睦雅と大地・フォージャーはいずれも王座獲得後初戦となる。
睦雅はヒジ打ちで初戦を飾り、大地・フォージャーはムエタイ戦法に攻め倦み、持ち味を殺された決定打の無い引分けに終わる。
◎Road to KING / 5月21日(日)市原臨海体育館 / 開場15:00、開始16:00~18:47
主催:市原ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
※試合順は西原茉生vs花澤一成を省いています(プログラムと異なります)
◆第8試合 62.0kg契約 5回戦
JKAライト級チャンピオン.睦雅(ビクトリー/ 61.85kg)18戦12勝(6KO)4敗2分
VS
チュ・ギフン(元・韓国格闘技ライト級Champ/韓国/ 61.5kg)39戦22勝12敗5分
勝者:睦雅 / TKO 1R終了 / ヒジ打ちによるカットによる顔面負傷で棄権。
主審:少白竜
今回の試合で引退と発表しているチュ・ギフンと、3月19日の王座獲得後、最初の試合になる睦雅。前日計量では髪の毛を金髪にしてイメージチェンジをした睦雅。タイトル奪取と試合に向けてのコメントは「有難うございます。明日は必ず勝ちます。」と語った。チュ・ギフンは同国の選手と軽い談笑はしていたが緊張気味であった。
第1ラウンド、睦雅が蹴り主体に攻め、チュ・ギフンが対抗し一進一退の攻防で進むが、残り30秒辺りに睦雅の左ヒジがチュ・ギフンの左瞼をカット。ドクターチェック後、睦雅はパンチ、ヒジ打ちでチュ・ギフンの負傷箇所を襲うが、チュ・ギフンも反撃しながら凌いでラウンド終了もインターバル中、チュ・ギフンサイドからタオル投入。負傷箇所が悪化で続行出来ないと判断した様子。
睦雅はメインイベントをKO勝利で締めたこともあり、「王者として興行を締める責任を果たせたと思います。有難うございます。」とコメント。チャンピオンとしての責任感を何度も意識していた睦雅は、「先輩の永澤サムエル聖光選手の姿を見たり、直接指導を受けて学びました。」と語った。
◆第7試合 67.0kg契約3回戦
JKAウェルター級チャンピオン.大地・フォージャー(誠真/ 66.95kg)
17戦7勝(5KO)9敗1分
VS
コンデート・ギャットプラパット(元・タイ7ch・フェザー級Champ/タイ/ 66.5kg)
107戦82勝(11KO)21敗4分
引分け 三者三様
主審:松田利彦
副審:少白竜29-30. 仲29-29. 桜井29-28
両者探り合いの展開から大地は体格差を活かしパンチを主体に攻めていく中、コンデートは手数は少ないものの、大地に攻め込ませないように上手くリング(広さ、奥行き)を使った距離を取る戦法。大地はラッシュをかけるも決定打を打たせて貰えず終了。
◆フライ級3回戦 -中止-
JKAフライ級2位.西原茉生(治政館/ 50.4kg)vs花澤一成(市原/ 50.7kg)
前回3月19日の、偶然のバッティングによる負傷引分けとなった再戦も、花澤一成が前日計量はパスしているが、急な発熱による体調不良の為、ドクターストップ(検診時)。西原茉生はリング上で「フライ級の王者を目指す」と宣言。再戦は7月16日のKICK Insist.16へ延期。
◆第6試合 フェザー級3回戦
JKAフェザー級2位.皆川裕哉(KICK BOX/ 57.1kg)21戦10勝9敗2分
VS
ユン・ソン(韓国/ 56.7kg)14戦9勝(2KO)5敗
勝者:皆川裕哉 / 判定2-0
主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 松田30-29. 仲30-29
試合前、皆川裕哉はリラックスした表情で、「勝ちます。もちろんKOで、楽しんで来ます。」とコメント。
初回、皆川裕哉は得意の多彩な蹴りで自分の距離に持ち込もうとするが、ユン・ソンは受け身となりながらも回転回し蹴りで会場を沸かせ、皆川はしっかりブロックをしてダメージを受けず。その後、皆川のパンチとキックのコンビネーションにユン・ソンは打たれ強さで耐え、重いパンチで反撃をして来ると皆川が攻め倦むシーンもあった。最終ラウンドも皆川のローキック中心で優勢な展開の中、再びユン・ソンの回転回し蹴りが仕掛けられるが皆川は冷静に対処して判定勝利。
試合後、ユン・ソンは終始無言。皆川裕哉は「試合は楽しめました。相手の選手の回転蹴りは驚きました。いい経験でした。」と語っていた。
◆第5試合 55.0kg契約3回戦
JKAバンタム級4位.樹(いつき/治政館/ 54.9kg)9戦5勝(2KKO)3敗1分
VS
キム・テゴン(韓国/ 55.0kg)12戦7勝(4KO)4敗1分
勝者:樹 / 判定3-0
主審:松田利彦
副審:桜井30-27. 少白竜30-27. 仲30-27
樹は同日の岡山ジム興行に出場している麗也(治政館)を意識し、「負けられない、勝利を約束します!」と力強くコメント。
初回、樹のローキックが効果的に決まり、キム・テゴンはパンチで応戦するも、ラウンドが進むにつれ、樹の圧力で前に出難い状況になる。樹はキム・テゴンへのローキックの効果を確信し、パンチの連打でコーナーに追い込むが、キム・テゴンはタフネスぶりを発揮し、ノックダウンを許さない。
最終ラウンドには樹はセコンドの指示(キム・テゴンのタフネスさから深追いさせない)によりKOを狙わず、ポイントを守るスタイルに切り替え、キム・テゴンの最後の追い込みを躱して終了。
