5月21日にKO負けでS-1世界王座を逃がした山浦俊一は、戦いのスタイルを変え、多彩に攻めて勝利を掴み、再び世界挑戦を目指す。

波賀宙也も6月5日にIBFムエタイ世界王座を失ってからの再起、王座奪還へ向けた勝利。

嵐(キング)の物議を醸した騒動とは、計量失格ともう一つ。

真美が苦しい展開を制し、王座初防衛。

◎NJKF 2022.3rd / 9月25日(日)後楽園ホール17:30~21:04
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF

◆第12試合 59.0kg契約3回戦

山浦俊一(新興ムエタイ/ 58.95kg)vs一仁(真樹AICHI/ 58.9kg) 
勝者:山浦俊一 / 判定2-0
主審:竹村光一
副審:少白竜29-29. 多賀谷30-29. 中山30-29

山浦俊一はWBCムエタイ日本スーパーフェザー級チャンピオン
一仁はMA日本フェザー級チャンピオン、J-NETWORKフェザー級チャンピオンなどの経歴有り

山浦は試合前、主催者側インタビューで「今回から倒せる選手になりたいと思って、一気にスタイルをチェンジしました。自分の中ではファイトスタイルを変えて上手くいってると思います。」と語る。

1ラウンドに山浦は組み合ってからの崩しで、3回ほど一仁を引っくり返したが、「三日月蹴りをボディーに喰らってちょっと効いてしまった」という山浦は、第2ラウンドから圧力を掛けて出ていく。ボディーを狙われないようミドルキックを使い、一仁の積極的な出方に応じて多彩に攻め、隙を突いたパンチや蹴りを入れていく。

一仁も打ち合いに持ち込み、蹴りでも下がらぬ展開を見せて、山浦は幾らか被弾はするが、打ち負けない展開。ポイント的には僅差だが山浦俊一が積極的展開で順当な判定勝利を掴む。5月にS-1世界王座を逃したが、再度チャンスを狙って、S-1を含め、WBCムエタイやIBFムエタイなど、「挑めるなら全て狙っていきたい」と語った。

山浦俊一が戦うスタイルを変えて多彩に攻める中、重いハイキックを放つ

◆第11試合 スーパーバンタム級3回戦

波賀宙也(前・IBFムエタイ世界Jrフェザー級C/立川KBA/ 55.33kg)
      VS
片島聡志(元・WPMF世界スーパーフライ級C/Kick Life/ 55.3kg) 
勝者:波賀宙也 / 判定3-0
主審:宮本和俊
副審:竹村30-29. 多賀谷30-28. 中山29-28

波賀宙也は「何試合か挟んで来年もう一発IBFムエタイ世界再挑戦が実現するなら王座を奪って行ったペットーン・ギャッソンリットにリベンジしたい。」と言う。

片島聡志は8月21日のビンラー・ストライフ(タイ)戦で判定負け。そこから1ヶ月あまりで出場。「自分は完全なムエタイスタイルではないですが、こちらの方が伸び伸びできるのでムエタイスタイルで臨みたいです。前回の試合で自分のスタイルに迷ってるなというところがあったので、今回は振り切って原点に戻ろうと思います。」と言う。

2019年12月に獲得したWPMF世界スーパーフライ級王座は翌年、石井一成に奪われたが、片島も再び世界を狙う立場でもある。

波賀宙也は左ミドルキックやハイキックでリズムを掴んで蹴り中心に前進。片島聡志も波賀を下がらせる場面もありながら攻勢を維持出来ず。両者、好戦的ムエタイを意識した攻防が続き、波賀の攻勢がやや目立った順当な判定勝利。

