる生活保護者を収容する福祉病院が、患者を次々とたらい回し、互いに稼いでいた事実は、2012年発行の「病院ビジネスの闇~過剰医療、不正請求、生活保護制度の悪用」(宝島社)で詳細が明らかにされた。そこには「ベッドに空きがでた病院が入院患者を集めるために、バスをドヤ街や公園に向かわせ、野宿者やホームレスを集めてくるんや。言葉は悪いが乞食を取ってくる車や」(106p)と「コトリバス」のことが記されている。

「トイチ」10日で1割の利息を取る違法な「ヤミ金」が、生活保護の支給日、役所の出口にずらりと並び、「客」を待ち伏せする光景を、私は実際に見た。そういう時代に祥子医師は、多くの患者さんを診たり、入院先を訪れたりし、疑問を抱くこともあっただろう。

大阪日日新聞に掲載された連載記事

◆「これは逆冤罪だ」と、桜井昌司さん

私は冤罪事件に関心をもち、現在もいくつかの冤罪事件の支援を続けている。8月末、国賠訴訟で勝訴した布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんに初めて会ったのが、2016年8月、東住吉事件の冤罪被害者・青木恵子さんの再審無罪判決が出た大阪地裁前だった。

その後、桜井さん、青木さんの講演会などを行ったりし、2人に釜ヶ崎を知って貰おうと様々なチラシやパンフを渡ししていた。そこに毎月、祥子医師の月命日の14日に、鶴見橋商店街で配布するチラシも入っていたのだろう。桜井さんから「尾﨑さん、あれは何?」と聞かれた。私は、そう聞かれた時いつも「まず自分で調べてみてください」と言う。

というのも、祥子医師の死については、いろいろな説があり、私の情報のみを一方的に伝えることは、冤罪をつくる警察や検察と似た手法になると考えるからだ。その後、ネットなどで調べたのだろう、桜井さんが「尾﨑さん、あれ、逆冤罪だよ」と連絡してきた。「逆冤罪」。確かに、祥子医師の死について、自殺とする証拠などが独り歩きする一方で、事件に巻き込まれたとする証拠などは明らかにされない。当時の彼女を知っていた人、親しくしていた人の「真相を知りたい」という声が少ないのも不思議だ。中には「今、支援に関わる人は、当時の祥子さんを知らない人ばかり」「釜ヶ崎の事情も知らないくせに」などと批判する声もある。

しかし、冤罪支援活動は、支援相手が獄中に囚われたり、亡くなったりして、直接会えなくても支援しなければならない。本人を知っている、知らないではなく、警察、検察が、無実の人を犯人にするために、彼・彼女が犯人でない証拠を隠し、虚偽や捏造した証拠をもって犯人に仕立てることが問題なのだ。

「逆冤罪」と桜井さんが呼ぶように、自殺でない証拠が隠され続けている祥子さんの場合も、警察にちゃんと証拠を出させ、捜査を行うよう求め続けることが必要なのだ。私もだが、大山さんも「事件や遺族に関わらないほうがいいよ」と忠告されたという。人一人、それも釜ヶ崎のおっちゃんのために活動していた女性が亡くなって、どうして黙っていられるだろう。親しかったり、愛していた人ならば余計に。

布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さん

◆年々広がる支援の輪

ジャーナリストの寺澤有氏がこの事件を取材し、宝島社「日本の『未解決事件』100の聖域」に書いたのが2018年春、その後、NHKやフジテレビが事件を取り上げ、その番組で自身が作詞した「釜ヶ崎人情」が歌われていたことを知った作詞家・もず唱平氏が、遺族に連絡を取り、関わり始め、祥子医師のために詩を書き、兄でミュージシャンの敏氏が曲をつけ、作られた歌が大山氏の本のタイトルになっている「さっちゃんの聴診器」だ。

「釜ヶ崎人情」等で知られる作詞家のもず唱平さん(右)

私は以前『NO NUKES voice』で、もず先生にインタビューしたことがある。穏やかなお顔から想像出来ない強い口調で話された言葉が忘れられない。「さきほどから言っていますが、私は未組織労働者しか信用できません」。その強い信念は、本の冒頭の「さっちゃんの言葉」に繋がるのではないか。「釜ケ崎に行きたい。そのことが神様の導きで自分の力の限りまでがんばって、そこで力尽きて倒れ込んだとしても、神様の掌(手のひら)の中だから自分はここまでやりたい」。

「もっと生きたかった この町に / もっと生きたかった 誰かのために」。(「さっちゃんの聴診器」より)

11月14日(日)、大阪市内・大国町の社会福祉法人ピースクラブで、午後3時より開催の追悼集会「矢島祥子と共に歩む集い」では、参加者全員で歌いたい。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)「西成青い空カンパ」
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

『NO NUKES voice』Vol.29 《総力特集》闘う法曹 原発裁判に勝つ

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

最新号紹介の続編である。

◆精神医療現場の「子供たちを虐待する」現実 ── 野田正彰「旭川『発達障害』殺人事件 雪の少女の哀しみ」

 

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

精神科医の野田正彰さんによる「旭川『発達障害』殺人事件 ── 雪の少女の哀しみ」に注目したい。

この論考は『娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件』(文春オンライン特集班、文藝春秋)をもとに、事件の背景にひそむ問題点を考察したものだ。その問題点とは、「発達障害のラベルで苦しめられていたこと」への弁護士と編集部の無知ではないかという。

少女は「発達障害」「自閉症スペクトラム症」とされ、本人の言動の多くが「障害の症状」とみなされてしまう。発達障害という認定で、本人の意志や快不快にかかわらず薬漬けにされるのだ。「ひたむきな子どもが発達障害とラベルされ、向精神薬を飲まされ、周囲の子どもから脳に障害のある子としていじめられ、引きこもりと自殺増となって着実に顕現している」

さらには、「いじめ自殺のたびに、各教育委員会は発達障害の学習と支援学級の充足を主張する負のスパイラルが進行している」と、野田は指摘する。

そしてそれは、子どもたちを「病名でグループ化」する。そこに「個の尊重」がないのは自明であろう。

学校での過酷なイジメのはてに、被害者が精神病院に隔離される。そこもまた、医療とは名ばかりの虐待としか言いようのない場所だった。

現場で苦闘する現役医師ならではの、実感がつたわる文章での問題提起をご一読いただきたい。

◆滋賀県警の「セカンドレイプ」 ── 田所敏夫「日本の冤罪 続・湖東記念病院事件」

シリーズ日本の冤罪「続・湖東記念病院事件」(田所敏夫)は、無罪が確定した冤罪被害者への、滋賀県警の「セカンドレイプ」を取り上げている。

その「セカンドレイプ」とは、冤罪被害者の国賠訴訟に対して、県(県警)は準備書面で「原告は犯人だ」としてきたのだ。無罪判決が下りているのに、警察が「お前は犯人だ」というのだ。冤罪を犯した者たちが居直る、前代未聞の事態というほかない。

県側はいったん謝罪し、県警本部長も警察庁へ転勤という、事実上の更迭となるが、それだけではなかった。書き改められた県側の準備書面は、原告を犯人とみなすに「相当の理由があった」という居直りのくり返しだったのだ。

誤りを認めない捜査当局に、冤罪をなくしていく能力はないと断じるほかないであろう。井戸謙一弁護士のインタビューで、非常に簡潔でわかりやすい記事に仕上がっている。

◆機動隊の県外派遣は違憲と、画期的判決 ── 小林蓮実「沖縄とヤマトの連帯が勝利をもたらす」

名古屋高裁(一審敗訴)で争われていた、機動隊の県外派遣に違憲判決が下りた。この、じつに画期的な住民訴訟での判決を解説した記事「沖縄とヤマトの連帯が勝利をもたらす」(小林蓮実)は、半永久保存版であろう。

原告の具志堅邦子は18歳で沖縄をはなれ、名古屋で結婚して30年になるという。1995年の少女暴行事件に大きな衝撃をうけ、愛知で「命どぅ宝の会」に参加した。そして辺野古にも行くようになった。

県警の県外派遣という問題点を衝き、沖縄の闘いを孤立させない。その意味ではヤマトでも可能な闘いに道をひらいたというべきであろう。

◆教員統制のうごきが顕在化 ── 永野厚男「岸田文雄・文科副大臣(当時)の教員統制・いじめ政策」

精神医療現場の問題点、冤罪を生んだ県警の無反省、そして住民訴訟の勝利と、現場を舐めるような取材と見識の最後は、中教審のうごきである。

タイトルは「岸田文雄・文科副大臣(当時=引用者注)の教員統制・いじめ政策」(永野厚男)だ。

中教審「教師の在り方特別部会」の「審議まとめ案」が提出され、レポーターの永野厚男によれば、国家権力の思い通りの教員づくりに道をひらくものだ。

10月31日までにパブリックコメントを終え、教育免許法の改悪が行なわれようとしているのだ。

今回の審議案の問題点を、いくつかピックアップしておこう。

・小学校一年生から道徳・愛国心を教化、君が代を歌えるように指導する。
・社会科で小学校4年から「自衛隊が役立っている」を教える。
・小学校6年では「天皇への崇敬の念」を教える。

