2021年11月、大阪市平野区の老人ホームにおいて一人で宿直勤務していた女性介護労働者(当時68)が、入居者の当時72歳の男性被疑者に金槌により惨殺される事件が発生しました。被疑者はその後、飛び降り自死したとみられます。後日、被疑者死亡で書類送検されています。

老人ホームで殺されたヘルパーの母 「介護現場の安全を」遺族が提訴

この女性介護労働者の娘さんら遺族がこのほど、老人ホームを経営する会社を訴えました。

筆者も現役介護福祉士として「介護現場で働く職員の安全確保に目が向くきっかけになれば」という娘さんと思いを心から共有します。

◆介護職員へのセクハラや暴力は〈不問同然〉の実態

いささか旧聞に属しますが、介護職員へのご利用者・ご家族からのハラスメントについては、連合系の労働組合の日本介護クラフトユニオンさんが、アンケートを実施し、2018年4月に公表しています。

https://www.nccu.gr.jp/torikumi/detail.php?SELECT_ID=201806250004

筆者は全労連系労働組合の幹部を拝命しておりますが、このように、介護労働者へのハラスメントについてまず実態把握をしようとされているクラフトユニオンさんには心から敬意を表します。

上記のアンケート結果によると、調査に回答した2411名中、74%の介護労働者が利用者やご家族からハラスメントを受けた、と回答されています。ハラスメントを受けた方の内4割がセクハラ、94%がパワハラを受けた経験があるというものです。

また、セクハラについて上司や同僚に相談したけれども状況が変わらなかったという方が48.5%もおられます。

パワハラについても、上司や同僚に相談しても状況が変わらなかったという方が43.5%もおられます。

相談しても変わらない。そんな深刻な状況が垣間見えます。皆様もご承知と思いますが、介護職員が入居者に暴力や暴言をすれば、もちろん、虐待になります。

しかし、逆に入居者から介護職員への暴力やセクハラは事実上、不問に付されてきたといってもいいのではないでしょうか?

◆暴力・ハラスメントの野放しは介護現場の荒廃へ

上記のアンケートでもセクハラで19%、パワハラで22。8%の方が誰にも相談しなかったと答えておられ、「誰に相談しても解決しないから」「認知症の周辺症状だから」と回答しておられます。

特に年配女性労働者の中には【そういうものだ】と我慢してしまう方が多いように筆者の経験上、感じます。しかし、我慢している場合ではありません。

現状のように、安全確保もしてもらえず、給料アップも不十分では、外国人も含む若い人も介護の仕事につこうとしなくなる。このままでは現場は崩壊してしまいます。

なお、すぐ利用者にキレてしまう人ならそういう場所で平気で仕事をできるかもしれません。だが、その場合はお年寄りや障がい者に対する虐待が続発するでしょう。いや、すでにそうなっているような施設も見受けられ、恐ろしいものがあります。

◆無策の延長線上に今回の惨劇

そもそも、暴力やセクハラ傾向があるお年寄りも、たとえ認知症があったとしても無差別ではなく現実には、弱そうな相手を狙っていると感じることも多々あります。例えば露骨に入浴では女性に介助してもらわないと嫌だという男性入居者もおられます。そうした時に「そういうものだ」ということで、何も対策を講じないのはいかがなものでしょうか? その延長線上に今回の事件があったのではないでしょうか?

今回の事件では、
・3日前に他の入居者に暴行・傷害。
・その10日前には別の職員に椅子を投げる

また、最近の72歳は、例えばゲームばかりやっていて引きこもっているような若者と比べても遜色ないくらい腕力がまだある方も多いのです。そういう人が認知症の周辺症状としても、暴走すればシャレにならない。他の入居者の命にかかわる場合もあります。

事業者=会社側は十分に危険を予見できたはずだと思います。

だとすれば、例えば夜勤をワンオペではなく複数体制にするなどの対応が必要だったのではないでしょうか?労働者の安全、そして他の入居者の安全。両方を守る義務が会社にはあり、それを怠っていたと言っても仕方がない状況があるのです。

◆配置基準の緩和どころか増員こそ必要

この原稿を書いている間にも広島県内三原市では、(主として、精神障がい者の方向けの施設とみられますが)グループホームで71歳の男性入所者が他の入居者を殺害するという事件が発生してしまいました。

はっきり申し上げます。現実問題として、他の利用者や職員の安全に対する脅威になるお年寄りや障害者がおられることを前提に体制を整備すべきではないでしょうか?

もちろん、絶対にお年寄りや障がい者に対して虐待になってはいけません。虐待を避けつつ、安全を守るにはどうすべきか?

基本的には、お年寄り・障がい者に丁寧に対応するしかない。こちらがイライラすると、利用者の暴走も加速するからです。

厚生労働省も以下のようなマニュアルを三菱総研に委託して作成しています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html

ところが、マニュアルのように丁寧に対応するためには、今回の事件現場となった老人ホームのようないわゆるワンオペ夜勤では無理です。

筆者の地元・広島選出の岸田総理はDX(デジタルトランスフォーメーション)を口実に、介護職員の配置基準を減らそうとしています。しかし、そうなれば、丁寧な利用者への対応は難しくなります。あなたのやっていることは、まったくあるべき方向とあべこべです。

筆者が幹部を拝命している広島自治労連が結集する「全労連」では、以下の署名も呼びかけております。

こんな低賃金では働き続けられません! ケア労働者の大幅賃上げと職員配置基準の引き上げをしてください

https://chng.it/JmqqtWSQ5K

賃上げとともに

「2.職員配置基準を改善すること
1)「ワンオペ夜勤」の改善など、利用者の安心・安全の確保と労働法令が遵守できるだけの職員が正規職員で配置できるように、職員配置基準を抜本的に改善すること。」

を要求しています。ぜひともご協力をお願い申し上げます。

また、筆者自身も広島県議会内で介護現場出身の初の議員としてこの問題について全力で取り組んで参る覚悟です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

情報には国境がなく、知ろうとする意思さえあれば、名も知れぬ国の天気や画像や中継動画までをも確認することができる時代にわれわれは生きている。一見このような情報流通形態は、過去に比べて情報や出来事、事実や真実に近づきやすいような恩恵をもたらしているかの如き錯覚に陥る。

しかし、日本国内のテレビ、新聞を中心とする既成の報道・ジャーナリズムの退廃ぶりが極限に近いことはご承知の通りだ。また目的意識的な情報探索に乗り出さなければ、情報の宝庫であるはずのインターネットも従来の家電製品と同様の果実しかもたらさない。つまり「鋭敏な情報収集」を心掛けなければ、インターネットも役には立たないのである。

御存知の通り「デジタル鹿砦社通信」は日々身近な出来事から、エンターテインメントまで多様なテーマをお届けしている。このほどそこに新たな視点を加えることとした。鹿砦社の視点から「世界」を見通す試みだ。

欧米中心情報発信から抜け出して、多元的な価値観に立脚し世界を眺めると、いったい何が浮かび上がってくるのか?われわれの認識は歪んではいまいか? そのような問いに対する試みを展開しようと思う。(鹿砦社国際取材班)

ウルグアイのネットメディアCDP(ジャーナリズムのデジタル連合=coalicion digital por el periodismo)に4月12日、黒薮哲哉氏のインタビューが掲載された(聞き手はビクトル・ロドリゲス氏)。以下、同記事の日本語全訳を紹介する。

「日本では、主要メディアと政府との距離が非常に近い」(黒薮)。

南米ウルグアイのジャーナリスト、ビクトル・ロドリゲス氏

日本のメディアの実態、そこで働くマスコミ関係者の仕事、そして権力とメディアのプラットホームの関係は、地球の反対側ではほとんど知られていない。

しかし、黒薮哲哉のような独立系ジャーナリストは、数十年にわたり、日本の主要メディアの権威と外見の背後にある事実を調査し、報告することに多くの時間を費やしてきました。

複数の情報源によると、日本のジャーナリズムは誠実さと厳格さの長い伝統を持つ一方で、メディアの多様性と多元的な視点を欠き、政府によるさまざまな報道規制、デジタルメディアの影響力拡大、フェイクニュースといった問題に直面している。

日本国内での通信プロセスはどうなっているのか、ラテンアメリカからの情報はどの程度取り上げているのか、「日出ずる国」のメディア関係者の課題は何か? 黒薮哲哉氏にお話を伺った。

── 黒薮さん、この度はお話をお聞かせいただきありがとうございます。日本はアジアで最も報道の自由がある国のひとつとされており、ジャーナリストは調査報道の自由を持っています。この認識は事実でしょうか。また、21世紀の日本で、ジャーナリスト、伝統的なメディア、デジタルメディアの表現の自由の実態はどのようなものでしょうか。

