広島高裁は3月29日、水源地ど真ん中の産廃処分場を容認してしまいました。

三原の本郷産廃処分場はJAB協同組合が経営。三原市と竹原市の水源地ど真ん中にあります。2018年4月に計画が持ち上がりました。住民の皆様は当然、猛烈な反対運動を展開し、三原市議会でも竹原市議会でも全会一致で反対決議が採択されました。しかし、広島県(知事・湯崎英彦さん)は、この処分場を許可してしまいました。そして、2020年5月から工事が始まっています。

これに対して、住民は広島県に対しては許可の取り消しの行政訴訟、そして事業者に対しては工事の差し止めを求める仮処分申請を提起しています。

2021年3月に広島地裁は工事差し止めを認めましたが、事業者が異議を申し立てました。そして、地裁は2022年6月に業者の異議を認めて、産廃処分場の稼働を容認してしまいます。それに対して住民が高裁に抗告していました。

◆群馬や長野からゴミが広島へ流入

差し止めを求めている原告のお話によると、今現在、高崎ナンバーや松本ナンバーの車が大量に入ってきているそうです。

「高い日本の高速道路料金を払ってまで群馬や長野から来ているゴミって何ですか? よほど危ないものなのではないのですか?」と原告の一人は語気を強めておられます。

そのゴミは、「ほとんど、開封して検査している様子もなく、そのまま重機で埋め立てられている」ようです。

広島は全国でも産業廃棄物処分場が多くあります。特に、安定型処分場は二番目に多くなっています。この安定型というのが曲者で、シートすら敷かずに建前は、安全なゴミを搬入するはずなのですが、現実には危険物も運び込まれ、何か起きない限り、ほとんど検査もされない。いい加減な運用になっているのは、皆様もご存じと思います。その安定型処分場が広島では多いのです。それは、広島に他の都道府県のような水道水源保護条例や環境配慮条例がないからです。かくて、規制が緩い広島を目指して日本中からゴミが集まっているのです。

 

◆まさかの不当決定 「伊方原発」に続いて「やられた!」

2023年3月29日、桜が満開の中、裁判所の前で、「満開の桜のような決定があるといいね」と原告や支持者の筆者らは雑談していました。しかし、決定が言い渡される14時過ぎ。険しい表情で若手弁護士が法廷から出てきます。

「不当決定」

筆者も頭の中が真っ白になり、その時の状況をよく覚えていません。

実は、筆者は選挙準備などで時間がなくて目撃できていませんが、3月24日(金)には、同じ高裁が伊方原発広島裁判の運転差し止め仮処分を却下しています。それに続いて「やられた」感でいっぱいでした。

そうした中、弁護団の山田延廣弁護士が、決定を受けて、コメントしておられました。

「みなさまの運動は正義にかなった運動。行政や裁判所までがそれを認めないとは。裁判所や行政の決定に屈せずに里山や水を守るために闘っていこう」などと呼びかけました。

原告や支持者は差し止め絶対阻止をシュプレヒコールを上げて決意表明しました。


◎[参考動画]不当決定 本郷産廃処分場差止ならず 2023年3月29日 広島高裁

◆「水は鉛直にしか染み込まない?!」常識外の決定

ざっくり申し上げると、裁判所は、
・有害物質が付着・混入して処分場に運び込まれる恐れ
・それらが処分場の外に染み出す恐れ
については認めました。

ところが、処分場と井戸の距離が700mあって、高低差が60mしかないことを理由に、「井戸水に有害物質が入る」恐れがあることは、住民側に立証責任がある、としました。

裁判官は、「水は鉛直にしかしみ込まない」といういわば、常識外の決定をしました。

たとえば、介護現場や子育てを経験していればわかることですが、尿を漏らした場合、そこだけではなくて、オムツに広範囲に尿が広がりますよね?筆者は呆れてしまいました。

弁護士も「負けた気がしない」といっておられました。原告代表の方も「高齢者は、先が短いから汚染された水を飲まなくてもいいかもしれない。だけど、子どもや孫はそうはいかない。だから頑張る。」という趣旨の決意を表明されました。

◆水道水源保護条例や環境配慮条例の制定に全力

裁判闘争と並行して、立法も大事です。今の裁判所は残念ながら、行政に対しては、法律で明確に禁じていないことを禁じない判決しか出しません。そうした中では、明文で、行政に対して、産業廃棄物処分場などを許可する際に、環境に配慮することを義務付ける条例が必要です。他の自治体ではすでに制定されているところも多い「水道水源保護条例」や広島弁護士会も提言している「環境配慮条例」などです。原告の皆様もそうした条例の制定運動もされています。

筆者の地元・安佐南区でも上安産廃処分場が外資に買収されて巨大化しています。さらに、同処分場の盛り土が崩落していたことも発覚しています。産廃処分場規制は喫緊の課題です。筆者も広島県議会においての条例制定に全力を尽くす所存です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

松岡 しばらくご無沙汰していました。皆さんにはこれまで「しばき隊」関係の取材をお願いしていましたが、あの一件は依然動きがあるものの、今年は別のテーマで取材をお願い致します。

A 別のテーマというと、どんな分野でしょうか?社長。

松岡 「2023年の阪神タイガース」を徹底的に取材してください。

一同 え、え、え!

B 社長、鹿砦社は本社が甲子園のスコアボード裏100mくらいの至近にあるのは、そりゃそうですが、阪神戦の甲子園内での取材は「報道パス」がないとは入れませんよ。

C 阪神タイガース、タイガースは関西人なら誰でもファンですが、俺今までスポーツ取材なんてやったことないし、いきなりのことで。できるんですか?

松岡 そこを、なんとかしてくださるのがみなさんの力だと信じています!

D いや、社長、気持ちは分かりますけどね。僕らの立場も考えてくださいよ。虎風荘(阪神の若手が入る寮)も近く尼崎に移転するらしいし、鳴尾浜のグランドも尼崎に移転でしょ。Bが言うように甲子園の取材パスは、うちらレベルの「フリー」じゃ手に入りませんよ。どうすりゃいいんですか?

松岡 その点はご心配なく。

B ということは、既に阪神球団に掛け合って、手配済みいうことでうすか?

松岡 私はそんなちゃちな真似はしません。皆さんには堂々と行ってもらいます。

A だから、具体的にはどうしろと?

松岡 岡田監督とは1月末に顔合わせろ済ませました。だから大丈夫です。

一同 本当ですか!ほんまかいな!?

松岡 本社の近くに、皆さんを時々連れてゆくお好み焼き屋さんがありますね。私があそこで食事を終えて店を出ようとしたときに、ちょうど岡田監督が店に入ってきたんです。

B ほんまの話ですか?

松岡 本当です。岡田監督もあのお好み焼き屋さんは馴染みのようでした。せっかくなので激励の握手をしておきました。

C その時の写真って社長のフェースブックに載ってましたっけ?

B それは貴重やわ。岡田監督と関係ができたんやったら、取材も楽にできるから安心しました。

D やっぱり社長「持ってます」ね。全国広しといえども、昼飯食べに行って、そこで岡田監督にばったり会う出版社の社長はそうはいませんからね。それで、阪神球団にはどうやって連絡すればいいんですか?

松岡 は?

D いや、だから 俺たちが「鹿砦社特別取材班」として「2023年の阪神タイガース」を取材するのに、岡田監督と関係ができた社長のラインから、どうやって阪神球団に接触すればいいか、と聞いているんです。

松岡 それはな、うん。まあな。会った(おうた)んは、会った(おうた)んで間違いないんよ。おお。せやけど、突然やんか。牽制球けえへんはずの時に来よったようなもんやんか。おお。あれよ。食べ終わってな、昼からの仕事、どないしようかなあ。考えるやんか。おお。そないしとったら、急に岡田が現れたんよ。うん。びっくりするやんか。びっくりするわな。写真?ほんなもん撮れるかいな。うん。「今年は頑張って」いうてな。おん。しっかり握手はしといたわ。おん。それ以上どないせい、いうんや。そりゃ無理やろ。あんな場合。おおん。

B 社長、急に岡田監督が入ってますけど、誤魔化さんといてください。写真は撮ってない、いうことですか?