そして上からの教員管理、研修の義務化、密室での校長と教職員の「対話」すなわち、自由闊達な議論の封殺、などである。

永野は「教特法」にある自由研修こそが、教育現場に必要だとする。制服や規則問題など、教育現場ががんじがらめである。いまこそ、学校に自由を!である。(文中敬称略)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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河井案里さんが当選(2021年2月4日に本人の有罪判決確定で無効)した参院選広島2019における河井夫妻による前代未聞の買収事件。2019年10月31日の「文春砲」で車上運動員買収に怒った県民が「河井疑惑をただす会」を結成。多数の県民の連名で河井案里・克行被疑者を12月に告発しました。そのリーダーが元中国新聞社員の山根岩男さん(70)でした。

県民の怒りを背景に東京地検が動き、2021年6月18日、案里・克行被疑者は逮捕されました。

その後、案里さんの有罪は確定し当選は無効。夫の克行被告人も2021年6月18日、懲役3年の実刑判決を受けました(現金授受は認めつつも控訴中)。「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害した」として、東京地裁も事件を厳しく批判しました。

◆開き直る被買収県議、大甘の同僚議員

中でも案里さんの「元職場」の広島県議会では、被買収の県議会議員は13人おられます。それぞれにお金をもらった事実は認めています。しかしながら、東京地検はこれらの県議も含めた被買収者全員を「受け身だった」として起訴猶予処分としています。ただ、起訴猶予処分といっても被買収の事実は事実。にもかかわらず、2021年10月10日現在、誰も腹を切っておられません。

西洋は罪の文化、日本は恥の文化といわれていますが、いまの広島県議会にはどちらも欠けています。

広島県議会では「政治倫理審査会」も開催されました。13人の被買収議員については、「辞職勧告」でもされるかとおもいきや、「厳重注意」で済まされてしまいました。審査会はいわば「身内」の同僚議員が疑惑を追及するもので、非公開でした。

そして、各議員は弁明にもらった時間を大幅に余らせていました。各議員がいかに同僚議員、なにより県民をなめきっていたか?そして、時間があまったということは、同僚議員も被買収議員に質問などで厳しいツッコミをあまりいれていなかったということです。そして、13人中、6人が委員会の正副委員長という要職につく有様です。

河井議員からお金をもらった議員は論外として、お金をもらっていない議員、アンチ河井議員、自民党、公明党はのみならず、国政では野党に属する立憲民主党系の議員も含めた被買収者に大甘である。そのことが明らかになってしまいました。

◆案里さんの地元の安佐南区で県議に空席

こうした中、克行被告人の離党に伴い、自民党は衆院広島3区の候補者を公募。安佐南区の県議・石橋林太郎さんが合格しました。ただし、広島3区については自民党が与党候補のイスを公明党にゆずる形で斉藤鉄夫国交相に決まっています。そして石橋さんは比例代表に回りました。

石橋さんの衆院立候補で安佐南区(定数5)の県議が1つ空席となるため、安佐南区では11月14日の知事選にあわせて県議補選が行われます。

この安佐南区はまさに河井案里さんが県議を4期つとめた疑惑の震源地です。毎回のように物量をものにいわせた選挙を案里・克行夫妻が展開してきた場所です。

わたくし自身も2011年の県議選で案里さんに挑みました。このときは、わたしが4278票、案里さんが20799票という結果でした。街中が案里さんのビラや看板で溢れかえっていたのを記憶しています。広島の政治・選挙がいかに政策などそっちのけか。そのことを痛感しました。

◆恥知らずの県議会に憤り 山根さん立ち上がる

山根岩男さんを推す政治団体のビラ

あれから10年。状況はちっとも変わっていません。こうした中、「河井事件」追求の先頭に立っていた山根岩男さんが業を煮やして立ち上がったのです。現在、無所属で野党の統一をめざしています。立憲、共産、社民、れいわ、新社会各党に推薦を求め、共産党からはすでに推薦決定が出ました。立憲民主党は10月10日に行われた山根さんの決起集会に3区の衆院選予定候補のライアン真由美さんが檄文を寄せています。

れいわ新選組もわたくし、さとうしゅういちが、10月10日の決起集会に参加し、山根さんから推薦依頼書を受領。れいわ新選組の最寄りの総支部に進達しています。本部の決定にかかわらず、れいわ新選組の地元の支持者としては、山根さんを支持していくことを申し合わせています。

「河井疑惑の徹底追及・解明」「被買収者への辞職勧告」「政治倫理審査会に外部者をいれて公開とする」などを掲げています。また、コロナ対策として医療者への支援や全国でも異常なペースで進められた「分権」で廃止された広島3区内の保健所の復活などを提案しています。

また、土砂災害対策や黒い雨被害者救済、核兵器禁止条約参加を政府に求めることなどを国に強く求めるとしています。

◆圧倒的に自公が強い過去の県議選

今回の補選は衆院選の2週間後に実施されます。山根さんの他には元維新の国政選挙候補者で自民党の3区公募に応募した灰岡香奈さん、克行被告人の元秘書の伊藤守さんが立候補を予定しています。

過去の県議選では得票でみれば、自公系が圧倒的に有利です。たとえば、わたくし、さとうしゅういちが立候補した2011年の県議選では自公が案里さん20799+石橋良三さん(林太郎さんの父)17684+公明党候補16452+自民党元職佐々木弘司さん14234で69169票。非自公が、さとうしゅういち4278+民主党候補9987で14265票。

非自公はわずかに17.1%です。2015年の県議選では非自公系の候補がわたしの参院選広島への転出と民主党候補の市議選転出で入れ替わっていますが、力関係に大きな変化はありませんでした。

衆院選挙ではこの地域ではいつも自公(克行被告人)と非自公(民主、維新、共産)の得票は互角です。

その原因は、案里さん以外の自民党県議や市議が、アンチ河井克行で、克行被告人民主党や維新の国政選挙候補に票を流していたという事情があります。「俺は(克行被告人より)共産党のほうが仲良しだ」と公言する自民党市議もおられた始末でした。克行被告人の評判の悪さが透けてみえます。

しかし、県議選では国政とちがい、与党の各議員の地盤は非常に強いのです。2015年県議選を最後に引退された佐々木さんなどは国政では共産党支持、社民党支持という人にも根強い人気がありました。

県議安佐南区候補者のポスター。右は知事選挙。補選は山根(野党系)vs 灰岡(自民公認・公明推薦)の与野党対決に克行受刑者の元秘書の伊藤候補が割り込む構造に

◆このまま自民党に有権者をなめさせるな

案里さん・克行被告人からお金をもらっている県議のほとんどが自民党所属です。彼らがなぜ腹を切らないのか?その背景には、過去の選挙では、彼らが無投票か楽勝かだったことがあります。

「どうせ、次の選挙は俺は私は無投票か楽勝。」

そのように思ってなめきっているからこそ、とれる行動です。いまは風当たりが強くて恥ずかしくても、国会議員とそう遜色ない給料をもらいながらやりすごせば、どうせ有権者は忘れてくれる。

そういう彼らをあわてさせないといけません。安佐南区という、過去の県議選では与党圧倒的優勢の場所で野党が勝てば彼らも慌てるでしょう。

◆「腐敗」の後の「新自由主義隆盛」を防げ

もうひとつ、今回の補欠選挙で進めるべきは、広島出身の総理・岸田さんでさえ打ち出している「新自由主義からの脱却」です。

今回、自民党県連が推す女性候補は2013,2016と「維新」の参院選挙候補として「アンチ河井の保守層」を中心に一定の得票をしています。「クリーンな新自由主義者」というイメージです。腐敗への批判が高まるなかで、「38歳という若さを売りにして、新自由主義者である女性候補が議席を取る」というシナリオを自民党サイドは思い描いているのでしょう。

ただでさえ、前知事のもとで、保健所は3分の1に減らされ市町村合併で自治体減少率NO2の広島県。腐敗した河井夫妻が失脚したのはよい。しかし、入れ替わりに、新自由主義者が入れ替わりに勢力をのばした、ではなんのために河井事件を追及したのか?訳がわからなくなってしまいます。

大阪でもあったように、新自由主義者は既存勢力の腐敗に便乗して台頭します。今回の広島でもそれは要警戒です。

こうしたなかで、山根さんとわたしも含めた支持する人たちの責任は重大です。山根さんは中国新聞社員時代、労働組合の委員長など役員をつとめました。昔の中国新聞では女性は非正規にしかなれなかったのです。それを組合で追及して女性も正社員になれるようにしたのは山根さんの功績大です。退職後も労働相談員などをされています。

