モトヤスックはノックアウトを逃すも長丁場5回戦の上手い戦いを見せた。
ダイチが同門対決を1ラウンドKOで制する劇的な王座獲得。
藤原乃愛は高校卒業前の試合を判定勝利。春からは大学生。

◎CHALLENGER.7 / 1月29日(日)後楽園ホール17:30~21:30
主催:Yashio ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第10試合 70.0kg契約 5回戦

モトヤスック(岡本基康/治政館/ 70.0kg)
       VS
ネートパヤック・ピークマイレストラン(タイ/ 68.9kg)
勝者:モトヤスック / 判定3-0
主審:和田良覚      
副審:椎名49-44. 中山50-44. 松田50-44

モトヤスックは現・WMOインターナショナル・スーパーウェルター級チャンピオン。ネートパヤックは元・タイ国ムエスポーツ協会スーパーライト級チャンピオン。

初回、探りのミドルキック中心で牽制をしていくネートパヤックに対し、モトスヤックも応戦し、優る体格とパンチ蹴りの圧力で、徐々に表情に余裕が無くなっていくネートパヤック。

第4ラウンドにはモトスヤックは左右のパンチを中心に攻め、ネートパヤックはガードはしているが徐々にダメージが蓄積。更にモトスヤックのジワジワ攻めたローキックの効果が表れ、右ローキックでノックダウンを奪う。立ち上がったネートパヤックはサウスポーにスイッチしたり、距離を取って凌ぐ。

最終第5ラウンド、モトスヤックの右ローキックがネートパヤックの左足に決まる度に、ネートパヤックはスイッチし、モトスヤックはやや攻め倦むが、右ローキックを避ける為に身体を回転させたネートパヤックはダメージの蓄積があり、この試合2度目のノックダウンを喫してしまう。

モトヤスックのローキックに呻きながらこの後崩れ落ちるネートパヤック

攻勢を維持して追い詰める中のモトヤスックの右ミドルキックがヒット

モトスヤックは攻め続けるも、ネートパヤックのブロックなどのテクニックでノックアウトを拒まれてしまった展開で終了。

判定勝利したものの納得がいっていない表情をしていたモトスヤック。リングを下りた後、車椅子で来場していた長江国政会長のアドバイスを正座して真摯に聞いていた。

モトヤスックと対戦するネートパヤックにも叱咤激励する武田幸三プロモーター

◆第9試合 ジャパンキック協会ウェルター級王座決定戦 5回戦

2位.ダイチ(誠真/ 66.45kg)vs3位.正哉(誠真/ 66.5kg)
勝者:ダイチ / KO 1R 2:53
主審:少白竜

初回、両者ともにパンチを主体に主導権争いを仕掛ける。ラウンド中盤に正哉の左ストレートがダイチの顔を捉えてグラつかせたが、残り20秒を切った頃にダイチの左右のストレートがクリーンヒット。

右ストレートを顎に貰った正哉は立ち上がろうと意識は働くが身体は思うように動かずカウントアウト。ダイチが同・協会王座戴冠。

試合後、ダイチは「誠真ジムにとって2つ目のベルトですが、もっと強くなっていきたい!」と意気込みを語り、同門の正哉選手を称えていた。

ダイチのクロス気味右ストレートヒットでこの後、正哉が崩れ落ちる

ダイチとの打ち合いでは正哉にも左ストレートでチャンスがあった

◆第8試合 女子45.5kg契約3回戦

女子(ミネルヴァ)ピン級チャンピオン.藤原乃愛(ROCK ON/ 45.15kg)
      VS
タイ・イサーン地区女子ピン級チャンピオン.ペットルークオン・サーリージム(タイ/ 45.1kg)
勝者:藤原乃愛 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:少白竜 30-29. 中山30-28. 和田29-28

この試合がJK(女子高生)ファイターとして最後の試合となる藤原乃愛。試合前に「前回と比べられてしまいますが、KOは狙っていきます!」と意気込みを語っていた。

藤原乃愛は得意の蹴り、ペットルークオンはパンチを主体に主導権を争う展開。
第2ラウンド、藤原乃愛のハイキックからミドルキックのコンビネーションは会場を沸かせ、ペットルークオンの重いパンチも同様に沸かせた。中盤あたりに藤原乃愛の前蹴りがペットルークオンの顔面を捉えると優位に立つが、ペットルークオンも左ストレートを返すも藤原乃愛のガードで届かず。

第3ラウンド、藤原乃愛の左のパンチ、左前蹴り、左ミドルキックが要所要所で決まるが、ノックダウンまで至らず。ペットルークオンも藤原乃愛の攻撃に対して返していくも、自分のペースに持ち込めず試合終了。

両者ともに2005年生まれで今年18歳になる。ペットルークオンは、ムエタイで四つの王座獲得の肩書きを持ち、RISE興行で2戦こなしている選手。この日が日本での試合が3戦目で日本での試合に慣れてきた様子が窺えた。

試合後 藤原乃愛は、「相手は強かったです。元・ムエタイの四冠王者ですね。逃げるテクニックは上手かったですし、戦いに慣れている選手でした。ノックアウトが出来なかったのは悔しかったです。次に活かしてがんばります!」と応えた。

藤原乃愛がしなやかなハイキックと顔面前蹴りが幾度かヒット

◆第7試合 61.5kg契約3回戦

ジャパンキック協会ライト級2位.内田雅之(KICKBOX/ 61.15kg)
      VS
岩橋伸太郎(前・NJKFライト級C/エス/ 61.15kg)
勝者:内田雅之 / 判定2-0
主審:松田利彦
副審:椎名 29-29. 少白竜30-29. 和田30-28