松岡 せやから、言うてるやんか。おおん。そんなもん。急にできへんよ。うん。自分やったらできるか?

B いや、自分やったら、ってそういう問題じゃないです。

C 社長、結局岡田監督と鉢合わせしたのは本当なんですね。

松岡 ほんまよ。おおん。びっくりしたけどな。おおん。

D (小声で)おい、社長から岡田監督が抜けないぞ。

A だったら、社長を媒介して、岡田監督に疑似インタビューから取材はじめましょうか。

D この際、仕方ないな。いまちょっと走って例のお好みや参に確認してきたんだけど、岡田監督が常連なのは間違いないって。

B フリーのフォトジャーナリストにはあんなにきついのに、自分は写真一枚なしということですか?

D もう過去の話しても仕方ないだろ。A、岡田監督への疑似インタビュー早速はじめてくれ。

A わかりました。今シーズンから再び阪神タイガース監督に就任した岡田監督へのインタビュー、松岡社長の体を媒介にして行います。
監督、開幕3連勝おめでとうございます。

松岡 おお、まあ、よかったわな。打線が全員2試合でヒットでたんわよかった。おおん。ゆうてもまだ3試合やから、開幕ダッシュとかは大げさやけどな。

A 作戦面でも岡田采配が光りました。リクエスト要求で判定が覆らないと、すぐにランナーを走らせたり、1ストライクから原口選手を代打に送り、1球目をホームラン。昨年までとの違いが際立ちましたね。

松岡 際立ったというかな。やることやってるだけよ。おおん。そりゃ攻撃は敵が嫌がることするのが、当たり前やん。おおん。まあ、打線は水物やけど打てたんはよかったわ。おおん。

A 抑えの湯浅投手、若干厳しいシーンもありましたが投手陣はこの3連戦いかがでしたか?

松岡 まあ、結果ゼロやから。湯浅は。おおん。悪い時もありますよ。でも結果ゼロはよかったわな。おおん。さすがに、3連投はさせられへんから。今日はキャッチボールもさせへんかったし。青柳も才木もいっぱいいっぱいまでは引っ張ってないし。まあ秋山は御覧の通りで。おおん。

A 次の広島戦に西勇投手や伊藤投手を温存できる投手起用は、先発陣の層の厚さを感じさせます。

松岡 層の厚さいうよりも、個人個人が自分の仕事わかってる、いうかね。自分の役割ちゃんとまっとうしてくれたら結果はついてくるゆうことや。おおん。けど、波はあるよ。誰にでもな。

A 今シーズン阪神ファンは開幕3連勝で、ますます期待が高まります「ARE」を期待していいでしょうか?

松岡 いやいや、まだ3試合やんか。それや、あれよ「ARE」はね、もちろん結果やから。まだそんなもん、意識する時期でもないし。目の前の試合を勝っていくのがな、まあ、それだけよ。おおん。

A 放送席、放送席、以上松岡社長の体を借りて、岡田監督のインタビューでした。

D 上出来じゃないか。

B でも、こんな現場当たらずの取材で記事に出来ます?

C 社長には憑依の体質もモノマネの才能もなかったでしょう。その社長にこれだけ饒舌に喋らせるのは、やっぱり岡田監督の力だと思っていいんじゃないでしょうか。

A 自分で聞いといてなんだけど、複雑です…。

D そうだな。毎回こんな原稿じゃ使えないな…。

松岡 皆さんなにをしょぼくれた顔をしているんですか。今年は阪神タイガース取材をよろしくお願いしますよ。

一同 は、はい。(つづく)

特別取材班付記
社長松岡は、たしかに1月末に岡田監督と出くわしていた。しかし上記に報告した内容は、事実のほか一部「想像」、や「妄想」も混じっていることをご了解いただきたい。順次続報をお伝えする。

7日発売! 月刊『紙の爆弾』2023年5月号

◆ウクライナ戦争の本質を問う

今日、世界の政治はウクライナ戦争を離れてはあり得ない。

ウクライナ戦争がどうなるかで、各国の政治も少なからず、影響を受けるようになる。

それで、この戦争の行方を探る様々な試みがなされている。

この戦争がどうなるか、それを究明することは、この戦争がいかなる戦争か、その本質を離れてはあり得ない。

それについては、これまで多くの人々がプーチン・ロシアによるウクライナ侵略戦争だと思ってきた。

しかし、このところの戦争の進展は、どうもこの戦争が単純なロシアとウクライナの戦争ではないことを教えてくれている。

ウクライナに対する米欧各国による武器の供与、経済的支援とロシアに対する制裁、それに同調せず、陰でロシアを支える中国など非米諸国の動き、そしてそのどちらにもつかず離れずの動きを示す国々、どうやらこの戦争をめぐって世界は大きく二分裂、三分裂の様相を呈してきている。

ここで、米欧、それに日本を加えた勢力がいわゆる旧帝国主義諸国なのは誰の目にも明らかだ。

それに対して、中ロなど非米諸国は、何なのか。これについて、一つは、中ロを後進の新興帝国主義と見ながら、それと結びつく非米諸国を一つの帝国主義ブロックとしてとらえる見方、もう一つは、中ロなど非米諸国を中ロまで含め、一つの非米脱覇権、反覇権勢力と見る見方があるのではないだろうか。

この中ロ・非米諸国に関する二つの見方の違いはどこから生まれてくるのか。それは、主として時代のとらえ方の違いによっているのではないかと思う。前者は、現時代をいまだ帝国主義、覇権の時代ととらえており、後者は、帝国主義、覇権時代の終焉、脱覇権時代の到来ととらえているということだ。

この前者と後者、二つの見方の違いによって、ウクライナ戦争をどうとらえるか、その本質も全く違ったものになる。前者の見方からは、戦争は、先進帝国主義勢力と後進帝国主義勢力による帝国主義間戦争になり、後者の見方からは、覇権か反覇権か、その雌雄を決する戦争になる。

◆現時代をどう見るか

時代分析の基準はいろいろあると思う。

しかし、その中でももっとも規定的なものは、人々の意識ではないかと思う。

人々の意識が転換すれば時代が転換し、時代の転換は、人々の意識の転換にもっともよく現れるようになる。

今、人々の意識の転換でもっとも顕著なのは、米覇権に対する意識の変化だ。

かつては、米国が世界のリーダーだった。米ソの冷戦時代にあっても、リーダーは米国だった。ソ連東欧圏の人々の中でも、それが潜在的にあったのではないだろうか。

しかし、今は違う。

米国が世界のリーダーだと思っている人は、もはや決定的に少数派になっているのではないだろうか。

世界的範囲での自国第一主義の台頭は、偶然的な「ポピュリズム」ではない。確固とした世界史的趨勢になっている。

ウクライナ戦争にあっても、米国によるウクライナ支援の呼びかけに対し、それに従わない自国第一の風潮がヨーロッパだけでなく当の米国をはじめ全世界に生まれているのはそのことを示していると思う。

この時代的転換の時、ウクライナ戦争をどう見るか。

古い帝国主義間戦争と見るのは無理があるのではないだろうか。

◆ウクライナ戦争の行方を予測する

ウクライナ戦争の行方を見定める上で、そのメルクマールとしてよく言われるのは、ロシアとウクライナ双方の武装状況の比較だ。特に、米欧からのウクライナへの武器供与状況がどうなるかで戦争の行方が云々されている。

戦争において、武器が占める比重が大きいのは言うまでもない。しかし、それで戦争の勝敗が決定されるかと言えば、そうではない。戦後、米国が引き起こした戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン・イラク戦争、等々で米国が勝てなかったのはなぜか。その原因が武装の劣勢にあったのでないのは自明のことだ。それは間違いなく、他国を侵略する者と自国を守る者との意識の違いにあった。