波賀宙也も片島聡志も元・世界の称号を持つ者同士。負けられない戦いの両者

片島聡志と波賀宙也、試合終了時の取り敢えずは勝利確信のポーズ

◆第10試合 当初「51.0kg契約3回戦」の変更カード

NJKFフライ級2位.嵐(キング/ 53.1→53.0kg/2.0kgオーバー)
      VS
コンバンノー・エスジム(タイ/54.9kg)
勝者:嵐 / KO 2R 2:14
主審:少白竜

嵐と対戦予定だった老沼隆斗(STRUGGLE)は、前日計量を51.0kgで1回でパスも、嵐は2キロオーバーでの計量失格。条件を付ける協議はされるも、嵐はここから更に明日に向けての減量は無理と判断し試合は中止。しかしその嵐が中止決定後にタイのコンバンノー選手と試合が発表された。

嵐は前日の脱水状態でフラフラの状態から立ち直ったフットワーク軽い動きを見せ、パンチと蹴りを多彩に繰り出し、タイミングを見計らって右ストレートでノックダウンを奪った後、すぐのタオル投入によるノックアウト勝利。

◆第9試合 女子キック(ミネルヴァ)ライトフライ級タイトルマッチ 3回戦

チャンピオン.真美(Team lmmortaL/48.95kg)
      VS
同級1位.佐藤”魔王”応紀(PCK連闘会/48.55kg)
勝者:真美 / 判定2-0
主審:主審:中山宏美
副審:竹村29-29. 少白竜29-28. 宮本29-28

好戦的に打ち合う両者。真美は調子が上がらなかったか、打ち合ってもパワーの無い展開もヒザ蹴りと終盤の打ち合いで優った勢いで辛うじて判定勝利で初防衛。

終盤にようやく猛攻掛けた真美。際どくも、ここで勝利を導いた

「情けない試合をしてしまった」と反省を述べる真美。まずは初防衛に成功

◆第8試合 54.0kg契約3回戦

NJKFバンタム級チャンピオン.志賀将大(エス/ 53.7kg)
      VS
同級3位.誓(ZERO/ 54.0kg)
引分け 三者三様
主審:多賀谷敏朗
副審:中山28-30. 少白竜30-29. 宮本29-29

首相撲からの崩しは誓が優勢な流れ。蹴り合いの攻防は互角ながら誓の方が落ち着いた表情。志賀は将大はやや圧されてロープ際に下がるシーンも見られる誓の圧力があった。志賀もチャンピンとして意地でも下がらず蹴って出た展開もあって引分け。誓はバンタム級での王座奪取へ前進と言える内容。

前フライ級チャンピオンと現・バンタム級チャンピオンの戦いは互角に

◆第7試合 女子キック(ミネルヴァ)52.17kg契約3回戦(2分制)

NA☆NA(エス/ 52.95→52.85kg/680gオーバー)協議による減点1、グローブハンデ有
      VS
AYA(BLA-FREY/ 51.4kg)
勝者:NANA / 判定3-0
主審:竹村光一
副審:多賀谷29-28. 少白竜29-27. 中山29-28

NANAはミネルヴァ・スーパーフライ級チャンピオン(6月5日獲得)
AYAは同級6位

NANAはウェイトオーバーだったが、ハンディーを付け試合は成立。ウェイト差が影響したかは厳密には分からないが、パワーとテクニックで圧し切る展開で大差判定勝利も、申し訳なさが過ったか、涙を流す勝者コール。

AYAとNANAの打ち合い。攻勢を維持したのはウェイトオーバーのNANA

◆第6試合 スーパーライト級3回戦

吉田凛汰朗(VERTEX/ 63.5kg)vs宗方888(キング/ 63.5kg)
勝者:吉田凛太朗 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)

前半は吉田凛太朗がパンチの攻勢で圧倒しながらも宗方のしぶとさで倒すに至らず。

吉田凛太朗が宗方を連打で攻めるも攻めきれず

◆第5試合 58.25kg契約3回戦

龍旺(Bombo Freely/ 57.9kg)vs木下竜輔(伊原/ 58.15kg)
勝者:龍旺 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)

