2022年は参院選が行われます。ご承知のとおり、参院選は政権選択の選挙ではありません。

しかし、筆者は、今回の参院選においては、「勢いをました政治勢力が政権与党である自民党への影響力を強める」大事な選挙である、と考えます。言い換えれば、岸田総理は今回の参院選で(自民党以外で)のびた勢力の政策を一定程度、取り入れて政権運営をする可能性が高いということです。

とくに、軸を打ち出しているのは「日本維新の会(以下、維新)」と「れいわ新選組(以下、れいわ)」はないでしょうか。

立憲民主党さん、日本共産党さん、市民連合さんについては、安倍政権および菅政権までなら、安倍政権暴走ストップ、広島ならくわえて河井批判という錦の御旗を求心力としておられました。ただ、安倍・菅退陣、そして河井案里さん・克行受刑者失脚で共通の旗を失い、連合(日本労働組合総連合会)さんと日本共産党さんの確執を軸に混迷しておられます。しっかりしていただきたいが、現に混迷しているのは事実です。正直、軸が見えてきません。先方から各種選挙の候補者への支援要請などいただけば、野党共闘の大義のため、筆者もそのつど対応はさせていただいていますが、もっと軸をはっきりさせていただかないと、わたし自身の支持者の方への説得も難しいと感じています。

◆世代間闘争を装った竹中主義 こきつかえない人は切り捨て・弾圧

日本維新の会の軸は、「世代間闘争」を装った新自由主義、いや、竹中主義といえるでしょう。最初は、旧民主党の基盤だった自治労批判でウケました。実際に、非正規公務員の就職氷河期世代が「正規公務員に天誅!を加える」という維新に喝采を送っておられました。大阪市交通局所属の非正規公務員の若者が、維新・橋下さんに媚びて労働組合・大交を陥れるための偽装工作をするという事件も、2012年には発生しています。

その後も、「シルバー民主主義を打倒」し、「高齢者向けサービスを削れば」大阪も日本もよくなる、という趣旨の主張をされてきました。そして、いっぽうで、高校の無償化などを実施して若手・子育て世代のウケをとっているのも事実です。

しかし、維新の産みの親といえるのは竹中平蔵さんです。大阪市役所はいまや、竹中平蔵さんが会長をつとめるパソナからの派遣社員が多くの仕事をしていることで有名です。

いまは、維新の支持者の多くは、大手企業勤務の上層のサラリーマン(旧同盟系の労働組合員とも重なる)が多いこともしられています。要は生産性至上主義で人間を測っている方が多いということです。生産性のない、高齢者は切り捨てる。一時期「維新」の公認候補だった長谷川豊さんなどは、人工透析患者も切り捨てる発言をされています。

若者のことも、優遇する「こき使う」対象としか見ていないわけです。実際には竹中平蔵さんに代表される年配の「えらい人」がこき使える若者のために高校は無償化するわけです。また、上級サラリーマンの溜飲を下げてもらうために、「小さな政府」による負担減を打ち出すわけです。

しかし、高齢者向け・障害者向けサービスサービスを削れば、いわゆるヤングケアラーの若者の介護の負担は増えます。また、教育無償化といっても、維新は教員給与カットとセットです。また、市長に意見した校長先生への弾圧とセットです。この結果、大阪で先生をめざす若者は、兵庫や京都や奈良や和歌山に流出しています。それでも、「若者をこきつかえれば」いいのでしょう。こきつかえる人はこきつかい、こきつかえない人は切り捨てたり弾圧したりするわけです。

◆自民党以上に自民党改憲案的社会へばく進

また、維新は自民党以上に大政翼賛会的な政治へ突き進んでいます。2021年12月27日、大阪読売と大阪府(吉村知事)は包括連携協定を結びました。まさに、維新とマスコミの一体化です。戦時中の日本と似たような状態を大阪限定で実現したのです。自民党でも裏での癒着はあっても、ここまで堂々とした翼賛政治はしません。自民党憲法草案のとくに緊急事態条項はまさに、大政翼賛会的な政治を再現するものですが、維新は改憲なしに大阪で完成へ向けてばく進しています。

◆「れいわ」の「ガツンと財政出動で生活安全保障」こそ、維新への対抗軸になりうる

れいわの政策は、まとめれば「ガツンと財政出動で生活安全保障」です。当面は、徹底した財政出動であなたの所得を引き上げ、あなたの負担をへらす。維新に対抗するにはこれしかない、と筆者は実感しています。なぜか?

たとえば、れいわ新選組は「公務員をふやす」「非正規公務員は正規に」を掲げています。これなら、「正規公務員を斬りまくる維新に一定程度共感されていた非正規」の方も、「自分も正規公務員になれるのであれば」と考え直していただける可能性が強いと感じます。筆者自身、連合・自治労組合員だった経験から、組合や旧民主党さんあたりがまずいのは、「現状維持イメージ」が強いために、非正規労働者のみなさまの共感を得られにくい点だと痛感していました。財政出動で「非正規を正規並に」待遇を引き上げることを堂々と筆者も訴えていきます。

また、れいわは教育無償化とセットで、学校の先生をきちんとした給料で確保すること、現場の創意工夫を生かす点も維新との大きい違いです。一方で、年配者に対しても「教育無償化は、祖父母、父母世代の老後不安の解消にもなる」という点を強調していきます。逆に高齢者向けサービス、障害者向けサービスも、ヤングケアラー含む若手の負担の軽減につながる、という点も強調していきたいものです。

憲法についても、れいわはコロナ対応には改憲はいらず、災害指定すればよい、とのスタンスです。災害から復旧・復興という位置づけになれば、きちんとした補償や生活再建策、自治体や医療・介護などの現場支援策への財政投入もできます。正直、安倍晋三さん主導の「アベノマスク」の失敗をみるかぎり、総理に権限を集中させる緊急事態条項よりは、現場が仕事をしやすいように支援する災害指定のほうが優れているでしょう。

◆「新自由主義先行実施」の広島だからこそ、ガツンと維新への対抗軸を打ち出したい

広島の野党(維新以外)はこの2年ほど、河井批判で求心力を保っていました。しかし、完全に賞味期限切れになり、衆院選2021、安佐南区県議補選では大敗しました。

広島の場合は、以前にもご紹介したとおり、大阪(維新)に先行して、90年代末から新自由主義を進めています。職員の採用を異常に抑制。市町村合併を進め、全国でも2番目に大きい市町村減少率となっています。保健所も全国平均は半減ですが、広島は3分の1に減っています。こうした中で西日本大水害2018では、公務員が少なすぎて、吸収合併された旧市町村地域を中心に復旧・復興が遅れました。

また、自治体の窮状につけこんで克行受刑者が、議員や首長にカネの受け取りを迫った部分もあります。もちろん、なにがあっても買収に応じてはダメですが、地方分権という名の自治体切り捨てをやめさせ、きちんと財源を保障していくことは大事です。

こうした広島の実情にあわせて、他の野党さんも新自由主義にガツンと財政出動で対抗する方向でがんばっていただきたいと思います。ただし、他人が変わるのを待つより、自分が行動です。広島では筆者自ら、先頭に立つ覚悟です。


◎[関連動画]2022対立軸は「維新」の間違った「世代間闘争」vs「れいわ」の「ガツンと財政出動で暮らしの立て直し」さとうしゅういち 介護福祉士・元県庁マン

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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