ここから見た時、ウクライナ戦争はどうか。

そこで確認すべきは、この戦争の本質だ。重要なのはこの戦争がロシアによるウクライナへの侵略戦争でも帝国主義間戦争でもないことだ。

プーチン・ロシアは、なぜあの「特殊軍事作戦」を起こし、ウクライナに攻め入ったのか。それについて、プーチン自身、ウクライナの中立化、非武装化、非ナチス化をその目的として挙げている。すなわち、米欧覇権によるウクライナのNATO加盟の促進、対ロシア軍事大国化、ナチス化の推進を止めさせるための「作戦」だったということだ。

だが、ウクライナ戦争の進展は、先述したように、この戦争の持つ意味がそれに留まらず、より大きく広がっているのを示している。米欧日帝国主義覇権勢力と中ロを含む脱覇権勢力間の世界を二分する世界史的な戦いだと言うことだ。

実際、この数年間、米国は中ロを対象に衰退する米覇権を建て直すため、その覇権回復戦略として、「米対中ロ新冷戦」を、二正面作戦を避け、「米中」は公然と、「米ロ」は非公然に敢行してきていた。プーチン・ロシアによる「作戦」は、その米国を二正面作戦に引っ張り出し、覇権対脱覇権の世界的な戦いに決着をつける、そのような目的を持って引き起こされたのではないだろうか。

この目的は、若干の紆余曲折は経ながら、大きなところでは現実化されてきているように思う。そのような視点からウクライナ戦争を展望するとどうなるか。

この戦争が持つこうした本質は、米英覇権のプロパガンダがいかに巧妙であっても、それを打ち破り、ロシアの人々、ウクライナの人々の意識を変えていくと思う。この戦争は、ロシアにとってあくまで正義であり、ウクライナにとって、どこまでも米欧覇権に代理戦争をやらされる屈辱に他ならない。

 もちろん、こうした意識がロシアやウクライナの人々皆のものになるのには時間が必要かも知れない。しかし、何ものもこの戦争の持つ本質をごまかすことはできず、ロシアとウクライナ、そして全世界の人々の意識を欺くことはできないだろう。

小西隆裕さん

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

WHO(世界保健機関)が新型コロナワクチンの接種指針を改定。健康な成人への追加接種を非推奨としました。日本国内では、政府が2020年~21年の間に購入したワクチン8億8200万回分・4兆2000億円の購入に、会計検査院が「算定根拠が確認できない」と指摘。WHOは「効果が低い」ことを理由として挙げており、顕在化するワクチン接種による被害はいまだ認めてはいないようです。もう十分に儲けた、あるいはその目的を一定程度果たしたという判断でしょうか。会計検査院が指摘するまでもなく、日本人全員の8回分とは、狂気の沙汰としかいえず、政府の追加接種推進はその「在庫処分」と言われてきました。

 

4月7日発売! 月刊『紙の爆弾』2023年5月号

なお、本誌前号(4月号)で代表の藤沢明徳医師にインタビューした「全国有志医師の会」はTwitterで、「mRNAワクチンというコンセプトそのものが決定的な過ち」「抗原提示した全身の細胞が免疫による自己攻撃を受ける可能性は医学の常識」と主張しています。WHOの指針改定を歓迎する向きは多いものの、こうしたことを踏まえれば、現在のタイミングでWHOが発表すること自体が「予定通り」だったとみることも可能でしょう。

5月号で重点的に採り上げた「昆虫食」。その背景として、1キロの肉をつくるのに牛は11キロ、豚は7キロ、鶏は4キロの飼料が必要なのに対しコオロギは2キロといった、飼料変換効率をもって説明がなされます。鶏肉も十分に効率の良い食肉といえるものの、ここにきての鳥インフルエンザ騒動。すでにいくつかの指摘があるとおり、検証の必要がありそうです。本当に「肉かコオロギか」なのか。そもそも食料危機とは何かも考えなければなりません。本誌記事に「先人たちが昆虫を食べてこなかったのは理由があるに決まっている」との指摘があるとおり、歴史の中で積み重ねられてきた知見を軽視すべきではなく、同時に私たち個人としても、「食を選ぶ」ことに主体的でなければなりません。

今国会で論戦が繰り広げられている放送法解釈変更問題。安倍晋三政権の言論統制として考えたとき、テレビがターゲットとなったことも、ポイントとして挙げられるのではと思います。テレビは自民党が重視する「B層」に大きな影響力があるメディアです。「サンデーモーニング」や「モーニングショー」といった番組は、決して政権批判で突出した番組ではありません。とくに「モーニングショー」は、いつになったら“報道”をやるのかと呆れるWBCラッシュ。視聴率を目当てにコロナ煽りを加速させたことは、昨年12月号で詳述しています。

そのWBCの間に、岸田文雄首相がウクライナを訪問。世界が停戦に向けて進むべきタイミングで55億ドル(約7400億円)の追加支援とは噴飯ですが、その金も結局は西側の軍需産業に流れるものです。この流れにあっての5月のG7広島サミット。これが日米「核共有」すなわち自衛隊の核ミサイル部隊化を約束するものになると、今月号で“証拠”をもって指摘しています。ほか、企業で進行する新型「マスク・ハラスメント」やベストセラーとなった『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)のウソなど、今月号も独自の切り口でさまざまな内容をお届けします。

「紙の爆弾」は全国書店で発売中です。ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年5月号

ツイッターのハッシュタグは、デジタル・タトゥー収集には非常に便利なもので。しばき隊系ゲイ活動家・平野太一氏がデモを呼びかけるために作成したタグ「#0925新潮45編集部包囲」をクリックすれば、一発で賛同者のツイートがザクザクヒットする。

その中から、まずは、ハッシュタグを拡散させてデモ参加者を募る活動家のスクショをいくつかご紹介したい。

しばき隊界隈ゲイ活動家、ハスラーアキラこと張由紀夫氏

反差別統一戦線東京委員会こと、不倫相手にあてた愛の「ぱよちんツイート」で有名な久保田氏もやる気まんまん!

しぱき隊界隈と共闘するゲイ活動家・宇田川しい氏もこの通り

しばき隊系LGBT団体TOKYO NO HATEは地図つきツイートでご案内

そして「#0925新潮45編集部包囲」を使ったツイートのウェブ魚拓は、次の二種類が確認できる。

https://archive.is/qEy1b
https://archive.is/aqYUZ

9月21日、しばき隊界隈とLGBT活動家がデモに向けて盛りあがる中、突然、新潮社公式サイトで「『新潮45』2018年10月号特別企画について」と題する社長のコメントが発表された。

新潮社公式サイトの社長声明。よく見ると謝罪してない!(笑)

あーあ。こんなふうに譲歩の姿勢を見せること自体が、反差別チンピラにとっては成功体験となり、よけいに彼らはオラつくようになるのにねぇ……。何度でも指摘させていただくが、始まりは、尾辻かな子氏のほぼデマである要約ツイートであり、だったら、新潮社側は堂々と尾辻氏に抗議すればよいことだ。

ただ、これはよく見ると、お詫び文ではない。そもそも、デマ由来のバッシングに謝罪してあげる義理などないだろうし、安易な謝罪は、歴史ある出版社が似非リベラルによる言論統制に屈したことになってしまう。

朝日新聞の記事にも、これに関しては「同社宣伝部は『世間から批判を受けたことに対しての見解であり、謝罪ではない』としている」との記述があるが、当然のことだ。

◆朝日新聞
新潮45への反発、社内も作家も書店も 社長が異例見解
https://digital.asahi.com/articles/ASL9P5V9HL9PUCLV015.html