黒薮哲哉氏

黒薮 日本は、憲法で表現の自由が完全に保障されている国です。しかし、矛盾したことに、私たち日本人がこの貴重な権利を享受するのが非常に難しい実態があります。この矛盾を説明するために、まず最初に、海外ではあまり知られていない、日本のマスコミに特有の問題について説明しましょう。

日本ではマスコミと政府の関係が、非常に近くなっています。たとえば、安倍晋三元首相と、650万部の発行部数を誇る読売新聞の渡邉恒夫主筆は、しばしばレストランで飲食しながら、政治や政策についての意見交換をしていました。

他の新聞社やテレビ局の幹部も同じことをやっていました。政府の方針について情報収集するというのが、彼らの口実でした。

両者の密接な関係の中で、政府はマスコミを経済面で支援する政策を実施してきました。例えば、一般商品の消費税は10%ですが、新聞の消費税は8%に軽減されています。

また、政府は公共広告に多額の予算を費やしています。例えば、2020年度の政府広報予算は約1億4千万米ドル(注:185億円)でした。これらの資金は、広告代理店やマスコミに支払われています。

しかし、最大の問題は、いわく付きの新聞の流通システムを政府が保護していることです。新聞販売店には、一定部数の新聞を購入する義務を課せられています。

例えば、新聞の読者が3,000人いる販売店では、3,000部で間に合います。しかし、4,000部の買い取り義務を課します。これは、独占禁止法違反にあたりますが、何の対策も講じられず、50年以上も放置されたままです。

私は1997年からこの問題を調査してきました。雑誌やインターネットメディアで、日本の新聞の少なくとも2~3割は一軒も配達されていないとする内容のレポートを繰り返し発表してきました。

私の計算によると、新聞業界はこのようにして少なくとも年間7億600万ドル(932億円)の腐った金を懐に入れています。新聞社は、販売店に損害を与えるだけではなく、広告主をも欺いています。

また、テレビ局の多くは新聞社グループに属しているため、日本のテレビ局もこの問題は報じません。政府も各省庁もこの問題については厳しく指導してきませんでした。

このように日本のマスコミは、国家権力によって保護されているのです。すでに述べたように、日本は法的には完全な表現の自由を持つ国です。だれもジャーナリズム活動を暴力で弾圧することはしません。

しかし、新聞やテレビの記者は、公権力機関が守ってくれる莫大な経済的利益を失いたくないため、彼らを強く批判するようなニュースは扱いません。

公権力にとって不都合なニュースを暴露しようとする新聞やテレビの記者は、記者としての地位を失い、営業部や広告部に異動させられるリスクを背負います。

公権力に批判的なフリージャーナリスト、評論家、大学教授らは、新聞に自分の作品を掲載する機会がほとんどありません。

週刊誌や月刊誌はかなり質の高いジャーナリズムを展開していますが、発行部数が少ないので影響力がありません。われわれは公式には表現の自由を保障されていますが、この腐敗した狡猾な仕組みのために、それを享受することができないのです。

── 報道における表現や視点を多様化する必要性を感じますか?それはなぜですか?

黒薮 日本では、表現や視点の多様性を広げることが非常に重要です。新聞社は政府によって実質的に保護されているため、新聞報道は非常に偏ったものとなっています。

例えば、自民党政権と統一教会は、過去50年間、非常に密接な関係にありました。統一教会は、信者から多額の献金を集め、韓国の本部に送金していました。

しかし、2022年7月に安倍晋三元首相が狂信的なこの宗教団体を憎むテロリストに暗殺されるまで、主要メディアはこの問題を報道していませんでした。

この問題を調査し、雑誌や自身のウェブサイトで報道していたジャーナリストは、鈴木エイト氏だけでした。彼は、安倍首相が暗殺されるまで、主要メディアで自分の意見を表明する機会がありませんでした。

このように、日本ではジャーナリズムが非常に制限されています。幸い、インターネット時代になって、さまざまな視点を提供する独立したメディアが増え始めています。

── 報道の仕事という観点から、アナログからデジタルへの移行をどう見ますか。この新しいコミュニケーション方法がメディアの健全性を奪うと思いますか、それとも利すると思いますか。

黒薮 インターネットの時代になっても、マスコミ報道はあまり変わっていません。簡単に言えば、ジャーナリズムのプラットフォームが紙から電子に移行しただけのことです。

しかし、私のようなフリーランスのジャーナリストにとって、インターネットはとても利用価値が高いものです。例えば、わたしが扱ったことのあるテーマのひとつに新聞の偽装部数問題に関連した新聞社の腐敗があります。

当初、この問題に関心を持つメディアは皆無でした。そこでわたしは、この問題を報道するために、約20年前にウェブサイトを立ち上げました。

その結果、雑誌を持つ出版社がこの問題に関心を持ち、一緒に調査報道をするようになったのです。また、弁護士の中にもこの問題に取り組む人が出てきました。

なぜなら、この問題は新聞販売だけでなく、日本のジャーナリズムの質の問題でもあるからです。この虚偽の発行部数の問題はまだ解決していませんが、数年後には必ず解決すると確信しています。

── 日本は先進的なテクノロジーで知られています。メディア関係者やジャーナリストは、この強みを活かして、ニュースや情報を視聴者に届ける方法を革新することができます。新しいテクノロジーの影響を受けた日本のジャーナリズムの現状をどのように定義しますか。

黒薮 新聞については、海外と大きな差はありません。日本では長年、新聞は紙媒体が中心でした。日本新聞協会のデータによると、2022年の日刊紙の発行部数は2,869万4,915部です。

そのため、インターネットへの移行は、新聞の読者離れのリスクをはらんでいます。新聞社の経営者は、電子新聞の導入に消極的でした。その結果、日本では際立った電子新聞の技術は開発されていません。

ラジオやテレビの世界では、いくつかの新しい動きがあります。例えば、AI(人工知能)が、アナウンサーそっくりの声でニュースを読み上げます。

また、バーチャル映像も利用されています。例えば、近い将来予想される大地震の被害状況をバーチャルリアリティ映像で表現します。

しかし、わたしは、ジャーナリズムにバーチャルリアリティを導入することは、フェイクニュースにつながるので反対です。かつては写真や動画が事実の重要な証拠となりましたが、今はそうではありません。

── 新しいテクノロジーと近代的な交通手段によって、地球の片側からもう片側への距離が短縮されています。ニュースの伝達も早くなりました。しかし、日本についての情報には、ばらつきがあります。日本ではラテンアメリカのことがどの程度報じられ、どの程度知られているのでしょうか。

黒薮 ラテンアメリカからのニュースはあまり報じられていません。マスコミは、大統領選挙、政治的事件、スポーツなどは報じますが、民衆の生活や社会運動に関するニュースは取り上げません。

クーデターの後、ペルー全土に広がった抗議運動

例えば、昨年12月7日にペルーで起きたクーデターに関して言えば、クーデターの首謀者らを擁護する立場からの報道はしましたが、それに対する民衆の抵抗や警察・軍隊の残虐な暴力については取り上げませんでした。

もう一つ例を挙げます。世界のほとんどの国がキューバに対する経済封鎖に反対しているのに、日本のマスコミは全く報道していません。

わたしは、ラテンアメリカの情報をインターネットを通じて得ています。しかし、ほとんどの日本人は英語やスペイン語を使うことができません。そのため、主要メディアからの情報に頼らざるを得なくなっています。

── Covid-19のパンデミックは、ほぼすべての分野とセクターに強く影響しました。報道においても、取り上げるニュースや取材活動だけではなく、メディアそれ自体の存続なども、その影響から逃れることができていません。日本のメディアやメディア関係者は、ポストパンデミックの現実をどう受け止めているのでしょうか。

黒薮 新聞社やテレビ局は、Covid-19のパンデミックの際にも、仕事のやり方を大きく変えることはありませんでした。というのも、彼らは毎日、ニュースを発信する必要があったからです。これに対して、多くの出版社はリモートワークという新しい働き方を採用しました。

編集者は自宅で作業し、インターネットで会社とコミュニケーションします。出社は週に1日か2日だけ。この働き方は、会社のコスト削減につながることもあり、Covid-19以降も続いています。

── 日本の視聴者は高齢化しており、メディアは若い視聴者を獲得する方法を探さなければならないと言われています。それは事実でしょうか? そうであるとすれば、新しい世代に情報を伝えるためにどのような戦略が採用されているのでしょうか。また、現在の日本では新しい人材育成のプロセスはどうなっているのか。

黒薮 わたしは、視聴者が高齢化しているとは思いません。高齢化しているのは、新聞の購読者です。高齢者はインターネットの使い方を知らないので、新聞から情報を得ます。

その結果、高齢者は印刷された新聞から、若い世代はインターネットから情報を得る状況になっています。

しかし、紙媒体の新聞とインターネットの内容自体は、あまり変わりません。というのも、主要メディアは、紙媒体の新聞に掲載した記事をインターネットに掲載する傾向があるからです。

日本ではジャーナリストの育成は遅れています。わたしは、ジャーナリストを教育する方法が異常だと思います。若い記者は、警察や政治家、官僚と親密な関係を築き、個別に情報を入手できるようになるよう指導されています。ラテンアメリカで、そんなことをやりますか?