前日の計量で岩橋伸太郎は「前回の試合でボコボコにされてしまったので、今回は自分のペースを掴み勝ちに行きます!」と語っていた。

初回、岩橋伸太郎は開始から仕掛けていくが、内田雅之はパンチ主体で岩橋の攻撃をかわしていく展開。

第2ラウンド、内田の重いストレートパンチが決まり始める。岩橋もミドルキックとストレートパンチのコンビネーションで攻めていくが、内田のテクニックで攻め倦む。

最終ラウンド、内田の右のバックハンドブローが決まり動きが止まる岩橋。2分過ぎに内田は岩橋のボディーに右ストレートを決めるがノックダウンは奪えず。岩橋も攻撃をしていくが、内田の的確なパンチで阻まれてしまった。僅差ながら内田の判定勝利。

試合後、内田雅之は「岩橋選手は、頑丈で倒すことは出来ませんでしたが良い選手でした。次回も頑張ります!」と笑顔でコメント。岩橋伸太郎は、「前回の反省を活かしオーソドックススタイルでいきましたが、勝てませんでした。内田選手は上手かったです!」と両選手共にお互いを称えていたコメントだった。

内田雅之の後ろ蹴り。格好良かったがヒットは浅かった

◆第6試合 フェザー級3回戦

ジャパンキック協会バンタム級2位.義由亜JSK(治政館/ 56.3kg)
      VS
HAYATO(CRAZY WOLF/ 56.85kg)
勝者:義由亜JSK / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-28. 少白竜30-27. 松田30-28

初回、蹴りの応酬の中、義由亜はHAYATOのミドルキックでグラつくも、すぐに立て直し首相撲を仕掛けて自分のペースを作っていく。第2ラウンド、義由亜はパンチの数を増やし始め、HAYATOは左目尻付近をカットするが大きな影響は無く、義由亜は首相撲からのヒザ蹴りの連打でHAYATOはやや劣勢に陥る。

第3ラウンド、義由亜の首相撲からのヒザ蹴りでHAYATOは動きが止まってしまい、余裕が無くなっていく。ラスト30秒頃、セコンドの指示が聞こえたHAYATOはローキックで攻めていくが試合終了。義由亜が判定勝利となった。

試合前は明るく関係者と会話をしていた義由亜は、試合後には「変な試合をしてすみませんでした!」と反省していた。

いきなり飛ばれるとカメラのフレーミングが間に合わない義由亜の飛びヒザ蹴り

◆第5試合 ライト級3回戦

ジャパンキック協会ライト級3位.興之介(治政館/ 61.1kg)vs村田将一(誠真/ 61.0kg)
勝者:村田将一 / TKO 3R 1:38
主審:和田良覚

開始早々から村田将一が飛び前蹴りで牽制。興之介のリズムを狂わす変則気味の展開を見せ、第2ラウンドには右ハイキックと左右のパンチ連打で2度のノックダウンを奪い、第3ラウンドには隙を突いた右ストレートで興之介を倒し、カウント中のレフェリーストップとなった。

タイミングを計った村田将一が右ストレートで興之介を倒す

◆第4試合 55.0kg契約3回戦

ジャパンキック協会バンタム級4位.樹(治政館/ 55.0kg)vs前田大尊(マイウェイ/ 54.85kg)
勝者:前田大尊 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-29)

◆第3試合 フライ級3回戦

ジャパンキック協会フライ級2位.西原茉生(治政館/ 50.6kg)
      VS
滑飛レオン(テツジム滑飛一家/ 50.65kg)
勝者:西原茉生 / 判定3-0 (29-28. 30-29. 29-28)

◆第2試合 フェザー級3回戦

隼也JSK(治政館/ 56.95kg)vs勇成(Formed/ 56.8kg)
勝者:勇成 / TKO 3R 1:01 / ヒジ打ちによる右目尻カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ

◆第1試合 バンタム級3回戦

小野拳大(KICK BOX/ 53.15kg)vs紫希士(Formed/ 53.3kg)
勝者:紫希士 / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

10年掛けて王座に到達したダイチ。まだ日本の頂点ではない真の挑戦はこれから

《取材戦記》

今回の興行はKO決着は少なかったものの、クリンチなどで試合が膠着することがなかったこと、適度なパフォーマンスで勝利を得た義由亜JSKや村田将一、キックのテクニックを披露し、会場を魅了した藤原乃愛と、“重量級ではパンチが決まるとすぐにKOに繋がる”という凄みをみせてくれたダイチによって、新年のスタートとしては成功した興行でした。

第1試合と第2試合には今年から加入したFormed ジムから出場した高校生の二人が勝利をしたことで幸先のスタートを飾り、前評判が高かったテツジムの滑飛レオンに判定勝利をした西原茉生や、前・NJKFライト級チャンピオン、岩橋伸太郎に勝利した内田雅之によって、他団体へのアピールにもなったでしょう。(第6~10試合のレポートと取材戦記は岩上哲明記者の記述を引用)

※       ※       ※    

WBCムエタイ日本ライト級チャンピオン、永澤サムエル聖光が2月2日(木)にタイ国ラジャダムナンスタジアムで試合出場しましたが、好戦的展開も判定負けを喫しました(堀田春樹)。

138LBS 5回戦 
永澤サムエル聖光(ビクトリー)vsクンスック・シップーヤイテープ

次回のジャパンキックボクシング協会興行は「KICK Insist.15」を3月19日(日)に新宿フェースで開催予定です。

◎堀田春樹の格闘群雄伝 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=88

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」