新潮社としては、社長声明で騒ぎの沈静化を狙ったのだろう。しかし、反差別チンピラにとっては新たな難癖のネタをゲットしたことになり、火に油をそそぐ結果となった。

23日には、何者かが新潮社近くの看板に落書きをする。「Yonda?」というコピーの上に、「あのヘイト本、」という言葉がつけ加えられ、「あのヘイト本、Yonda?」とされたのだった。

しばき隊系活動家・ゆーすけ氏のツイート。行動が早いねっ!(笑)

あいかわらず、反差別チンピラはやり方が陰湿だ。健全な議論ができないから、このようないやがらせに及ぶ。

このニュースを、ハフポストは次のように報じた。

◆ハフポスト日本版
新潮社の看板に「あのヘイト本、」Yonda?とラクガキ 安藤健二
https://www.huffingtonpost.jp/2018/09/23/shincho-yonda_a_23539497/?utm_campaign=share_twitter&ncid=engmodushpmg00000004

ここで撮影者として紹介されているゆーすけなる人物は、ズバリしばき隊系活動家だ。

作家・宮沢章夫氏のツイートも紹介されているが、このいやがらせ行為を肯定的に評価していて、「なんだかなぁ~」である。

「僕を担当してくれる新潮社の編集者を僕は信頼している。彼らに多くのことを教えられた。その上で、この看板について言えば、批評性の高いアート作品として面い(ママ)と言わざるをえない」

いやがらせも「アート」と呼べば、許される?

宮沢氏もまた、杉田論文をきちんと読んでいないのだろう。ただ、ハフポスト記者氏もさすがに手放しで絶賛は危険だと思ったのか、記事は「なお、看板へのラクガキは器物損壊罪に当たる可能性がある」との一文で締められている。

そりゃ、そうですよね。ハフポストさんもこの騒ぎの扇動の一翼を担ったとはいえ、犯罪行為は肯定できませんよね。そもそも、今後、反差別チンピラのオラつきは、いつ、どんなきっかけで、ハフポストさんに向かうかもわかりませんしねっ!(にっこり)

9月25日、私は思案していた。夜7時から、しばき隊界隈呼びかけの新潮社包囲デモが決行に移される。その後、新潮社が謝罪なり編集者の処分なり「新潮45」休刊なりの措置をとったら、反差別チンピラにますます成功体験を与えることになる。それは絶対に避けてほしいところだ。言論の自由のためにも。

そんな夕方、突然、ニュースが入ってきた。「新潮45」の休刊が決まった、と。

なるほど、いいタイミングだ。反差別チンピラにはデモ中止の時間を与えず、「新潮45」休刊でトカゲの尻尾切り。「デモに屈して休刊」という形にしないためには、この日時での休刊発表がベストだったはずだ。

◆新潮社「新潮45」休刊のお知らせ
https://www.shinchosha.co.jp/news/20180925.html

この数時間後にしばきデモが開催されたわけだが、「新潮45」休刊が発表された後では、反差別チンピラ諸氏の高揚感も大いに削られたことだろう。それを思うと、ついつい失笑が洩れるというものだ。

とりあえず、ここで、デモに参加した反差別チンピラ諸氏のツイートを何点かご紹介したい。

呼びかけ人の平野太一氏。この夏が人生の最頂点であった予感……

「うるさい」という苦情自体が「敵」の策略であるかのようにツイート

古参のしばき隊系活動家も、今では名前の隣にトラメガ(カウンター行為の小道具)と虹とトランス旗。LGBT当事者には迷惑千万!(苦笑)

森に延々と粘着いやがらせをしてLGBT活動家の評判を下げているしばき隊系ゲイ活動家・森川暁夫氏も大活躍?(笑)

元々、「新潮45」は売上からすると、休刊が近い状態だった──という噂も出版業界では流れた。新潮社にとっては休刊にしても惜しくはない雑誌だった、と。事の真偽はわからないが、ありそうな話ではある。

休刊のお知らせにもあるではないか。「ここ数年、部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めません」と。

結局、しばき隊界隈にとって、「新潮45」に関しては「休刊に追い込んでやった」という勝利宣言にはつながらなかったし、バッシングの先頭に立った平野太一氏も、7月27日の「杉田水脈の議員辞職を求める自民党本部前抗議 」のときほど注目されなかったのである。(つづく)

◎[過去記事リンク]LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40264
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40475
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40621
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40755
〈5〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40896
〈6〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44619
〈7〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45895
〈8〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45957
〈9〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46210
〈10〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46259
〈11=最終回〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46274

 

▼森奈津子(もり・なつこ)

作家。立教大学法学部卒。90年代半ばよりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラーを執筆。『西城秀樹のおかげです』『からくりアンモラル』で日本SF大賞にノミネート。他に『姫百合たちの放課後』『耽美なわしら』『先輩と私』『スーパー乙女大戦』『夢見るレンタル・ドール』等の著書がある。
◎ツイッターID: @MORI_Natsuko https://twitter.com/MORI_Natsuko

◎LGBTの運動にも深く関わり、今では「日本のANTIFA」とも呼ばれるしばき隊/カウンター界隈について、LGBT当事者の私が語った記事(全6回)です。
今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー

『暴力・暴言型社会運動の終焉』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08VBH5W48/

新聞業界の業界紙『新聞情報』(2023年3月8日付け)が、日販協政治連盟(日本新聞販売協会の政治団体)の新理事長に就任した深瀬和雄氏の集会での発言を紹介している。その内容は、同政治連盟が、内閣府や政界との交渉を通じて、業界の利益を誘導する方向で動いていることを示している。図らずも政界・官界と新聞業界の関係を露呈している。

重要部分を引用しておこう。

 日販協政治連盟設立の目的は、業界に必要な政治活動の実施だが、平成8(1996)年4月に発足して以来、27年にわたり自民、公明両党の新聞販売懇話会所属の議員を中心に、新聞販売業界との連携強化が図られていることは、ご承知と存じる。また、縦の系統会に対し、業界を横につないだ日本新聞販売協会は、内閣府認定の公共活動を推進している。

 一方、本同盟は、行政府に対し再違反制度と特殊指定の重要性周知と、新聞業界にかかわる政策要望が目的だ。最近(のテーマ)は、消費税軽減税率の適用問題だったが、それらを伏せ、国政選挙を応援することが目的なので、全国の会員の声をしっかりと聞き、それを衆参両院議員にお伝えし、国政の場に反映させ、販売店の皆さんが働きやすい経営環境作りにつなげることが、最大の事業理念だと認識を深めた。

出典:株式会社弥生

新聞に対する消費税の優遇措置や再販制度を堅持するために、政界と親密な関係を構築する方向で活動していることを自ら認めているのである。言葉をかえると新聞業界の経済的な繁栄を政治家の手に委ねているのだ。当然、こうした関係の下で、公権力機関と一線を画した報道ができるのかという致命的な疑問が浮上してくる。

◆「中川先生に恩返しをする機会が近づいております。」

日販協が政治活動に着手したのは、1980年代の後半である。国際的な規制緩和の流れの中で、日本でも構造改革の中で再販制度を撤廃する動きが浮上してきた。これに危機感を抱いた新聞業界が政界への接近をはかる。とはいえ新聞社はジャーナリズム企業であるから、表立った政界工作はできない。そこで政界工作の実働部隊として乗り出してきたのが、日販協だった。それを受けて、中川秀直議員(元日経新聞記者)や水野清(元NHK)といった議員が、自民党新聞販売懇話会を設立した。

中川秀直議員(当時)、出典:wikipedia

1990年代に入ると、日販協会は「1円募金」と呼ばれる方法で販売店から政治献金を集めるようになった。献金の割り当て額は、新聞1部に付き1円である。従って例えば3000部を配達している販売店であれば、3000円の献金となる。4000部を配達している販売店であれば、4000円の割り当てとなる。

政治献金の送り先は、経理資料としては残っていないが、それを示唆する記事はある。たとえば1993年5月31日付けの『日販協月報』は、当時の郡司辰之助会長の次の発言を掲載している。