── 日本の法務省のデータによると、2021年の日本のラテンアメリカ系の人口は約6万4,000人(ブラジルを除くスペイン語圏)です。日本のメディアは彼らに特化した紙面を設けて、地域や国、政府などの問題について情報を提供しているのでしょうか。

黒薮 10年ほど前まで、『プレスインターナショナル』という新聞がありました。スペイン語版とポルトガル語版の2種類を発行していました。しかし、現在は両方とも廃刊しています。

島根県の地方紙「山陰中央新報」(日刊)は、不定期にポルトガル語のニュースを掲載しています。島根県には、約9,000人のブラジル人が住んでいます。

日本に住むラテンアメリカの人々は、インターネットを通じて母国のニュースにアクセスすることが出来ます。しかし、スペイン語やポルトガル語で日本国内のニュースを見ることはほとんどできません。

── 日本の情報公開法は、ジャーナリストやメディアの取材・調査活動をおこなう上で、どのような利点と欠点があるのでしょうか。

黒薮 日本には、情報公開法があり、請求があれば公開しなければなりません。わたし自身もよくこの制度を利用しています。しかし、公権力の不祥事が分かる公文書は、プライバシー保護を口実に公開されません。

── ジャーナリストやメディアは報道に関して、どのような課題を抱えていますか。また、編集の独立性やメディアの多様性は、現在の日本におけるジャーナリズムの発展にとって十分なものだと考えていますか。

黒薮 日本のメディアの最大の問題は、その多くが公権力から独立していない点です。その結果、ジャーナリズムは政府の広報に変質しています。唯一の希望は、グローバル化の時代に、独立したメディアがインターネット上で生まれていることです。

◎出典:https://siquesepuede.jimdofree.com/2023/04/12/kuroyabu-en-jap%C3%B3n-la-distancia-entre-los-principales-medios-de-comunicaci%C3%B3n-y-el-gobierno-ha-sido-muy-estrecha/

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

4月25日発売!黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

言論について、突き詰めて考えると、世の中に存在するすべてのものに存在意義が認められることに気づく。というより、絶対的に悪とみられがちなものについても、むしろ存在意義を否定するのは難しい。

たとえば、「いじめ」。学校で「いじめ」に遭っていた子供や、大人社会の「いじめ」である上司のパワハラに遭っていた会社員が自殺したというニュースを目にしたら、たいていの人は怒りに震えるだろう。私自身もそうだ。「いじめ」とは、絶対悪であるというのが一般的な道徳感だ。

だが、言論について深く考えると、「いじめ」にも存在意義を認めざるをえない。なぜなら、「いじめ」は、言論の権力監視効果を支えるものの1つであるからだ。

実例を挙げると、10年ほど前に社会の注目を集めた郵便不正事件をめぐる大阪地検特捜部検事の証拠改ざん事件。当時、この検事の犯罪行為が朝日新聞の一面でスクープされると、検察の上層部は大慌てで当該検事を逮捕し、さらにその上司たちまで捜査対象にしたうえで逮捕に踏み切った。

検察の上層部があのような態度をとったのは、朝日新聞の報道をうけ、証拠改ざんという身内の犯罪行為を放置できないと考えたからではない。朝日新聞の影響力を恐れたからである。すなわち、彼らは朝日新聞の報道をうけ、自分たちの立場が危うくなるばかりか、ひいては自分たちの家族も近隣の人から「いじめ」に遭うなどの被害を受けることを想像し、それを回避しようとしたのである。

仮にあの大阪地検特捜部検事の証拠改ざんを報じたのが、朝日新聞ほど影響力のない小さなメディアであれば、検察の上層部は当該検事をあのように大慌てで逮捕したり、上司たちを捜査対象にすることはなかったろう。実際、私はこれまで、同程度以上の検察の不祥事をいくつも見てきたが、検察はあの程度の不祥事であれば、大手の報道機関に大きく報道されない限り、平気で放置しておくのが一般的だ。

こうして考えると、新聞やテレビ、週刊誌などで目にした報道について、もれなく鵜呑みにし、脊髄反射的に怒りの声をあげる人々、すなわち「メディアリテラシーの低い人」たちにも存在意義が認められることがわかる。そういう人たちが相当数存在しなければ、権力者たちにとって報道機関は何ら恐れる相手ではなくなり、すなわち、報道の権力監視効果は極めて乏しいものになってしまうからだ。

言論について、突き詰めて考えると、そもそも言論とは決して美しいものではないこともわかる。

◎片岡健の「言論」論 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=111

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。編著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(リミアンドテッド)、『絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―』(電子書籍版 鹿砦社)。YouTubeで『片岡健のチャンネル』を配信中。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―」[電子書籍版](片岡健編/鹿砦社)

◆岸田首相の原発17基再稼働促進は何が危険か?

昨年(2022年)7月14日、岸田首相は来年(2023年)冬の電力ひっ迫を回避するため、原発9基を稼働し火力による予備電源を確保することを萩生田光一経産相(当時)に 「指示」したと会見で語った。

「電力ひっ迫には原発」とばかりに、前のめりの姿勢を見せたわけだが、これは昨年3月と昨年6月末の電力ひっ迫警報・注意報の発出と軌を一にする、電力不足をテコにした再稼働推進の仕掛けを、さらに強化しようとするものだ。

再稼働を促進するとした原発のうち、すでに再稼働した「9基の原発」とは、関西の美浜3号、高浜3、4号、大飯3、4号、四国の伊方3号、九州の玄海3号、川内1、2号。現時点で再稼働した原発のうち特定重大事故対処等施設の建設が完成していないため法律上運転できない玄海4号以外全部だ。別に首相が指示する筋合いではない。

電力業界の中枢である電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は翌15日の記者会見で、冬の電力不足に対応するために「原発を最大9基稼働させる」とした発言について「ほとんどの原発はすでに(供給力に)織り込」み済と、電力不足対策になどならないことを示している(2022年7月15日付朝日新聞)。

これで定期検査中に発見される損傷や運転中に生じるトラブルに対して、首相の指示だからと無理矢理動かし、重大事故につながることはないのかが本当に心配になる。

昨年8月24日、 官邸で開いたGX(グリーン・トランスフォーメーション)第2回実行会議、岸田首相は原発について大きく3つの検討項目を打ち出した。

(1)福島事故後に稼働した10基に加え、7基を追加で再稼働すること、
(2)次世代革新炉を新増設すること、
(3)原則40年、最長60年と定められている既存原発の期間制限の廃止検討だ。

追加の7基とは、女川2号、柏崎刈羽6、7号、東海第二、高浜1、2号、島根2号だ。そのうち柏崎刈羽と東海第二は、いずれも地元合意はない。

柏崎刈羽原発は東電によるたび重なる違反行為で、現在規制委により「運転禁止措置」が取られ、これを解除する見通しも立っていない。

東海第二も地元6市村の同意がなければ再稼働はできないが、いずれも同意に向けた動きはない。さらに立地・周辺15自治体(水戸市、日立市、常陸太田市、高萩市、笠間市、ひたちなか市、常陸大宮市、那珂市、鉾田市、茨城町、大洗町、城里町、東海村、大子町と茨城県)が定めなければならない原子力防災計画は、9自治体が策定できていない。

水戸地裁は、防災体制の不備を指摘して運転差止の判決を出している。裁判は現在東京高裁で審理中だ。日本原電の広報担当でさえ、来年夏の再稼働など見通すことはできず、最短でも再来年の9月以降と明言している。

◆電力ひっ迫に対する対応方法は何か?

