◆湯崎英彦さんへの元部下としての疑問 あなたも橋下さんと同じだったのか?
湯崎英彦・広島県知事、いえ、湯崎さん。
筆者は2009年12月の彼の就任から2011年1月末までという短い期間ですが、県庁マンとして湯崎さんに仕えました。あなたは、就任時に職員に対して知事ではなく「湯崎さん」と呼ぶよう命じておられたので、「湯崎さん」とお呼びします。
◆前知事がひどすぎる上司だったので期待してしまった
藤田雄山(故人)前知事があまりにも無残なかたちで知事を退任したこともあり、わたしは不覚にもあなたにかなり期待をしてしまいました。
それまで、広島県知事といえば、選挙のたびに「対策費」と称して県議にお金を配るのが常態化していました。それこそ、数百万円単位です。要は知事選の潜在的なライバルである県議にお金を配って対抗馬として立候補をしないような「対策」です。2005年の知事選挙でも藤田は共産党公認の対抗馬に圧勝。しかし、裏でお金を配っていたのがばれてしまいました。そして、当時の後援会事務局長も逮捕されました。このとき、『あの』河井案里さんが、藤田前知事に「男らしくおやめなさい」と叫んだのはいまとなっては広島県民以外でもご存知の方も多いかもしれません。しかし、知事も県議も誰も起訴されず、真相がわからぬまま藤田前知事は2009年夏、知事引退を表明したのです。
また、藤田前知事は有力自民党県議に屈して、明らかにムダと思われる「山を削って海を埋め立てる」などの大型事業を連発して大赤字を生み出しました。中央政府とちがって地方政府は通貨発行権がないので、そのつけを自民党県議の発案である職員給与カットで埋めました。まさに、藤田は職員にとり最悪の上司でした。
ですから、「知事というものへの期待値」が極端に下がった状態で湯崎さんを新知事として、わたしは県庁に迎えたのです。
◆筆者もあなたを応援した
藤田前知事が立候補を断念した2009年の知事選。事実上、候補者は5人いたものの、元通産官僚でIT企業経営者でもあった湯崎さんと「あの」河井案里さんの一騎打ちの構図になってきました。これなら、当然、湯崎さん、あなたを応援したくなるのは当たり前でした。わたしもそうしました。
湯崎英彦 44 無所属 新 395,638 52.31% 民主党、連合広島、自民党の一部県議支持
河井案里 36 無所属 新 195,623 25.87% 自民党の一部有力県議支持
村上昭二 62 日本共産党新 77,515 10.25%
川元康裕 42 無所属 新 57,846 7.65%
柴崎美智子 54 無所属 新 29,646 3.92%
以上のようにあなたは圧勝した。
もちろん、河井案里さんが当選しなかっただけましとはいえます。もし、彼女が当選していたら、「案里知事逮捕」で県政は大混乱していた危険性は十分あったでしょう。したがって、あのとき、わたしがあなたを応援した判断は誤りではなかったし、県民もまあ、妥当な判断をしたとおもいます。問題は「その後」です。
◆「知事」ではなく「湯崎さん」と呼べ、に感動
湯崎さん。あなたは就任にあたって、部下に対して「知事」ではなく、「湯崎さん」と呼べ、とおっしゃいました。わたしはいたく、感動しました。
大昔、優勝したときの横浜ベイスターズで権藤監督が自身を「権藤さん」と呼ばせたのを思い出しました。あのときは「監督」と呼んだら罰金1000円という制度でした。
◆鞆の浦の埋め立て架橋はうまく処理した
湯崎さん。あなたの知事としての功績のひとつは福山市の鞆の浦の埋め立て架橋問題でした。大昔に福山市の計画として持ち上がり、県の補助金も出ていました。そもそもは、道がせまい町中を通過する車をバイパスさせる目的でした。しかし、この計画が強行されれば、鞆の浦の景観は台無しになるところでした。鞆の浦は架橋推進派と反対派で真二つに割れてしまい深刻な状況でした。
湯崎さんは、両派の対話集会を開催。結果として、賛成派が求めていた交通渋滞の改善と、反対派が求めていた景観保全をみたす方式、すなわち「山側にトンネルを掘る」方式での解決に導きました。このころまでは、良かったとおもいます。
◆「育休」では橋下さんと大げんか
湯崎さん。あなたは、2010年には、配偶者の出産にともない、育児休暇を取られました。男性の育児休暇が義務化されたいまでは考えられないことですが、当時のあなたは大変な批判にさらされました。
「民間では休みもとれないのに。」などの理由です。
そして、橋下徹さんとは大げんかになりました。
しかし、湯崎さん。あなたは、男性もひとしく育児に従事するべき。そういう価値観の変革を訴えられました。それ自体はよかったとおもいます。橋下さんなどは、選挙の応援のために公務をしていない期間だって結構ありました。その橋下さんが湯崎さん、あなたを批判するのは笑止千万でしょう。
◆当選回数を重ねるにつれ変質
だが、湯崎さん。わたしが、河井案里さんと対決するために、2011年に県庁を退職して以降のあなたは、すっかり変わられた。当選回数を重ねるたびに、あなたは「橋下化」、すなわち新自由主義者としての側面を強めていかれましたね。湯崎さん。わたしは、あなたにがっかりです。とくに以下の点について苦言を呈したいのです。
〈1〉高速道路二葉山トンネル問題での木で鼻を括ったような対応
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〈2〉全国でも大甘の産廃行政
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〈3〉全国でも先例のない病院の統廃合
〈4〉県費でグローバル人材を育てる中高一貫校を設置も1000人以上の非正規教員を放置
〈5〉県費で県外から本社を移転する企業に補助金、中小企業予算は少なく
〈1〉と〈2〉については既に、過去の記事で取り上げています。〈3〉〈4〉〈5〉については、具体的には今後申し上げます。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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