◆第4試合 バンタム級3回戦
紫希士(=きしと/Formed/ 53.3kg)2戦2勝
VS
河村秀和(ラジャサクレック/ 53.3kg)7戦3勝4敗
勝者:紫希士(赤コーナー) / 判定3-0 (29-28. 29-28. 29-28)
開始早々に紫希士のパンチの連打が河村秀和の顔面を捉え会場がどよめく。特に紫希士のやや離れた距離からのストレートは効果的だった。河村秀和も久しぶりの試合ながら、紫希士の攻撃に応じて打ち合いになり、会場が盛り上がる。第3ラウンドに紫希士のヒジ打ちが河村選手の右頬をカットするが、最後まで打ち合う展開で終了。
◆第3試合 ミドル級3回戦
西田絋佑(ビクトリー/ 72.3kg)2戦1敗1分
VS
白井大也(市原/ 72.0kg)1戦1分
負傷引分け / TD 2R 1:22
白井大也がパンチを主体に攻め、西田絋佑はクリンチをしながら主導権を握らせない展開であったが、第2ラウンドの半ばあたりの偶然のバッティングにより、白井大也が流血し試合続行不可能となる。
◆第2試合 女子スーパーバンタム級3回戦
大内咲(市原/ 55.0kg)1戦1敗
VS
珠璃(闘神塾/ 54.3kg)2戦1勝(1KO)1分
勝者:珠璃(青コーナー) / TKO 2R 終了
初回から珠璃のパンチが大内咲を的確にとらえ、珠璃のストレートが顔面に当たる度に大内咲の顔が後方に反る。大内咲も蹴りやパンチで返すも珠璃の圧倒的な手数に圧され、劣勢のまま第2ラウンド終了後、大内咲サイドからタオル投入による棄権で終了。
◆第1試合 ライト級3回戦
菊地拓人(市原/ 60.6kg)1戦1敗
VS
龍将(TRY HARD/ 61.0kg)1戦1勝
勝者:龍将(青コーナー) / 判定0-3 (28-29. 27-29. 28-29)
初回から龍将の蹴りヒットで菊地拓人のペースを奪っていく。龍将のミドルキックに意識がいったか、菊地は一瞬ガードが下がったところへ龍将の左ストレートがヒットし、ノックダウンを喫する。菊地は立ち上がり、龍将の左ミドルキックを貰い動きが止まるが、更なるノックダウンは免れる。
第2ラウンド、菊地が反撃をし、龍将は右ストレートを貰いながらもミドルキックで反撃。最終ラウンドでは、菊地の右ストレートが龍将のコメカミにヒットするも単発で終わり、龍将は一発狙い、菊地はスタミナが切れている状況でノックダウンを奪う打ち合いにまで至らず終了。
《観戦記》岩上哲明
7年ぶりの市原興行は成功したと思われます。市原ジムのOBであった須田康徳さんや真鍋英治さん、蘇我英樹さんなどの姿には懐かしさを感じました。
睦雅選手が最後を締めてくれて、王者としての責任を果たしたと思いました。去年の11月の試合で左ヒジ打ちでのKO勝ちをして上昇気流に乗り、今年の3月19日に王者になり、今回の興行でメインイベントを締めてくれたのを嬉しく思いました。
大地・フォージャー選手はコンデート選手の戦い方に合わせ過ぎてしまった感があり、実力を発揮出来なかったでしょう。
他団体も含めて、「打倒ムエタイ」の傾向が続いていますが、タイだけではなく、今回出場した韓国の選手のように世界には多数の外国人選手がいます。団体のカラーもあると思いますが、そのカラーに合った外国人選手を興行に合わせることで、団体としての力もアップするのではないかと感じました。
《取材戦記》堀田春樹
睦雅と対戦したチュ・ギフンは2016年4月10日に当時、日本フェザー級4位.拳士浪(治政館)に判定負け。日本では市原ジムを拠点とし、在日韓国人として幾らか試合出場している様子。
市原ジム前会長の玉村哲勇氏が2019年5月に肺癌で亡くなり、追悼興行はまず2020年に予定されながら、コロナ禍の影響で暫く開催出来なかったようです。他、市原ジム顧問の鈴木熊男氏、中岡優治氏が逝去された模様で、3名にテンカウントゴングで送られました。
昭和の市原ジムから伝説のチャンピオン須田康徳氏をはじめ、四元伸一郎氏、松田勇氏や当時トレーナーだった太田浅男氏の御来場、玉村会長の奥様、長男・長女さんの顔触れがありました。私がキックボクシング関係者と家庭的なお付き合いがあったのは40年前に、この市原ジムと玉村会長家が初めてでした。その懐かしさと温かい心配りに感慨無量でした。
また、市原臨海体育館も2016年4月の蘇我英樹引退興行以来となりましたが、ツイキャス中継用のセッティングで、ビッグマッチイベントの大会場のような雰囲気があり(照明は明るくはなかったけど)、以前の外光が入る体育館とは違った印象がありました。昔はここで沢村忠さんの試合も行なわれた会場です。市原ジムの今野顕彰選手は引退の意向のようで、メインイベンターとしての出場は無くなってしまいましたが、ビクトリージムの睦雅はチャンピオンとしてメインイベンターを務め、しっかり責任を果たしたと言える勝利でした。
今後の市原ジム興行は誰がメインイベンターとなるか、今回欠場となってしまいましたが、花澤一成には期待が掛かるでしょう。
次回のジャパンキックボクシング協会興行はビクトリージム主催「KICK Insist.16」が新宿フェースにて開催されます(昼夜二部制の可能性あり)。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」