「ひっ迫に対して原発」には、もうひとつ大いなるミスマッチがある。現在の再稼働原発はすべて西日本。冬場の電力需要は東京が最も大きいうえ、北へ行くほど「ひっ迫」しやすい。一方、西は雪もほとんど降らないから条件が良ければ日中は太陽光だけでも需要の多くをまかなえる。九電などはそうだろう。しかし 「電気が余る」 西から「電気が足りない」東への送電は、周波数が異なるため「周波数変換所」を通さなければならない。この容量がわずか210万kWしかない。原発2基分程度だ。

西側の原発の電気で東側のひっ迫に対処するなど、そもそもできない。「同時同量」の原則を思い返せば、対策は唯一、北海道から九州までの連系線を強化することである。これで電力ひっ迫は回避できる。

昨年6月末に発生した東電、東北電のひっ迫に対しては、西日本の電力を送ることができていれば十分まかなえたことは、電力広域的運営推進機関のデータを見れば明らかである。当時予備率が低かった東電は、朝から夕方まで平均的に5%を下回っていたが、このレベルならばひっ迫ではない。しかし最も低い時間帯が16時から17時半の範囲で3%だった。もちろん省エネも効果はあったが、大電力を広域で連系すれば、ひっ迫は十分回避できた。

時間帯は短いので、大規模停電に至る可能性はほとんどない。実際、18時には「電力需給ひっ迫注意報」は解除されている。

なお、今回の電力ひっ迫を口実とした原発利用拡大政策の狙いは「最長60年の運転期間制限」の撤廃ないし延長である。これを詳論するには紙数が尽きた。 次回に詳しく論じることにする。

◆再稼働促進は「原子力安全規制」を侵害する

原子力規制の基本は、原発を推進する行政機関から独立して権限を有した規制当局が、たとえ首相命令であろうとも基準を満たさない原発を運転させないことにある。

原子力規制庁は環境省の外局だが、原子力規制委員会は設置法第1条に「専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し、もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする」と規定している。電力が足りなかろうと、首相が指示しようと、安全性に問題のある原発の稼働を認めてはならない。

昨年7月13日に東京地裁で言い渡された株主代表訴訟の判決で朝倉佳秀裁判長が、東電旧経営陣5人に対して13兆円あまりの賠償を認めた(但し4人について)。判決にあるとおり、原発事故は「我が国そのものの崩壊にもつながりかねない」(判決骨子より)からである。(完)

本稿は『季節』2022年冬号掲載の「経産省『電力ひっ迫』のからくり」を再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 経産省「電力ひっ迫」のからくり〈全3回〉
〈1〉「電力ひっ迫に備えて原発推進」は正解か?
〈2〉電力ひっ迫に発電設備の増強は正しいか?
〈3〉電力ひっ迫に対する対応方法は何か?

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像』(明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
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『季節』2023年春号(NO NUKES voice改題)福島第一原発事故 12年後の想い


〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2023年春号
NO NUKES voice改題 通巻35号 紙の爆弾 2023年4月増刊

《グラビア》福島発〈脱原発〉12年の軌跡(写真=黒田節子
      東海村の脱原発巨大看板(写真=鈴木博喜

樋口英明(元裁判官)
《コラム》原発回帰と安保政策の転換について

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
《コラム》戦争は静かに日常生活に入って来る
《講演》放射能汚染水はなぜ流してはならないか

乾喜美子(経産省前テントひろば/汚染水海洋放出に反対する市民の会)
《アピール》放射能汚染水反対のハガキ作戦やっています

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
《講演》懲りない原子力ムラが復活してきた
日本の原子力開発50年と福島原発事故を振り返りながら

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福島第一原発事故 12年後の想い
森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream[サンドリ]代表)
あなたは「原発被害」を本当に知っていますか
黒田節子(原発いらね!ふくしま女と仲間たち)
フクシマは先が見えない
伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
何を取り戻すことが「復興」になるのか
今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
呆れ果てても諦めない
佐藤八郎(飯舘村議、福島県生活と健康を守る会連合会会長、生業訴訟原告団)
私たちが何をしたというのか
佐藤みつ子(飯舘村老人クラブ副会長、生業訴訟原告団)
悔しさだけが残ります
門馬好春(30年中間貯蔵施設地権者会会長)
中間貯蔵施設をどうするか
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鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
区域外避難者はいま

水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
裏切られた2つの判決
福島原発刑事裁判と子ども脱被ばく裁判

漆原牧久(「脱被ばく実現ネット」ボランティア)
病気になったのが、自分でよかった
311子ども甲状腺がん裁判第3回・第4回口頭弁論期日報告

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
「原発政策大転換」の本命 60年超えの運転延長は認められない

井筒和幸(映画監督)×板坂 剛(作家/舞踏家)
《対談》戦後日本の大衆心理[前編]

佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
反社はゲンパツに手を出すな!

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
突然のごとき政治的変更を目前にして

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈19〉
2023年に生きる私が、死について考える

再稼働阻止全国ネットワーク
原発の再稼働と再稼働の全力推進に怒る! 岸田内閣に大反撃を!
「規制をやめた」規制委員会に怒り! 山中委員長と片山長官は辞任せよ!

《全国》永野勇(再稼働阻止全国ネットワーク)
総攻撃には総力を結集して反撃を!
「福島を忘れない!原発政策の大転換を許すな!全国一斉行動」の成功を!
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
岸田政権による原発推進政策に抗し、女川原発2号機の2024年再稼働阻止を!
《福島》橋本あき(福島県郡山市在住)
「環境汚染」から「裁判汚染」まで 多岐にわたる汚染
《東海第二》志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
東海第二原発差止訴訟・控訴審決起集会に参加して
《東海第二》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
東京に一番近い原発=東海第二原発 2024年9月の再稼働を止めるぞ!
《東京》平井由美子(新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会)
環境省が新宿御苑へ放射能汚染土を持ち込もうとしている!
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
原発推進に暴走する岸田政権、追従する大阪地裁 行きつく先は原発過酷事故
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
再稼働推進委員会が経産省と癒着、「規制の虜」糾弾
《反原発自治》けしば誠一(杉並区議会議員/反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
岸田政権の原発推進大転換を許すな!
5月27日反原発自治体議員・市民連盟第13回定期総会へ
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
『また「沖縄が戦場になる」って本当ですか?』ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 編
 
反原発川柳(乱鬼龍選)

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私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

「レフェリー、リー・チャンゴン~!」とリングアナウンサーにコールされ、文字にしてもカタカナ書きの方が馴染んだ響きである。昭和40年代にTBSテレビで放映されたキックボクシングの隆盛時代に、現在とは比べられないほどのレフェリーの威厳があったその姿と名前が全国に広まったのも事実でした。

「荒れる試合は俺が裁く」を貫いた李昌坤レフェリー(1981年5月19日)

ノックダウンからファイトを促す李昌坤レフェリー(1982年11月19日)

◆導かれた運命

昭和の名レフェリー、李昌坤(リ・チャンゴン/1942年6月20日東京都目黒区出身)は在日韓国人として永く活躍し、日本名は岩本信次郎。軽快なフットワークと適確な判断で試合を裁き続けた。

1966年(昭和41年)6月にレフェリーとしてデビューして以来、野口修氏が興したキックボクシングの表も裏も知り尽くし、1990年(平成2年)に第23回プロスポーツ大賞「功労賞」を受賞している人物である。

李昌坤氏は中学2年生の時、たまたま近所にあったボクシングの野口ジムに遊びに行くようになったのが格闘技との最初の出会いだった。当時は厚木基地や新橋駅前などで「ベビーボクシング」なるお祭りイベントが開催されていて、気が強いガキ大将だった李昌坤氏は中学生クラスの“ハビー級”として参加。試合後にはお菓子を貰っていたという。

そんな運命でジムに通い続け、高校三年生になるとプロボクシング4回戦でデビュー、新人王の準々決勝まで進んだが、腰を痛めて止む無く現役を断念した。

◆昭和のキックボクシング、レフェリーとして参加

高校卒業後は近所の板金屋で働きながら、野口ジムのトレーナーをしていたが、1966年1月(昭和41年)、野口進会長の長男・修氏が日本キックボクシング協会を設立された際、李昌坤氏はレフェリーとして導かれた。それまでは日本名を使っていたが、日本vsタイの試合に韓国人としてレフェリングすることで国際色豊かにしようという協会の思惑で、本名・李昌坤として参加することになった。

翌年2月26日、TBSがキックボクシング中継を始め、創生期からブームとなったスター沢村忠の多くの試合を中心に、首都圏の他、地方興行を転々としながらレフェリーとしてリングに上がり続けた。

名勝負として今も語り継がれる富山勝治vs花形満戦、富山勝治vs稲毛忠治戦や、後には藤原敏男の試合も裁いた経験を持ち、竹山晴友が活躍した昭和60年代でもメインレフェリーとして裁いていた。

富山勝治の試合担当は多かった李昌坤レフェリー(1983年11月12日)

勝者・富山勝治の手を挙げる李昌坤レフェリー(1983年11月12日)

長いレフェリー生活の中では多くのエピソードを持つ李昌坤氏。

「確か甲府での試合で、沢村が真空飛びヒザ蹴りを出したら、相手がロープまでふっとんで一番上のロープが切れてしまったんですよ!」といった忘れ得ぬ思い出や、更には自身に災難が降り掛かることもあった。空振りした沢村の蹴りが横腹に入り、悶絶の危機も何とか凌いだレフェリング。これが一番痛い思い出で、試合後の控室に沢村がやって来て、「リーさん身体大丈夫? ゴメンね!」とは沢村らしい気遣いがあって嬉しかったが、一週間ほどまともには動けなかったという。

