河井案里さんが当選(2021年2月4日に本人の有罪判決確定で無効)した参院選広島2019における河井夫妻による前代未聞の買収事件。2019年10月31日の「文春砲」で車上運動員買収に怒った県民が「河井疑惑をただす会」を結成。多数の県民の連名で河井案里・克行被疑者を12月に告発しました。そのリーダーが元中国新聞社員の山根岩男さん(70)でした。
県民の怒りを背景に東京地検が動き、2021年6月18日、案里・克行被疑者は逮捕されました。
その後、案里さんの有罪は確定し当選は無効。夫の克行被告人も2021年6月18日、懲役3年の実刑判決を受けました(現金授受は認めつつも控訴中)。「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害した」として、東京地裁も事件を厳しく批判しました。
◆開き直る被買収県議、大甘の同僚議員
中でも案里さんの「元職場」の広島県議会では、被買収の県議会議員は13人おられます。それぞれにお金をもらった事実は認めています。しかしながら、東京地検はこれらの県議も含めた被買収者全員を「受け身だった」として起訴猶予処分としています。ただ、起訴猶予処分といっても被買収の事実は事実。にもかかわらず、2021年10月10日現在、誰も腹を切っておられません。
西洋は罪の文化、日本は恥の文化といわれていますが、いまの広島県議会にはどちらも欠けています。
広島県議会では「政治倫理審査会」も開催されました。13人の被買収議員については、「辞職勧告」でもされるかとおもいきや、「厳重注意」で済まされてしまいました。審査会はいわば「身内」の同僚議員が疑惑を追及するもので、非公開でした。
そして、各議員は弁明にもらった時間を大幅に余らせていました。各議員がいかに同僚議員、なにより県民をなめきっていたか?そして、時間があまったということは、同僚議員も被買収議員に質問などで厳しいツッコミをあまりいれていなかったということです。そして、13人中、6人が委員会の正副委員長という要職につく有様です。
河井議員からお金をもらった議員は論外として、お金をもらっていない議員、アンチ河井議員、自民党、公明党はのみならず、国政では野党に属する立憲民主党系の議員も含めた被買収者に大甘である。そのことが明らかになってしまいました。
◆案里さんの地元の安佐南区で県議に空席
こうした中、克行被告人の離党に伴い、自民党は衆院広島3区の候補者を公募。安佐南区の県議・石橋林太郎さんが合格しました。ただし、広島3区については自民党が与党候補のイスを公明党にゆずる形で斉藤鉄夫国交相に決まっています。そして石橋さんは比例代表に回りました。
石橋さんの衆院立候補で安佐南区(定数5)の県議が1つ空席となるため、安佐南区では11月14日の知事選にあわせて県議補選が行われます。
この安佐南区はまさに河井案里さんが県議を4期つとめた疑惑の震源地です。毎回のように物量をものにいわせた選挙を案里・克行夫妻が展開してきた場所です。
わたくし自身も2011年の県議選で案里さんに挑みました。このときは、わたしが4278票、案里さんが20799票という結果でした。街中が案里さんのビラや看板で溢れかえっていたのを記憶しています。広島の政治・選挙がいかに政策などそっちのけか。そのことを痛感しました。
◆恥知らずの県議会に憤り 山根さん立ち上がる
あれから10年。状況はちっとも変わっていません。こうした中、「河井事件」追求の先頭に立っていた山根岩男さんが業を煮やして立ち上がったのです。現在、無所属で野党の統一をめざしています。立憲、共産、社民、れいわ、新社会各党に推薦を求め、共産党からはすでに推薦決定が出ました。立憲民主党は10月10日に行われた山根さんの決起集会に3区の衆院選予定候補のライアン真由美さんが檄文を寄せています。
れいわ新選組もわたくし、さとうしゅういちが、10月10日の決起集会に参加し、山根さんから推薦依頼書を受領。れいわ新選組の最寄りの総支部に進達しています。本部の決定にかかわらず、れいわ新選組の地元の支持者としては、山根さんを支持していくことを申し合わせています。
「河井疑惑の徹底追及・解明」「被買収者への辞職勧告」「政治倫理審査会に外部者をいれて公開とする」などを掲げています。また、コロナ対策として医療者への支援や全国でも異常なペースで進められた「分権」で廃止された広島3区内の保健所の復活などを提案しています。
