広島県呉市は広島県南部の沿岸部の中核市に指定されている中規模都市です。広島市から呉市まではバスでも電車でも約40分。人口は21万2597人です。その呉市は、いろいろな意味で「最も広島県らしい」街です。
◆軍事都市から重厚長大産業へ、しかし、海外派兵再び
第一に、明治時代から第二次世界大戦敗戦までは軍事都市として栄え、戦後、すなわち昭和の中期から後期は重厚長大産業で成功したという点です。広島市は日清戦争のときは、天皇や総理大臣、帝国議会が置かれた首都であり、原爆投下の時点では第二総軍の司令部がおかれ、陸軍の西日本の中枢でした。いっぽうで、呉市はその港としての条件をいかして、海軍最大の拠点となり、戦艦大和が出撃したことでも有名です。
戦後は旧軍港都市転換法を日本国憲法に規定された住民投票で可決。造船や鉄鋼、原発製造などの重厚長大を軸とした産業都市として栄えました。いっぽうで、海上自衛隊もおかれ、2001年のアフガンや2004年のイラクの戦争にも後方支援とはいえ派兵されています。広島市と広島市に包囲されている安芸郡海田町は陸上自衛隊があり、イラク戦争後方支援に派兵されました。
◆1975年の「成功体験」を卒業できぬうちに衰退
第二に、過去の成功体験からの卒業ないし転換ができないうちに人口の流出や既存産業の衰退で苦しんでいる点です。広島県は、1975年、一人あたりの県民所得が日本で第三位に躍進しました。ちょうど、重厚長大産業による日本の経済成長が頂点に達した直後であり、地元の球団・広島カープが山本浩二や衣笠祥雄らの活躍でセ・リーグ初優勝した年でもあります。一定年齢以上の県民にはこのときの「成功体験」が忘れられない傾向があるのも仕方がありません。
これは与党の支持者については、腐敗した議員を腐敗していると分かっていて投票し続けることにもつながります。現実に河井案里さんから最高金額をもらった県議(略式起訴され、辞職)は呉市の選出でした。
一方で、野党側にも原発製造ふくむ重厚長大産業労組の影響が強くあります。新しい経済をどう構想していくか? そういう力強い議論をどの既存の政党からも出てこないのも、過去になまじ成功体験があるからです。
また、保守だけでなく、いわゆる左派・リベラルの側にも、若手へのマウンティングの気風を根強く感じます。
しかし、そうこうするうちにも、2021年の広島県の人口転出超過は7159人と都道府県で最多となっています。とくに呉市は、2020年の国勢調査では5年前とくらべて13960人減少で中国地方の自治体ではワースト1です。呉駅前(写真)も2013年にそごうが閉店したあと、閑散としています。さらに、2021年には、日本製鉄(昔は日新製鋼、吸収合併された)の高炉閉鎖や原発製造企業の衰退、さらには高校の廃校問題などが追い打ちをかけています。
◆「地方分権」という名目の新自由主義の弊害
第三に、「地方分権」という名による新自由主義の弊害をこうむっている点です。総務省は、市町村合併をすすめ、そこに、国や都道府県の仕事を十分な財源や人の移譲もないまま丸投げしました。とくに、藤田雄山前知事(故人)は総務省のいいなりで市町村合併を推進。県内で86あった市町村を23市町に減らすとともに、県の仕事を市町に丸投げしました。
呉市も呉市・音戸町・倉橋町・蒲刈町・安浦町・豊浜町・豊町と7つの市町をひとつにまとめました。しかし、「合併により、島嶼部の旧町を中心に埋没し、かえって活力が低下した」(県内の自治体相手の事業もてがける会社経営者)のです。また、新型コロナ、そして、西日本大水害2018などへの対応にも支障をきたしています。とくに、吸収合併された地域を中心に事態は悪化しています。
こうした呉市ですが、他の広島県内同様、政治的に非常に保守的です。呉市を中心とする広島5区は2009年の民主党旋風時以外は自民党(宮沢派→岸田派=宏池会)議員の圧勝です。なお、2009年に当選した民主党議員は宮沢喜一元総理の秘書を務めていたという特殊事情がありました。