中川先生に自民党新聞販売懇話会をつくっていただき、同時に代表幹事として奔走いただいたおかげて我々の希望や願いがようやく聞き届けられるようになったわけです。現在、業界は多くの難題を抱えております。(略)事業税の特例措置は、手数料の増額や本社の補助金ではまかない切れない程の恩恵を全国の販売店にもたらしておりますが、これも中川先生のお力によるものと言っても過言ではありません。その中川先生に恩返しをする機会が近づいております。

その後、日販協の政治活動は、新たに設立された日販協政治連盟へ引き継がれる。同政治連盟に対して、政治献金を提供してきた事実は、政治資金収支報告書にも記録されている。公然の事実である。

次に示すのは、2021年度の献金実態である。       

◎[参考記事]新聞業界から政界へ政治献金598万円、103人の政治家へばら撒き、21年度の政治資金収支報告書で判明 

◆メディアコントロールの構図

新聞業界が政界工作と縁が切れない最大の理由は、再販制度や消費税の優遇措置の殺生権を政界が握っているからにほかならない。逆説的に考えれば、公権力機関は新聞社の経営上の弱点に着目すれば、暗黙のうちに紙面内容をコントロールすることができる。

このような構図の中で、新聞記者がいくら士気を高めても、志を正しても、公権力にメスを入れる報道は期待できない。ほんのちょっと批判することはできても、取材対象に留めを指すことはできない。

新聞の紙面内容をいくら批判しても、新聞関係者が公権力機関との癒着を断たない限り問題は解決しない。ジャーナリズムの没落は、実は単純な構図なのだ。しかし、この点はタブー視されているので、誰もタッチしない。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

地方都市のベッドタウン、団地に暮らす中学生にとって、ラジオから流れる音楽やそれらを演奏するミュージシャンは、間違いなく「別世界」。都市で開催されるコンサートにでも出かけない限り、直接メロディーを耳にしたり、本人の姿を目にするチャンスは皆無だった。日本のミュージシャンであれ、外国のミュージシャンであれ等距離で「別世界」。レコード屋かラジオ、テレビだけが接点として「別世界」と繋がっている日々の記憶を共有できる読者は少なくないのではないだろうか。

「別世界」の住人はどんな人たちなのだろう。「別世界」ではどんな人間関係が織りなされているのだろう。もう少し年齢を重ねたら、あるいは「別世界」の片隅でも覗くチャンスが訪れるのだろうか。それとも「別世界」は太陽と地球のように等距離を保ちながら、永遠に接点を持つことはないものか。

「別世界」には多種多彩なひとびとが暮らしているのを知っていても、その中で坂本龍一氏は、わたしにとって別格の存在だった。どうして坂本氏がわたしにとって別格の位置を占めるに至ったかの経緯は、この際省こう。でも坂本氏が「別世界」住人の象徴的存在であったとしても、多くの読者は疑問には思われないのではないか。70年代半ばからあっという間に「世界のサカモト」に上りつめた人物、いったい何を言いたいのかほとんど訳が分からなかったが『戦場のメリークリスマス』でデビッド・ボウイと共演し、有名なあの旋律を産み出した坂本氏。

坂本氏のステージではなかったが、たしか矢野顕子のコンサートでキーボードを弾いている姿を目にしたのが、初めてだっただろうか。わたしは大阪の私立大学に通う大学生だった。ステージと客席の間に物理的な仕切はないが、やはりステージ上のミュージシャンと数千人観客の間には、太陽と地球同様の距離があるものだな、と感じた記憶がある。

時は流れて1999年10月10日、千葉県成田市の某ホテルである著名人を囲むパーティーが開催されていた。わたしは当時の職場の同僚二人と一緒に、そのパーティーの末席に座っていた。参加者は200名ほどであっただろうか。ところどころに政財界や芸能界の著名人の姿を確認できたが、予期しないことにいわば主賓席に当たる位置に坂本氏の姿があった。わたしは当時の同僚に「このパーティーが終わったら、わたしが坂本龍一を口説くから」と小声で伝えた。

いったい当時のわたしは何を考えていたのだろうか。しかし、迷いはなかった。パーティーが終了すると坂本氏は数人の政治家や、財界人と歓談していたがやがて会場の外に向けて歩み始めた。わたしは名刺を手渡し手短に自己紹介を済ませると「数分だけお時間を頂けませんか」と坂本氏にお願いをした。坂本氏はきょとんとしながらもわたしの要望に応じて、わたしの「お願い」を聞く時間をわたしに与えてくれた。わたしの要求は乱暴極まるものだった。簡単にいえば「わたしの職場にお越しいただきピアノ演奏をしてください」だ。こんなことをよくぞ誰にも相談もせず急に思い立ち、ずうずうしくもご本人に頼んだものだな、と今になってはあきれ返るばかりだが、あの時のわたしにはそれが不可能には感じられなかった。

坂本氏と筆者

「世界のサカモト」にはタイトなスケジュールが組まれているのが常識で、わたしの依頼は半年強あまり先のこととはいえ、唐突に過ぎるものだ。なんの所縁も、知人もいない、片田舎の大学職員が突然現れてそんな要求をして坂本氏の方がむしろ驚いていたのではないだろうか。即答はなかったが坂本氏はわたしのお願いをしっかり聞いてくれ、後日連絡するからと約束してくれた。

それから坂本氏のマネージャーと幾度かメールのやり取りをして、ピアノ演奏は諸般の事情で難しいが、「全面的に協力をする」との答えを頂いた。太陽と地球の距離が急速に変化した瞬間だった。結果わたしは約1週間近くかなりの時間坂本氏にお世話になることができた。そう多くの時間話をしたわけではないが、下世話な話「ノーギャラ」でわたしのお願いに応じて頂けた。

あれはわたしの空想の時間だったのだろうか。23年が経て現実感は限りなく薄い。しかし空想ではなかった。思い起こせば「何だ!この音響は!」と怒られもしたし、機嫌がいい時には「僕にはフィールドが好きだから、ここの学生さんと一緒にフィールドワークをするのも面白いよね」と持ち掛けてくれたり…。

中学生時代の「別世界」がいっときわたしの人生の実時間と合流した。そこには坂本氏の絶大なご好意があった。

数年前にがんに罹患しても坂本氏は治療時以外仕事を休んでいた様子はない。昨年「これが最後になるかもしれない」とみずから語ったNHKで収録をしたコンサートを世界配信していた。部分的に視聴したがわたしは最後まで、見ることができず、途中で視聴を止めた。

田舎の中学生が憧れた「別世界」を実時間に転嫁してくれた坂本氏が逝った3月28日わたしは強烈な胃痛と体調不良にあえいでいた。わたしの体はときにそのような反応をするのだ。坂本氏のTwitter、Facebookには“January 17 1952-March 23 2023 “ が。

わたしの中に残っていた、アドレッセンスの全史と残滓がMarch 23 2023で完結した。


◎[参考動画]Merry Christmas Mr. Lawrence / Ryuichi Sakamoto – From Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『季節』2023年春号(NO NUKES voice改題)福島第一原発事故 12年後の想い

2018年9月18日、特集「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」掲載の「新潮45」10月号が発売されたが、それをきっかけに健全な議論が始まることはなく、メディアは「新潮45」叩きに終始した。

しばき隊界隈の反差別チンピラがオラつき、マスコミがそれに加担し、政治家や知識人や文化人までが無知蒙昧な大衆と化して新潮社をバッシング。それはまさに、しばき隊界隈に「成功体験を与える」という愚行でもあった。

出版業界で生計を立てる文筆家までがしばき隊に同調したわけだが、彼らは「杉田論文」を読んでいないか、あるいは、読んでも理解できなかったかのどちらかだ。筆で飯を食う身でありながら、なんという体たらく!

