◆禁煙ファシズムと複合汚染
田所 違う角度で伺います。タバコについては昨年ニュージーランドで首相が、近い将来18歳以下の人に喫煙をさせないとの法律を作ると報道されました。たしかにタバコは健康への一定の害はあるでしょう。私は現在タバコを吸いませんがかつては喫煙者でした。私が大学生時代は男女含め6~7割の人間はタバコを吸っていた記憶があります。黒薮さんは喫煙歴はないですか。
黒薮 20代の初めの頃、合計3年くらい吸っていました。
田所 ですから継続的な喫煙者は減少しているにしても、タバコを吸う習慣は100年、200年ではなく、相当大昔から習慣としてあったですね。嗜好品としては世界的に酒と同様に嗜まれていた。今はタバコが「健康に悪いから止めましょう」と言われていますが、一方、肺がん罹患者の数が減っていません。タバコが直撃する臓器は肺だと言われています。喫煙者が減り副流煙もほとんどないのに肺がんが増えている。これを医学的に説明している証拠はあるのでしょうか。
黒薮 医学的な説明はないけども、一般的に考えればそれだけ化学物質による空気の複合汚染が進んだ結果、肺がんが増えた可能性が高いでしょう。
田所 タバコだけが原因であれば、肺がんの数は減るはずです。けれども喫煙者、受動喫煙も激減しているのに肺がん罹患者が増加するのは化学物質や環境ホルモン、または黒薮さんが追っていらっしゃる「電磁波」などタバコ以外の要因を求めないと合理性が保てない。
黒薮 ブラジルの大学が携帯電話の基地局でどれぐらいのガンが発生しているか、という統計を取ったことがあります。有名な疫学調査が、発表されたのは2011年です。病気の種類別の統計が出ていましたが、多かったのが肺がんと胃がんでした。化学物資による大気汚染に加え、電磁波などの要素が重なっていると考えられます。空気がおかしくなっているから肺にがんが増えたと言えるかもしれません。複合汚染の結果だと思います。
◆厚労省はなぜ「国民の二人に一人はガンに罹ります」などと予想できるのか?
田所 24時間呼吸をして肺は空気を取り入れているのですから、空気になにが含まれていて、どうして発病するかのメカニズムを明示してもらわないと「タバコが悪い」という単純なものではないでしょう。胃ガンにしても乳ガンも減っていない。ガンの総数が増えていてこれから先は「国民の二人に一人はガンに罹ります」と早くから厚労省が言っていました。どうしてそんな予想ができるのか不思議です。
黒薮 私はタバコを吸わないし、嫌いなんだけどもそれを前提にしても、タバコだけを取り締まってなにかが解決するのではなく、規制するのであれば化学物質による汚染や電磁波による被曝などを総合的に見直さないと、何の解決にもならないでしょう。
田所 サンプルとしては疫学統計が充分とれる肺がん患者の症例数は整っていると思いますから、肺がんが発病する本当のメカニズムを解明して欲しいです。薬はかなり開発されましたが、本当の発病メカニズムが解明されてないことの課題が、この問題と様々な社会問題との共通項です。(つづく)
◎遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫
〈01〉「スラップ訴訟」としての横浜副流煙事件裁判
〈02〉横浜副流煙事件裁判のその後
〈03〉禁煙ファシズムの危険性 ── 喫煙者が減少したことで肺がん罹患者は減ったのか?
〈04〉問題すり替えに過ぎない“SDGs”の欺瞞
〈05〉「押し紙」は新聞にとって致命的
▼黒薮哲哉(くろやぶ てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。