腐敗をゆるさないとともに、労働者の味方でもある山根さん。彼の今回の補欠選挙のとりくみの成否は今後の広島県の流れを左右するといっても過言ではない、と感じています。

◎山根岩男さん Twitter
◎河井疑惑をただす会 Facebook 


◎[参考動画]山根候補の出発式における応援弁士の演説(さとうしゅういち2021年11月05日公開)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

6日発売!タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

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2015年4月29日、新宿FACEから始まったNJKFから発祥のDUELシリーズ。当時、30代~40代の若手会長により結成されたNJKF若武者会が、新人戦からWBCムエタイ世界王座まで段階的にステップアップする機会を与える為の始動でした。そのDUELが第22回を迎えた10月31日、コロナ禍を引きずった時期で、二部制に於いて行われました(第一部と第二部は入れ替え制)。

◎DUEL.22 / 10月31日(日)ゴールドジムサウス東京ANNEX
主催:NJKF若武者会 / 認定:NJKF / 前日計量30日12:00

第一部(18:08~19:06)

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)アトム級3回戦(2分制)

左ミドルキックが冴えていた祥子。終始リズムを保った

アトム級3位.祥子JSK(治政館/1983.12.3埼玉県出身/46.4→46.25kg)
vs
久遠(=ひさえ/ZERO/1980.10.21栃木県出身/46.25kg)
勝者:祥子JSK / 判定3-0
主審:宮本和俊
副審:和田29-28. 中山30-28. 少白竜30-29

祥子はアマチュアで試合を重ね、2012年6月にプロデビュー。出産から約6年間のブランクを経て、2019年1月に再起。これまで国内王座挑戦経験も多い。

久遠(=ひさえ)は2002年4月にMMAでデビューし、シュートボクシングでRENAとの対戦や2016年迄にはキックボクシング戦を経て、以後出産育児のためリングを離れ、今回約5年ぶりの再起となった。

祥子は少しずつ前進しローキック、ミドルキックで様子見のけん制。久遠は下がり気味でロープ、コーナーに詰まり気味。レフェリーが一旦、攻めが少ない両者に積極的ファイトを促す。祥子は次第に前蹴り、左ミドルキックが冴えていく。下がり気味で手数が少ないままの久遠は徐々にパンチ連打で出るが流れを変えられない。組み合う場面も出てきたが祥子が優勢。第3ラウンドにはようやく前に出てきてパンチが増えた久遠。ラスト30秒からパンチで手数増やしてきたが祥子のリズムを崩すに至らず終わる。

祥子は「相手が前に出てこないのでどういう展開になるのかな、と思ってた。」と言い、戦歴豊富な久遠に気を抜けなかったが、落ち着いて徹底して左ミドルキック、前蹴りで主導権支配した祥子JSK。練習してきたと言うミドルキックの成果が表れていた。「応援してくれる人もたくさん居て、凄くお待たせしているので必ずチャンピオンになります」と応えた。

祥子JSKは19戦6勝12敗1分。久遠はキック系14戦9勝(2KO)4敗1NC。

手数少ない久遠に祥子のパンチも攻勢に導く

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級3回戦(2分制)

スーパーフライ級2位.IMARI(LEGEND/51.75kg)vs 同級5位.NANA(エス/52.1kg)
引分け 三者三様
主審:竹村光一
副審:和田29-29. 中山29-30. 宮本30-29

パンチとローキック主体の互角の攻防が続くがヒットが軽く、パンチが顔面に入っても怯まず、互いに下がらない攻防は差が付き難い流れで終わる。

被弾しても下がらず打ち合ったIMARIとNANA

◆第2試合 58.0kg契約3回戦

パヤヤーム浜田(キング/57.7kg)vs 渡部瞬弥(エス/57.7kg)
勝者:パヤヤーム浜田 / KO 3R 1:25 / テンカウント
主審:少白竜

渡部瞬弥が蹴り中心に主導権を奪う試合運びも、浜田はパンチしか突破口が無い中、最終ラウンドに浜田がボディーブロー狙い、パンチが顔面にヒットしたか、連打からロープ際で首相撲となったところで渡部が崩れ落ちた。

勝率は低い浜田が逆転ノックアウトするインパクトある勝利を飾った。浜田はプログラム上は前戦まで1勝12敗。この日に2勝目を挙げたここからどこまで上昇気流に乗れるか注目である。

パヤヤーム浜田「渡部選手は蹴りが上手くて、自分の蹴りは逆に当たらなくて2ラウンドまでの採点で全部取られていて、やばいなと思ったけど、パンチが意外と当たる感じになったので、最後まで諦めずにやった結果だと思います。一戦一戦大事にして勝って行って、僕みたいな負けっぱなしの戦績の人間が偉そうに言えないですけど、チャンピオンベルト狙っていきたいと思います。」

逆転KOで感情溢れた“パヤヤーム”浜田。名の通り“努力”が実った

◆第1試合 スーパーフライ級3回戦

佐々木良樹(GRABS/52.1kg)vs 愛輝(ZERO/51.5kg)
勝者:愛輝 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:少白竜28-30. 竹村28-30. 宮本28-30

愛輝は「緊張しちゃって思うように動けなかった。」という流れも、飛びバック蹴りを見せる積極的な攻勢が目立った。

愛輝「プロになって初めて勝てて嬉しいです。もっともっと練習して強くなりたいです。」

徐々にリズムを掴み、飛びバック蹴りをみせた愛輝

第二部(19:20~20:13)

ヒジ打ちで獠太郎を追い込む財辺恭輔

◆第4試合 フェザー級3回戦

獠太郎(DTS/1990.6.17生/57.1kg)
     vs
財辺恭輔(REON/2002.11.8生/56.95kg)
勝者:財辺恭輔 / 判定0-3
主審:竹村光一
副審:和田28-30. 中山28-30. 宮本28-29

獠太郎は過去、日下滉大(現NJKFスーパーバンタム級チャンピオン)には判定負けも、NJKFライト級王座挑戦経験のある吉田凛汰朗には判定勝利しているなど、上位陣との対戦経験で上回る。

獠太郎はパンチ蹴りの正攻法な攻め。経験値ある獠太郎の当て勘にやや圧される流れに対し、財辺恭輔はパンチで追う圧力と首相撲でのヒザ蹴り、ヒジ打ちでも圧していく多彩さで好印象を残して判定勝利。財辺にとってはまだ2勝目だが、獠太郎越えは上位陣との対戦に繋がるステップアップとなった。

財辺「相手がベテランだから第1ラウンドは様子見ようと思ってたけど、上手くいかなくて、久しぶりの試合、初めてのメイン、プレッシャーがあったけど、何とか勝ってよかった。もっと戦ってタイトル目指せるよう頑張りたいと思います」

獠太郎は14戦6勝8敗2分。財辺恭輔は4戦2勝1敗1分。

財辺恭輔が若い勢いで優っていった

◆第3試合 57.5kg契約3回戦

渋谷昂治(東京町田金子/57.0kg)vs 大稚YAMATO(大和/57.45kg)
勝者:大稚YAMATO / 判定0-3
主審:宮本和俊
副審:竹村28-30. 少白竜28-30. 中山27-30

大稚YAMATOが渋谷昂治をロープに詰めてボディーブロー、ヒザ蹴りで主導権を握り、徹底して手数で圧力かけて出る。終盤は勢いは弱まるも、打ち負けない根性で耐えきった。

大稚YAMATO「相手が気持ち強くて打たれ強くて疲れて体力消耗したけど、強い相手とやれてよかった。負けずに一戦一戦全力で勝っていきたい。」

前進と圧力で上回った大稚YAMATO

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

史門(東京町田金子/58.9kg)vs 細川裕人(VALLELY/58.7kg)
勝者:史門 / KO 2R 1:42 / 3ノックダウン
主審:和田良覚

パンチによる3ノックダウンで史門が勝利。最初のストレートパンチでノックダウン奪ってから一気に仕留めに掛かった史門。右ストレートで2度目、コーナーに詰め連打で3度目のダウンとなった。

史門「これで2戦2勝(2KO)、将来的にはチャンピオンベルト巻けるように頑張ります。」

圧力掛けた史門が細川裕人を追い詰めていく

◆第1試合 女子(ミネルヴァ)ピン級3回戦(2分制)

ピン級7位.斎藤千種(白山/45.3kg)vs 撫子(GRABS/44.7kg)
勝者:撫子 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:和田27-30. 少白竜27-30. 宮本27-30

パンチとローキックの様子見から徐々に動きがスピーディーになり、撫子は鼻血を流しながらも、蹴って来た斎藤にタイミング合わせてストレートパンチでダウン奪う。終盤も撫子はアゴが上がるパンチを貰いながら怯まず攻防を制した。

撫子「相手がサウスポーでパンチの上手い選手で、試合決まった時から会長(佐藤友則)と対策してきて自分の良さも活かせたと思います。会長のもとで更に強くなってランカーと対戦してピン級のチャンピオン目指します。」