しばき隊発の扇動の証拠

そんな中、しばき隊界隈のオラつきゲイ活動家・平野太一氏がまた、「#0925新潮45編集部包囲」なるハッシュタグを作り、デモを呼びかけた。「新潮45編集部包囲」とあるが、実質的には新潮社そのものをターゲットにした政治的行動であり、いやがらせだ。彼がツイートで「(デモの)場所こちら」とリンクしているのは、当時の新潮社公式サイトの求人を含む会社情報のページだ(ウェブ魚拓・https://archive.md/iM6pv)。

新潮社に対する遠回しな恫喝では?

あえて「包囲」という表現を使ったのも、新潮社の社屋を包囲できるほどの人数を集められるというイメージを狙ったものだろう。セコい……(苦笑)。

あいかわらず、やることが陰湿で呆れる。これを見た新潮社の社員は、自分たちだけでなく社屋を訪れたすべての人(作家等のクリエイター、取引先企業の社員、その他の出入り業者)にまで危害が及ぶ可能性があると、不安になったことだろう。

平野太一氏らしばき隊系の活動家は、名前も顔もわからない相手が突然襲ってくる恐怖を、巧みに利用してきた。その事実を世間の方々が把握済みで、彼らがまさに「反差別チンピラ」であることもご存じなら、「新潮45騒動」であそこまで支持を集めることはできなかっただろう。あのような輩を「兵隊」として便利に使ってきた共産党、立憲民主党、社会民主党はいつまで知らんぷりするつもりか。彼らとズブズブの関係の大手マスコミは、いつになったら反省するのか。

ネットも含めた騒動の背後にはしばき隊と呼ばれる運動体があることと、その界隈の活動家がまさに「反差別チンピラ」である事実を把握していた者は、私を含め、この騒ぎを批判した。だが、大手マスコミも加担している扇動の前には、瀕死の虫けらほどの影響もなかった。

あのとき、まさに、新潮社バッシングはピークを迎えていた。尾辻かな子氏のデマツイート(と、あえて呼ばせていただく)から、こんな大騒ぎになったのだから、恐ろしい。大衆とはいとも簡単に扇動できるのだということが、小学生でもこの事例から容易に学びとれることだろう。しばき隊に煽られた人々は、関東大震災直後に「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」との流言飛語に惑わされて無辜の朝鮮人を虐殺した暴徒と同じだ。

ある意味、権威にすり寄るツイート

そんな、まさに四面楚歌の中では、新潮社社員に日和る者が出てきても無理ないことだろう。そして、その「日和る者」が、例の新潮社出版部文芸のツイッターアカウント(@Shincho_Bungei)担当者であった。

この人物は、「新潮45」10月号発売日の9月18日夜、新潮社批判のツイートをリツイートで拡散し、作家等の文筆家やマスコミから、やんややんやの喝采を浴びる。しかし、彼(もしくは彼女)は上司に叱られでもしたのか、RT(リツイート)を取り消し。ところが、そのことで新潮社にまた批判が集まったことから、世間に支持されているのは自分のほうであると確信できたのか、19日午前、新潮社創業者・佐藤義亮の言葉をツイートした。

良心に背く出版は、殺されてもせぬ事(佐藤義亮)
2018年9月19日午前10:46
https://twitter.com/Shincho_Bungei/status/1042228284119953408

続けて、ふたたび、批判ツイートのRTを始めたのである。

私は、この新潮社出版部文芸アカウントの運営担当者がだれであったかは知らないし、今後も知ることはないだろう。会社勤めの編集者ならば、異動もある。現在の担当者も別の人物である可能性が高い。

読者諸氏も同様に、そのツイートをした新潮社社員がだれであるは把握することもないだろうから、私はここで存分に批判させていただく。

まず、新潮社社員であるのなら「新潮45」掲載の杉田論文を読んでないということは、ないだろう。ならば、尾辻かな子氏のツイートが悪意ある要約、悪く言えばデマであったことは、把握していたはずだ。

もし、杉田論文を読んでいなかったのなら、大手出版社の社員にあるまじき怠惰な愚か者であるし、理解できなかったのなら、やはり大手出版社の社員にあるまじき読解力の欠如である。なお、大手出版社の編集者は概して高学歴であり、さらに優秀な頭脳の持ち主であるのが常だ。

はっきり指摘させていただけば、この担当者は杉田論文を読んでいたし、理解できた。悪いのは尾辻かな子氏であり、扇動したマスコミであり、扇動された大衆であると、把握していた。なのに、大衆に迎合し、新潮社批判の暴徒の群れに加わったのだ。

なぜか? 一人でこの四面楚歌から逃れたかったからだ。すなわち、短絡的な小心者。一度はリツートを取り消したことからも、流されやすい気弱な性格がうかがえる。あてこすり的に佐藤義亮の言葉を持ち出したのも、マスコミや文筆業の面々が自分のほうについてくれていると解釈したゆえであり、一人で闘う勇気は持ち合わせないのだろう。まあ、デマと扇動から生じた味方など、かりそめの味方でしかないが。

そもそも、杉田論文も読まずに批判した、もしくは読んでも理解できなかった愚かな方々に応援されて、うれしいか? 出版社社員が? うれしかったのなら、まったくもって、おめでたいことだ。

しかも、やったことは、自分の言葉を使って語ることではなく、創業者の言葉をツイートしたほかは、作家や評論家、ライターのツイートのRTに終始。新潮社の幹部でさえ逆らえない商売相手を盾にしたというわけだ。

さらに、だ。19日のうちに完全にRTをやめたのは、情けなさの上塗りではないのか。上司から叱られたか? あるいは、当該アカウントの運営を外されたか?

上司から叱られたぐらいで引き下がったのなら、最初から一人で正義ぶって自社を批判しなければよい。あの大批判の嵐の中、他の新潮社社員はじっと耐え、沈黙を貫いていたのだ。

アカウント運営担当を外されたのだったら、今度は個人のアカウントで新潮社批判を続ければよい。だが、しなかった。できなかったのだ。自分の名前を出して発言する勇気など、最初から最後までなかったということだ。

ゆえに、自分の名を出して生計を立てている文筆業の者たちの新潮社批判ツイートをRTし、最後まで彼らの背後に隠れていた。なにからなにまでやることが半端だ。だからこそ、精神的オナニー止まりなのだ。

私はそのような者を「腰抜けの卑怯者」と呼ぶ。しかし、この行為を、マスコミ各社は称賛した。

たとえば、こんな調子だ。

◆朝日新聞
新潮社公式アカが批判リツイート 「杉田論文」特集に
https://www.asahi.com/articles/ASL9M4RNNL9MUCVL00R.html

◆ハフポスト日本版
新潮社公式アカウントが「新潮45」批判を怒涛の公式リツイート 「中の人がんばって」の声援寄せられる  泉谷由梨子
https://www.huffingtonpost.jp/2018/09/18/shincho45_a_23531748/?utm_campaign=share_twitter&ncid=engmodushpmg00000004

◆BUSINESS INSIDER
杉田水脈発言擁護は言論の自由ではない── 新潮社を作家や他社も批判、購買や仕入れ中止の動きも 竹内郁子(編集部)
https://www.businessinsider.jp/post-175622

これらの記事を執筆した者は、①杉田論文を読んではいないアホ、②杉田論文を読んだが理解できなかったアホ、③杉田論文を理解できたが、理解できないふりをして集団リンチに加わったアホ、のいずれかなのだろう。すなわち、どう転んでもアホ。嘆かわしい。

新潮社出版部文芸のツイート、リツイートは、ツイッターのサードパーティ・アプリ「ツイログ」にいまだに残っている。このたび、私はこれらデジタル・タトゥーを採取させていただいた。

新潮社出版部文芸ツイログ https://twilog.org/Shincho_Bungei/date-180919

新潮社批判ツイートをした知識人やクリエイターの中には、私の友人や尊敬する知人が何人もいる。個人的には本当に本当に心苦しいかぎりだが、大義のためである。心を鬼にし、ここでスクショを公開する。
 私が大好きな皆様、尊敬する皆様、許してください。私も辛いです……。