テレビ放送が打ち切りになり、興行も不定期になってきた昭和50年代後半、多くの業界関係者が撤退していったが、李昌坤氏はそんな時代もレフェリーを辞めなかった。

それは「俺が試合を裁く。俺が判定を下す!」というレフェリーとしてのプライドを人一倍持って日本系レフェリーのほとんどを厳しく指導し、レフェリングの基礎を作ったことを無駄にせず、次の時代へ繋ぐ責任を感じていた。

キックボクシング創設以来、10年以上務めた功労者が表彰、李昌坤氏もその一人(1985年11月22日)

時代が流れた昭和60年代、勝者・向山鉄也の手を挙げる李昌坤レフェリー(1985年11月22日)

◆存在感に陰り

李昌坤氏から教わったレフェリーは皆フットワークが軽く、

「ファッションモデルみたいな動き」という批判的な関係者も居た中、時代の流れは徐々に李昌坤氏にとって窮屈な世界となっていった。ムエタイ崇拝者が増え、レフェリングもムエタイ式に移行してきた点から、各ジムからレフェリーに求められる裁き方の認識が変わって来たのだった。

首相撲でのブレイクアウトの早さ、崩しでの縺れ倒れ行く選手を支えない、軽く当たったパンチでのスリップやプッシュ気味でのノックダウン扱いなど、昔ながらのレフェリングが受け入れ難くなる傾向があった。名レフェリーたる存在が敬遠されがちになると、次第に出番が少なくなっていく中の1996年2月9日、最後の花道を作ってくれたのは士道館主催興行だった。最後のレフェリングとなったフェザー級5回戦、室崎剛将(東金)vs松田敬(目黒)戦の後、「李昌坤引退セレモニー」が執り行われた。李昌坤氏はリング上で奥さんと華やかなチマチョゴリ(韓国の民族衣装)を纏った三人の娘さんに囲まれ、最後のリングに華を添えた引退セレモニーだった。

李昌坤氏は「これで終わりなんだなと思った時、寂しさより、ここまでやって来れたんだなという思いの方が強かった。引退式をやって貰って本当にけじめがついたよ!」と語る。

時代とともに昔のレフェリーが一人ずつ消え、元々所属した日本系野口プロモーションの最後のレフェリングとしての締め括れた安堵感があったようである。

「本当に陰の人でしたね。沢山の名勝負を裁いて来たのにね!」とはキックボクシング創始者、野口修夫人・和子さんの当時の語り。

[左]試合直前の注意勧告する李昌坤レフェリー(1992年9月19日)/[右]最後のリングに上がる李昌坤レフェリー、裁いた試合は3000試合以上(1996年2月9日)

引退セレモニーで観衆の声援に応える李昌坤レフェリー(1996年2月9日)

自身のお店でインタビューを受ける焼き肉屋のオヤジ、李昌坤氏(1996年2月15日)

◆昔ながらの頑固レフェリーからの助言

李昌坤氏は、業界の中心的存在だった目黒ジムの選手に「目黒ジムには沢山強い選手が居て、練習が他のジムより充実しているんだから、試合で引分けなら実質は負けと同様なんだぞ!」と厳しい指摘を言われたこともあったという。また、「地方の選手には冷たく、反則ではないのに、“今度やったら減点取るぞ”とか言われて、だからリー・チャンゴンは嫌いだ!」という批判も聞かれるのは毅然としたレフェリングを行なうが故の嫌われ文句だろう。

後輩への指導では「レフェリーやジャッジ担当で、もしミスっても毅然と振舞って自分の裁定に自信持て!」と言うなどの忠告もあって、他団体のレフェリーでも「李昌坤さんのレフェリングはかなり意識していましたね!」という話は多い。

またレフェリーの振舞いや運営の不備など、他のスタッフが気付かなくとも李昌坤さんは気付いて動くという点は熟練者の視野の広さがあった。

「観衆の中で雑談はするな。必要以上に会場内をうろつかず待機場所に居ろ。裁いている試合に対し、同じ位置に3秒以上立ち止まるな。テレビカメラ側に極力立つな。身だしなみに気をつけろ!」といった振る舞いには、元々はプロボクシングから受けた指導が基礎となったものだった。古い体質ではあったが、威厳ある李昌坤氏ならではの存在感だった。

李昌坤氏は若い頃、板金屋やトラック運転手なども経験したが、後に目黒ジム近くで焼き肉屋「大昌苑」を経営。レフェリー引退後も継続し、かつての野口プロモーション関係者が集まることも多い賑やかさを見せて、良きキックボクシング時代を語り合う穏やかな晩年を過ごしていた。お客さんからの注文を語気強く受け応え、かつてのレフェリーの面影があったが、その接客は気さくで常連客が多い焼き肉屋のオヤジであった。

(取材は1996年2月当時のナイタイスポーツで取材したものと、後々に何度も大昌苑を訪れて李昌坤氏にお聞きしたエピソードを参考にしています。)

◎堀田春樹の格闘群雄伝 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=88

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

ドブネズミは、日本中いたるところに生息しています。産業被害や健康被害を未然に防ぐために、日夜、ドブネズミの駆除が続けられています。養豚場での飼料や豚の健康を維持するため、そして、食材を扱うところでの接触に起因するヒトへの健康被害を未然に防ぐために、ドブネズミの駆除は衛生上も欠かせません。しかしながら、ネズミは夜行性の動物です。昼間は、ウロウロすることなく、巣の中でじっとしています。夜になると活動を開始しますので、普通のヒトには発見するのも難しいわけです。専門業者には工夫した発見技術があるでしょうが、「その施設にドブネズミはいない」と確実に判定することは難しいのが現状です。

そこで、我々は、ドブネズミ(種の科学名:Rattus norvegicus)を始め、クマネズミ(Rattus rattus)などのRattus属の動物種を検出するプライマーセットを作製しました。このプイラマ-セットを用いて、野外で、大気中の生物デブリを捕集したサンプルに、ラット由来のデブリが検出できるかを調べました。最初の材料として、前出の養豚場から420メートル離れた場所で捕集した生物デブリから採取したDNAを調べてみました。その結果は、[図4.2]に示しましたが、ラット由来のDNAが検出されました。このことから、ラット、恐らく、ドブネズミが、養豚場もしくは、周辺の野原に生息していることが判りました。

[図4.2]養豚場付近でのドブネズミ(ラット)の検出

次に、この方法を用いて、ある食堂内の空気から生物デブリを捕集し、その中にラットの痕跡見つかるかを検討しました。その結果を[図4.3]に示しました。その食堂が風評被害を受けるといけないので、食堂を特定されないように、画像をぼかしています。この解析から、食堂内の空気デブリにも、ラット由来のものが含まれていたことが判ります。

[図4.3]食堂内での大気中の生物デブリからのドブネズミ(ラット)の検出

ただし、同一のサンプルから2回、別々にPCRを行っていて、一つには検出されていないことから、ラットデブリは極めて少ないと判断されます。ポアソン分布に基づけば、サンプル中に1分子しか存在しない場合は3回に1回しか検出されないとの法則があります。非常に少ないとしても、一度検出されたことから考えられますことは二つあります。一つは、食堂内にラットが生息している可能性、もう一つは食堂の外、つまり野外に生息していた野外のラットデブリが、空気に乗って食堂内に入ってきている可能性です。どちらが正しいかを正確に検証するためには、食堂の外と中での、ラットのデブリ量の差異を調べる必要があります。現段階では、空気中に生物デブリがあるかないかの定性的な解析しかできていませんが、量の差異を調べるには、定量的な解析が必要となります。

こうした大気中の生物デブリの解析を行っている中で、広島大学の西堀先生から、広島県に出没しているクマについて解析できないかとの話がありました。他府県でもそうですが、最近は、クマの出没件数が増加し、人に危害を加える事件も発生しています。クマが特定の地域にどの程度生息しているのかを大気中のクマのデブリを捕捉して、推定したいとのことでした。このためには、「いる」か「いない」かの定性的解析ではなく、どの程度いるかを調べる定量的な解析方法が必要となってきます。この解析方法の開発については、次回述べたいと思います。

◎安江 博 わかりやすい!科学の最前線
〈01〉生き物の根幹にある核酸
〈02〉ヒトのゲノム解析分析の進歩
〈03〉DNAがもたらす光と影[1]
〈04〉DNAがもたらす光と影[2]
〈05〉生物種の生存圏
〈06〉大気中の生物デブリ捕集装置を用いたアルゼンチンアリの生存圏の解析 静岡市にはまだアルゼンチンアリが生息していた!
〈07〉大気中の生物デブリ捕集装置を用いた、ドブネズミ(ラット属)の生存圏の解析 この環境にドブネズミはいるのか、いないのか?

