◆新世代の交流
今年のキックボクシング、定期興行が続いている既存の各団体(協会や連盟)において、年間スケジュールが発表されている範疇では、東京近郊開催は全部で20回あまりが確認出来ます。その他、地方興行、フリーのプロモーター主催興行を加えれば未発表を含みますが、全部で60回以上が予測されます。
昨年は各団体興行に他団体役員の来場が見られること多くなり、そこでは会長に連れられ「試合組んで頂きたくて交渉に来ました!」と言う選手の姿もありました。
過去に団体分裂した間柄では結束は難しくても、その他の団体と交流する中で、いろいろな顔触れが入り混じっていく中、昭和の殺伐とした因縁は新しい世代のジム会長には関係無く、今年も交流が増えるだろうと強く感じるところです。
また、一昨年からコロナ禍で海外からの選手を招聘出来なかった期間が長かったので、新たなオミクロン株は、年末時点ではやや拡大傾向で不安な年越しながら、無事開催が進めば滞っている国際戦タイトルマッチも行われることでしょう。
◆那須川天心はプロボクシングでどこまで通用するか
一般社会的にも注目されている那須川天心は、キックボクサーとしてはもう別格の有名人。4月でキックボクサーを引退するとしていた宣言は6月に延びましたが、その後はプロボクシング転向し注目されていくでしょう。
「手や足に脳が付いている」と言われるほど、頭で考える前に手足が相手に当たっている天才型でもプロテストはB級となるかと思いますが、合格は間違いないところでしょう。C級デビューは無いでしょうが、新人王トーナメントから勝ち上がる姿も見てみたいものです。
プロ専門家の意見では「日本か東洋までは早々に勝ち上がるだろう」と予測されますが、
「4回戦以上の長丁場で、闘志空回りしてしまう凡戦や、隙を突かれるクリーンヒットを貰ってしまう苦戦は見られるだろう」という見方もあり、今後の予測が難しいデビュー前の現在です。まずはライセンス取得し、年内にプロデビュー戦まで進めて話題を盛り上げるところでしょう。
◆本場ムエタイ、世界のトップリーダーを持続できるか
ルンピニースタジアムではコロナ蔓延以降、場内ギャンブル禁止(11月より)や女子試合導入に移行など新しいものを取り入れる時代に入りましたが、真のムエタイボクサーも昔のような伝説的バケモノのような頑丈さやテクニシャンは少なくなったことも起因し、今後、世界的に有名な総合格闘技、Mixed Martial Arts(MMA)の試合も組んでいく模様です。
スポンサーやテレビ局の意向が大きく影響していると見られますが、ラジャダムナンスタジアムはまだ大きな変化は無いものの、他からの影響を受け、殿堂スタジアムがどう変化していくのか今年の注目でしょう。
過去、タイ発祥のムエタイ世界認定組織が幾つも出来た上、一時は絶大な存在感を示しながら衰退していく組織がありました。その傾向は代表が亡くなられたり、失態を起こして辞任すると、いとも簡単に勢力が他組織に移る基盤の脆い造りで、世界機構の権威たるものがあっけなく崩れ落ちるのは以前から指摘されるところでした。
昨年10月にはInternational Muaythai Sport Association(IMSA)なる団体を元・WPMF会長のサーマート・マルリム氏が設立した模様で、世界を牽引する組織として期待していいのか衰退するのか、将来を占う今年の活動を見ていきたいところです。
◆日本国内王座は進化するか
「タイトルは多いけれどタイトルマッチが少ない」と見られるのが国内各団体タイトルでしょう。団体多過ぎて各ランキングが埋まらないのも当然のことです。
空位王座は通常のランキング上位による王座決定戦がありますが、争奪トーナメント戦で盛り上げる手法も増えている感じがします。
チャンピオンになっても直ぐ返上が多かった過去に対し、現・Krushライト級チャンピオン、瓦田脩二(K-1ジム総本部チームペガサス)は昨年9月に王座獲得し、今年2月のK-1出場後の4月に初防衛戦を行なう予定で、「Krushライト級のベルトの価値をドンドン上げていきたい」と言い、ベルト返上の意思は全く無い様子。そんな基本姿勢を持つ律儀な選手もまだまだ存在するもので、プロモーター意向にもよりますが、タイトルの防衛戦を重ねて他団体へも活性化を促して欲しいところです。
キックボクシング誕生から満55周年。創生期の重鎮が鬼籍に入り、幅広い世代に跨る時代となりました。今年も若い力が台頭して来ることでしょう。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」