重森陽太は前回7月のヒジ打ちによるTKO負けからの再起と共に、ムエタイ路線を目指した5回戦での泥臭い試合で勝つ。

高橋亨汰は攻めの多彩さで圧勝。NJKFから乗り込んできた吉田凛汰朗に格の差を見せ付けるTKO勝利。重森に続く主力メンバーとして存在感を示した。

新日本キックに於いて、久々のタイトルマッチは瀬戸口勝也の初防衛戦。剛腕で初挑戦の瀬川琉を沈める。

前・日本ミドル級チャンピオンの斗吾がエキシビジョンマッチと引退セレモニー。“有蹴の美”を飾る。

期待の木下竜輔はムエタイのヒジ打ちに散る試練の敗戦。

組み合ってからの重森陽太のヒザ蹴りがヒット

◎TITANS NEOS.31 / 10月23日(日)後楽園ホール17:43~21:07
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第11試合 62.5kg契約 5回戦

重森陽太(伊原稲城/ 62.05kg)
      vs
キヨソンセン・フライスカイジム(タイ/ 62.35kg)
勝者:重森陽太 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:椎名49-48. 宮沢50-48. 仲50-48

※重森陽太はWKBA世界ライト級チャンピオン
※キヨソンセンはWMCインターコンチネンタル・スーパーフェザー級チャンピオン。
過去、日本では梅野源治と1勝1敗。健太に判定勝利。

重森陽太はローキック中心の様子見からミドルキックへ、やや増して距離を計るけん制。静かな流れが続く中、距離を詰めて来たキヨソンセンに前蹴りで突き放しが効果的にヒット。パンチもヒットし、キヨソンセンの右目下頬骨辺りが腫れだす。後半は組み負けない攻防を続け、首相撲からの崩しなどジワジワしつこい圧力で自分の流れを保った重森。

第5ラウンドの残り20秒ほどはムエタイでは有りがちな、打ち合わず流しに入る、あまり好ましくない終わり際ではあったが、泥臭い試合をすると言った重森の拘りは貫いた試合だった。

重森陽太の鋭い前蹴りが何度もキヨソンセンを突き放した

重森陽太が呼び掛け、この日集められる範疇の主力メンバーが揃った

◆第10試合 62.5kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.髙橋亨汰(伊原/ 62.4kg)
      vs
NJKFスーパーライト級2位.吉田凛汰朗(VERTEX/ 62.2kg)
勝者:高橋亨汰 / TKO 3R 2:02
主審:桜井一秀

高橋亨汰の左ストレートが効果的に圧力掛けた流れ。吉田凛汰朗は警戒しつつ打ち返して一進一退的流れを保つも、先を読む戦術に長けていた高橋はパンチと蹴りのコンビネーションが優った。第3ラウンドにはカウンターの左ヒジ打ちをアゴにヒットでノックダウンを奪い、吉田は立ち上がれず、カウント中のレフェリーストップとなった。

フェイントから高橋亨汰の左ハイキックが吉田凛汰朗にヒット

左ヒジ打ち直撃から吉田凛汰朗が崩れ落ちる

◆第9試合 日本フェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 56.8kg)
      vs
挑戦者同級1位瀬川琉(伊原/ 57.1kg)
勝者:瀬戸口勝也 / TKO 2R 1:38
主審:椎名利一

序盤は瀬川琉の先手打つパンチと蹴り。瀬戸口勝也は強打を温存して様子見。徐々にタイミングを見極め強打を振るい出す瀬戸口。

第2ラウンドも瀬川が先手を打って蹴りで出るが、瀬戸口が瀬川の動きを読むと強打で追って、ロープ際でボディーから左右フックを振るう連打で瀬川は凌ぎ切れず、脆くもノックダウンを喫し足下おぼづかず、カウント中のレフェリーストップとなった。瀬戸口勝也は初防衛に成功。

様子見から瀬戸口勝也が次第に距離を詰めていく

◆斗吾引退エキシビションマッチ2回戦(2分制)

斗吾(前・日本ミドル級チャンピオン/伊原)
EX
緑川創(前・WKBA世界スーパーウェルター級チャンピオン/RIKIX)

斗吾はかつて戦った緑川創とエキシビジョンマッチ。緑川のパンチ攻勢に立つ流れを受け止めながら斗吾は踏ん張りを見せた。5年ほど前に左膝の半月板損傷と前十字靭帯を切る怪我が影響してから復帰したものの、完全な回復には至らない為の決断の様子。