互いが被弾する中でのパンチによるノックダウンに繋げた撫子

《取材戦記》

世間からは注目され難い小規模興行。新人が経験を積むには必要な機会であるが、その中にもドラマってあるもの。そんな一つを拾ってみたDUEL興行でした。

第一部の最終試合、祥子JSKvs 久遠戦と第二部の最終試合、獠太郎vs 財辺恭輔戦は、過去の経歴の話題性で、祥子JSK vs 久遠戦の方が注目度は高いようでした。

スタッフによる試合後の全勝利者へのインタビューに於いて、将来的に「チャンピオンを目指す!」と言う発言が多かった中、世界王座とかムエタイ王座とか最高峰の名称が出てこなかった。「まずは目先の段階で、国内の複数ある中の王座から」というのが本音だろうか。或いは言いたいけど、おこがましくて言えなかっただろうか。言うだけなら遠慮なく、RIZINでもKNOCK OUTでもラジャダムナンスタジアムでも、その先の多くのメディアに登場できる上位を目指して頑張って貰いたい。

NJKF興行は11月7日が後楽園ホールで本興行年内最終興行。

他、11月21日(日)には岡山県倉敷市、マービーふれあいセンターに於いて「拳之会主催興行17th ~NJKF 2021 west 4th~」

12月5日(日)には京都KBSホールでの「NJKF 2021 west 京都〜ワイルドウエスト〜」が開催予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

10日からの国会を前に、岸田政権の基本性格をあますところなく暴露した。本日6日発売の『紙の爆弾』最新号である。

 

7日発売!月刊『紙の爆弾』12月号!

◆岸田政権の求心力低下を予告

岸田政権の特徴は、総裁選挙における安部晋三元総理のうごきに象徴される、国民政党としての押し出しと派閥的な収束。すなわち河野太郎・高市早苗の派手なパフォーマンスのいっぽうで、政敵(河野太郎・石破茂ら)を排除しつつ党内主流派の挙党体制を演出する。そんなまとめかたの仕上がりで、総選挙に「負けなかった」といえよう。

横田一の「岸田文雄政権は安部傀儡」は、まさにこの点を衝いている。総裁選挙をつうじて、岸田がいかに自分のポリシーを骨抜きにされてきたか。党内主流派に操られるがゆえに、菅義偉ほどの独自性も出せないまま、政治家にとっての肝である求心力を失っていくといえよう。

同じく「やはり菅義偉以下だった岸田政権の実相」(山田厚俊)も、株価下落にその求心力のなさを指摘する。山田はさらに、立憲民主党の枝野代表の、党内不祥事にたいする責任と向かい合わない態度を批判する。記事が書かれたのは総選挙よりもずっと前であろうから、この点の指摘は慧眼である。

足立昌勝は「矛盾だらけの岸田政権」を象徴するものとして「甘利幹事長がすがる不起訴処分の言い訳」を暴露する。あにはからんや、甘利明は落選することで国民の厳しい審判をうけ、幹事長辞任に追い込まれた。民主主義が機能したことに、わずかながら留飲を下げた方は多いのではないか。

◆自民党のメディア操作を暴露

「自民党世論操作の全貌」(浅野健一)は、メディアが選挙前に岸田の外遊スケジュールを報道することで選挙結果を先取り宣伝する、ルール違反の民主主義否定を指摘する。なるほど、つぶさに見てゆけば総裁選における自民党のメディア独占、一連の政治的なパフォーマンスは菅義偉の「ポンコツ」かつ「発信力のなさ」を挽回するかのような勢いだった。

そしてネットにおける自民党と公安警察官僚の「世論操作」について、浅野は「Dappi」の虚偽報道疑惑を暴露する。この事件は立民党の議員が、森友事件で自殺した赤木氏を「1時間以上つるしあげた翌日に自殺」などと、虚偽の投稿をしたものだ。名誉棄損の損害賠償事件に発展しているこの一件は、続報を待ちたい。

時事コラムの「NEWSレスQ」では、高市早苗の「やりすぎたネトウヨ扇動で残る後遺症」が注目を引く。高市には「選挙で落ちたら天皇陛下が」という皇室の政治利用疑惑もあり、自民党のメディアおよびネット活用が墓穴を掘る可能性をひらいている。

ほかに「自民党が歪曲する公共の福祉とは何か」(広岡裕児)は、憲法解釈から福祉の概念を説き起こす好論攷である。

◆宗教と巨大組織の闇

自民党の病根をあばく「権力者の妻を取り込む歴史の闇――自民ゾンビ政治の正体とゲシュタルト崩壊の日本」(藤原肇)は、宗教団体の政治的な闇を暴露する。

「裁判所が二度認めた神社本庁・田中恆清総長の背任疑惑」(本誌編集部)は、例の宿舎売却・土地転がし事件を認定した判決である。田中恆清(つねきよ)と内田文博神道政治連盟会長の「タナカ・ウチダ体制」が、日大の田中英壽理事長と内田正人理事の「タナカ・ウチダ体制」の相似性を指摘する。そして、日本会議をつうじた安倍晋三との結びつきである。

◆秘められた歴史をたどる

「権力者たちのバトルロワイヤル」(西本頑司)は「アフター・メルケルのEU」である。EUを生きた政治経済共同体に高め、ドイツ軍と原発の廃止を実現したメルケルの退陣後に、ヨーロッパの古い政治グループがうごめいているというのだ。ハプスブルク家を中心とした貴族である。

西本によれば「政府の政策に影響を与えるメジャー(企業)を押さえているだけでなく、とりわけ欧州貴族の一族たちは、十九世紀から二十世紀の帝国主義時代に築いたアジア・アフリカの利権を握り続けており、それによって世界経済や国際情勢にも十分な影響力を保持している」

「『世界の富の99%を握る1%』は、欧州貴族の一族たちと言っても過言ではない」というのだ。

政治的にも貴族は、じつは健在なのである。フランス革命で王政廃止されてからも、ビクトリア女王の婚姻政策でヨーロッパの王族は結びついてきた。そしてエリザベス2世の職権で大きなものが、英連邦と枢密院の二つの議長職である。旧植民地の政策および世界を裏で支配する「300人委員会」とは、この枢密院のことだと、西本は云う。

そして、欧州貴族の頂点に君臨するのが、カール・フォン・ハプスブルクであるという。カールは「金毛羊騎士団」の団長であり、その騎士団には明治・昭和・平成の歴代天皇も加盟していたのだ。カールが第一次世界大戦の引き金と

なったオーストリア皇太子の甥だといえば、なんだか時代錯誤的な印象だが、これは現代の事実なのだ。欧州帝国の復活に注目したい。

「世界を裏から見てみよう」(マッド・アマノ)は、「ユダヤの支援なしでは勝てなかった日露戦争」である。セオドア・ルーズベルト米大統領の仲介で、ユダヤ金融資本が資金援助したという一件である。当時、ロシアではユダヤ人が迫害され(ポグロム)、国外脱出が相次いでいたという。ロシア革命の主要な指導者たちがユダヤ人だったことも、いずれ触れられるであろうか。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

第49回衆院選は10月31日執行され、自民党が石原伸晃さんら大物を落選させるなど議席を減らしたものの、単独過半数を確保。公明党とあわせて絶対多数となりました。立憲民主党は関東や四国の小選挙区で野党共闘で大物の首を取るも比例がふるわず100議席を切る惨敗。共産党もマスコミ予想を裏切り大敗しました。自民党以上の新自由主義政党の「維新」は41議席と大躍進。「積極財政」を打ち出した国民民主とれいわ新選組が議席を増やし健闘しました。

筆者が住む広島ではどうだったのでしょうか?結論から申し上げると広島市では自民党が圧勝。立憲も共産も衆院議員を出せませんでした。

広島は河井事件の震源地である一方で岸田総理の地元です。「河井事件効果」と「お国の総理効果」どちらが勝るか?も注目されました。わたくし、さとうしゅういちは、河井事件効果は賞味期限切れになっている、と危惧しており、それが的中した形です。

◆広島1区 現職総理の前に野党は供託金回収にいたらず

一住民として応援した1区の有田優子候補

広島1区
岸田文雄  自民前 133,704
有田ゆうこ 社民新  15,904
大西オサム 共産新  14,508
カミデ圭一 諸派新  1,630

広島1区は爆心地があるが、過去の選挙は岸田総理が一度も負けたことがない超保守王国です。わたしが支援するれいわ新選組のポスター活動も一番苦労するのが1区です。

わたしも一住民として有田さんのマイクを握りました。前回まで共産党候補を支援していましたが後述する理由で今回は「選挙区は有田、比例はれいわ」を支持者のみなさまにも徹底的にお願いしました。わたしが「乗り換えた」効果もあってか、社民の有田さんが共産の大西さんを上回ったものの供託金回収に至らず。ただし、社民党県連幹部からは「今後も広島から候補者を出していきたい」と意欲的な声をうかがいます。社民党はれいわ新選組とも政策は近い一方で支持層が被らない面もあります。わたしとしても今後とも社民党とも連携はしていきたいと考えています。