龍旺が徐々にローキックで木下竜輔の脚にダメージを与え、木下の強打、右ストレートは空振りし逆転成らず、龍旺が判定勝利。

新日本キックから乗り込んだ木下竜輔にローキックで圧倒した龍旺

◆第4試合 59.0kg契約3回戦

コウキ・バーテックス(VERTEX/ 58.95kg)vs細川裕人(VALLELY/ 58.95kg)
勝者:コウキ・バーテックス / 判定3-0 (30-29. 30-29. 30-28)

◆第3試合 スーパーフェザー級3回戦

史門(東京町田金子/ 58.96kg)vs匠(キング/ 58.45kg)
勝者:史門 / 判定3-0 (29-28. 29-27. 29-28)

◆第2試合 フライ級3回戦

悠(VALLELY/ 50.7kg)vs愁斗(Bombo Freely/ 50.6kg) 
引分け 三者三様 (29-30. 29-29. 29-28)

◆第1試合 アマチュア50.0kg契約2回戦(90秒制)当日計量

堀田優月(闘神塾)vs鈴木咲耶(さくら格闘技クラブ)
引分け 0-1 (19-19. 19-20. 19-19)

「次はもっと完封出来るように頑張ります」マイクで語る山浦俊一

《取材戦記》

メインイベントに進むにつれ閑散としていく場内。応援団中心の観衆の表れ。それでも山浦俊一と波賀宙也は世界に向け存在感をアピール。

一仁は愛知県から出場。今回は新幹線が遅れたり不便もあったが、地方でもタイ人トレーナーが常在する真樹ジムAICHIで経験を積んでいる。地方のジムが強くなっている一つである。

片島聡志はWPMF世界スーパーフライ級王座獲得した経験もある50戦を超えるベテラン域に達した。いろいろな戦い方を経験も、ムエタイスタイルが性に合っている様子で、「スロースターターなので5回戦制も戦い易い」と言う。好戦的ファイトは今後もNJKFで観たい選手である。

嵐の2.0kgオーバーは、身体の成長でフライ級を維持出来ないほど苦しい減量だったという。6月5日に吏亜夢(ZERO)にノックダウン奪って判定勝利してNJKFフライ級王座挑戦権を獲得している嵐は、11月13日にチャンピオン優心(京都野口)に挑戦予定だが、開催は難しいところだろう。

今回の前日午前11時の計量で、53.1kgの目盛りを指した後、2時間の猶予内で契約ウェイトの51.0kgを目指し、ミット打ちと蹴りを続けていた。減量によるフラフラで軽く打つ程度だが、汗をかく為、延々続いていた。まずここに来て2kgは簡単に落ちるものではないと想定出来たが、やはり100グラムしか落ちず、連盟役員と両陣営で中止回避の為の協議が成され、明日の午前10時に再計量の決定。契約の51.0kgまで落とすか、現状の53.0kgを超えないことの条件があったが、この時間から更に飲食できない状態が続くこと自体無理があっただろう。無理せず試合は中止と決定。ここまでは止むを得ない状況であった。

ところが驚いたのが、計量失格した嵐がタイのコンバンノーと試合することが発表されたこと。興行側の苦しい事情あってのことだが、第三者から見れば不可解な決定と揶揄されている。エスジムのトレーナー、コンバンノーは依頼を受けて調整無しでも、ピンチヒッターとしての役割を果たした出場だった。

今回の件、参考にプロボクシング(JBCルール)から倣えば有り得ない事態が多過ぎるが、プロモーター主体の団体では、興行ありきの決定になってしまうのが問題点多きキックボクシング界なのである。

NJKF本興行、2022.4thは11月13日(日)、後楽園ホールで開催されます。DUELは10月16日(日)、GEN SPORTS PALACE。NJKF 2022 west 5th拳之会興行は10月30日(日)、岡山市岡山コンベンションセンターで開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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