今回のメインイベンター大田拓真は、2019年11月30日にS-1ジャパン55kg級トーナメント覇者となり、2021年9月19日、波賀宙也に判定勝利して以来のNJKF本興行出場。コロナ禍の影響で中止に至ったタイトル挑戦もあり、他には「KNOCK OUT」や「Krush」などへの出場もあって、NJKF出場は久しぶりという感がありました。
◎NJKF 2023 1st / 2月26日(日)後楽園ホール17:30~20:35
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF
(戦績は主催者発表にこの日の結果を加えたものです。試合レポートは岩上哲明記者)
WBCムエタイの世界タイトルを狙いたい旨を明かした大田拓真
◆第10試合 フェザー級3回戦
大田拓真(新興ムエタイ/ 1999.6.21神奈川県出身/57.1kg)31戦22勝(5KO)7敗2分
VS
大翔(WSR・F荒川/1998.5.21鹿児島県出身/ 57.15kg)15戦9勝(5KO)6敗
勝者:大田拓真 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:竹村30-29. 少白竜30-28. 椎名30-28
大田拓真は前・WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン(第7代/防衛1度)
大翔は現WMC日本フェザー級チャンピオン(第5代)
初回、大田拓真のハイキックでスタート。大翔も切れ味があるミドルキックで反撃。基本に忠実な戦いをする二人だが、終盤に大田拓真のパンチが決まるもノックダウンまでは至らず。
第2ラウンド、両者とも切れがいい蹴りを繰り出すが単発で終わることが多く、大田拓真が大翔の攻撃に合わせる展開が続く。大田拓真の右ストレートが決まり、大翔はフラッシュダウンですぐに立ち上がり、ノックダウンポイントを取らせなかった。
最終第3ラウンド、大翔のヒジ打ちを大田拓真はクリンチでかわしていく。更に大田拓真はカウンターのヒザ蹴りとパンチで大翔の攻撃を防ぎ、主導権を譲らず終了。
大田拓真は試合後「あのフラッシュダウンはノックダウンかと思いましたが、勝てることが出来ましたのでよかったです」とコメント、「次回も頑張ります!」と笑顔で応えてくれました。
フラッシュダウンではあるが、大翔に尻餅をつかせた大田拓真の右ストレート
多発した大田拓真の右ミドルキックが大翔にヒット
◆第9試合 スーパーフェザー級3回戦
NJKFスーパーフェザー級5位.龍旺(Bombo Freely/2002.1.20茨城県出身/58.75kg)6戦5勝(2KO)1分
VS
同級7位.史門(東京町田金子/2000.9.1神奈川県出身/ 58.9kg)5戦4勝(2KO)1分
引分け 1-0
主審:中山宏美
副審:竹村28-28. 少白竜28-27. 多賀谷28-28
関係者の多くが注目しているカード。初回、史門は果敢に攻めていき、龍旺はガードをしながら隙を突いて攻める展開。龍旺の右ストレートで史門は一瞬グラつくも互角の展開が続く。
第2ラウンド中盤には、史門がいきなりの左ストレートカウンターがクリーンヒットし、龍旺は思わずノックダウンする。ダメージは少なく龍旺はすぐ立ち上がるが、焦りのせいかパンチが大振りがち。史門は冷静に対処し、龍旺は首相撲で切り崩し、ラスト3秒で史門に右ストレートを決めるがノックダウンを奪えず。
第3ラウンド、スタミナが切れ始めた史門に龍旺は首相撲を主体に攻撃をしていくが、史門はクリンチワークで龍旺のペースを握らせない。龍旺の攻勢が続くもノックダウンを奪えず判定は引分け。
試合後 龍旺は自身に対してだろうか悔しそうな表情。一方の史門も「悔しい」とのコメントをしていたが、上位相手だったことや次に繋がるという言葉を聞き、「次は勝ちます!」と応えました。
前進する龍旺に史門の左ストレートがカウンターでヒットし、ノックダウンを奪う
接近戦で龍旺がバックヒジ打ちを返すが惜しくも当たりは浅かった
攻勢続けた龍旺もノックダウンが響いて引分け
積極果敢だったTAKUYAに攻勢に転じた山浦俊一の右ミドルキック
◆第8試合 61.0kg契約3回戦