◆広島2区 野党統一もダブルスコアで大敗

広島2区
平口ひろし 自民前 133,126
大井赤亥  立憲新 70,939

広島2区は広島市西部の住宅街と廿日市市、大竹市、江田島市の一部からなっています。

1996、2000、2003、2009年と当時の野党が勝利しており、統一すれば勝ち目があるとも言われてきました。今回は共産党新人が公示直前に立候補を取りやめました。

しかし、それでも大変厳しい結果になりました。核兵器禁止条約にも前向きなどリベラルな面も強い自民党のベテランの平口さんに対して攻めあぐねた感じはします。ただし、平口さんも次回は引退が濃厚です。大井さんにもチャンスはあると見えます。

◆広島3区 勝利ムード暗転、過去20年で最悪の野党惨敗

広島3区
斉藤鉄夫    公明前 97,844
ライアン真由美 立憲新 53,143
せぎひろちか  維新新 18,088
大山宏     無新   3,559
矢島秀平    N裁新  2,789
玉田のりたか  無新   2,251

言わずと知れた河井案里さん、克行受刑者の地元である広島3区。4月の参院選広島再選挙でも当選した宮口はるこさんとさとうしゅういちの合計で約6万票なのに対して自民候補は5.3万票でした。

さとうしゅういちがライアン真由美候補を支援しているわけですから、負けるはずがない選挙区でした。しかし、マスコミ予想や地元の前評判と全く正反対の結果になりました。

「広島3区は、野党が最終的にはそうはいっても勝てるだろう。最悪でもライアン真由美さんが比例復活はするだろう。相手は国交相とはいえ、河井事件の震源地で有権者が与党の候補をそんなに支持するはずがない。」

こんな前評判を覆すどころか、蓋を開けてみれば2003年以降のすべての選挙結果における立憲(前身の民進党、民主党)系と社民党(2005まで擁立)・共産党(2009は擁立せず)候補の合計を下回る惨敗でした。

しかし、冷静に考えれば、以下のことがいえます。もともと、克行受刑者は非常に評判が悪い方でした。地元で克行受刑者のことをよくいう方はだれひとりいないような有様でした。それでも小選挙区制度の弊害で自民党公認というだけで、議員を続けられていただけでした。従って広島3区は自民党支持者や議員でも河井克行受刑者を嫌って野党に票を流していた人が多くおられました。ところが、そうした方が、克行受刑者の失脚により、与党に回帰したのです。

さらに、菅退陣、岸田総理誕生、斉藤国交相誕生で一挙に形勢が逆転しました。

それに追い打ちをかけたのが、維新の瀬木さんの立候補でした。瀬木さんは、「公明党には投票したくないからライアンにしようかな」と迷っていた保守層の一部を吸収したのです。

いっぽうで、河井案里さんを支持していたような方々はどうされたのか?再選挙の際は棄権された方が多かったのです。しかし、今回は現職の国交相、しかも、災害が続いている3区ではそれはたのもしい、ということで、斉藤候補に回帰したとみられます。

かくて、4.4万票もの大差で野党は敗北してしまいました。

れいわ新選組選挙カー。インパクトがあった

◆超保守王国で一定の地盤、れいわ

わたくし、さとうしゅういちは、れいわ新選組の街宣車に乗り込み、1区では「選挙区は有田、比例はれいわ」2区では「選挙区は大井、比例はれいわ」3区では「選挙区はライアン比例はれいわ」と叫びました。超保守王国広島市14,240人、広島県内で32,955人が「れいわ」と書いてくださりました。

小選挙区候補がいないとほとんど活動らしい活動ができない衆院選で、それも初めての衆院選でこれだけ票を頂いたことに感謝申し上げます。中国地方では残念ながら議席に及びませんでしたが、政党交付金には反映されますし、広島でも一定の地盤を築いたと言えるでしょう。

実はわたくし、自身、広島の立憲さん、共産さんが、「河井批判」に傾きすぎて、庶民の暮らしなどについて言及が薄いことに危機感を覚えていました。野党が庶民を見捨てていないところを見せるためにも、「財政出動で庶民の所得を上げて負担をへらす、暮らしの安心を確保する」という訴えを徹底しました。立憲さん、共産さんに戦術変更をお願いするよりは自分がれいわで言いたいことをガンガン訴えたほうが生産的だと見切りました。


◎選挙運動最終日の10月30日に街頭でれいわのマイクを握り、#比例はれいわ #3区はライアン真由美 と訴える筆者

◆筆者の「れいわ」への「乗り換え」も阻んだ共産の議席奪還

さて、比例中国ブロックでは共産党は前回失った議席を奪還するだろう、というのがマスコミの前評判でした。しかし、それは的中しませんでした。その背景のひとつは、ほかならぬ筆者・さとうしゅういち自身の行動でした。選挙結果に悪影響をあたえぬため、選挙期間中は控えていましたが、終わったので説明責任をこの場をお借りして果たします。

さとうしゅういちは第49回衆院選(衆院選2021)において比例区は「れいわ新選組(略称=れいわ)」を応援し、県内だけでなく全国に呼び掛けました。れいわの選挙葉書を引き受けたほか、広島3区では小選挙区のライアン真由美さんの選挙葉書にも「比例はれいわ、をお願いいたします」と書き添えました。

居住する広島1区では日本共産党と社民党から候補が出られました。さとうしゅういちは、地元一住民として、社民党の有田優子さんを支援。事務を手伝う、短時間だがマイクを握るなどさせていただきました。同区で社民候補の得票が共産候補のそれを上回るのに貢献した形になりました。

さとうしゅういちは、衆院選2014、参院選2016、衆院選2017、参院選2019と日本共産党を比例区で支持し、多いときで1000枚近い選挙葉書を引き受けるなどしてきた。また市議選・県議選2015、市議選2019でも共産党候補を推薦し、共産候補への投票を自身の支持者に呼び掛けたり選挙葉書も多数出したりするなどさせていただきました。

わたくし、さとうしゅういちは2021年4月25日執行の参院広島再選挙で20848票の得票を頂いた。わたしの行動により、支持政党を日本共産党かられいわ新選組にシフトされた方も少なくない。結果としてマスコミ予想を裏切り、共産党は比例中国で議席を奪還できない要因のひとつとなったとみられます。

支援先変更の理由1 政策軸

れいわ新選組が最も庶民の暮らしを重視しているからです。

ここ2年ほど、立憲、共産両党は、全国では支持者でも一部の内容で議論も大きく別れるLGBT法案推進などを重視しすぎました。

それよりはコロナのもとで苦しくなっている庶民生活の再建を重視して頂きたかった。例えば「女性のことだから」と軽視されてきた介護や保育労働者の給料アップ、DV性暴力被害者支援など高いスキルを買い叩かれている非正規公務労働者の処遇改善、生理用品に10%も課税する消費税の廃止などに財政出動する議論をしていただきたかった。

県内では、両党は、河井批判に偏りすぎ、庶民の暮らし軽視に見えた。また、2021年4月参院選再選挙の頃から、当選した宮口議員の最大の支持基盤である大手原発推進労組に遠慮してか、原発なき脱炭素に熱心でないのも頂けませんでした。

参院選広島再選挙は、それで通用したが、もう河井批判だけの戦術は賞味期限切れです。

さとうしゅういちは、こうした中、両党の路線修正を待つより自分で動こう、と考え、「れいわ」のマイクを握り「比例はれいわ、でガツン、と庶民の所得を増やし負担軽減、防災など暮らしの安心。選挙区はライアンで大掃除」と叫びまくった。また、被爆地であり被災地広島からこそ、原発なき脱炭素、海外派兵ではなく災害救助隊で尊敬される日本を提案させていただいたものです。

支援先変更の理由2 党代表との関係性

れいわ代表の山本太郎が2014年初秋、当時の現職国会議員で唯一わたくしの結婚祝いに出席してくださったからというのも、大きいのです。政策は重視しますが、やはり義理人情も考慮しないと言えば嘘になります。

支援先変更の理由3 共産党支持者を自称する方によるさとうへの名誉毀損

複数の日本共産党支持を自称するLGBT法案推進活動家の方から執拗な名誉毀損をさとうしゅういちはネットで受けていました。すでに東京地裁に弁護士を通じて発信者情報開示請求をTwitter社に行い、裁判所は認容。あとはプロバイダーに本人情報を開示していただくことになります。東京地裁は日本共産党支持者を自称する方による名誉毀損を事実認定したのです。こうした状況で、共産党を比例区で推すことは支持者の方の理解は到底得られません。

県議安佐南区補選の山根岩男候補のはがき。日本共産党を支持することはできないが、できるところはご一緒にさせていただく大人の対応をとる

◆今後について

さとうしゅういちは11月5日告示、14日執行の県議安佐南区補選については日本共産党も推薦する山根岩男さんを推薦し、選挙はがきも支持者に出します。県政における新自由主義台頭をふせぐため、大人の対応を取ります。

