◆競技の基盤はアマチュアから

アマチュアのムエタイ、キックボクシングに関しては、過去にも若干、話題を取り上げることはありましたが、この10年ではアマチュア界は遥かに進化し、競技人口は日本だけでなく海外でも大幅に増えています。裾野が広がり基礎が出来上がれば、数十年後にはプロとしても競技の確立に繋がる期待が高まるでしょう。

ボクシングには大正時代からアマチュアボクシングがあり、競技的には別組織でも、アマチュアからプロへの転向は実績が分かり易く、比較的スムーズな流れを持っています。

キックボクシングは創生期からアマチュア競技は無かったため、空手の経験を経てキックボクシングに移って来ること多く、昭和末期になってキックボクシング団体が母体となる、顔面打撃ありの新空手(全日本新空手道連盟)やグローブ空手(全日本グローブ空手道連盟)といった空手スタイルのアマチュア版キックボクシング競技が普及・継続されてきました。

2005年にはタイ国のムエタイ関係者がプロボクシングのWBCに打診し、プロのWBCムエタイが発足。その影響も含め、2007年頃から幾つかのプロ団体やプローモーターが低年齢層を対象としたジュニアキック・ムエタイ大会をアマチュア枠として活動し始めました。

2019年8月、第5回大会開催

WBCムエタイ日本協会代表を務める齋藤京二氏

2019年、中学生の部の55kg未満で上田咲也と対戦した小林亜維二

現在も多くの組織でアマチュア大会は拡大化し、オリンピック新種目を目指すIFMAといったタイ国が拠点の団体や、世界大会まで段階を組み立てたWBCムエタイ・アマチュア大会が存在します。

WBCムエタイ日本協会(元・実行委員会)傘下に於いては2015年から始まったU-15大会、翌年からU-18も開催。コロナ禍前の2019年8月24日に開催された、WBCムエタイ・ジュニアリーグ第5回U-15(第4回U-18)全国大会では全19階級の覇者が決定。
近年のコロナ感染拡大の影響で、2020年から各国で中止が続いたものの今年は再開に漕ぎ付けました。

WBCムエタイ・ジュニア世界大会は2022年8月にカナダ・バンクーバーで第1回大会が行われており、世界21ヶ国のU-18の代表選手にて開催されました。2年に一度の開催として、次回は第2回大会として2024年2月2日~4日、タイ国ホアヒンビーチにて開催予定です。

その出場選手代表選考会として、2023年11月5日に第6回WBCムエタイジュニアリーグ全国大会が、11月5日(日)に新宿区百人町のGENスポーツパレスにて開催されます。キックボクシング各団体やプローモーター主宰のアマチュア大会は多いものの、プロの柵は無く交流が続けられており、全国大会には各地域のアマチュア大会より代表選手を選出され、世界大会出場権を争うことになります。

WBCムエタイ・アマチュアのチャンピオンベルト

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WBCムエタイ・ジュニアリーグ世界大会日本代表選考会
(第6回WBCムエタイ・ジュニアリーグ全国大会)

2019年、中学生の部55kg未満で優勝した小林亜維二

日時:11月5日(日)午前10時より選手受付計量開始(予定)
試合開始:午前11時30分(予定)
主催:WBCムエタイジュニアリーグ実行委員会

出場年齢、階級、アマチュアとして、また少年期としてのジュニアルール制定、必須用具等の指定が有ります。

ジュニア層は身体の発育期にあり、無理な減量は行なわない指導もされている模様。そのため、世界大会まで極力待機期間が空かない11月開催が予定。

競技会の年齢別カテゴリー(参加は10歳以上)
キッズ・12歳未満(10~11歳)
キッズ・14歳未満(12~13歳)
ジュニア・16歳未満(14~15歳)
ジュニア・18歳未満(16~17歳)

参加選手の年齢は、試合当日の生年月日で決定されます。
ジュニアカテゴリーでの参加選手の最高年齢は17歳を超えてはなりません。

ラウンド数
キッズ/12歳未満(3回戦/1分制/インターバル1分)
キッズ/14歳未満(3回戦/1分半制/ インターバル2分)
ジュニア/16歳未満(3回戦/2分制/インターバル2分)
ジュニア/18歳未満(3 回線/3分制/インターバル1分半)
ジュニア王座決定戦(5回戦/2分制/インターバル2分)

制限                      
ヒジ打ち無し、キッズ(14歳未満)は頭部顔面への攻撃は禁止、ジュニアは頭にヒジ打ち、ヒザ蹴りは禁止。    

着用必須用具(グローブ・トランクス以外)
ボディプロテクター、マウスピース、肘サポーター、ノーファールカップ、バンテージ、レッグガード(脛保護サポーター)、ヘッドギア

階級
キッズ(kg)は10歳から13歳まで30kgから60kgまで2kg間隔のリミット、60kg超から71kg超まで異なるリミットが存在します。

ジュニア:16歳未満、18歳未満。基本的には大人と同じ階級。
階級はミニフライ級からライトヘビー級までプロボクシングの階級に準じ、クルーザー級以上はスーパーヘビー級まで異なる4階級のリミットが存在します。

他、医療関連の問題に関する適格性
最終決定は、計量時前のメディカルチェック時に医師によって行われます。

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2022年1月、ウェルター級でプロデビューした小林亜維二、山内ユウと対戦

十代の成長は早いものです。個人差はあれど、3ヶ月で1~2cm、体重も2~3kg増えそうなものです。長期に渡るトーナメント戦は成人の場合と違い、ウェイト制の難しさがあるので開催はしない模様。アマチュアの試合なのでワンデートーナメントが多いものの、世界大会出場権を得ての3ヶ月は大事に過ごして欲しいものです。

かつては他のアマチュアイベントに於いて、那須川天心、福田海斗、吉成名高らがアマチュアジュニアムエタイを経てプロで名を馳せました。WBCムエタイ・ジュニアリーグだけでないジュニア世代の、今後も新たなスター発掘となる十代の活躍でしょう。

2019年、第5回大会の表彰選手達、今年の優勝者は誰か

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」