また、土砂災害対策や黒い雨被害者救済、核兵器禁止条約参加を政府に求めることなどを国に強く求めるとしています。
◆圧倒的に自公が強い過去の県議選
今回の補選は衆院選の2週間後に実施されます。山根さんの他には元維新の国政選挙候補者で自民党の3区公募に応募した灰岡香奈さん、克行被告人の元秘書の伊藤守さんが立候補を予定しています。
過去の県議選では得票でみれば、自公系が圧倒的に有利です。たとえば、わたくし、さとうしゅういちが立候補した2011年の県議選では自公が案里さん20799+石橋良三さん(林太郎さんの父)17684+公明党候補16452+自民党元職佐々木弘司さん14234で69169票。非自公が、さとうしゅういち4278+民主党候補9987で14265票。
非自公はわずかに17.1%です。2015年の県議選では非自公系の候補がわたしの参院選広島への転出と民主党候補の市議選転出で入れ替わっていますが、力関係に大きな変化はありませんでした。
衆院選挙ではこの地域ではいつも自公(克行被告人)と非自公(民主、維新、共産)の得票は互角です。
その原因は、案里さん以外の自民党県議や市議が、アンチ河井克行で、克行被告人民主党や維新の国政選挙候補に票を流していたという事情があります。「俺は(克行被告人より)共産党のほうが仲良しだ」と公言する自民党市議もおられた始末でした。克行被告人の評判の悪さが透けてみえます。
しかし、県議選では国政とちがい、与党の各議員の地盤は非常に強いのです。2015年県議選を最後に引退された佐々木さんなどは国政では共産党支持、社民党支持という人にも根強い人気がありました。
◆このまま自民党に有権者をなめさせるな
案里さん・克行被告人からお金をもらっている県議のほとんどが自民党所属です。彼らがなぜ腹を切らないのか?その背景には、過去の選挙では、彼らが無投票か楽勝かだったことがあります。
「どうせ、次の選挙は俺は私は無投票か楽勝。」
そのように思ってなめきっているからこそ、とれる行動です。いまは風当たりが強くて恥ずかしくても、国会議員とそう遜色ない給料をもらいながらやりすごせば、どうせ有権者は忘れてくれる。
そういう彼らをあわてさせないといけません。安佐南区という、過去の県議選では与党圧倒的優勢の場所で野党が勝てば彼らも慌てるでしょう。
◆「腐敗」の後の「新自由主義隆盛」を防げ
もうひとつ、今回の補欠選挙で進めるべきは、広島出身の総理・岸田さんでさえ打ち出している「新自由主義からの脱却」です。
今回、自民党県連が推す女性候補は2013,2016と「維新」の参院選挙候補として「アンチ河井の保守層」を中心に一定の得票をしています。「クリーンな新自由主義者」というイメージです。腐敗への批判が高まるなかで、「38歳という若さを売りにして、新自由主義者である女性候補が議席を取る」というシナリオを自民党サイドは思い描いているのでしょう。
ただでさえ、前知事のもとで、保健所は3分の1に減らされ市町村合併で自治体減少率NO2の広島県。腐敗した河井夫妻が失脚したのはよい。しかし、入れ替わりに、新自由主義者が入れ替わりに勢力をのばした、ではなんのために河井事件を追及したのか?訳がわからなくなってしまいます。
大阪でもあったように、新自由主義者は既存勢力の腐敗に便乗して台頭します。今回の広島でもそれは要警戒です。
こうしたなかで、山根さんとわたしも含めた支持する人たちの責任は重大です。山根さんは中国新聞社員時代、労働組合の委員長など役員をつとめました。昔の中国新聞では女性は非正規にしかなれなかったのです。それを組合で追及して女性も正社員になれるようにしたのは山根さんの功績大です。退職後も労働相談員などをされています。
腐敗をゆるさないとともに、労働者の味方でもある山根さん。彼の今回の補欠選挙のとりくみの成否は今後の広島県の流れを左右するといっても過言ではない、と感じています。
◎山根岩男さん Twitter
◎河井疑惑をただす会 Facebook
◎[参考動画]山根候補の出発式における応援弁士の演説(さとうしゅういち2021年11月05日公開)
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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