他方で統一地方選2023の市議選安佐南区では立候補に意欲を示す共産党以外の新人が立候補すれば推薦する意向です。ご本人にも伝達しています。日本共産党におかれては安佐南区におけるさとうしゅういちやれいわの支持票である約2000〜3000票がなくとも勝てる体制をつくられることをお祈り申し上げます。党と個人は違うとは言え日本共産党候補を市議選通常選挙で推すことも支持者の理解は到底得られないからです。

そうはいっても、維新の躍進という新たな危機の中、日本共産党は、れいわや社民党とならび、維新が自民以上に進める新自由主義や自民がこれまで通り進める原発・核燃サイクルの両方にきちんと反対する貴重な勢力です。しっかりしていただきたいと思います。

以上の記述は日本共産党におかれてはなぜ今回、とくに広島県内で大きく票を減らされたのかの参考材料になれば幸いであり、今後の同党の再建・健闘を祈るものです。

わたくしはわたくしでれいわの皆様とともに、庶民の暮らしをガツン、と建て直すと共に、「原発なき脱炭素」や海外派兵ではなく「被災者支援」などで尊敬される日本を目指し奮闘します。

もちろん、日本共産党など他の野党の皆様とも核兵器禁止条約推進、ヒバクシャ救済などで大いにご一緒したいという考えも変わりはありません。

◎[参考]過去の衆院選 日本共産党比例票 広島県
衆院選2009  81875
衆院選2012  59892
衆院選2014 107749
衆院選2017  73440
衆院選2021  58682

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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繰り返しになるが、再度、引用させていただく。雑誌「新潮45」2018年8月号に掲載された、俗に「杉田論文」と呼ばれる論考「『LGBT』支援の度が過ぎる」を、立憲民主党のレズビアン国会議員・尾辻かな子氏は次のように要約し、ツイートした。

杉田水脈自民党衆議院議員の雑誌「新潮45」への記事。LGBTのカップルは生産性がないので税金を投入することの是非があると。LGBTも納税者であることは指摘しておきたい。当たり前のことだが、すべての人は生きていること、その事自体に価値がある。

しかし、杉田論文は、本当にそんな内容だったのだろうか? 一応、尾辻氏は杉田論文の該当部分「生産性がない」発言の誌面の画像をツイートしているが、ここで、その文面を抜粋してみよう。

例えば、子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。しかし、LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか。にもかかわらず、行政がLGBTに関する条例や要綱を発表するたびにもてはやすマスコミがいるから、政治家が人気とり政策になると勘違いしてしまうのです。

……おわかりいただけただろうか? ここで言う「生産性」とは、同性愛者は子供を作らないということだったのである。

その言葉の選択自体は、私も適切であるとは思わない。「生産性」だなんて、まるで物のようではないか。かつて批判を浴びた男性政治家による「女性は産む機械」発言とどう違うのか? この点だけは、杉田氏も早いうちに「生産性という表現は不適切でした」と謝罪するべきではなかったか。

しかしながら、ゲイカップルは代理母を「利用」し(私は代理母ビジネスには批判的な立場ゆえ、あえてこのような表現を使わせていただく)、レズビアンカップルは男性から精子提供を受けないかぎりは、子供を作れない。異性である第三者の協力がないと自分たちの血を引く子を持つことができないカップルであるという点は、事実なのである。

尾辻氏のツイートに乗せられた著名人の一人、芥川賞作家・平野啓一郎氏も、杉田論文全文を読んでみたらどうか

そのような同性カップルに税金を投入すべきか? 投入すべきなら、一体どのような形で? また、その根拠は? ――という問題提起をしているのが、杉田論文だ。ならば、杉田氏に批判的な尾辻氏は、正々堂々とそれに答えるべきではないのか?

実際、杉田論文騒動をきっかけに、多くのLGBT当事者から「我々よりも子育て支援に税金を使うべき」との意見が出るようになった。しかし、その声を拾いあげた政治家やマスコミ人は、これまでにいただろうか?

そして、ここが最も注目すべき部分だが、尾辻氏が言うような、「すべての人は生きていること、その事自体に価値がある」か否かという点には、杉田論文はまったく触れてはいないのだ。つまり、尾辻氏のツイートの後半は藁人形論法であり、政敵に対する印象操作なのだ。はっきり申せば、尾辻氏のツイートは杉田論文の要約としてふさわしくない。

谷崎賞作家・星野智幸氏の性的少数派の友人知人の皆様は、杉田論文ではなく尾辻氏のツイートにより、死に追い込まれそうになったのでは?

あの要約ツイートが意図的であるのなら、汚いやり方であるし、本気でそう読み取ったのなら、失礼ながら、「読解力に問題あり」とのそしりを逃れられないのではないか。いずれにしろ、レズビアンを名乗って政治家を続けるのはご勘弁いただきたいところだが、いかがであろう?

いや、もしかしたら、尾辻氏はあまり深く考えずに、単に個人的な主張(にしては、いささか青くさいが)をツイートの後半にくっつけてしまったのかもしれない。好意的に解釈すれば、そのような可能性にも思い当たるだろう。

しかし、だ。実は、その直後に、杉田氏が尾辻氏のツイートを引用する形で問いかけをしたのに、尾辻氏はそれをスルーしたのである。なお、尾辻氏のツイートがきっかけでいやがらせや脅迫が殺到し、身の危険を感じた杉田氏は、後に自身のツイートを削除してしまっているため、2018年7月19日に記録されたウェブ魚拓(https://archive.ph/Oheeh)より、その文面を以下に引用する。

尾辻先生、税金を投入する=福祉を活用する人=社会的弱者です。LGBTの方々は社会的弱者ですか?LGBTの方々でも、障害者の方は障害者福祉を低所得者の方は低所得者福祉を高齢者の方は高齢者福祉を受けられます。年金も生活保護も受けられます。当たり前のことです(続く)

(続き)その点に於いて日本の中で何ら差別されていないし、また差別すべきではないと思います。納税者として当然の権利は行使できます。その上で、何かLGBTの方々だけに特別に税金を注ぎ込むような施策は必要ですか?

健全な議論のためにも、この問題提起は知られるべきでは?

ご覧のとおり、杉田論文要約ツイートに対するツッコミとも言える重要な問いかけであるのだが、尾辻氏はガン無視した。いや、重要な問いかけであるからこそ、無視したのかもしれない。

いやいや、政治家なのだから普段から引用リツイートやリプライの通知も多く、見逃してしまったのでは?――という擁護の声も出てくるかもしれないが、尾辻氏の「ガン無視」は、多くの人が指摘している。それでも尾辻氏は気づいてないというのか? 仮に本人が気づいてないのなら、秘書から尾辻氏に伝えるのが、秘書たる者の仕事ではないのか? なにしろ、あれだけの騒ぎを起こしたツイートなのである。

そして、今に至るまで、少なからぬ数のLGBT当事者が尾辻氏のツイートのおかしさを指摘してきたが、いまだに尾辻氏は彼らをも「ガン無視」なのである。

尾辻氏のツイートから、本当に杉田論文の内容が「すべての人は生きていること、その事自体に価値がある」と反論すべき内容だと信じたLGBT当事者は怒り、あるいは傷つき、中にはショックで泣いたと告白した者もいた。

杉田論文を読まないまま、しばきデモに参加してしまった母と中学生の娘。かえって教育に悪いのでは?

だが、杉田論文はLGBTの「生」や「存在」を否定するようなものでは決してなかった。ということは、その方々は、尾辻氏の言葉に怒り、傷つき、泣いたのである。

厳しいことを言えば、原典に当たらず140文字以下のツイートなんぞに脊髄反射するのが悪いのだが、過去に差別を受けて怒り、傷つき、泣いてきた方々に「アホ」のレッテルを貼るのは、あまりにも酷だろう。

なにはともあれ、尾辻氏がおのれの要約の恣意性を認め、杉田氏のリプライにきちんと対応しておけば簡単な話だったのである。まったくもって、無責任な話だ。

しかし、無責任なのは尾辻氏だけではなく、マスコミもそうだった。杉田氏に対し、一貫して「叩き報道」を続けたのである。

◎毎日新聞(2018.7.21)「『生産性なし』自民・杉田議員の寄稿が炎上」

◎朝日新聞(2018.7.23)「同性カップルは『生産性なし』 杉田水脈氏の寄稿に批判」

◎日本経済新聞(2018.7.31)「自民・杉田氏寄稿に批判相次ぐ LGBT『生産性ない』」

杉田論文を読まないまま、しばきデモに参加してしまった母と中学生の娘。かえって教育に悪いのでは?