引退セレモニーで挨拶を述べた後、テンカウントゴングに送られリングを去った。

エキシビジョンマッチで充実の打ち合い蹴り合いを闘った斗吾

斗吾が会長や選手仲間への感謝と共に、「オカン、妻、有難う!」はインパクトがあった

◆第8試合 58.0kg契約3回戦

木下竜輔(伊原/ 57.7kg)vs ラット・シットムアンチャイ(タイ/ 57.45kg)
勝者:ラット・シットムアンチャイ / TKO 2R 2:30
主審:仲俊光

木下竜輔は新鋭らしさが出た粗削りながら積極的攻勢。しかしラットはベテランムエタイ選手。返しの技が際立ち、狙った右ヒジ打ちを振り下ろすと、鮮やか一発ヒットで木下竜輔の額をカット、ドクターチェックドの勧告を受入れ、レフェリーストップとなった。

決定打ではないがラットの狙ったヒジ打ちが木下竜輔を襲う、最後もこんな形

◆第7試合 58.5kg契約3回戦

ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 58.45kg)vs 仁琉丸(富山ウルブズスクワッド/ 57.95kg)
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:仲30-28. 桜井30-28. 少白竜30-28

第1ラウンド終盤に右ハイキックでノックダウンを奪ったジョニー。仁琉丸はラウンド終了ゴングに救われ、その後持ち直したが、巻き返しには至らない展開で判定に縺れ込んだ。

◆第6試合 スーパーフライ級3回戦

NJKFバンタム級6位.吏亜夢(ZERO/ 52.1kg)
       vs
NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ/ 51.7kg)
勝者:吏亜夢 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:宮沢30-28. 仲30-27. 少白竜30-28

NJKF枠が設けられたカード。吏亜夢が徐々に手数と蹴りの的確差が優り勝利を導いた。

◆第5試合 スーパーライト級2回戦

勇生(富山ウルブズスクワッド/ 62.45kg)vs 梅沢遼太郎(白山/ 62.75kg)
引分け 0-0 (19-19. 19-19. 19-19)

◆第4試合 63.5kg契約3回戦

山田青空(GOD SIDE/ 63.55→63.5kg)vs yusei(グレイシーバッハ姫路/ 62.35kg)
勝者:山田青空 / KO 2R 2:53 / 3ノックダウン

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)52.5kg契約3回戦(2分制)

YURIKO SHOBUKAI(尚武会/ 52.3kg)vs MEGUMI KICK SPARK(KICK SPARK/ 52.15kg)
勝者:YURIKO SHOBUKAI / 判定3-0 (29-28. 29-28. 29-28)

◆第2試合 アマチュア女子34.0Kg契約2回戦(90秒制)

西田永愛(伊原/ 33.6kg)vs 野中あいら(HIDE/ 33.5kg)
勝者:西田永愛 / 判定3-0 (20-19. 20-18. 20-19)

◆第1試合 アマチュア43.0kg契約2回戦(90秒制)

西田蓮斗(伊原/ 42.45kg)vs 山下夢歩(LEGEND/ 42.4kg)
勝者:山下夢歩 / 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

瀬戸口勝也の勝負に出た右ストレートが瀬川琉のアゴから顔面を突き上げる

《取材戦記》

重森陽太が勝利のリング上で語ったのは「皆さんが求めるようなノックアウトする勝ち方は出来なかったですけど、前回の負けから考えて、自分らしく戦う試合をしようと思いました。僕はこんな泥臭い試合をします。それで皆さんが感動や次の日を頑張れるといった励みに繋がればと思って一生懸命試合しますので応援お願いします!」と原点に返った戦い方をアピール。

控室では「重森は5回戦の選手です。来年はラジャダムナン王座を視野に突き進みます。その為に今回、5回戦をお願いしました。」と熱っぽく語った。

毎度テーマの無いノンタイトル戦では、何に向かって進んでいるのか分からない試合が多いが、今回は明確にラジャダムナン王座を視野に、直々にはタイでの遠征試合も計画していると応えた。

今年5月にBBTV(タイ7ch)チャンピオンと3回戦での引分け。7月に真吾YAMATOとヒジ打ちの積極的打ち合いで敗れる不覚はあったが、今回、日本で実績あるキヨソンセンに5回戦での戦略勝ちしたことで調子を上向きに戻した。

重森陽太は現在、新日本キックボクシング協会のエース格となって、ファンは今後の進路に興味が湧くものでしょう。泥臭い試合をすると言う発言は、元々のヒジ打ち有り首相撲有り5回戦の長丁場での総合力が試される原点に戻ると言う意味があります。

重森陽太が「このメンバーで引き続き新日本キックを盛り上げていきます!」と宣言し、記念撮影に収まった斗吾を含む選手達。ここから進撃蹴人の逆襲というテーマが始まります。

来年の新日本キックボクシング協会興行予定は、2月19日(日)、4月23日(日)、7月9日(日)、10月15日(日)にTITANS NEOS、またはMAGNUMが予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」