2022年、新日本キックボクシング協会の闘い始め、激闘にはなったが、勝次は先へ進めない苦難が続く。
重森陽太は珍しくやや攻められる展開を見せながら、蹴りの鋭さで圧倒の展開。
リカルド・ブラボもパンチ、飛び技で他団体チャンピオンに圧倒の勝利。
高橋亨汰は試合毎にアグレッシブな展開が増す成長を見せるTKO勝利。
主力メンバーに定着してきた瀬川琉は安定した試合運びで僅差ながら判定勝利。
◎MAGNUM.55 / 3月13日(日)後楽園ホール17:30~20:03
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会
◆第12試合 63.6kg契約3回戦
勝次(藤本/ 63.55kg)vs 般若HASHIMOTO(クロスポイント吉祥寺/ 63.15kg)
引分け0-0
主審:少白竜 / 副審:宮沢29-29. 仲29-29. 桜井29-29
勝次はWKBA世界スーパーライト級チャンピオンとしての苦戦が続く。般若は元・グラディエーター武士道キック・フェザー級チャンピオンの経歴を持つが、アグレッシブな試合運びは見応えある展開を見せる選手。
勝次は序盤、蹴りでややペースを掴むが、第2ラウンドには般若のパンチラッシュでロープ際からコーナーに追い詰められる。クリーンヒットは免れたが攻め続けられては印象が悪い。勝次はピンチを脱し打ち返し、飛びヒザ蹴りも見せるが強引さでタイミングが合わない。
第3ラウンド、勝ちたい意識が表れる両者が打って出る一進一退が続く。終盤に勝次のパンチヒットで般若がロープに詰まったところでラッシュをかける勝次。これがどういう印象を与えて採点に影響するか際どい中、おそらく多くの観戦者の予想が当たるように引分けに落ち着く。
ジャッジ三者が揃ったのは般若に与えた第2ラウンドだけだったが、採点の振り方も難しさが窺えた展開だった。
◆第11試合 62.5kg契約3回戦
重森陽太(伊原稲城/ 62.4kg)vs 大谷翔司(スクランブル渋谷/ 62.5kg)
勝者:重森陽太 / 判定2-0
主審:椎名利一 / 副審:少白竜29-29. 仲29-28. 桜井30-29
重森陽太はWKBA世界ライト級チャンピオンとして安定感ある試合を続ける。JKイノベーション・ライト級チャンピオンの大谷翔司もここ2連勝で勢いがある選手。
第1ラウンド、大谷翔司がローキック中心に攻める。蹴り返す重森陽太の蹴りが鋭く大谷の脇を赤く染める。
第2ラウンド、重森のヒザも含めて強い蹴りが優っていき、リズムを掴む。大谷はパンチ連打で出るとやや圧されてしまった重森だが、すぐの立て直しで劣勢には至らない。
第3ラウンド、重森の前蹴りが何度か大谷を吹っ飛ばすほどの勢いでボディーをヒット。ヒジ打ちもヒットさせた重森が僅差ながら判定勝利。
◆第10試合 72.0kg契約3回戦
日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(伊原/アルゼンチン/ 71.7kg)
vs
WBCムエタイ日本スーパーウェルター級チャンピオン.匡志YAMATO(大和/ 71.65kg)
勝者:リカルド・ブラボ / TKO 1R 1:26 / 主審:宮沢誠
開始間もなく、リカルド・ブラボの右ストレートでの匡志があっさりノックダウン。ここから全くのリカルドのペース。パンチやヒザ蹴りで匡志を追い、赤コーナー側に詰めてパンチでノックダウンを奪い、飛びヒザ蹴りで押し込んでからのパンチ連打で3ノックダウン目となって圧勝のリカルド・ブラボとなった。
◆第9試合 62.5kg契約3回戦
日本ライト級チャンピオン.高橋亨汰(伊原/ 62.45kg)
vs
NJKFスーパーフェザー級1位.HIRO YAMATO(大和/ 62.15kg)
勝者:高橋亨汰 / TKO 3R 0:40 / 主審:仲俊光
第1ラウンド、パンチから蹴りの勢いでHIROを圧倒した高橋。コーナーに詰めてのパンチ連打で倒すかに見えたが、HIROは凌いで脱出。
第2ラウンド、左ヒジ打ちでノックダウンを奪った高橋。更に飛び前蹴りでノックダウンを奪い、攻勢を続けるが仕留めるに至らず、HIROも険しい表情を見せながら抵抗を続ける。
第3ラウンドも諦めないHIROは蹴ってくるが、ヒジ打ち合わせた高橋。額を大きく切ったHIROはドクターの勧告を受け入れレフェリーストップとなった。