まさか、報道に携わる者がそろいもそろって、「杉田論文」を読まずに批判していたのか? あるいは、全文を読んだにもかかわらず、「生産性」のひとことに拘泥しつづけ、主旨を読み取れなかったのか? それとも、各社の記者全員がブードゥーの呪術師にゾンビパウダー入りの茶でも飲まされて、思考停止に陥ったのか? だとしたら、大変お気の毒なことであり、同情を禁じえない。

なお、私は杉田氏を擁護してはいるが、支持者ではない。支持政党なしの私にとって、杉田氏は数多く存在する「いいところもあるけど、悪いところもある政治家」の一人でしかない。

その点は、読者諸氏にもしっかり心にお留めおきいただきたい。特に、杉田氏のお取り巻きと化して、氏を「水脈姐」と呼んでキャッキャウフフしながら馴れ合っている保守派女性の一人とみなされてしまったら、鳥肌が立つというものである。私の望む百合の園は、あのような形ではない。断じて、だ。

最後に、フェアな姿勢で杉田論文全体を論じたトランスジェンダー当事者・神名龍子女史によるブログ記事をご紹介し、今回は筆を擱きたい。

◎神名龍子「杉田論文についての考察」 https://www4.hp-ez.com/hp/eon/page55/8

(つづく)
◎[過去記事リンク]LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40264
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40475
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40621
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40755
〈5〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40896
〈6〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44619
〈7〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45895
〈8〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45957
〈9〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46210
〈10〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46259
〈11=最終回〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46274

 

▼森奈津子(もり・なつこ)

作家。立教大学法学部卒。90年代半ばよりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラーを執筆。『西城秀樹のおかげです』『からくりアンモラル』で日本SF大賞にノミネート。他に『姫百合たちの放課後』『耽美なわしら』『先輩と私』『スーパー乙女大戦』『夢見るレンタル・ドール』等の著書がある。
◎ツイッターID: @MORI_Natsuko https://twitter.com/MORI_Natsuko

◎LGBTの運動にも深く関わり、今では「日本のANTIFA」とも呼ばれるしばき隊/カウンター界隈について、LGBT当事者の私が語った記事(全6回)です。
今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー

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10月31日に投票が行われた第49回衆院選は、自公政権が過半数を大きく上回る結果となった。一方、「野党連合」は失敗に終わった。自民党総裁選をめぐるテレビによる洪水のような自民党PRを考えると、このような結果を予測したひともかなりいるのではないか。権力構造の歯車としてのマスコミが現政権の維持に一定の役割を果たしていたのだ。

選挙の後には、かならず何件かの選挙違反が摘発されるのが通例だ。そこで意外に知られていないが、今後、考えなければならない「不正選挙」の手口を紹介しよう。今回の衆院選とは関係がないが、不正工作を考える格好の題材となる。

◆選挙人名簿と住民基本台帳が特定候補者の手に

真鶴は、神奈川県の太平洋岸の町である。人口、7000人。志賀直哉が短編小説『真鶴』で、陸と海の光景を、「沖へ沖へ低く延びている三浦半島が遠く薄暮の中に光った水平線から宙に浮かんでみられた」と描写している。

この真鶴町で、先月、議会制民主主義の信用を失墜させる「不正選挙」の手口が明らかになった。日本では選挙が公正に行われていると信じて疑わない人々を面食らわせる事件が発覚したのである。事件を告発した元真鶴町議の森敦彦氏が言う。

「選挙管理委員会の実態を公にするために告発に踏み切りました」

森氏によると、少なくとも2度にわたり選挙人名簿や住民基本台帳が町役場から外部へ流失した。それが選挙の道具として使われていた。

森氏が説明した不正選挙の手口は、真鶴町だけに限ったことなのか。それとも水面下で広域に広がっているのか。どのような経緯で書類が流出して、どう使われたのか。わたしは事件の深層に迫った。

真鶴町(出典=Wikipedia)

◆舞台は2020年9月の真鶴町長選

10月26日、真鶴町の松本一彦町長は、記者会見を開き、みずからが関与した「不正選挙」の手口を説明して謝罪し、辞任を表明した。

発端は、1年ほど前の2020年9月にさかのぼる。真鶴町で町長選挙が行われた。この町長選には、現職で3期目をめざす宇賀一章(68)氏のほか、新人の北沢あきお氏と松本一彦(54)氏の3人が立候補した。しかし、事実上、現職の宇賀氏と新人の松本氏の一騎打ちだった。

松本一彦氏のFacebook。牧島かれん・衆議院議員、松沢成文・元神奈川県知事、島村大・参議院議員が「必勝」のメッセージ。岸田内閣の下で、牧島議員はデジタル大臣を、島村議員は厚生労働大臣政務官兼内閣府大臣政務官を務めた

松本氏は、出馬までは真鶴町の役場に町民生活課長として勤務していた。職員を辞職して町長選に挑んだのである。投票結果は次の通りだった。

松本一彦:  2,812票
宇賀かずあき:1,673票
北沢あきお:  78票

◎出典 http://www.town.manazuru.kanagawa.jp/soshiki/soumubosai/senkyokanri/r2chouchousenkyo

新人の松本氏が現職町長に圧勝したのである。

この選挙では、元神奈川県知事の松沢成文氏が選挙戦初日から松本候補の応援に入った。(https://www.youtube.com/watch?v=E_baKYbhGco&t=328s

松本氏の事務所には、牧島かれん衆議院議員、島村参議院議員、松沢しげふみの3氏による「祈 必勝」の文字が入ったメッセージが張り出された。松本氏の当選は、ひとつには幅広い人脈を使って、活発な選挙活動を展開した結果だったが、別の勝因もあったようだ。

◆選挙人名簿で有権者のターゲットを絞る

この町長選に挑むために松本氏は、真鶴町の選挙管理委員会から選挙人名簿を盗み出していたのである。選挙人名簿は合理的な選挙戦略の格好の道具になるからだ。

地方自治体の選挙から国政選挙まで、立候補者が自分の推薦者名簿を作成することは当たり前に行われている。日頃の議員活動や「票読み」をしながら、支援者と思われる人を推薦者一覧に登録する。それ自体は、違法行為でもなんでもない。政党を問わずにあたりまえに行われていることである。

しかし、推薦者一覧は、投票権がある全住民を把握しているわけではない。従って選挙戦に突入して、議員の選挙事務所が「電話」を使ったローラー作戦を展開してみると、住民登録がなく、選挙権を有していないひとに行き当たることも少なくない。

こうした状況の下で、仮に選挙人名簿が手に入れば、議員の選挙事務所は、住民のうちだれに投票権があるかを即座に把握することができる。その結果、有権者だけにターゲットを絞った合理的な選挙活動が可能になる。選挙が短期決戦になればなるほど、選挙人名簿は威力を発揮する。

余談になるがこれに類似した手口は、実は2021年10月31日に投票が行われた衆院選でも発覚している。「FLASH」(10月26日)(https://smart-flash.jp/sociopolitics/161395/1)は、「立憲民主党・篠原豪氏 横浜市民の署名簿を自らの政治活動に不正流用! 元秘書が明かす“手口”」と題する記事を掲載した。「カジノの是非を決める横浜市民の会」が集めた約19万筆のIR反対の署名簿の一部を使って、「票読み」をしていたというのだ。

IRに反対するひとは、反自民の傾向があるわけだから、立憲民主党にとって署名簿は、格好の選挙道具になる。

◆松本一彦町長が選挙人名簿をコピー

朝日新聞(10月27日、電子)は、26日に行われた松本町長の謝罪会見を次のように報じている。

「会見での説明によると、松本町長は町民生活課長だった昨年2月ごろ、本庁舎の職員の引き出しから倉庫のかぎを取り出し、別棟の倉庫にあった選挙人名簿を持ち出した。他の職員がいない夜間に庁内のコピー機を使い名簿をコピーしたという。」

わたしがこの事件を知ったのは、松本市長が記者会見を開く1週間ほど前である。わたしは、事件を告発した真鶴町の元町議会議員・森あつひこ氏から、告発に至る事情を聞いた。

告発の発端は、松本氏が圧勝した町長選から1年後、2021年9月に行われた真鶴町議選だった。森氏は再選を目指して出馬することにした。森氏は、再選されるのを確信していた。自分の当選を楽観視していたのだ。

この時期に森氏は、松本町長から電話で奇妙な打診を受けた。森氏が言う。

「自分が町長選挙で使った時の推薦人名簿があるので提供したいと言ってきました。わたしだけではなく、他の候補にもそれを提供しているとのことでした。推薦者名簿であれば、違法ではないので、わたしは承知しました。もっともあまり役に立つと思っていませんでしたが。町長の言葉通り、わたしのもとに大きな封筒が届きました。それを届けたのは、なぜか町の選挙管理委員会事務局長である尾森正氏でした。わたしは推薦人名簿など使わなくても、当選できると思ったので、礼儀上、受け取ったものの中身を確認せずにそのまま放置しました」

松本町長が、「推薦人名簿」の提供を申し出たのは、森氏に「恩を売る」ことで、議会運営を優位に進める体制を構築しようという意図があった可能性が高い。「派閥」の形成の布石だったのではないか。実際、この資料は、森氏だけではなく他の2人の候補にも提供されていた。

