この記事は、毎日新聞・網干大津勝浦店の元販売店主が販売局員の個人口座に金を入金した事件の続報である。1月25日付けのデジタル鹿砦社通信で筆者は、『毎日新聞販売店、元店主が内部告発、「担当員の個人口座へ入金を命じられた」、総額420万円、エスカレートする優越的地位の濫用』と題する記事(以下「第1稿」と記す)を掲載した。

タイトルが示すように元販売店主が、「押し紙」を含む新聞の卸代金を販売局員の個人口座に入金するように命じられたとする内容である。元販売店主による内部告発だ。

「押し紙」の回収風景。本稿とは関係ありません。

これに対して毎日新聞東京本社の社長室は、筆者がコメントを求めたのに対して、「調査中であり、社内で適切に対応していきます」と回答した。

その後、筆者は不透明な入金を裏付ける別のデータを入手した。と、いうよりも筆者が、第1稿を公表した際に見落としていたデータがあったのだ。本稿では、新たに分かった店主による入金の年月日と入金額を補足しておこう。

金銭の振り込みを命じた毎日新聞社の人物は、第1稿で言及したのと同じ山田幸雄(仮名)担当員である。既に述べたように筆者は、1月5日に現在は毎日新聞・東京本社に在籍している山田担当に対して電話で、次の3点を確認した。

①電話の相手が、毎日新聞社販売局に所属している山田幸雄氏であること。

②山田氏が大阪本社に在籍した時代に、網干大津勝原店を担当した時期があること。

③網干大津勝浦店の元店主(内部告発者)に面識があること。

◆支払いの年月日と金額

新たに分かった金の振り込み年月日と金額は次の通りである。

※資料との整合性を優先して、日付けは例外的に元号で表記する。読者の混乱を避けるために西洋歴も()に記した。

・平成30年12月03日:900,000円(2018年)
・平成31年01月04日:800.000円(2019年)
・平成31年02月04日:800,000円(2019年)
・平成31年03月05日:1,453,090円(2019年)
(以上の裏付けは、西兵庫信用金庫の預金通帳等による)

・令和02年02月05日:895,382円(2020年)
(以上の裏付けは、西兵庫信用金庫の取扱票等による)

今回、明らかになった山田担当への入金額は、約485万円である。前回の記事で紹介した額の総計は、約420万円だった。現時点で判明しているだけでも、約900万円のグレーな資金が発生したことになる。

本稿で紹介した5件のケースでは、金が振り込まれた時期がいずれも月の初旬になっていることに着目してほしい。販売店が前月の新聞代金の集金を完了する時期と重なる。読者から店主が集金した購読料を、山田担当の個人口座に振り込んだ構図になる。

当時、元店主は深刻な「押し紙」で苦しんでおり、担当員から「自分の口座に金を振り込めば、便宜を図る」という意味のことを言われたと話している。つまり新聞代金の一部を個人口座に振り込めば、「押し紙」を含む新聞代金の支払いを免除すると言うニュアンスである。店主が不透明な金を振り込んだ動機と、店主が直面していた「押し紙」問題が整合している。

◆Twitter上で「担当員が納金立て替えて」

ネット上では、この問題に関するTwitterによる投稿も現れた。たとえば、「元店主」というアカウント名の次の投稿である。

面白いなぁ。
担当員が納金立て替えてて、その返済の可能性は? 最後の方、金額が2万とか5万とかしょぼくなってるのは返済に窮していく感じするけど。続報楽しみ。

この問題に関する「元店主」というアカウント名によるTwitter投稿

「裏金」の目的は、店主の説明によると、「押し紙」を軽減してもらうためであり、Twitterの「元店主」の推論は、「押し紙」代金を払うための担当員への借金の返済である。

一方、山田担当は、この件について「記憶にない」と話している。(1月5日の電話)。

しかし、元店主が西兵庫信用金庫の口座から、「やまだゆきお」名義の口座に多額の資金を振り込み続けた記録があり、金銭が移動したこと自体は公式の書面上では紛れない事実である。筆者は、さらに取材を進める。(つづく)

「押し紙」の回収風景。本稿とは関係ありません。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

月刊『紙の爆弾』2023年3月号