広島県内でも役所や企業が仕事始めだった2022年1月4日、広島県内の新型コロナウイルスの新規感染者数が109人と聞いて、筆者は腰を抜かしました。たった1週間前の2021年12月28日、すなわち役所の仕事納めだった日に1人だった感染者数が、指数関数的に爆発しています。こうした中、1月10日の成人式を広島市や大竹市は延期するなどの対応に追われています。広島県は宿泊療養施設の受け入れを開始しました。
今回の感染爆発の主役はオミクロン株とみられます。南アフリカなどでは死亡率や重症化率は従来型より低いというデータもありますが、反面で感染力が強いために、患者が桁違いに増えて、重症や死亡の「絶対数」は多くなる危険もあります。
◆隣接する岩国市との関連が多い広島県内感染例
そして、広島県の分析では、西隣で、広島市から直線距離でわずか30kmあまりの山口県岩国市との往来が関係する感染例が多いとのことです。
岩国市は広島県に隣接します。広島カープの2軍の本拠地も岩国市の由宇というところにあります。岩国からわたしの事務所がある広島市の安佐南区に通勤してこられる方も多くおられます。大昔、わたしが、岩国の酒場で県外だからと油断して大酒をのんで遊んでいたら、突然、となりの席の方に声をかけられ、「古市橋駅前でよく演説している人でしょう」と声をかけられ、驚愕して酔いが覚める、という不覚を取ったことがあります。また、それなりの有名な雑誌などでも「広島県岩国市」と誤記していたりすることがみられました。
◆拡張強化された岩国基地で先行して感染爆発
そして、その岩国市では一般市民に先行して、米軍岩国基地で感染爆発が起きています。米軍岩国基地は、現在は、軍人、軍属、家族をあわせて10000人以上の方がおられます。昔は、3000人規模だったのが、2013年度ころに空中給油機、さらには2014年度ころに厚木基地の艦載機が移駐して10000人にふくれあがりました。その岩国基地では2022年1月5日にはなんと182人もの新規感染者が出ています。
広島県内(県内)、岩国市内(岩国)、米軍岩国基地(基地)の新規感染者数は以下のように推移しています。
県内-岩国-基地
12/01~20 0-0-0
12/21 0ー0-1
12/22 2-0-1
12/23 3-1-0
12/24 1-0-0
12/25 5-1-0
12/26 1-1-0
12/27 1-1-8
12/28 1-1-5
12/29 3-7-80
12/30 6-7-27
12/31 23-8-23
01/01 21-14-0
01/02 57-13-0
01/03 40-44-50(岩国基地は3日分をまとめて発表)
01/04 109-62-47
01/05 138-70-182
広島県の人口は280万弱(2021年に280万を割り込んだ)、岩国市が14万人弱、米軍岩国基地が上述のとおり1万人強です。
12月27日に岩国基地で8人の感染を確認すると、2日後には、80人に急増。岩国の一般市民でも1→7人に増えます。31日には、広島県内でも23人感染となりますが、これは県東部の尾道市でのクラスターによるものです。岩国とは関係がない可能性が高いでしょう。しかし、2022年元日。広島県で21人を記録。そして、わずか3日後の4日に109人、5日には138人を記録します。
◆人口あたり感染数、今の岩国基地は2週間後の広島か?
5日時点では、1週間の人口10万人あたりの新規感染者は岩国基地が3000人くらい、岩国市が150人くらい、広島県が14人くらいです。12月30日では、岩国基地が1200人くらい、岩国市が13人くらい、広島県内が6~7人くらい。12月28日では、岩国基地が150人くらい、岩国市が4人くらい。広島県内でも5人くらい。
岩国基地についていえば、毎日100万人が感染しているアメリカ本土と同等であるのはうなずけます。米軍兵士らは、パスポートもなしに、自由に日米を往来できるのです。
その岩国基地に遅れること8日で岩国市が基地と同程度の人口あたり感染数になる。さらにおくれること6日くらいで広島県内が岩国市と同程度になる。こういう関係が読み取れます。いまの岩国基地は2週間後の広島県という予測はできます。
◆変えるなら憲法よりも日米地位協定を変えるべき
広島県知事はすでに、岩国基地に対して、対策の強化を求めています。米軍基地を震源とする感染爆発はすでに沖縄県で起きています。沖縄県知事も米軍に対して激怒し、政府にはまんえん防止措置を求めていますが当然です。
コロナ対策に関連して、自民党など右派勢力からは、緊急事態条項創設を求める声が強まっています。しかし、まずは、米軍基地をなんとかするのが先ではないでしょうか?
米軍兵士らは、パスポートもなしに自由に日米を往復できています。これまでと桁違いの感染状況にある岩国基地からも事実上、自由に出入りできてしまいます。日本人は困窮者急増にみられるように、生活を犠牲にしてまで協力をしている。しかし、米軍にぶっ壊されてはたまったものではありません。
日本政府は、コロナを災害指定し、全住民に、大水害や大震災の被災者と同様の生活再建支援をすればいいのです。緊急事態条項などいりません。日本全国を激甚災害に指定すれば、自治体が仕事をしやすいように、国が思い切った補助ができます。
それとともに、日米地位協定を変えるべきです。日本の国内にいる以上、米軍兵士の皆様にも、日本人同様にご協力をいただかなければなりません。今後も、コロナに限らず感染症が世界的な流行をみることは十分に想定できます。
岩国基地の地元の岩国市民は、2006年、いったんは艦載機の移駐を拒否する住民投票結果を出しました。しかし、自民党政府が財政面での執拗な締め上げを行ったのです。それに市議会多数派が屈して、当時の井原勝介市長の市政運営の脚をひっぱりました。
2008年の出直し市長選挙で議会多数派は、自民党代議士だった福田現市長をかついで井原市長を打倒。福田現市長が、交付金と引き換えに米軍基地強化を受け入れた経緯があります。基地の規模は人員ベースで3倍以上になりました。
それ以降、筆者が住む広島市内でも米軍機が我が物顔で飛ぶようになり、爆音が増えるなど被害が増えていました。その矢先の米軍によるコロナ災害拡大です。岩国市民も広島県民もこれ以上、米軍になめられてはいけん。日米地位協定改定を今回のことも教訓に強く求めていきましょう。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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