筆者は、広島1区の介護施設(本稿では以下弊社とします)と、広島4区(安芸郡)の介護施設で介護福祉士として働いています。
◆これまでのクラスターも「野戦病院」状態だったが
ちなみに、これまでたびたびご紹介した外国人労働者の流出が起きているのは広島4区の介護施設です。(※関連記事)
こちらの4区の施設でもクラスターは2022年9月に発生しています。筆者は、クラスター発生に伴い、欠勤者が出たために、夜勤のピンチヒッターに入りました。
台風が九州から中国地方を襲った日にも、電車が止まっているため、暴風雨のなか、自転車で駆け付けたのを記憶しています。そうしないと、施設が回らないから、と思ってかけつけました。このときは、全身がずぶぬれになり全部着替えたのを覚えています。
夜勤の時は、台風に伴う熱帯性の暑くて湿った空気の中、防護服着用で一晩を過ごし、汗びっしょりになったのを覚えています。
さて、広島1区の弊社では、2022年2月と8月にクラスターが発生しました。8月のクラスターでは入居者様13人、職員8人の21人が感染確認。入居者様の4人に1人以上が感染し、うち二人が救急搬送。職員も不足が続き、広島弁でいえば「わやくちゃ」な状況でした。(※関連記事)
2月のクラスターは、弊社で初のクラスターで入居者様6人、職員2人が感染。このときも職員不足とのダブルパンチで、野戦病院のような状態になりました。(※関連記事)
いずれも、入居者様に、食事を個室で取っていただきました。そして、食堂に入居者様が来ておられるときは食事介助をまとめてすることができましたが、これらの時はそうはいきません。普段よりむしろ必要職員数が増えた上に、職員も倒れた状況でした。
◆弊社の前に救急車が!?
さて、筆者は、2022年11月9日に弊社に勤務した後、10日は、地元安佐南区での政治活動のあと、夜は11月11日は4区の介護施設で1日勤務。12日は、人手不足により、急遽4区の介護施設で半日勤務。13日は、広島市内で組合活動。14日は広島4区の介護施設で1日勤務。
こんなあわただしい日程をこなしていました。そして、15日。わたしは午前中、妻の通院に付き添い、午後から弊社に出勤しました。
すると、弊社の前に救急車が止まっています。いったい何事かと思って、同僚に聞きました。入居者様の一人が12日にコロナに感染が確認。その入居者様(仮にAさんとします)は、体温こそ38度とまだ「軽症」の部類ですが、酸素飽和濃度が低下するなど、いわゆる中等症に近い状態になっていたそうです。それに加えて、若手職員1名がコロナへの感染が確認されていました。
ただ、12日から、このAさんのケアに当たっていた同僚たちからすれば、Aさんの入院で、他の入居者への拡散の可能性が低下してほっとしていたのも事実です。過去2度の弊社クラスターでも、軽症で要介護度が低い方が、元気なゆえに、他の入居者様の部屋を訪れて、いわゆるスーパースプレッダーになってしまったからです。ただちに、以降の入浴は中止。Aさんの居るフロアの人は全員個室で食事となりました。
ところが、ほっとしたのも、つかの間です。今度は、翌16日、別のフロアの入居者Bさんの感染が発覚しました。
◆手術直前にコロナ発覚、弊社に「強制送還」
Bさんは、泌尿器系の重篤な病気があり、それが悪化していました。そこでこの日、同じ区内の大型病院で手術の予定でした。もちろん、この16日の朝、施設を出発した時点ではコロナ感染は確認されていません。
ところが、Bさんは、病院の「関所」で引っかかってしまいます。すなわち、手術前に、PCR検査を受け、15分から30分で結果が出る関所で、コロナ感染が確認されたのです。
その病院には、コロナ病棟ももちろんあります。このBさんは、重篤な泌尿器系の病気がありますから悪化が心配です。当然、コロナ病棟に回されるかと思いきや、なんと、弊社に「強制送還」されてきたのです。
Bさんの「強制送還」により、Bさんのフロアの入居者様は全員個室で食事をとっていただくことになりました。
またまた、「てんやわんや」の状況です。「そのまま入院してくれれば、弊社の負担は軽減されるのに。」と多くのスタッフが思ったのは間違いありません。
◆なぜ「強制送還」されたのか?
なぜ、コロナ病棟もある病院から、Bさんは「強制送還」されたのでしょうか? その一つの理由は、入院には依然として、保健所を介在させる必要があるからです。保健所に感染を登録して、そして、保健所の指示に従って入院などもする。そういう仕組みだからです。
もう一つの理由は、今は、以前の第一波やデルタ株の時と違い、オミクロン株やその変異株です。ワクチンの効果もあって重症化率は低い一方で、感染者の数はけた違いです。したがって、県としても、コロナそのものの症状がないBさんの場合は、入院の対象にならないわけです。
もちろん、医療機関の負担を減らすためにはやむを得ない措置というのは理解します。ただ、おかげで、また、弊社など介護施設内での感染が広がる危険が出てきます。
◆経済優先というなら、それによる介護現場の犠牲には補償を!
もうひとつは、岸田政権は、安倍政権、菅政権以上に、経済優先の姿勢です。もちろん、観光業、飲食業など、これ以上、緊急事態宣言などしたら、もたない、というのも理解します。他方で、それにより、介護現場には大きなしわ寄せがきているのです。
安倍政権はそれでも、介護現場に勤務する労働者に一人5万円の報償金を出しました。しかしながら、岸田政権では一度もそういうことはありません。介護労働者の給料3%アップはされましたが、物価上昇、あるいは他業界の賃上げ、インフレ手当の支給などの中で実質的には相殺されてしまっています。
地元の岸田総理には経済優先で行くなら、その分、負担が来る介護現場にも手厚く。せめて、これだけは、強くお願いするものです。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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