2017年8月7日、採択され、9月20日に署名が始まった核兵器禁止条約。2021年1月22日、批准・加盟国が50ヶ国に達してから90日を経過したため、発効しました。
ガイアナ、バチカン、タイ、メキシコ、キューバ、エルサルバドル、パレスチナ、ベネズエラ、パラオ、オーストリア、ベトナム、コスタリカ、ニカラグア、ウルグアイ、ニュージーランド、※クック諸島、ガンビア、セントルシア、サモア、サンマリノ、ヴァヌアツ、南アフリカ、パナマ、セントビンセント及びグレナディーン諸島、ボリビア、カザフスタン、エクアドル、バングラデシュ、キリバス、ラオス、モルディブ、トリニダード・トバゴ、ドミニカ、アンティグア・バーブーダ、パラグアイ、ナミビア、ベリーズ、レソト、フィジー、ボツワナ、アイルランド、ナイジェリア、※ニウエ、セントクリストファー・ネイビス、マルタ、マレーシア、ツバル、ジャマイカ、ナウル、ホンジュラス、ベナン カンボジア、フィリピン、コモロ、セーシェル、チリ、モンゴル、ギニアビサウ(58ヶ国)
※=オブザーバー参加 2021年11月ノルウェー、2021年12月ドイツ
核兵器禁止条約は、核兵器の開発・実験・生産・製造・取得・貯蔵はもちろんのこと、核兵器による威嚇も禁止しています。核兵器を包括的に違法とする初めての国際法です。また、核実験による被害者に対する援助および環境の修復についても定めている点も画期的です。
これまでも、「非核兵器地帯」は東南アジアやアフリカ、中南米、モンゴル、太平洋など各地にできています。核兵器禁止条約は、世界を対象にひろげた上で内容も充実させたものです。
わたくし、さとうしゅういちの父親は広島市内の被爆で全焼した地域に1945年の7月まで住んでいました。引っ越しが遅れればわたしは存在しませんでした。東京で過ごした小学校時代には、たまたま広島で被爆した経験をもつ先生に担任をしていただき、薫陶を受けました。高校時代には井伏鱒二の小説「黒い雨」に感動しました。そんな、わたしにとっても、核兵器禁止条約は悲願です。
◆日本政府は条約に反対
日本政府はご承知のとおり、「核兵器保有国と非核兵器国の橋渡しをする」といいつつ、アリバイ程度の国連決議を毎年の総会に提出する以外には、ほとんど何もしていないのが実態です。基本的には、アメリカの核抑止力に依存するから、何も言えない、というのがほんとうのところです。
日本政府はそもそも、核兵器禁止条約については「分断を広げる」という理由で反対をしています。その理由のひとつは、「安全保障環境」です。
◆安全保障環境は不参加の理由になるのか?
しかし、そもそも、安全保障環境は不参加の理由になるのでしょうか?
日本とほぼおなじような安全保障環境を共有している国といえば東南アジア(ASEAN)諸国です。そのASEAN諸国は核兵器禁止条約にすべて署名しています。たとえば、ベトナム。ご承知のとおり、南シナ海問題で中国とは紛争状態で、小競り合いもときどき起きています。さらにベトナムは中国と国境を陸上と接しており、過去には中越戦争も起きています。日中間の「尖閣諸島」問題どころではありません。
フィリピンについても南シナ海問題という意味では深刻な紛争を中国と抱えています。
安全保障環境は理由とした核兵器禁止条約不参加は、ベトナムやフィリピンを見る限り、成り立ちません。
欧州に目を転じてみましょう。ノルウェーがまず2021年はオブザーバー参加をしています。ノーベル平和賞の授賞式が行われることでも有名なノルウェーは、陸軍では世界最強ともいわれるロシアと陸上の国境を接しており、NATO加盟国です。
さらに、同じ第二次世界大戦の枢軸国かつ西側の経済大国という意味では日本と似たような立場にあるドイツも同条約についてはオブザーバー参加をしています。ドイツもNATO加盟国です。
ASEANをみても、ノルウェーやドイツをみても、日本政府が核兵器禁止条約のオブザーバー参加程度をちゅうちょする理由はどこにも見当たりません。
◆日本は核問題でもASEANと行動を共にしたら?
日本政府に申し上げたい。ここは核兵器禁止条約の面で東南アジア諸国と行動をともにしたらどうでしょうか?そもそも、日本の気候風土や文化は東南アジアと北東アジアの両方の要素を兼ね備えています。
すでに、中国は、2021年11月に北京にASEAN首脳を招いての首脳会議を開催しています。ASEANとの関係を格上げしています。ASEANはASEANで、南シナ海問題については、「法の支配」ということで、一致して中国に対応する一方で、経済的な関係は強化する、という現実的な対応もとっています。
日本人は長年、東南アジア諸国を自分たちより格下とみる傾向が否めませんでした。しかし、新型コロナ災害では、マレーシアに介護用手袋を依存していたために、我々介護労働者もマレーシアからの輸入がとだえ、苦労しました。日本企業がつくろうとしても、技術がないためにマレーシアに勉強にいかないといけない状況です。
また、わたし自身、現場で多くの東南アジアからの労働者と仕事をさせていただいています。
日本は、国力が落ちたにもかかわらず、アジアで盟主のように振る舞いたがり、浮いているように思えます。そのあたりが実は、本当の意味での安全保障環境の厳しさではないでしょうか?
日本人が潔く、国力低下をみとめ、東南アジア諸国とも名実ともに対等な関係にしていく。東南アジア諸国の仲間として、核兵器禁止条約にせめてご一緒させていただく。そのことを通じて「安全保障環境」を改善していく。このことがいま求められるのではないでしょうか?
もちろん、過去の選挙で野党が公約していた日本と朝鮮半島をふくむ北東アジア非核地帯も追求すべきです。ただ、日本さえその気になれば「いますぐ」実現するのは、ASEANとの統一行動、場合によってはASEANへの加盟とそれにともなう核兵器禁止条約と東南アジア非核兵器地帯への加入でしょう。
◆侵略の歴史はきちんと反省した上で日本が先頭に立とう
日本はそもそも、世界で最初に戦争による核兵器の被害を受けた国(最初に受けたのはほかでもないアメリカ自身)です。その日本が核兵器禁止の先頭に立たないでどうするのでしょうか?
「被害を受けた国が核兵器禁止に不熱心」ということは、核兵器保有国にも核兵器を維持する口実を与えてしまいます。
なお、いまだに、「日本は被害者としての側面ばかりを重視している。」という批判も、中国などからは、もちろんあります。
また、現時点でも日本を標的とした国連憲章のいわゆる敵国条項は厳密にいえばまだなくなっていません。従って、「敵基地先制攻撃論」などは、逆に緊張を高めるどころか、日本への攻撃の口実を与えてしまいます。そもそもが、第二次世界大戦に日本は敵基地先制攻撃により、参戦したのです。
核兵器禁止の訴えに説得力を持たせるには、かつての侵略の歴史については、今後とも日本は反省をしなければならない。その上でアメリカにも中国にも忖度せずに、東南アジア諸国とも連携しながら、核兵器禁止の先頭に立つべきではないでしょうか?
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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