▼安江 博(やすえ・ひろし)
1949年、大阪生まれ。大阪大学理学研究科博士課程修了(理学博士)。農林水産省・厚生労働省に技官として勤務、愛知県がんセンター主任研究員、農業生物資源研究所、成育医療センターへ出向。フランス(パリINRA)米国(ミネソタ州立大)駐在。筑波大学(農林学系)助教授、同大学(医療系一消化器外科)非常勤講師等を経て、現在(株)つくば遺伝子研究所所長。著書に『一流の前立腺がん患者になれ! 最適な治療を受けるために』(鹿砦社)等

安江博『一流の前立腺がん患者になれ! 最適な治療を受けるために』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846314359/
◎鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?group=ichi&bookid=000686
四六判/カバー装 本文128ページ/オールカラー/定価1,650円(税込)

統一地方選挙ただ中である。すでに奈良県知事選では維新の会の新知事(山下真)が誕生し、自民党内では放送法解釈変更問題で渦中にいた高市早苗県連会長の責任(調整能力の不足)が問われる流れだ。維新の会が自民党批判(既成政治批判)の受け皿になっているのは間違いのないところだ。

 

タブーなき記事満載!月刊『紙の爆弾』5月号

この地方選前半と同様に、4月11日に公示された山口ダブル補選(2区・4区)をふくむ衆参5議席の補選が、支持率低迷にあえぐ岸田政権の最初の試金石になる。総選挙までのモラトリアムの間、結果次第では政局が動きそうだ。

このうち衆院山口ダブル補選について、「紙爆」では出身地が地元でもある横田一が「安倍背後霊退治なるか」という記事でレポートしている。

とくに4区は亡き安倍晋三の選挙区であり、統一教会問題を追及してきた有田芳生の出馬が注目される。じっさいに横田と有田の一問一答が収録されているので、安倍亡き後の下関に注目する向きは、ぜひ記事を読んでいただきたい。

自民党の候補者は安倍後援会が推す吉田真次前下関市議だが、じつはこの擁立には安倍昭恵が一枚かんだ「やっちまった」感があるらしいので、結果を待って裏側を詳報して欲しいものだ。裏側というのは、もちろん安倍派と林芳正外相との確執である。

政治とカルトをめぐっては、段勲が統一地方選を視野にレポートしている。ここにきてメディアもヒートダウンしている統一教会と自民党の関係や公明党(創価学会)批判だが、段は昨年の暮れに行われた西東京市議選で元創価学会員のトップ当選が「カルト批判」だったことなど、公明党の選挙における衰退を指摘する。

いっぽう山口2区は、故安倍元総理の甥(岸信夫前防衛大臣の長男)が出馬し、対抗は民主党政権の法務大臣だった平岡秀夫(弁護士)となった。

じつは平岡は死刑廃止運動で評者も同席しているので、出馬の事情もわかっている。横田がレポートしたとおり、立民の県議も記者会見に同席するなどしたが、おぜん立ては市民運動や政治家個人の支援・根回しによるものだ。共産党も平岡の出馬をうけて、独自候補を降ろした。おそらく立憲民主からの出馬なら、本人も出る気にはならなかっただろうし、地元メディア(長周新聞)も「拮抗」という評価にはならなかったはずだ。平岡の選挙アピールは、岩国基地強化・上関原発反対のほか、政治家の世襲批判になるであろう。結果を待ちたい。

◆コオロギ食の可否

さて、期せずして今回の「特集」となったのが、コオロギ食である。「昆虫食を推奨するグローバリストの不純な動機」(青山みつお)、「コオロギ食促進の隠された目的」(高橋清隆)のほか、西田健の「コイツらのゼニ儲け」とマッド・アマノの「世界を裏から見てみよう」がコオロギ食のテーマとなった。

ハッキリ言って、このコオロギ食には非常に危うい陰謀や、逆陰謀論がうずまいているようで、生半な評価は下せそうにない。高橋清隆が云うとおり「読者諸賢に判断してほしい」というしかない。

すいません。それほど奥が深く、読み解くのが容易くないのである。高橋が紹介する「コオロギ摂取による人間の電極化(クラウドを通じたAI支配)」はショッキングというか、もの凄く怖い。一連の記事のご一読を勧めたい。

袴田事件の解説として「シリーズ 日本の冤罪」(青柳雄介)は保存版であろう。わが国司法の誤りを認めない体質、具体的には再審システム(検察の特別抗告の無意味さ・無条件の証拠開示など)もはや課題は明白なのである。

「虚飾にまみれた安倍晋三回顧録」は青木泰による、森友事件の検証である。公文書改ざんという、およそ民主主義の根幹を左右する史実について、これも保存版の記事とすべきであろう。

三浦瑠麗の夫が逮捕された「太陽光発電事業」と安倍晋三の関係を解説する片岡亮の記事も、安倍政治とは何だったのかを回顧させる。安倍政権はある意味で、日本の政治を変えたのだ。かれが標榜した経済的な成果はないに等しかったが、官邸(永田町)と官僚(霞ヶ関)の政治構造(力関係)を変えたという意味では、歴史的に革新的な史実である。それが財務省官僚たちの「省益」との抗争なのかどうか、闊達な議論を待ちたい。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年5月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B00BZ6IWE4/

最近、横浜副流煙裁判(反訴)の原告である藤井敦子さんに対すツイッターによる攻撃が許容範囲を越えている。攻撃してくるのは、喫煙撲滅運動を推進している作田学医師や、化学物質過敏症の権威として知られている宮田幹夫医師の患者らである。

『窓』というタイトルで映画化された横浜副流煙事件

作田医師は、藤井さんが起こした裁判の法廷に立たされ、宮田医師は、4月末でみずからが経営してきたそよ風クリニックを閉鎖する。

後者の原因は、宮田医師の医療行為を批判する記事を書いたわたしにあると考えている人もいるようだ。

ツイッターによる攻撃対象は、副次的にわたしや、わたしの記事を掲載してきた鹿砦社にも及んでいる。さらに作田医師や宮田医師の医療を批判している舩越典子医師も攻撃対象になっている。

攻撃に加わっている人物の中には、元毎日新聞の辣腕ジャーナリストも含まれている。この先生は、なぜかわたしと鹿砦社に絡んでくる。

攻撃者らは、連携プレーのようなかたちで次々と攻撃を仕掛けてくる。ネットウヨやカウンター運動の面々によるSNS攻勢を同じパターンである。

これに対して藤井さんは、裁判の支援者などによる加勢を得て応戦している。後に引かない姿勢だ。

わたしはツイッターによる議論には積極的ではないが、コミュニケーションを図るという観点からすれば、まったく無意味なことだとは考えていない。しかし、議論の前提事実が間違ってしまうと、議論そのものが実のないものになってしまう。

◆わたしが藤井さんに行った支援

藤井さんを攻撃している人々による誤解の最たるものは、横浜副流煙事件をめぐる訴訟など一連の動きを背後で牛耳っているのは、わたし(黒薮)であるという勘違いである。中には、わたしの「鶴の一声」で藤井さんらが動いているとツイートしている高齢者もいた。そこでわたしが横浜副流煙事件にどこまで関与したかを正確に示しておこう。

「黒薮氏の鶴の一声で君達はそう連呼し……」などと述べている

横浜副流煙事件の提訴は、2017年11月である。藤井さんと同じマンションの2階に住むA家が、藤井さんの夫が吸う煙草で病気になったとして約4500万円の損害賠償を求めた裁判である。

わたしがこの事件に関わり始めたのは、その翌年、2018年の秋である。マイニュースジャパンから取材依頼があり、藤井さんが住む団地へ足を運んだり、A家の弁護士に接触するなど、綿密な取材活動を展開して記事を書いた。

その後、藤井さんが弁護士を解任して本人訴訟に切り替えたので、支援に乗り出した。司法ジャーナリズムをインターネットに載せる実験に興味があったからだ。そこでわたしが裁判書面の草案を作成して、藤井さんや支援者らと協議した。書面の校閲は、石岡淑道さんという元法律事務所の職員が行った。リサーチは、藤井さんと支援者が行った。このようなプロセスを経て裁判所へ提出した書面は、わたしがインターネットで公開した。

藤井さんの夫は横浜地裁で勝訴し、東京高裁でも勝訴した。裁判は藤井さんの夫の勝訴で終わった。

◆わたしは「反訴」にはかかわっていない

勝訴判決の確定を受けて藤井さんは2つの対抗措置を取った。ひとつは、前訴にかかわった作田学医師とA家に対する損害賠償である。「反訴」である。これについては、わたしは前訴が進行している時期から、繰り返し実行に移すように勧めていた。非常識な裁判提起に対しては、制裁を課すべきというのが、わたしの強い信念であるからだ。

藤井さんが取ったもうひとつの対抗措置は、作田医師に対する刑事告発である。これについては、わたしは積極的に進めたことはない。告発状が受理されないと思ったからだ。しかし、藤井さんの支援者に告発すべきだとの声が多く、藤井さんは告発に踏み切った。