山浦俊一(新興ムエタイ/1995.10.5神奈川県出身/60.95kg)
31戦17勝(3KO)12敗2分
VS
NJKFライト級3位.TAKUYA(K-CRONY/1993.12.31茨城県出身/60.75kg)
12戦7勝4敗1分
勝者:山浦俊一 / 判定2-0
主審:椎名利一
副審:中山29-28. 少白竜29-28. 多賀谷29-29
山浦俊一は前・WBCムエタイ日本スーパーフェザー級チャンピオン(第8代/防衛1度)
試合前にTAKUYAは「山浦選手はキャリアは上ですが、気持ちで負けず、KO勝ちを狙います!」とコメント。
試合開始早々にTAKUYAはバリエーションある蹴りで仕掛ける。一方の山浦俊一はローキックで主導権を掴もうとする。手数が多いTAKUYAに対して山浦は巧みにブロックをしていく。
第2ラウンドも同様にローキックを続ける山浦とTAKUYAはアウトスタイルで攻撃を仕掛ける。TAKUYAはアグレッシブだが、山浦は有効打を打たせない。
最終第3ラウンド、山浦のローキックでダメージが出てきたTAKUYAだが、手数を減らさずパンチを中心に攻勢を仕掛ける。山浦の首相撲で揺さぶられるが、TAKUYAは耐え切り打ち合いに持ち込む。試合終了のゴングが鳴り、山浦はガックリと頭を落とし、TAKUYAは勝ちを確信して腕を挙げるが、山浦の僅差判定勝利。
試合後 TAKUYAは「負けてしまってすみません!」とコメント。王者相手に互角近い戦いをしていたことを伝えると、笑顔になり「次回は必ず勝ちますので応援に来てください!」と応えました。
TAKUYAの飛びヒザ蹴りを前蹴りで止める山浦俊一
第2ラウンドまでは採点が割れていた中、第3ラウンドを支配して辛勝の山浦俊一
◆第7試合 バンタム級3回戦
NJKFバンタム級3位.嵐(キング/2005.4.26東京都出身/53.1kg)9戦7勝(2KO)1敗1分
VS
NKBバンタム級5位.佐藤勇士(拳心館/1991.8.12新潟県出身/53.4kg)19戦6勝12敗1分
勝者:嵐 / TKO 1R 2:51 / カウント中のレフェリーストップ
主審:竹村光一
計量時にはNJKFとNKBの交流戦として、両選手ともに「団体の代表としてKO勝ちします」と語り、二冠王者の羅向選手が今回の興行の注目カードの一つとしてコメント。
両選手ともに小刻みで切れのいい蹴りとパンチの攻防で観客の目を引き始めていく中、嵐の飛びヒザ蹴りから左右のボディブローが佐藤勇士の右脇腹に決まる。たまらずノックダウンした佐藤勇士、立ち上がるも同じ個所に嵐の左右のパンチを貰い悶絶しながらノックダウン、そのままレフェリーストップで終了。
試合後、嵐は「左右のボディーへのパンチは偶然でしたが、飛びヒザ蹴りは狙っていました!」と笑顔で語り、「次もKOで勝ちます!」と力強いコメントをくれました。
嵐のボディーブローが佐藤勇士にヒットしてTKO勝利を導く
◆第6試合 80.0kg契約3回戦 (計量失格の佐野克海に減点1&グローブハンディー有)
NJKFスーパーウェルター級2位.佐野克海(拳之会/80.25kg/2001.4.11岡山県出身/80.25kg)
17戦9勝(4KO)6敗2分
VS
ジェット・ペットマニーイーグル(1996.10.4タイ国出身/80.0kg)
67戦53勝(14KO)11敗3分
勝者:ジェット・ペットマニーイーグル / TKO 3R 1:57
主審:少白竜
開始から佐野克海はパンチのラッシュでKOを狙いにいくが、ジェットは首相撲で勢いを止め、ヒザ蹴りとヒジ打ちを入れていく。
第2ラウンドには佐野はスタミナが切れ気味で、ジェットの首相撲に掴まると首相撲の対応がし切れず、ジェットのヒザ蹴りとヒジ攻撃を貰う回数が増えていく。
最終第3ラウンド、佐野は中盤にジェットの首相撲からのヒザ攻撃でノックダウンし、立ち上がるもコーナーに追い詰められ、更にヒザ蹴りを貰い、2度目のノックダウンを喫したところでレフェリーストップ。
◆第5試合 60.0kg契約3回戦
コウキ・バーテックスジム(VERTEX/1997.9.20栃木県出身/58.85kg)8戦4勝3敗1分
VS
Ryu(クローバー/1990.1.14茨城県出身/58.65kg)3戦2勝(1KO)1敗
