◆あえて批判覚悟で山本太郎を批判する

まもなくやってくる今夏には、参議院選挙が控える。政党地図を眺めると、年のせいか出るのはため息ばかりだ。

さて、鹿砦社は自由な言論を保証する出版社である。これは間違いない。だから敢えて『紙の爆弾』や本コラムで、どちらかといえば評価されている、山本太郎氏率いる政党についての、わたしが抱く違和感と嫌悪感を批判覚悟で申し述べる。

本コラムで山本氏が率いる政党を旗揚げした直後に「な・に・が『れいわ』だ!『新選組』だ!どあほうが! 「維新」さえ下回る最低最悪な党名『れいわ新選組』を掲げた山本太郎議員への絶望どあほう!」(2019年4月16日)とその命名を激烈糾弾する文章を書いた。

その思いは今も寸分も変わらない。自公に国民民主党と維新がすり寄って、ほぼ「大政翼賛会」が完成しつつある今日、山本氏率いるあの党名をどうあっても、わたしは口にすることはでない。当たり前だろうが。国会に議席を持つ政党の中では最も「反動的」な名前なのだから。差別の元凶天皇制と倒幕の時代に暴れまわった暴力集団、新選組。どうしてこんな名前を選んだのか訳が分からない。わたしにとっては、最低最悪の党名である。

そして、どうもここに来て山本氏の独裁ぶりが目に付くようになってきた。一つのサインは山本氏自身が、衆議院議員を辞職して、またしても参議院東京選挙区から出馬することを表明した事実だ。

党勢拡大のためには比例区で得た議席を有効利用するために、辞職して次点候補の繰り上げを図る戦法は理解できなくはない。しかしながら、はっきり言えば山本氏以外に「目玉」のない政党にとって、東京でもう一勢い入れたいとの思惑が明らかなのである。


◎[参考動画]【会見LIVE】山本太郎 参院選出馬選挙区表明(2022年5月20日)

◆「国債は国の借金ではない」の虚構

さらに、わたしには昨今山本氏の主張の中心である「国債は国の借金ではない」、「積極財政を」の掛け声がまったく腑に落ちない、どころか「それは違う!」と重ねて追及したい。

25年以上デフレに陥っていた日本で「賃上げを伴った」2%インフレであれば景気回復の要因にはなりえたであろう。けれども、おそらく山本氏も予想していなかったであろう、小麦や原材料の国際的価格上昇と急激な円安によって、日本の物価上昇は2%をはるかに超えてしまった。それに対して大企業の賃上げが報じられているけれども、中小企業は原材料上昇を価格に転嫁できないことから、賃上げどころか倒産に近い状態に追い込まれているケースが少なくない。なによりも多くの国民は「好況感」など抱いておらず、物価だけ上がる「スタグフレーション」が既に家計を直撃しているのだ。

これは山本氏が主張していた「国債はいくら刷っても、通貨発行権があれば借金ではない」がそうではなかったことを示す現実だと理解すべきだ。時間軸に沿って山本氏を弁護すれば、山本氏が主張する以前から自民党政権は「赤字国債」を乱発していたのであり(公共事業によりやがて還流するODAのように)、その結果毎年の国家予算で30兆円以上を返済に回さなければならないところまで、この国の財政は追い込まれていたのだ。

たしかに、政権与党が理性をもって税制と予算編成を行えば、ここまでの「スタグフレーション」は回避できたはずだが、FRB(米国通貨準備委員会)がゼロ金利政策の見直し(利上げ)を宣言したのに、日銀は政策金利の引き上げを宣言できない。なぜか。理由は簡単だ。利上げすれば国債の利払いが増してしまい、予算が組めなくなる、それだけのことだ。

こういった事態はわたしのような経済の素人にも容易に予想できたにもかかわらず、山本氏率いる政党はなぜか「国債は借金ではない」の主張を引っ込める気配がない。まったく不合理である。くわえて「国債発行は国の借金ではない」論を展開するために、極右の論者とも手を握っていた事実は、猛省に値する。

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◆どうして水道橋博士なのか?

そしてちょっと驚いたのが、水道橋博士の擁立である。水道橋博士の人物像は知らないが、松井大阪市長に訴えられて「反スラップ訴訟」を公約に掲げると発信しているようである。「スラップ訴訟」はたしかに問題ではあるけれども、山本氏率いる政党の政策にこれまでその項目はあったであろうか。

選挙は政策だけではなく、「知名度」も重要な武器である。もともと芸能界出身の山本氏が水道橋博士を擁立するのも解らなくはない。けれども、山本氏が率いる政党の主張と「反スラップ訴訟」の接点はあまりにも希薄ではないか。生稲晃子を東京選挙区に擁立する自民党との違いはどこにある?


◎[参考動画]【街宣LIVE】東京・秋葉原駅(2022年5月29日)

◆本気で闘うのであれば本気の党名に変更せよ!

労組の名に値しない「連合」による「野党潰し」といっても過言ではない最近の狼藉に対して、自公・国民民主党・維新の実質「大政翼賛会体制」を揺るがすには、相当の衝撃が必要であることはわかる。だが、そうであるならば、山本代表は「野党中の野党」としてふさわしい党名をまずは採用すべきではないか。わたしも含めて彼が初当選時に応援した人間の半数以上は彼から離れている事実を山本氏は直視しなければならない。

元号や歴史的な暴力集団の名前を冠するのではなく、山本代表の発想であれば、いくらでも魅力的な党名が思いつくであろうが。それとも、やはり山本代表は政界の色に染まってしまい、そういった発想からはもう離れてしまったのか。


◎[参考動画]NHK日曜討論 山本太郎発言まとめ【2022/05/29】

◆初当選の支持者は半分去ってしまった、これでいいのか?

「原発を止めるために選挙に出た」と公言していた初心はどこに行ったのか。わたしは山本氏率いる政党についての論争では各方面から言いがかりに近い暴論を吹っかけてこられた。暴論も暴論。話にならなかった。だが、今日山本氏率いる政党のある意味成長ぶりと、「変節」を直視すれば、わたしの心配が杞憂であることを望むほかない。安田好弘弁護士・辻恵氏といった大物までが、あの破廉恥な党名を平気で発語している。こんな時代をわたしは、徹底的に嫌悪する。

ただし、橋下に直接楯突いて当時話題になった、大石あきこ議員には好感を持つし、彼女の活躍にも期待するところは大きい。その際、安心して呼ぶことのできる政党名に山本氏率いる政党は名前を変更するべきだ。原則的な「差別反対論者」にはあの政党名を投票用紙には書けない。この致命的なデメリットを誰か進言してほしいものだ。


◎[参考動画]【街宣LIVE】山本太郎と桜を見る会 熊本県・熊本!(2022年5月7日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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