最初、わたしは告発人のひとりに名を連ねていたが、公式に取り下げた。以後、ほとんど支援していない。

告発に向けて取材を重ね、重要情報を入手したのは藤井さんである。作田医師が在籍していた日本赤十字医療センターを何度も取材して、作田医師が作成した診断書交付のプロセスを解明した。作田医師がA家の娘を診察することなく、公的機関に診療報酬を請求していた事実を突き止めたのも藤井さんである。情報公開制度を利用したのである。

作田医師に対する刑事告発は受理され、警察が調査した後、横浜地検へ書類送検された。しかし、横浜地検は作田医師を不起訴とした。そこで藤井さんは、検察審査会に審査を申し立てた。その際に、理由書の草案を作成したのは、わたしである。これがわたしが藤井さんに対して行った最後の支援である。以後、何もしていない。

藤井さんが作田医師とA家に対して起こした「反訴」については、わたしは単なる取材者であり、裁判の方針には一切かかわっていない。書面を作成しているのは古川健三弁護士である。藤井さんと支援者は、書面を作成するためのリサーチを続けている。

◆理不尽な裁判を起こされて

わたしが横浜副流煙事件に関する藤井さんらの運動に背後にいるという想像は間違いである。

藤井さんは、横浜副流煙事件を通じて成長された。取材する力は、平均的なサラリーマン記者よりもはるかに勝っている。文書も立派に書けるようになった。

藤井さんは、自分の家族に対して4500万円もの請求が行われた結果、生死をかけて戦わざるを得なくなり、結果として著しく高い取材力や文章力を身に付けたのである。人間の知力がどのような外的条件の下で発達するかを示したとも言える。知力というものが、実生活(実践)との結合の中で飛躍的に発達することを示したのである。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

4月25日発売!黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

2023年4月9日、統一地方選挙・広島県議会議員選挙が執行されました。

筆者はあの河井案里さんの地盤だった安佐南区で無所属・れいわ新選組推薦で立候補しました。

2673票、9人中8位という結果で及びませんでした。

広島県議選 広島市安佐南区選挙区
定員 5 有権者数 193,624 投票率 34.16%

当 灰岡 香奈 自民 現 39歳 12,782(19.9%)
当 栗原 俊二 公明 現 63歳 11,128(17.3%)
当 竹原 哲  自民 現 49歳  8,938(13.9%)
当 鷹広 純   無 現 48歳  8,191(12.8%)推薦:立民・国民県連・社民
当 藤井 敏子 共産 新 69歳  6,672(10.4%)
  前田 康治 自民 現 57歳  6,157(9.6%)
  小田 康治 維新 新 47歳  5,246(8.2%)
  佐藤 周一  無 新 47歳  2,673(4.2%)推薦:れいわ
  伊藤 守   無 新 47歳  2,356(3.7%)

改めて、ご支援をいただきました皆様、ご協力をいただきました皆様にお礼申し上げます(インターネットでのお礼は公選法で認められていますが、これをプリントアウトすると違反になりますので、ご注意ください)。

筆者は、2022年の5月、参院選広島から県議選安佐南区への転出を決定。その後、参院選2022終了後、無所属で県議選への準備を進めて参りました。12月にれいわ新選組の推薦を頂きました。

◆広島が大好きだからこそ、広島の現状を憂える

 

広陵高校出身の担任の先生にカープを叩き込まれた小学校時代。そして、安佐南区が主要な舞台となった井伏鱒二の「黒い雨」に感激した高校時代。そして、安佐南区の長束小学校のネットでの平和学習を進められていた先生や生徒さん、大学の先生との交流。そして大学卒業後は国家公務員と県庁を受かって県庁を迷わず選んだ筆者。採用面接では「広島が好きだから県庁を選びます」と申し上げました。

県庁時代には、しかし、おひとりおひとりが大事にされているか疑問に思いだしました。組織やお金、過去の成功体験に囚われた広島の政治をリニューアルしないといけない。そういう思いで、2011年、県議選安佐南区で立候補。4278票で及ばず、3年間政治活動を続けるも限界を感じ、東京へ戻りました。

だが、2014年8月20日、広島土砂災害2014の一報に、「広島をなんとかせにゃあいけまあ」という思いで、広島へ帰りました。そしてボランティア活動に奔走。広島に貢献したいと介護の仕事を開始し、政治活動を再開しました。

だが、組織やお金、過去の成功体験に囚われた政治が続く中で、広島の現状はいかがでしょうか? ひとりひとりが大切にされていると言えるでしょうか? 平和都市に恥ずかしくない、政治・行政と言えるでしょうか?

そんな思いが強まる一方で、2021年、河井案里さんの当選無効による参院選広島再選挙に立候補しました。

◆広島の現状は人口流出ワーストワン2年連続

筆者の勤務先の介護施設でも外国人労働者もすぐ辞めて東京へ向かうという危機的な状況。

広島駅周辺などへの投資は県や市は熱心でも、安佐南区などの防災工事や道路の補修は進まず。

教育長は思い付きの改革を進めた挙句に、官製談合事件。現場の先生は非正規ばかり。

学校のプールなど補修が追い付かない。

水源地のど真ん中に産廃処分場が許可されてしまう

筆者自身が県議選立候補の為に県庁を去ってから、特にこの2~3年の広島の政治・行政の状況は悪化する一方です。このままでは、いけない、という思いからふたたび、立ち上がりました。お金や組織、過去の成功体験に囚われた政治をなんとかせにゃあいけまあ。

「県政をガツンとリニューアル」「広島とあなたを守る大改革」

をスローガンに、
ケア労働者などを中心に広島で働くあなたのお給料大幅アップ。
非正規の使い捨てを止める。
介護する人もされる人も笑顔の広島県。
産廃から水や食料を守る。
地域食材のオーガニック無料の給食導入で農家支援。
国保料大幅引き下げ、子ども医療費無料化18歳までの拡大。
総理の暴走・迷走を広島から止める。
などを全力で訴えました。

◆かつてなく多くの方にご支援いただく

筆者が立候補した過去2回の選挙、すなわち県議選2011、参院選広島再選挙2021では、選挙カーの上の筆者の隣には運転手しかいない、という状態がほとんどでした。

しかし、今回は、多くの方にご支援をいただきました。れいわ新選組チーム広島の皆様にはさとうしゅういち後援会員という形で、スタッフを担っていただきました。これまで、筆者が自分でやらなければいけなかった、事務的なことも多くをしていただき、体制としては雲泥の差でした。

また、選挙直前の決起集会では大島九州男参院議員、そして選挙期間中も、竹村かつし・下関市議、「次次期参院議員」の辻恵弁護士、大学の先輩でもある高井たかし・れいわ新選組幹事長が次々と応援にかけつけてくださいました。

さらに、途中、地元の大物弁護士らも応援にかけつけてくださいました。

古市橋駅前での出発式 竹村かつし下関市議の応援演説

◆「さとうさんは今回、行けるでしょう」という下馬評の落とし穴

 

農村部でも訴える筆者

今回の選挙では、「さとうさんは今回、行けるでしょう。」という下馬評が、あちこちから聞かれました。根拠としては、そうはいっても、参院選広島再選挙にも立候補していて知名度は高いこと、長年、地域を回っていたことです。「今回はいける」というのが敵味方問わず出てくるのは当然。他陣営の調査でも筆者が当選圏内ということが漏れてきました。

しかし、これがいけないのです。筆者が支持をお願いした方々に対して他候補が「さとうさんは大丈夫だからうちへ」というお願いをしていった、という情報を多数得ています。

そして、見る見るうちに、支持は削られ、蓋を開けてみれば、他陣営の事前予測等の3分の1程度の票になっていた、というわけです。

◆共産党の局地的突風的追い風

日本共産党は、全国的には松竹信幸さん除名問題などで、惨敗しました。しかし、広島では、河井事件の余波がまだ残っており、それが共産党への追い風となりました。また、被爆地ということで、総理の暴走に不安を感じる層が、共産党というそうはいっても看板の古いところに流れた感があります。実際に、筆者を支持してくださっていた方の中でも相当、共産党の藤井候補に票が流れた感じはします。

◆相手候補が筆者の主張に寄せる場面も

 

2014年の土砂災害被災地で訴える筆者

今回、途中で、相手候補者が主張をわたしの主張に寄せてくる場面もありました。

教育長に甘い姿勢だった立憲推薦の現職も、マスコミなどのアンケートには教育長更迭すべし、と回答するようになりました。与党現職女性は、熱心に非正規教員の問題を取り上げるようになりました。与野党候補の論戦をリードする形にはなったと自負しています。

◆既成政党以外で選挙を回す集団が広島に出現

今回はれいわ新選組ボランティアの皆様に、あくまで、さとうしゅういち後援会で活動していただくという形ですが、大変お世話になりました。後援会事務局長は普通のサラリーマンですが、最大限、できることをしていただいたと思います。