しかし、この選挙で森氏だけが落選した。結果は、次の通りである。

当選  青木 たけし    534票
当選  田中 しゅんいち  526票
当選  岩本 かつみ    475票
当選  海野 弘幸     368票
当選  黒岩 のり子    351票
当選  高橋 あつし    330票
当選  天野 まさき    325票
当選  村田 ともあき   281票
当選  山下 あみ     272票
当選  木村 いさむ    263票
    加藤 りょう    255票
    森  あつひこ   156票
    北沢 あきお    27票
    島内 かずき    26票

落選後、森氏は選挙管理委員会の尾森事務局長が届けた封筒を開いてみた。そして中身が推薦人名簿ではなく、真鶴町の選挙管理委員会に保存させている選挙人名簿だったことを知ったのである。さらに別の3種類の書面も入っていた。「転出決定者一覧表」、「死亡者一覧表」、「職権消除者一覧表」である。これらは住民基本台帳である。

書面が網羅しているデータの登録日は、いずれも「平成31年4月7日~令和3年6月30日」である。つまり町議選の直前に、選挙人に関する最新データがプリントアウトされ、複数の候補者にばら撒かれたことになる。

◆事件告発の背景に選挙管理委員会に対する不信感

町議会選挙で当選した10人のうち、現職と元職が1位から8位を占めた。9位の山下あみ氏と10位の木村いさむ氏が新人だった。

森氏は、2人には真鶴町での生活実態がないとして、2人の当選の無効を申し立てた。選挙管理委員会は、それを受理した。

これに対して木村氏は、わたしの取材に対して「5月に真鶴に転入した。生活実態もある」と話している。また 山下氏も、「今年の春に真鶴に転入した。生活実態もあり根も葉もないこと」と話している。

その後、10月14日の午後9時ごろに、森氏は尾森事務局長から電話を受けたという。その中で、尾森氏は、次のような趣旨のことを言ったという。木村勇議員は、居住実態があるので、「白」で決まりだが、山下亜美議員は、「黒」だ。森氏は次点で落選したのではないから、当選無効を申し立てても「繰り上がり」で議員にはなれない。マスコミに騒がれて、かえって損をするとも付け加えたという。

この言葉を聞いたとき、森氏は選挙管理委員会が選挙結果をコントロールしているのではないかと疑ったという。その真実性はともかくとして、これが不正選挙の手口を告発するに至った引金である。

◆国際監視団の導入を

議会制民主主義の歴史が浅い地域、たとえば中央アメリカや南アメリカの国々は、国政レベルの選挙では、必ず国際監視団を入れて「不正選挙」を厳重に監視する。小選挙区制の下で、民主主義が劣化した日本では、そろそろ国際監視団の導入を検討する時期に来ているのではないか。真鶴町の事件が本当に一地方だけの問題なのか、再考する必要がある。

真鶴で発覚した「不正選挙」のメソッドが、アメーバーのように広がっている可能性もある。

もしそうであれば、「政権交代」など絶対に起こり得ないのである。

真鶴町は、関係者の処分について、「第3者委員会を設置して、事実関係を調査して、処分を決めたい」と話している。また、尾森氏と松本町長からはコメントがなかった。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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与党(自公)で安定過半数233議席をクリアし、自民党は単独過半数も確保した。自民党の40前後と予想された議席減は15、公明党は3議席増やすという「快挙」である。総じて、苦戦を噂されていた与党の圧勝といえるのではないだろうか。

野党共闘は小選挙区で機能したものの、立民党の比例区での大幅減に象徴されるように、肝心の政党選択では、ほぼ完全に敗北というしかない。立民党は14議席減、共産党も2議席をうしなった。社民党も1議席にとどまり、来年の参院選挙では「政党要件」を失いかねない崖っぷちである。

これで「政権選択の役割をはたした」と言っているようでは、安倍晋三なみの「虚言」「見当はずれ」ではないだろうか。唯一、議席を伸ばしたのは、れいわ新選組だけだった。

さて、注目すべきは維新の会の「大躍進」であろう。自民党批判の大半は、この党に流れたとみるべきである。政権批判の受け皿は、野党共闘ではなく維新の会が果たしたのだ。

党派別当選者数

下記のリンクは、ほぼ完全に予想をはずした本通信(横山の記事)である。読者のみなさん、すいませんでした。

「総選挙展望 ── 政権交代は起きるか〈前編〉自民単独過半数は無理」(2021年10月23日)
「総選挙展望 ── 政権交代は起きるか〈後編〉静岡補選の衝撃と安倍晋三長期政権による政治的凋落への審判」(2021年10月26日)

◆清新さのない野党共闘

ではなぜ、立民党と共産党は党勢が伸びないのだろうか。共闘の名による独自性の喪失、といった批評がテレビのワイドショーでは語られている。

野党共闘に与しなかった国民民主党の3議席増加が、党の独自性をうしなわなかったからか。だがそれは、単に党のイメージだけではない。

そう、支持層のうち固めという、選挙運動にとって基本的なことが、今回の野党共闘にはなおざりにされてきた。華やかな相互の選挙応援、派手なパフォーマンスで風が起こせなかったのは、むしろ党の基礎単位で動ききれなかったからではないか。

もうひとつ、党の顔の清新さのなさ。ではないだろうか。政治評論家の田崎史郎によれば、永田町には政治家の「賞味期限」があるという。世間を驚かせる言動や新鮮な印象で登場する政治家たちも、やがて「飽きられる」のだ。パフォーマンスがマンネリ化することで「もう古い」と言われるのだ。そして活躍が冴えなければ「終わった人」とされるものだ。

自民党総裁選で躍進中の河野太郎を支援し、まるごと敗退することで「総理の芽はなくなった」とされる石破茂、おなじく人気だけでは通用しないことを証明してみせた小泉進次郎。これらの人びとと同じく、今回の選挙は大物があいついで落選した。

小沢一郎、石原伸晃、甘利明(比例復活)、辻本清美……。立民党の枝野代表もかろうじて逃げ切ったが、約6000票差のまさに辛勝である。

◆党首選挙の重要性

選挙の顔(党首)も、やがて飽きられてしまう。

維新の会の躍進がその意味では、かつての橋下徹・松井一郎(大阪市長)から吉村洋文(大阪府知事)へと党の看板が変わり、首長であるがゆえに発信力が増加していたのは、今回の勝利と無関係ではないだろう。

この点は、名古屋の減税日本(河村たかし)や都民ファーストの会(小池百合子)が国政に進出できないのは、蓄積や力量の差だけではなく、維新の会の「大阪発」という特性があってのことだ。大阪人の中央(東京)にたいするパワーは、阪神タイガースそのものといえる。

それにしても、共産党との共闘が野党共闘の成否のネックであり、小選挙区での一定の勝利と、それを掘り崩す比例区での惨敗。共産党が「反共シフト」と呼ぶ者だが、それには彼らが気づいても変えられない理由がある。これはひとつには、共産党の党内選挙なき、中国や北朝鮮の指導部をほうふつとさせる組織の性格である。

レーニンの「何をなすべきか」(1902年)は、非合法化されたロシア社会民主党の立て直しのために書かれた記事をまとめたものだが、そこでレーニンは選挙ができないツアーリの弾圧とともに、同志的信頼にもとづいた「民主主義以上のあるもの」が指導部を選出すると説いている。

日本共産党もふくめて、レーニンの民主集中制を採る共産主義政党は、ことごとく党内選挙を経ずに指導部を「党大会で選出している」のだ。下級は上級に従い、上級は全体(党大会)に従う。この原則はしかし、党大会に提出される議案が、中央委員会およびその上級機関である政治局(日共は常任幹部会)によって決められていることが前提だ。そして肝心の人事案も、最初から決まっているものを承認するにすぎない。

共産党の場合、最初から「飽きられ」「賞味期限」がとっくに切れている委員長志位和夫が、明日も明後日も、来年も再来年も選挙の顔であるところに、その致命的な弱点があると指摘しておこう。このままでは、野党共闘は来年の参院選挙でも自民・公明・維新の会の後塵を拝すと断言できる。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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《11月のことば》上を向いて歩こう(2021鹿砦社カレンダーより/龍一郎・揮毫)

喜怒哀楽というように人にはいろいろな感情や表情があります。

人生には嬉しいことばかりではなく悲しいことも多々あります。

「上を向いて歩こう 涙がこぼれないように」とは誰もが知る有名な歌の歌詞です。

悲しい時にはこらえても涙が出ることはありますが、それでも笑顔で前を向いて歩いていきたいものです。

秋も深まり肌寒くなってきました。今年のカレンダーもあと2枚、来年2022年のカレンダーも校了し印刷に入っています。例年通り12月発行の『紙の爆弾』『NO NUKES voice』の定期購読の皆様方には一緒にお送りいたします。

定期購読まだの方は今すぐお申し込みお願いいたします。

(松岡利康)

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