◆呉で初めてのれいわ新選組街頭宣伝 市民の意識の変化を実感
こんな呉市ですが、2022年参院選を前に、れいわ新選組チーム広島は4月5日(火)呉市において、初めての街頭宣伝を行いました。筆者が記憶する限りでは、2019年のれいわ新選組結成以降、広島市や福山市では山本太郎代表による大規模集会や街頭演説を行っていますし、東広島市と廿日市市では、衆院選2021で街宣車を回しています。しかし、呉市では初めてです。一方で、参院選再選挙2021はもちろん、それ以前も何度も筆者は個人としては街頭演説をしています。
今回は、朝の始業時間前に呉市役所前、そして9時30分からは呉駅前で街頭宣伝を行いました。市役所前では出勤してこられる職員にメンバーがれいわ新選組のチラシをお渡しし、筆者が演説するという形をとりました。
筆者は公務員をふやす、非正規は正規にしていく、公務員ボーナス引き下げには反対、地方に十分な財源を保障など、れいわ新選組の政策を紹介。「れいわ新選組こそ、市役所職員の皆様が安心して市民のために仕事をできるような政策であると自信をもってお薦めできる。」と断言。
また、重厚長大産業の衰退に対しては「食料安全保障や原発なきエネルギー安全保障、グリーンニューディール政策にれいわ新選組はガツンと投資をする。呉でいえば、重厚長大産業の跡地で食料生産やエネルギー生産をする方向も考えられる。」と提案。一方で、「県庁マンのころとくらべて介護の現場は仕事の割に給料がひくすぎる。介護や保育の給料10万up実現に公務員の皆様もご協力を!」「奨学金チャラ、教育費タダで若い人に元気を!」などとかつての仲間に力をこめて訴えました。
筆者は「元県庁マン」であり、職員の皆様と同じ労働組合で長年、役員もさせていただいています。筆者をご存じの職員も多く、チラシの受け取りも上々でした。実は、れいわ新選組のチラシの受け取りは役所の前では非常に良いのです。その傾向が呉市でもあてはまりました。
買い物客や通院のお年寄りが多い駅前では、消費税廃止やガソリン税ゼロ、国保料減免などの負担軽減策を訴えるとともに、食料安全保障にも力点をおきました。「ロシアやウクライナで蕎麦の半数以上を生産している状況だ。国内でつくれるようにしないと、お好み焼きも食べられなくなる。」と指摘。農業だけでなく、漁業や畜産もふくめた食料生産者へのコストの保障を訴えました。
◎参考動画 呉駅前での街頭演説の様子
https://www.facebook.com/satoh.shuichi/posts/10227473667486248
「さとうさんが演説しているのを見て立ち寄った。れいわ新選組のポスターを家に張りたい」と申し出られる女性。
「(あなたは)堂々と自分の考えを述べている。はじめて、サムライをみた。民主党がなにもしてくれなかったからまた世論の支持は自民党に戻ったが、自民党の暴走は困る。がんばってほしい。」という男性。
様々な激励をいただきました。2021年、高炉の閉鎖や原発製造企業の衰退、高校の廃校問題などで呉は大きく揺れました。そうした中で、呉市民や市役所職員の皆様の「地域の将来への危機感」を強く感じました。
今後とも皆様と対話をかさねながら、「財政出動であなたの暮らしを立て直す」短期の政策、そして、「食料安全保障や原発なきエネルギー安全保障に投資」し「重厚長大産業中心」から卒業するグリーンニューディール政策、もちろん、核兵器をなくし、外交で緊張緩和を進めていく筆者やれいわ新選組のビジョンをこの呉市でもガツンと訴えていく覚悟です。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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