◆第8試合 58.0kg契約3回戦
瀬川琉(伊原稲城/ 57.85kg)vs 祐輝(OU-BU/ 57.5kg)
勝者:瀬川琉 / 判定3-0
主審:桜井一秀 / 副審:椎名29-28. 宮沢30-29. 仲30-29
瀬川は落ち着いた攻めで相手の打ち終わりへのローキックなどが上手い。やや相手を勢い付かせてしまうが、主導権を奪った展開で僅差ながら判定勝利を掴む。
◆第7試合 59.0kg契約3回戦
仁琉丸(富山ウルブズスクワット/ 58.35kg)vs 大木一真(ワイルドシーサー那覇/ 57.75kg)
勝者:大木一真 / TKO 1R 0:34 / 主審:少白竜
展開は早く、大木一真がロープ際でパンチヒットさせ、仁琉丸は脚をふら付かせながら立ち上がるもレフェリーがカウント中にストップして大木がTKO勝利。
◆第6試合 女子(ミネルヴァ)53.0kg契約3回戦(2分制)
アリス(伊原/ 52.5kg)vs NA☆NA(エス/ 52.9kg)
勝者:NA☆NA / 判定0-3 (27-30. 28-30. 28-30)
勢いが無いアリス。自分の距離になると蹴りは強く出るが、NANAは簡単に体勢を変えてパンチ蹴りで圧倒し、NANAが大差と言える判定勝利。
◆第5試合 83.0kg契約3回戦
竜矢(伊原稲城/ 82.9kg)vs 中川達彦(無所属/80.45kg)
勝者:竜矢 / TKO 3R 2:29 / 主審:宮沢誠
初回1分足らずで竜矢の右ハイキックで中川達彦がノックダウン。バランス崩しスタミナ消耗が激しい中川は苦しい体勢が続き、最終ラウンドもガードが空き気味の顔面にまたも竜矢の右ハイキックを貰って倒れこむと、ほぼノーカウントでレフェリーが止めるTKOとなった。
◆第4試合 フェザー級2回戦
木下竜輔(伊原/ 56.9kg)vs 颯也(新興ムエタイ/ 56.6kg)
勝者:木下竜輔 / TKO 1R 2:42 / カウント中のレフェリーストップ
◆第3試合 ウェルター級2回戦
大場一翔(伊原/ 66.35kg)vs 小林亜維二(新興ムエタイ/ 66.6kg)
負傷判定引分け0-0 (10-10. 10-10.10-10) / テクニカルデジション 1R 1:12
小林亜維二の故意ではない股間ローブローにより大場一翔が試合続行不可能
◆第2試合 アマチュア女子32.0kg契約2回戦(1R=90秒制)
西田永愛(伊原)vs 渡邊明莉(VALLELY KICK BOXING TEAM)
勝者:西田永愛 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)
◆第1試合 アマチュア女子49.0kg契約2回戦(2分制)
星野姫歌(レジェンド)vs 安黒珠璃(闘神塾)
勝者:安黒珠璃 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)
《取材戦記》
勝次が勝てないのはなぜか。今回はヒジ打ち禁止ルールだったことや、ここ暫くは3回戦制が影響しているかもしれません。いつも焦って前に行き過ぎてタイミングがズレ、もっと蹴り中心に組み立てれば自分の距離感も保てそうで、5回戦で戦えば様子見の展開が活きてくる気がします。
勝負は勝ちか負けか引分けの結果は残りますが、チャンピオンはその責任を負う立場として、野口修氏の遺産となるWKBAの世界チャンピオンとして日本人相手に互角の展開ではマズいでしょう。
重森陽太も意外に攻められたシーンがありましたが、いつもながら突き放す前蹴りに鋭さがありました。昨年暮れにシュートボクシングでジャーマンスープレックスで投げられたマイナスポイントで判定負けしているようですが、経歴にも心理的にも影響は無いでしょう。
伊原信一代表が元気に戻って来ました。昨年秋に軽い脳梗塞に罹り、10月のTITANS NEOS興行は欠席。だが当時の前日計量での病院から選手に贈るスピーカーフォンの声は以前と同じ響き。後の退院後もミット持ちへも復帰した様子で、勝次も蹴っていた様子です。
コロナの影響で外国人選手を招聘出来ない事情はありましたが、今後、主力メンバーのWKBA世界戦も計画している様子です。
新日本キックボクシング協会次回興行は5月15日(日)、後楽園ホールに於いて開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」