勝者:コウキ・バーテックスジム / 判定3-0 (29-27. 29-27. 29-28)
コウキは第1ラウンドを通じて休まず攻撃をし、第2ラウンド開始早々に右ストレートでノックダウンを奪う。Ryuは3ラウンド目にようやく自分のペースを掴み、ラスト30秒にコウキの顔面にパンチをヒットさせるも巻き返しには至らず終了。
◆第4試合 スーパーバンタム級3回戦
島人租根(キング/1997.5.8沖縄県出身/55.0kg)4戦2勝2敗
VS
大岩竜世(KANALOA/2000.7.10岐阜県出身/55.0kg)3戦2勝1敗
勝者:大岩竜世 / 判定0-3 (28-29. 29-30. 28-29)
オーソドックスな島人租根に対抗して変則的な仕掛けとローキックで攻める大岩竜世。第3ラウンド、ローキックでダメージが大きくなった島人の動きが鈍り、大岩が優勢を維持して判定勝利。
◆第3試合 フライ級3回戦
愁斗(Bombo Freely/2001.11.24茨城県出身/50.75kg)4戦2勝2分
VS
甲斐喜羅(ビクトリー/2005.9.27埼玉県出身/50.45kg)3戦2勝1分
引分け 0-0 / 三者とも29-29
愁斗はパンチ、キックを多く繰り出し、甲斐喜羅は3戦目と思えないぐらい冷静な対応。アグレッシブで愁斗、技術で甲斐が優ったが、差は付き難い展開で試合終了。
◆第2試合 アマチュア ヘビー級2回戦(90秒制)
髙木明彦(湘南龍拳1969.2.18大阪府出身)vs福田久嗣(ZERO/1980.5.5栃木県出身)
勝者:福田久嗣 / 判定0-2 (19-20. 19-19. 19-20)
初回は高木明彦の攻勢が目立つも、第2ラウンドには福田久嗣が打ち合いに持ち込むと高木をノックダウン寸前まで追い込んだ。
◆第1試合 アマチュア 60.0kg契約2回戦(90秒制)
アニマルタケ王(D-BLAZE/1983.2.2大阪府出身/59.65kg)
VS
篠原まむし(矢場町BASE/1975.6.18岐阜県出身/57.5kg)
勝者:アニマルタケ王 / TKO 2R 0:47
アニマルタケ王はアマチュアらしからぬ攻勢で1ラウンド目にヒザ蹴りでノックダウンを奪い、第2ラウンド目では右ストレートでノックダウンを奪い、カウント中のレフェリーストップによるTKO勝ち。
《岩上哲明記者レポート》
二冠王者の羅向選手や元王者などから「第7試合(嵐vs佐藤勇史)や第9試合(龍旺vs史門)はKOが期待できるのでお勧めです!」という声が興行前日に挙がっていました。一番印象に残った嵐選手がダウンを奪った飛びヒザ蹴りからボディーへの左右ストレートは、往年の光本成三選手(目黒→G1)が当時の王者、越川豊選手を追い込んだ飛びヒザ蹴りからのヒザ蹴りを彷彿させるものでした。
セミファイナル龍旺vs史門戦とメインイベント大田拓真vs大翔戦は勝利への意地が感じられ、KOは無かったものの良い試合でした。今回はタイトル絡みは無かったものの、次回以降の興行で組まれると予想します。
また、リングを下りると礼儀正しく、今後応援したいと思わせる選手が増えているような印象があり、団体、各ジムで引き続きサポートをいろいろな角度で強化をしていくことが躍進への道ができるのではと思った興行でした。(岩上哲明)
《取材戦記》
年明け最初の興行として、NJKFは長らく毎年2月がスタートとなっていますが、“新春”とは言い難く、今年はタイトルマッチも無ければ年間表彰式も無い静けさがありました。
近年は地方興行やDUEL興行が充実し、13回に上る年間興行に今年のタイトルマッチ絡みの躍進に期待したいものです。(堀田春樹)
NJKF興行は3月26日(日)にGENスポーツパレスで女子中心の興行「GODDESS OF VICTORY」が16時30分より開催。
4月16日(日)は後楽園ホールで17時30分より本興行「NJKF 2023.2nd」が開催。
4月30日(日)には岡山コンベンションセンターにて13時30分より拳之会興行「NJKF 2023 west 2nd」が開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」
月刊『紙の爆弾』2023年4月号