デジタル・タトゥー・コレクション。新潮社出版部文芸がRTしなければ、こんなふうに簡単にまとめて採取されることはなかっただろう

(つづく)

◎[過去記事リンク]LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40264
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40475
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40621
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40755
〈5〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40896
〈6〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44619
〈7〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45895
〈8〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45957
〈9〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46210
〈10〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46259
〈11=最終回〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46274

 

▼森奈津子(もり・なつこ)

作家。立教大学法学部卒。90年代半ばよりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラーを執筆。『西城秀樹のおかげです』『からくりアンモラル』で日本SF大賞にノミネート。他に『姫百合たちの放課後』『耽美なわしら』『先輩と私』『スーパー乙女大戦』『夢見るレンタル・ドール』等の著書がある。
◎ツイッターID: @MORI_Natsuko https://twitter.com/MORI_Natsuko

◎LGBTの運動にも深く関わり、今では「日本のANTIFA」とも呼ばれるしばき隊/カウンター界隈について、LGBT当事者の私が語った記事(全6回)です。
今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー

『暴力・暴言型社会運動の終焉』

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注目のタイトルマッチは浅井春香が引分けで2度目の防衛。

◎GODDESS OF VICTORY / 3月26日(日)GENスポーツパレス 16:30~19:56
主催:エスジム、ミネルヴァ実行委員会 / 認定:NJKF

接近戦では浅井春香が首相撲からヒザ蹴りやパンチがヒット

岩上哲明記者試合レポート(一部編集含む)

◆第13試合 女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ3回戦

選手権者.浅井春香(Kick Box/ 55.2kg)
        vs
挑戦者5位.MARIA(PCK大崎/TeamRing/ 55.0kg) 
引分け 0-1
主審:センチャイ・トーンクライセーン
副審:多賀谷28-30. 竹村29-29. 井川29-29

試合前、MARIAは「絶対に勝ちます。シンプルイズベスト!」と王座奪取への熱い気持ちをコメント。

試合は第1ラウンド中盤から挑戦者MARIAのストレートパンチがヒットをしたのを切っ掛けに動き出す。チャンピオン浅井春香も返しのパンチや首相撲に持ち込むと、MARIAは首を捻られ一瞬苦痛の表情が出たが難無く攻勢を仕掛ける。

第2ラウンドもMARIAは重いパンチに浅井は首相撲からのヒザ蹴りで勢いを止めに掛かる。浅井のセコンド陣から「打ち合いに行け!」と指示が出てもMARIAのパンチに警戒しているせいか、打ち合いに持ち込めない。

第3ラウンド、浅井はMARIAのパンチを打たせないように首相撲を仕掛けるが、MARIAは掻い潜ってストレートを炸裂。浅井はクリンチに逃げ、最後はお互い首相撲からのヒザ蹴りを仕掛け合って終了。浅井は2連続引分け防衛。

パンチで打ち合う圧力はMARIAが上回った

試合後、浅井春香は「こんなものです、すみません!」と反省の弁を述べながらも、再戦があるならば「次はスッキリ勝ちます!」と語り、セコンドに付いていた鴇稔之会長から、「浅井は肩を痛めていて本調子ではなく、よくドローに持ち込んだ。」と健闘を称えていた。

一方のMARIAは奪取できなかった悔しさを見せながらも再戦必至と考えており、「次は絶対勝ちます!」と互いが必勝を誓っていた。

引分け防衛の浅井春香と王座奪取成らずのMARIA、明暗分かれた瞬間

◆女子フェザー級3回戦(2分制)KAEDEの2.75kgオーバーで中止

ミネルヴァ・スーパーバンタム級1位.KAEDE(LEGEND/ 59.9kg)
        vs
同級9位.寺西美緒(GET OVER/ 56.9kg)

中島稔倫会長は「寺西が試合出来ないのは残念です。今日はメインイベント出場の両選手を研究すると思います。」とコメント、寺西選手は「どちらかの選手に早いうちに挑戦することになると思います。そして王者になります!」と前向きなコメントだった。

◆第12試合 女子54.5kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級2位.IMARI(LEGEND/ 53.4kg)
        vs
NAO・YK(YK/ 53.5kg)
勝者:IMARI / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:中山30-28. 竹村30-28. 井川29-28

当初の高橋アリスに代わり、引退するIMARIの対戦相手となったNAO・YK。初回、IMARIは左右のパンチを決め、NAOは首相撲で優位に立とうと圧力を掛ける。

第2ラウンドにはIMARIのパンチに対し、NAOもミドルキック、首相撲で自分の流れを掴もうとするが、IMARIが首相撲でも優位に立つ展開。

最終第3ラウンド、IMARIの左右のストレートからのミドルキックが決まるなど優勢が続く。NAOは首相撲や蹴りで対抗するも、IMARIの攻勢を崩せず終了。

IMARIの左ミドルキックがヒット、攻勢を維持してラストファイトを勝利で飾る

試合後はIMARIの引退セレモニーが行われ、マイクで感謝の言葉を述べた後、10カウントゴングが鳴り響いた。IMARIは涙ぐむ表情を見せながらも最後は笑顔でリングを下りた。「いい試合でしたよ。」と声をかけると、「ありがとうございます!」と笑顔で明るく返事をしていた。スッキリした表情だった。

引退セレモニーでの挨拶で次第に涙ぐみながら仲間へ感謝を述べたIMARI

◆第11試合 女子ピン級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級4位.世莉JSK(治政館/ 44.85kg)vs 同級5位.斎藤千種(白山/ 45.25kg)
勝者:斎藤千種 / 判定0-2
主審:センチャイ・トーンクライセーン
副審:中山28-30. 多賀谷28-30. 井川29-29

昨年10月16日、斎藤千種の左ストレート貰った世莉がバランス崩してマットにヒザを着いたところへ斎藤のヒザ蹴りが顔面に入り、世莉JSKは試合続行不可能。当初の斎藤千種のTKO勝利は後日、反則打として失格負けと変更。世莉JSKの反則勝ちとなっていた。

再戦となった今回、初回から両者はパンチを繰り出していく。世莉JSKはやや動きが鈍く、斉藤千種が優勢な展開。第2ラウンドも斉藤の攻勢は続くが、世莉は打ち合いに応じるも、斉藤の左右の伸びがあるミドルキックに苦戦。

最終第3ラウンド、世莉はミドルキックで斉藤を追い込めそうな状況も流れを活かせず、斉藤はミドルキックとパンチで世莉の反撃を防ぎながら攻勢を仕掛けるも試合終了。

試合後、世莉は悔し涙を流していた。セコンドに就いた祥子JSKからは、「世莉は前に行くことが出来なかった。まだ十代ですし、今が底でこれから上がるだけ!」と気持ちを切り替えた様子。友人と会話をして落ち着いた世莉選手に労いの言葉をかけると「ありがとうございます!」と応えてくれた。

斎藤千種のハイキックがヒット、再戦は慎重に攻めて判定勝利を掴む

◆第10試合 女子ライトフライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ライトフライ級6位.紗耶香(格闘技スタジオBLOOM/ 49.1→48.98kg)
        vs
YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/ 48.8kg)
引分け 1-0
主審:竹村光一
副審:センチャイ29-29. 多賀谷29-29. 井川30-29

初回、紗耶香は得意のパンチで主導権を握りにかかる。YORIKOは組んでヒザ蹴りで出ると、紗耶香も合わせていく展開。

第2ラウンドも紗耶香がパンチで仕掛け、YURIKOは首相撲からのヒザ蹴りで打開しようとするが、紗耶香のパンチの猛攻を防げず、ラウンド終了間際に紗耶香の右ストレートで尻餅をつくがゴングに救われた。