旧来の組織型政党や団体とは違う形で、市民が個人として参加し、選挙を回すという集団が現れたことは広島の政治史上、画期的なことです。

世襲か、高級官僚か、公明党か、共産党か、いわゆる労働貴族か。そういう人しか、事実上、県議や国会議員になれないような広島の状況をリニューアルしたい。

今後とも、筆者は、労働組合役員などの活動を通じて、労働者の待遇改善や、介護サービス、教育現場の改善などの先頭に地域で立っていきながら、政治活動も続けます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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マスコミ各社は、「新潮45」休刊を当然の結果として報じた。たとえば、こんな調子だ。

◆朝日新聞
「限りなく廃刊に近い休刊」 新潮45を追い込んだ怒り
https://digital.asahi.com/articles/ASL9T5TGPL9TUCLV00S.html

◆毎日新聞
「新潮45」が休刊 杉田氏擁護特集で批判浴び
https://mainichi.jp/articles/20180926/k00/00m/040/026000c

◆日本経済新聞
新潮社が「新潮45」を休刊 LGBT表現巡り謝罪
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35725940V20C18A9000000/

産経新聞だけは、バッシングからの休刊を批判したという点で、正気だったようである。

◆産経新聞
新潮45の休刊 「言論の場」を閉ざすのか
https://www.sankei.com/article/20180928-N2XFSX4NARMOPIPLKLVJKAQEJM/

他の新聞は「デマ発のオラつき」を肯定したということだ。前にもたとえたが、それって、関東大震災後のデマによる朝鮮人虐殺を肯定的に報道するようなものでは? 死傷者は出てないが、民衆がデマに扇動されたという点では、現象としては同じ性質のものだ。

発端は、尾辻かな子氏の悪意ある要約デマツイートという、実にちっぽけなもの。そこから、杉田水脈氏と新潮社へのバッシングが拡大。しばき隊界隈がそれをネットリンチと複数のデモに利用。結果、「新潮45」は休刊。だが、それはLGBTの差別解消につながったのか?

5年近くが経過する間に、「あのときは新潮社に怒ったけど、杉田論文をちゃんと読んだら、差別的ではないとわかった」「尾辻かな子氏がデマを流しただけだと気づいた」と正気に戻った方々も大勢いる。もろちん、LGBT当事者含めての話だ。

それよりも前、尾辻かな子氏に呼応する形でしばき隊界隈がオラついた時点で、左派・リベラルをやめたというLGBT当事者は多い。見事にしばき隊が立憲民主党、共産党、社会民主党の足を引っぱった形になっている。それら左派・リベラル政党の支持率低下を見れば、うなずけることだろう。

しぱき隊系活動家に嫌悪を示すLGBT当事者も、目に見えて増えた。なにしろ、ツイッターでは、性的多様性の象徴であるレインボー・フラッグと、ピンク・水色・白の3色の縞のトランスジェンダー・フラッグの絵文字を名前の横につけて、他のユーザーを誹謗中傷、罵倒、恫喝しているのだ。嫌われて当たり前だ。

加えて、LGBT活動家がそれら反差別チンピラを諫めるどころか彼らと共闘しているのが、年を追うごとに明らかになってゆくのだから、活動家に反感をいだくLGBT当事者も激増した。

名前の横にレインボー旗とトランス旗を掲げてLGBT当事者にウザがられているしばき隊系活動家の一例

LGBTコミュニティからは、押しつけがましいLGBT思想やLGBT活動家を指す「虹臭い」という表現まで生まれる始末。LGBT活動家は尊敬されるどころか、軽蔑の対象にまで堕ちてしまった。

さらには「マスコミは『新潮45』休刊以来、露骨にLGBT活動家を恐れるようになった」という話も耳にするようになった。「LGBTは怖い」「批判できない」「迂闊に使えない」と。詳細を明かすわけにはゆかないが、某社の新聞記者がLGBT活動家批判につながる可能性がある記事を書いたところ、デスクに握りつぶされた、という話まで聞いた。

ほーら、だから、言わんこっちゃない! あのようなオラつきによる表現規制を肯定するのは、マスコミにとっては自縄自縛だと、普通の知性の持ち主ならわかるでしょうに! 一時の大衆の熱狂に同調するから、そんなことになる!

実際、LGBT活動家に対する批判をマスコミが握りつぶすのを、私は何度も目撃してきた。なにしろ、異性愛者の記者と違い、LGBTを巡るあれこれは他人事ではない分、熱心に情報を集める傾向があるのは、自分でもわかっている。私だけでなくLGBT当事者の多くは、ノンケマスコミにだまされない知識を持ち合わせている。

今やLGBT当事者の間では、「これでは『同和は怖い』の二の舞いだ。『LGBTは怖い』になっている」との認識を口にする者も少なくない。

似非同和行為に関しては、法務省HPにも、このようなページがある。

「えせ同和行為」を排除するために https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken86.html

法務省HPの「えせLGBT行為を排除するために」というページも待たれる

この記事の冒頭を、以下に抜粋する。

「えせ同和行為」とは

「同和問題はこわい問題である」という人々の誤った意識に乗じ、例えば、同和問題に対する理解が足りないなどという理由で難癖を付けて高額の書籍を売りつけるなど、同和問題を口実にして、会社・個人や官公署などに不当な利益や義務のないことを求める行為を指します。えせ同和行為は、国民に同和問題に関する誤った意識を植えつける大きな原因となっています。また、えせ同和行為の横行は、適正な行政推進の障害となるものであり、このようなえせ同和行為に対し、政府として一体的にその排除を推進しています。

ここから、卑劣な差別にさらされてきた被差別部落出身者を似非同和行為がさらに苦しめる結果になっていることが、うかがえる。LGBTを名乗ったうえでの「似非LGBT行為」が同様の過程をたどることは、想像に難くない。

さらには、このような「LGBTは怖い」という状況の中で、批判されるべき対象(=事実上、似非LGBT行為に及んだLGBT活動家)が表立って批判されないとなると、国民の間に不信感と不満が生まれるのは、自然な流れだ。

マスコミがしばき隊系活動家、LGBT活動家、立民・共産・社民におもねる「偏向報道」を続ければ、それだけ、国民の間には不信感と不満が蓄積されるというものだ。

活動家も政党党員も、やめようと思えばやめられる。しかし、LGBTはやめられない。性的マイノリティは性的マイノリティとして生き続けるだけだ。「転向」はない。転向できるのであれば、現在は人権侵害として批判されている「同性愛の治療」たる薬物注射や電気ショックは「治療」として成功していたはずだ。

今後、しばき隊は、LGBTの人権うんぬんを叫ぶのがおいしくなくなったときには、別のマイノリティに「寄生」すればよい。だが、世間から白眼視されるようになったLGBT当事者はどうなる? しばき隊系活動家とLGBT活動家が蒔いた種を刈る羽目になるのは、LGBT当事者だ。

しぱき隊と呼ばれる運動体は蝗害を起こすバッタの群れのように、運動を食いつぶしては去ってゆく。反原発運動、在日韓国・朝鮮人差別反対運動、沖縄の反基地闘争(食いつぶす前に、逮捕者を出してすぐさま撤退した模様だが)、そして、LGBT運動。次に彼らが寄生するのは、入管センターに収容されている外国人の支援運動のようなので、昔からその方面で地道な活動を続けてきた方々には、用心してほしい。

今後、我々LGBT当事者は、しぱき隊系活動家を運動に招き入れた愚かなLGBT活動家たちと「心中」する運命なのかもしれない。

天網恢恢疎にして漏らさず。LGBTの運動がこのまま自浄作用を発揮しないのならば、報いを受ける日は必ず来るだろう。(終)

2022年11月、5年間の粘着いやがらせの末、なぜかブロックで逃げたC.R.A.C.の中の人・野間易通氏

◎[過去記事リンク]LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40264
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40475
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40621
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40755
〈5〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40896
〈6〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44619
〈7〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45895
〈8〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45957
〈9〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46210
〈10〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46259
〈11=最終回〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46274

 

▼森奈津子(もり・なつこ)

作家。立教大学法学部卒。90年代半ばよりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラーを執筆。『西城秀樹のおかげです』『からくりアンモラル』で日本SF大賞にノミネート。他に『姫百合たちの放課後』『耽美なわしら』『先輩と私』『スーパー乙女大戦』『夢見るレンタル・ドール』等の著書がある。
◎ツイッターID: @MORI_Natsuko https://twitter.com/MORI_Natsuko

◎LGBTの運動にも深く関わり、今では「日本のANTIFA」とも呼ばれるしばき隊/カウンター界隈について、LGBT当事者の私が語った記事(全6回)です。
今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー

『暴力・暴言型社会運動の終焉』

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