最終第3ラウンド、YORIKOはミドルキックと首相撲でのヒザ蹴りを主体に攻撃の数を増やしていく。紗耶香はパンチ主体で終始進めていくが、YURIKOの蹴りが的確に決まり、勢いが止まることがしばしば。最後は両者共に首相撲からのヒザ蹴りで終了。

紗耶香とYURIKOのパンチの交錯、パンチではやや紗耶香が優った

◆第9試合 女子46.0kg契約3回戦(2分制)

上真(ROAD MMA/ 45.8kg)vs AZU(DANGER/ 46.0kg)
勝者:上真 / 判定2-1(28-29. 30-29. 30-28)

◆第8試合 女子44.0kg契約3回戦(2分制)

AIKO(AX/ 43.55kg)vs Honoka(健心塾/ 43.55kg)
勝者:AIKO / 判定2-1(28-29. 30-29. 30-29)

◆第7試合 女子46.5kg契約3回戦(2分制)

ねこ太(とらの子レスリングクラブ/ 46.3kg)vs aimi-(DANGER/ 45.7kg)
勝者:ねこ太 / 判定2-0(29-29. 30-29. 30-29)

◆第6試合 女子フェザー級3回戦(2分制)

小倉えりか(DAIKEN THREE TREE/ 57.0kg)vs 谷岡菜穂子(GRABS/ 56.9kg)
勝者:小倉えりか / TKO 1R 1:42

静かな展開でスタート。互いに牽制しあう攻防の中で、小倉えりかのローキックを谷岡菜穂子はブロックする際、左膝の内側で受け、バランスを崩しそのまま倒れレフェリーストップ。谷岡はそのまま担架で運ばれた。小倉のローキックをカットした際に、左膝内側付近が陥没した様子。

小倉は試合前からリラックスしていた。セコンドは「勝算はある。必ず勝つ。」と強いコメントがあった。

試合後に小倉からは「勝ちは勝ち。フェザー級でもぜひS-1トーナメントを開催して欲しいです!」と熱望。小倉えりかの言葉には、フェザー級、そして女子キックボクシングを盛り上げたいという熱い気持ちが伝わっていた。

アクシデント的ながら小倉えりかがTKO勝利、谷岡菜穂子は左膝負傷で立てず

◆第5試合 S-1女子48.0kg契約3回戦(2分制)

Marina(健心塾/ 47.5kg)vs Nao(AX/ 47.6kg)
勝者:Nao / 判定0-3(28-30. 27-30. 27-30)

◆第4試合 マチュア女子52.0kg契約2回戦(2分制)

堀田優月(闘神塾/ 50.0kg)vs 松田沙和奈(拳之会/ 50.9kg)
勝者:堀田優月 / KO 1R 0:33

堀田優月は、開始早々にパンチで猛攻、松田沙和奈も返していくが、堀田は左ストレートを決めノックダウンを奪う。松田は立ち上がり反撃するも、再び左ストレートでノックダウンを喫し2ノックダウン制による堀田のノックアウト勝利。
試合後、堀田選手は嬉しそうな顔で「ありがとうございます。爽快でした!」と語り、堀田選手のお父さんも「まだ中学生ですけど!」と話しながらも勝利に喜びの様子だった。

左ストレートで2度のノックダウンを奪って快勝した堀田優月

◆第3試合 女子フライ級3回戦(2分制)

MIKU(K-CRONY/ 50.7kg)vs HIMEKA(LEGEND/ 50.7kg)
勝者:HIMEKA / 判定0-3(28-30. 29-30. 28-30)

◆第2試合 女子スーパーフライ級3回戦(2分制)

響子JSK(治政館/ 52.1kg/6oz)vs 珠璃(闘神塾/ 54.1→53.45kg/8oz)
引分け 0-1(28-28. 28-28. 27-28/珠璃が1.29kgオーバーで減点2含む、グローブハンディー有)

終始、珠璃がパンチで押し気味な展開。響子JSKは蹴りや首相撲で流れを変えようとするが上手くいかず。ドローで終了。

響子は「相手の減点があったから引き分けだったけど、勝たなくてはいけない試合だった。」と反省のコメントを述べていた。

珠璃は押し気味の展開も減点があって引分け、響子は蹴りで出るも優れず

◆プロ第1試合 女子40.0kg契約3回戦(2分制)

沙緒里(ワイルドシーサー前橋関根/ 40.0kg)vs 江口紗季(笹羅/ 36.7kg)
勝者:江口紗季 / 判定0-3(27-30. 27-30. 28-30)

他、プロ試合前にオープニングファイト アマチュア女子4試合有

《岩上哲明取材観戦記》

今回の興行は、第1試合から最終メインイベントまで全選手、関係者全員が興行を成功させようという強い気持ちが感じられました。メインイベントのミネルヴァ・スーパーバンタム級タイトルマッチはドローになりましたが、再戦を観たいという気持ちになり、IMARU選手の引退試合は寂しさより、「第二の人生」を応援したくなるような感情になり、ピン級のランキング戦では再戦の上、先週のジャパンキックボクシング協会興行で新王者になった撫子選手の刺激を受けたのか、両者から勝利への意気込みが伝わってきました。

アマチュア試合の堀田選手はプロ本戦の興行でもなかなか観れない鮮やかなノックアウト決着で会場を沸かせました。

興行が盛り上がるための要因の一つである「ドラマ」が各々の試合に出ていたのは良かったと思います。この興行にはNJKFのランカーであるTAKUYA選手や名古屋のGETOVERのTAKERU選手など多くの男子選手が来場していて、セコンド業務などをこなしながら何かを得ていったことでしょう。

《堀田春樹取材戦記》

浅井春香は2回連続の引分け防衛。昨年5月の初防衛では、鴇稔之会長からの教訓「チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン」と語った浅井春香。名門・目黒ジムから引き継がれた教えは、勝利での完全防衛の仕切り直しへ再度持ち越された感じです。

しかし、タイトルマッチで3回戦は差が付き難く、女子でも5回戦が必要とも思えました。

しかしプロボクシングでも女子は2分制で、日本タイトル戦でも6回戦とかなり短めで、打撃格闘技においては安全面の考慮がまだ未知数で難しいようでもあります。

前回記事で、次回ジャパンキックボクシング協会(JKA)興行は5月14日(日)市原臨海体育館と書きましたが、正しくは一週遅れの5月21日(日)に市原臨海体育館で開催されます。大変失礼致しました。

当初、5月14日の開催予定だった武田幸三氏の「CHALLENGER」5月興行は中止となっています。

ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)本興行は当初の予定どおり4月16日(日)に後楽園ホールに於いて「NJKF 2023.2nd」が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2023年4月号

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《4月のことば》故郷の桜は……(鹿砦社カレンダー2023より。龍一郎揮毫)

4月になりました。───
1月(去ぬ)、2月(逃げる)、3月(去る)、あっというまに過ぎました。
季節は春ですが、私たちの気持ちにはまだ春到来とは言えません。

福島原発事故でいまだ多くの方々が故郷を離れることを余儀なくされました。
この季節になるといつも12年ものあいだ故郷を離れて生活しておられる方々のことに胸が痛くなります。

私たちにとっても年々望郷意識が募ります。
若い頃は一日一刻も早く「こんな田舎を離れたい」と思っていましたが、今は少年時代を過ごした故郷の日々が懐かしく想起されます。

私たちは、思い立てばいつでも帰郷できますが、被災地福島(特に立ち入り禁止区域やゴーストタウン化した区域)の方々はそうではありません。

いつも思うのですが、大学の後輩で書家の龍一郎が書く「故郷」の文字は、力強くもあり、それでいてなにか物悲しさを感じさせます。

今年は桜も少し早く咲き、早く散りそうです。

目を外に向ければウクライナ戦争は終息の目処が立たず、国内ではコロナもまだ終息せず物価も上がり続けています。明るさばかりではない今年の春です。

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年4月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年春号(NO NUKES voice改題)

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